医師や看護師が常駐していない施設や、訪問看護の利用者宅での緊急事態に対応するための勤務形態「オンコール」。
オンコールの待機中は、医師や看護師は基本的には自宅などで過ごすことができますが、呼出の電話があればすぐに駆け付けなければならないため、十分に気が休まることがありません。
なかには、オンコールには対応する必要がない職場しか選ばないという人もいるため、オンコール対応可能な看護師を雇いたい訪問看護ステーションなどにとっては死活問題となりかねません。
そこで今回は、訪問看護を提供している事業所に、オンコールについて再確認してほしいことをピックアップしてお伝えしていきます。
オンコール対応の有無があるのはなぜ?
訪問看護ステーションでは、必ずしもオンコール対応しなければいけないということはありません。
しかし、訪問看護を利用するためには、主治医から訪問看護指示書を受けていることが条件で、要支援・要介護認定を受けている方や末期がん患者などもおり、いつ何があるかわからないことから、多くの訪問看護ステーションでは、利用者やその家族に安心して生活してもらえるよう、オンコールを導入しています。
ただし、電話がかかってきたらすぐに訪問する必要があるということではなく、利用者やその家族が不安なことがあって、電話で相談したいだけの場合もあります。その場合はもちろん、通話での対応で問題ありません。
法律ではどう定められている?オンコール待機の手当について
オンコールがあった場合に備えて待機していたとしても、必ずしも電話がかかってくるわけではありません。結果的に電話がかかってこなかった場合、「自宅などで過ごしていて、その間、看護業務は行っていない」ということになります。
しかしそれでも、いつ電話がかかってきても動けるように身構えていたのですから、看護師としては十分にリラックスして過ごせてはいないでしょう。
オンコール待機時間は労働時間に該当する?
厚生労働省が公表している「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」においては、「使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保証されていない状態で待機等している時間」は労働時間として取り扱わなければならないとされています。
しかし同時に、「(その状態において)労働者の行為が使用者から義務付けられ、またはこれを余儀なくされていた等の状況の有無等から、個別具体的に判断されるものである」とされていることから、待機状態に対して手当を支払うかどうかの判断は、各事業所に委ねられているといえます。
ただし、待機していた結果、呼出の連絡を受けて利用者宅などを訪問した場合は、当然ながら看護の仕事をしているわけですから、それに関しては“給与”を支払わないことは違法となります。しかし、出勤した場合も、“手当に”関しては支払われていないケースがあります。
たとえば時給で働いている看護師に対して、時給に手当てがつくことはなく、働いた時間分の給与しかもらえない場合があるということです。
参照:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
オンコール手当の実態は?
前述の通り、法律では、オンコールの待機に関して手当を支払う必要はないとされていますが、実際のところ、オンコールの待機に対しての手当はどの程度支払われているかというと、「2014年 訪問看護実態調査報告書」によると、訪問看護ステーションなどで働く訪問看護師の66.5%が、「オンコール手当がある」と回答しています。
【オンコール手当の有無】
ある | ない | 無回答・不明 |
66.5% | 13.3% | 20.2% |
また、「ある」と答えた訪問看護師のオンコール手当の平均額は、平日1回あたり1,709円です。
1,000円未満 | 1,000~1,500円未満 | 1,500~2,000円未満 | 2,000円~3,000円未満 | 3,000円以上 | 無回答・不明 | 平均手当額(平日) | |
フルタイム勤務正職員 | 11.6% | 29.1% | 14.3% | 22.4% | 13.3% | 9.1% | 1,718円 |
短時間勤務正職員 | ― | 28.0% | 12.0% | 24.0% | 16.0% | 20.0% | 1,920円 |
その他の職員 | 21.5% | 14.9% | 9.9% | 18.8% | 8.8% | 26.0% | 1,618円 |
無回答・不明 | 14.3% | 28.6% | 14.3% | 28.6% | ― | 14.3% | 1,333円 |
計 | 12.6% | 27.4% | 13.8% | 22.0% | 12.8% | 11.4% | 1,709円 |
オンコール待機の頻度と実際の訪問回数は?
続いては、オンコール待機の頻度です。
「2014年 訪問看護実態調査報告書」によると、ひと月あたりのオンコールの待機回数は、平均9.4回との結果が出ています。
1~4回 | 5~9回 | 10~14回 | 15回以上 | 無回答・不明 | 平均待機回数 | |
フルタイム勤務正職員 | 14.0% | 47.4% | 20.3% | 15.5% | 2.7% | 9.6回 |
短時間勤務正職員 | 40.0% | 40.0% | 10.0% | ― | 10.0% | 5.3回 |
その他の職員 | 37.2% | 39.8% | 12.4% | 7.1% | 3.5% | 6.7回 |
無回答・不明 | 10.0% | 40.0% | 30.0% | 20.0% | ― | 10.8回 |
計 | 16.0% | 46.7% | 19.7% | 14.7% | 2.8% | 9.4回 |
ただし、オンコール待機していて、結果的に利用者宅などを訪問することになることは多くはなく、平均1.6回という結果が出ています。
0回 | 1~2回 | 3回以上 | 無回答・不明 | 平均出勤回数 | |
フルタイム勤務正職員 | 32.5% | 41.4% | 23.4% | 2.7% | 1.7回 |
短時間勤務正職員 | 45.0% | 35.0% | 10.0% | 10.0% | 1.1回 |
その他の職員 | 48.7% | 37.2% | 10.6% | 3.5% | 0.9回 |
無回答・不明 | 40.0% | 50.0% | 10.0% | ― | 1.0回 |
計 | 33.9% | 41.0% | 22.2% | 2.8% | 1.6回 |
また、実際に利用者宅などを訪問したら、前述の通り、そのぶんの給与は支払われることになりますが、そのぶんの給与に対して手当てが加算されるかというと、加算されていない訪問看護師も多いようです。
【利用者宅などを訪問した場合のオンコール手当の有無】
ある | ない | 無回答・不明 |
62.5% | 13.4% | 24.1% |
看護師がオンコールをストレスに感じる理由は?
続いて、訪問看護師がオンコールをストレスに感じる理由をみていきましょう。
気が休まらない
第一がコレ。自宅で過ごし、結果的に利用者宅などを訪れなくていい場合も多いとしても、呼出があればすぐに駆け付けなければならないとなるとゆっくり休めませんし、人によっては眠りが浅くなってしまうでしょう。
手当が出ない場合がある、出ても安い
ここまでに解説してきた通り、オンコールで待機していても1円ももらえない場合も多く、また、手当が出ても安いため、「ほとんどお金をもらえないならオンコール対応なしの職場を選びたい」という思考回路になって当然といえるかもしれません。
お酒が飲めない
利用者宅などを訪問することになった場合、お酒が入った状態で行くわけにはいきません。運転はもちろんできなくなりますし、公共交通機関を使えるとしても、医療行為でミスしてしまう可能性があるため危険です。
そのため、呼出が入るかもしれない日は必然的に禁酒となります。仕事が終わった後は基本的に毎晩飲んでいるという人にとっては、かなりのストレス要素となります。
就寝中に起こされる可能性がある
オンコール待機中は24時間電話がかかってくる可能性があることから、就寝中に呼出があることをストレスに感じる看護師も多いです。
また、入浴時などに電話がかかってくる可能性もあるため、ゆっくり湯船に浸かることができず疲れが溜まると感じる人も多いようです。
利用者宅などを訪問した場合、翌日の出勤がきつい
利用者宅などを訪問したことで十分な睡眠時間を確保できなければ、翌日の日中の仕事は心身ともに負担が大きいでしょう。
オンコールに対する看護師のストレス改善対策は?
続いては、オンコールに対する看護師のストレス改善のためにできることをみていきます。
オンコール待機に対して手当をつける
まずはなんといってもコレ。結果的に利用者宅などを訪問することになったかどうかに関わらず、待機している時点で十分に心身を休めることはできないので、それに対する手当はつけてほしいと考える看護師が大半です。
利用者宅などを訪問した場合にも手当をつける
また、利用者宅などを訪問した場合、そのぶんの給与に対しても手当をつけたいところです。
オンコール待機翌日は出勤日にしないなど調整する
前述の通り、利用者宅などを訪問したことで十分な睡眠時間を確保できなければ、翌日、通常通り業務を行うことは肉体的にも精神的にもしんどいはずです。そのため、オンコール待機のタイミングなどを調整することが望ましいといえるでしょう。
看護師数を増やす
看護師の数が少ないと、必然的に、一人ひとりのオンコール待機にあたる頻度は高くなります。週に2度も3度もオンコール待機しなければならないとなると、お酒も飲めず、ストレス発散できないことから精神的に限界となる可能性もあるので、看護師数が少ない場合は、看護師数を増やすことが賢明です。
普段から看護師一人ひとりとの信頼関係を築くことを大事にする
看護師が職場に対してネガティブな気持ちを抱いていると、急に離職者が出たなどで、ひとまずの間でも頻度高めにオンコールに対応してもらわなければならなくなった場合など、快諾してもらうことができません。
そのため、日ごろから看護師一人ひとりと信頼関係を築くことに力を入れておくことが大切です。
オンコールの頻度や体制などは面接で求職者にきちんと伝えよう
オンコール対応は、必要としている利用者がいる以上、「なくす」という選択肢をとることは難しいものです。
看護師としても、誰かがやらなくては利用者が困ることはよくわかっています。そのなかで事業者にできることは、看護師に少しでも気持ちよく働いてもらうための対策を考えることです。
上記に列挙したことに加えて、面接時に休職者に対して、自社のオンコールに関して詳しく伝えることも大切です。
頻度や手当はもちろん、オンコール2人体制の導入の有無や、マニュアルの有無に関しても伝えて、求職者の不安を軽減してあげるようにしてくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年7月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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