看護師の働き先はいくつか考えられます。病院やクリニック以外に、たとえば、健診センター、介護施設、保育園、企業、障害者施設・児童福祉施設、訪問看護ステーションなどがあります 。働き先によって働き方も異なりますが、このうち、主に訪問看護ステーションなどで働く「訪問看護師」は、利用者宅にお邪魔して、利用者の病気が障害に応じた看護をおこなうことが仕事です。では、看護師の仕事のなかでも特に訪問看護の仕事に向いている看護師にはどのような特徴があるのでしょうか? 詳しくみていきましょう。
訪問看護師に向いている人の特徴
早速ですが本題。まずは、訪問看護師に向いている人の特徴をみていきます。
どんな診療科の疾患にも対応できる
訪問看護サービスは、主治医から「訪問看護指示書」が交付されているすべての人が利用することができます 。サービスを提供しているのは、訪問看護ステーション、もしくは訪問看護をおこなっているクリニックなどで、診療科によってわかれているわけではありません。そのため、基本的にはどんな診療科の疾患にも対応できなければなりません。ただしもちろん、どんな処置やケアをおこなうかについては、主治医から指示が出されます。
挨拶やマナーを大事にできる
挨拶やマナーを大事にできる看護師でなければ、利用者側も、自宅に入ってほしくありません。「感染症対策のために手指を消毒して衛生面に不備がないようにする」などの看護師としてのマナーだけではなく、「玄関では靴をきちんとそろえる」など、社会人に不可欠なマナーを身に着けていることも重要です。
スケジュール管理を問題なくおこなえる
訪問看護師は、利用者宅を基本的にひとりで訪問しなければなりません。1日の訪問先は1軒ではなく、平均して4~5軒のお宅を訪問するため、移動時間も含めて事前に確認しておくことで、次の訪問先に約束の時間までに到着する必要があります。また、業務が終わったらスムーズに帰宅できるよう、それぞれの利用者の看護記録などは、スキマ時間をうまく活用してつけておくことが望ましいといえます。加えて、利用者にいつもと違う様子がみられたり、体調に異変を感じたりした場合は、主治医や保健師などに報告することも必要です。これらの業務を効率よくおこなうためにも、1日のスケジュールをきちんと管理することが不可欠です。
コミュニケーションスキルが高い
無床の病院やクリニックの場合、看護師が患者一人ひとりと直接コミュニケーションをとる時間は極めて短いといえます。しかし、訪問看護師と仕事するとなると、利用者宅にいる間中、利用者またはその家族とコミュニケーションをとることが不可欠であるため、コミュニケーションをとることに苦手意識がある看護師には務まりづらいでしょう。
体力がある
訪問看護師は1日に数軒のお宅を訪問して仕事するため、1日の移動時間が長く、車移動だったとしても疲れが溜まりやすいです。また、利用者の体位を変えたり歩行訓練に付き合ったりすることが多いため、仕事自体に肉体労働の要素があるといえます。そのため、体力に自信がある看護師のほうが向いているといえるでしょう。
精神力がある
訪問看護の仕事には、精神的にハードな一面があります。たとえば、利用者の排泄物を処理しなければならない可能性がありますし、利用者から暴言を浴びせられたり、暴力を受けたりする可能性もあります。また、訪問看護の現場ではセクシュアルハラスメントが横行していることも問題となっています。そのため、精神面が軟弱であれば、「辛い」「辞めたい」と感じることが多いでしょう。
臨機応変な対応ができる
訪問看護の仕事をおこなううえでは、状況を把握して適切に対処する能力が不可欠です。なぜかというと、現場には医師が同行しているわけではないので、なにかあったときにその場で対処できるのは自分だけだからです。もちろん、すぐに医師に連絡をとって指示を仰ぐことになりますが、連絡するより先に最低限の処置を施さなければならないシーンなども想定されます。
いろんな職種の人と関わりたいと考えている
訪問看護の仕事においては、訪問看護ステーションのチームメンバーのほか、主治医や理学療法士をはじめ、さまざまな職種の人と連携を取り合うことが必要です。医療機関で働く看護師もそうではあるのですが、訪問看護師は、少なくともその日の看護師の仕事は自分に任されていて、自分が責任を持っていて各職種の人に連絡をとることから、多職種の人と関わりを持ちながら仕事している実感を得やすいでしょう。
将来、訪問看護ステーションを開業したい
訪問看護ステーションは、看護師でなければ開業できません。しかし、看護師であれば誰でも開業できるほど甘くはありません。やはり、一通り訪問看護ステーションの仕事について知っておく必要がありますし、訪問看護師として働いた経験もほしいところです。そのため、将来、訪問看護ステーションを開業したいと考えているなら、早い段階で、訪問看護師としての経験を積んでおくことが望ましいといえます。
訪問看護師に向いていない人の特徴は?
続いては訪問看護師に向いていない人の特徴です。訪問看護師に向いていない人は、基本的には、上記条件に当てはまらない人ということになりますが、“それ以外に”特徴を挙げるとしたら以下の通りです。
最先端の医療に触れ続けたい
最先端の医療への関心が高く、自身も医療処置のスキルを磨き続けたい人は、医療処置以外の業務も多い訪問看護師としての仕事には満足できないでしょう。
潔癖症である
他人の家に入ることに抵抗を覚える人や、利用者の排泄物処理はなるべくおこないたくない人などは、明らかに訪問看護師に向いていません。また、潔癖症の自覚がなかった人が、あまりにも散らかった利用者宅を見てショックを受ける、などのケースもあるでしょう。利用者の疾患によっては整理整頓が難しい場合もあるので、「次回の訪問看護の日までに片づけておいてほしい」などにも応えてもらえないことが多いでしょう。
犬猫アレルギーやハウスダストアレルギーなどがある
犬猫アレルギーやハウスダストアレルギーがある看護師は、「訪問看護は向いていない」というより、辞めておいたほうがいいでしょ う。動物を飼っている利用者も、清潔感に欠けるお宅に住んでいる利用者もいます。訪問先でアレルギー症状が発症すれば、利用者に迷惑をかけてしまうこともあります。これまでアレルゲンと接することのない生活を送っていた場合、利用者のお宅を訪問して初めて症状が出る場合もあります。最初は、アレルギーが原因だと気づかないこともあるかもしれませんが、原因が判明して症状がひどい場合などは、職場に迷惑をかけてしまうことは百も承知で、早々に離職したほうが身のためです。
晩酌が欠かせない
多くの訪問看護ステーションはオンコール対応を導入しているため、緊急連絡が入れば、24時間いつでも対応しなければなりません。もちろん、365日24時間対応しなければならないということはなく、訪問看護ステーション内で、各看護師の対応日を調整していますが、緊急連絡が入るかもしれないと思うと気が休まらないという人は、訪問看護師として働くことは避けたほうがいいかもしれません。もちろん、お酒を飲んだ状態で利用者宅に駆けつけることなどもってのほかなので、オンコール対応担当の日はお酒を飲むことができませんし、緊急連絡のタイミングによっては、食事を途中で辞めなければならないこともあります。
(公共交通機関が限られるエリアの場合)免許がない、車の運転が苦手
電車やバスで利用者宅を訪問できるエリアの場合、車が運転できなくても問題ありませんが、公共交通機関が限られるエリアの場合、運転できないと訪問看護師として働くことは難しいかもしれません。それでも訪問看護師として働きたい場合は、運転免許を取得するか、もしくは運転免許がなくても雇ってくれる事業所を探す必要があります。
「自分には向いていない」と感じるなら、自分に合った働き方を考えることも大事
訪問看護師として社会に貢献したいという思いが強かったとしても、前述の「訪問看護師に向いていない人の特徴」に当てはまるものがあり、それを直すことが難しいのであれば、他の働き方で社会に貢献することを検討してもいいかもしれません。冒頭で述べた通り、看護師はさまざまな職場で求められているので、いろんな働き方で社会に貢献することが可能です。しかも、我慢しなければならない要素が少ない働き方のほうが、活き活きと仕事することで自分の能力をフルに発揮しやすいので、社会への貢献度もそのぶん上がることが考えられますよ。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年5月時点の情報を元に作成しています。