医師の雰囲気で病棟の雰囲気も変わる

医療現場において絶対必要な医師。そんな重要な存在の医師の雰囲気が、病棟や現場の雰囲気を大きく左右することをご存じでしょうか。医師や看護師、日々忙しく働く中でこの事実に気づくことは非常に難しいと思います。今回は、私が実際に経験した、医師の雰囲気で病棟の雰囲気が変わったことについてご紹介します。

目次
  1. すぐに駆け付けてくれる医師
  2. 患者の振る舞いについて考えさせられる
  3. 肩の荷を降ろさせてくれた
  4. 温かい雰囲気の病棟
  5. こんな医師が病棟の雰囲気を良くする
  6. よくコミュニケーションを取る医師
  7. 弱みを見せてくれる医師
  8. 明るく前向きな医師
  9. まとめ

すぐに駆け付けてくれる医師

医療現場では、日々、イレギュラーなことがあります。私の受け持ち患者Aが、熱発して急変したこともありました。正直、Aに関しては退院日も決まっていてノーマークだったことからとても焦りました。さらに、その日は土曜日ということもあり、医師がすぐ来てくれないかもしれないという不安もありましたが、とにかく主治医Bに報告すると、すぐに来てくださることになりホッと胸をなでおろしました。

Bは到着するや否や冷静に私に指示を出し、Aにも優しい言葉かけをおこなっていました。熱発の原因は尿路感染。A自身は苦しそうな様子は無かったので、とりあえず週明けまで様子を見ることになりました。そのとき、Bから「Aさん年齢も年齢だから一応ご家族に連絡しといて」と指示があったので、指示通りにおこない。その日はなんとか業務を終えることができました。

患者の振る舞いについて考えさせられる

Aは90代と高齢ということもあり、合併症を引き起こす可能性、重症化するリスク等も考えられることから早めに家族に連絡して、週明けにはICをすることになりました。ICの際にAのご家族からも、「とても親身になってくださっていることを感じられたので安心しました」とのお言葉をいただきました。

数日後、Aの熱は下がったものの、尿路感染とわかった時点で点滴をおこない、食事もあまり摂れていなかったことから、Aの嚥下機能は明らかに低下していました。それまでは食事も自力で摂取できていましたが、よく誤嚥するようになり、何度も食形態など変更したりしてチャレンジしてみましたが一向に良くなる気配はなし。しまいには誤嚥性肺炎をよく起こすようになってしまい、そのことからも高熱が続く日々が増え、Aはどんどん衰弱していました。

尿路感染にしろ誤嚥性肺炎にしろ防ぎようのないことですし、年齢的なこともあり完治することが難しいという事実に対して、私自身も「もっとなにか防止策があったのではないか?」とも悶々とする日々が続いていました。

当事者であるAは、「また看護師さんたちに迷惑かけるようになって申し訳ないね」と自身が一番辛い立場であるにもかかわらず、看護師である私たちを気遣う言葉かけや気丈に振る舞う姿を見せてくださり、さらに「何か私にできることはないのか?」と考えるようになりました。

肩の荷を降ろさせてくれた

そのころ、Aは3食合わせて5割程しか食べなくなり、最終的に3食ともゼリーやプリン1つになってしまいました。ですが、Aはいつもと変わらず同室の患者と会話していましたし、私たちの前でも普段通りに接してくれていました。とはいえ、着実に痩せていき、ゼリーやプリンでさえ食べない日も増え、薬でさえも誤嚥してしまうようになっていました。

Aの家族からも、「Aのしたいようにさせてあげてください」と言われていたので、食事も薬も無理強いはせず、看護師みんな、Aに対して見守るだけの状態でした。私は、ただ見守り最低限のケアしかできないことに、悔しさと不甲斐なさを感じ、Bにその旨を相談することにしました。

私「私が勝手に感情移入しすぎているのはわかっているんです。でも、ただバイタル測定しておむつを変えることがAが一番してほしいこととは思えないんです。何もできない自分もですが、家族の意向とはいえ、他の看護師も何もしようとしないのもなんだか寂しいなって」

B「〇〇さん(私)のような看護師がいるとわかっただけで私はとても嬉しいです。長年看護師をやっていると、医師からの指示を聞くだけといった流れ作業になってしまう方が多い中、あなたのような看護師がいることで、患者さんも安心して入院でできていると思いますよ」

A「そんなことないです。以前のようにとは言いませんがAさんには元気に退院して欲しくて……」

B「あなたの思いは自然と行動に出て、Aさんやご家族にきっと伝わっていますよ。元気に退院することは何よりも私たちが一番願っていることです。ですが、それぞれ人生や生活があるように、退院する形もさまざまです。病院で最期を迎える方ももちろんいますよね。だからこそ私たちは、どんな形であれ、最期までその患者さんにきちんと寄り添うことが大事なんですよ」

私はBの言葉を聞いて、「元気に退院してほしい」ということばかり考えていたことから1人空回りしていたことに気づかされたと同時に、肩の荷がスッと降りたような気持ちになりました。

温かい雰囲気の病棟

Bに相談してから数日が経ち、私は新たな気持ちでAとも他の看護師とも向き合えるようになっていました。それまではAに関してネガティブな面しか目につかなかったのが、「今日は顔色が良い」「起きている時間が長い」など少しのポジティブな面にも目を向けられるようになっていました。

他の看護師に対しても、それまでは寂しさを感じていましたが、表面的なことしか見ていなかったと気づかされました。ある看護師は、Aが少しでも食欲がわくように、家族にAの好きな食べ物を持ってきていただけないかと相談していたり、少しでも離床できるようにと車椅子にのせて棟内を散歩していたりと、みんなできることが限られている中でも自分なりに考えてしっかりAに寄り添おうとしていたのです。

そんな周りの姿を見て、私はどれだけ自分の視野が狭くなっていたのか、独りよがりのケアをしていたかに気づかされました。その後、患者のことだけでなく、業務のことやスタッフ間のことなど、さまざまなことをBに相談するようになっていました。一般的には、医師にこのような個人的な相談をすることなどもってのほかですが、ときにはBの方から「最近どう?」「みんなちゃんと定時で帰れてるの?」など聞いて下さることもあってか、私はBが病棟にくるのをいつも楽しみにしていました。

ですが、楽しみにしていたのは私だけでは無かったのです。聞けば、他の看護師もさまざまな相談をBにしていたようで、患者のなかにも、「Bがいるからこの病院で手術することを決めた」という方もいました。年齢、性別、職種問わず慕われているBの周りはいつも明るく、みんな笑顔になっていることをそのときから感じるようになりました。

Bの前任者の医師が勤務していたときは、その医師が病棟に来るたびに看護師みんながびくびくして、何か相談するなどもってのほか。病棟の雰囲気は良いものではありませんでした。しかし、Bが来るようになってから病棟の空気は明るく、皆生き生きと働き、温かい空気になっていることに気づかされました。

こんな医師が病棟の雰囲気を良くする

医師の雰囲気と病棟の雰囲気に大きく関係してくるということがお分かりいただけたと思います。続いてここからは、病棟の雰囲気を良くする医師の特徴をいくつかご紹介したいと思います。

よくコミュニケーションを取る医師

コミュニケーションを取ることは信頼関係の構築に繋がります。

看護師や患者と話しているとよくわかることですが、

  • (医師に)初めて会った、話した
  • あの先生あんまり病棟に来ない

など、術後や退院前にしか病棟に来ない医師は非常に多いです。

医師側は、「患者に何かあれば看護師から連絡が来る」という風に思っているのかもしれませんが、患者側は小さなことでも医師に直接相談したいと思っている方も多いですし、時には看護師では判断できないような無理難題を患者から言われることもあります。そんなときは毎回、「先生に確認してみますね。それは先生の指示がないと私たちでは決められないんです」と答えるしかありません。しかし、患者に返事を待たせる時間が長くなればなるほど、不信感をもたれ、信頼関係を築くことさえ難しくなってしまいます。

不思議と、あまり病棟にこない医師の受け持ち患者より、よく病棟に来る医師の受け持ち患者の方が、病院側への要望等も少なく、すんなりと退院するケースが少なくありません。このことからも、日頃から病棟に顔を出し、何気ないことでも患者やスタッフとコミュニケーションを良くとっている医師は非常に好印象だとわかりますし、基本的に連絡が繋がりにくい医師のほうから出向いてもらうことで意見交換などもできるため、看護師としても非常に仕事がやりやすくなります。

なので、よくコミュニケーションをとる医師は信頼関係の構築にも繋がりますし、距離も近くなることから、医師特有の壁を感じることが減り、病棟の雰囲気も柔らかいものになってきます。

弱みを見せてくれる医師

医師はプライドが高いイメージですが、なかには弱みを見せてくれる医師もいます。私の出会った医師は、自分のミスで私たちに迷惑を掛けてしまったときなど、いつも何かしらお菓子などを持って病棟まで謝りにきて下さる方がいました。それだけでなく、受け持ったことのない病気の患者のときも、「僕これはじめてで勉強不足だったらごめんね」など正直に言ってくださり、「こんなに自分の弱みを見せられる人いるんだ」と驚いたことを覚えています。

このように、人としても自分の弱みを素直に周りに言える方は少ないように思います。医師という命を扱う立場になると尚更「弱みを見せてはいけない。頼られる存在でないといけない」という考えを自然と持つようになり、プライドも高くなりがち。そうするといつのまにか看護師や患者との壁ができてしまうのです。

こうしたことを繰り返さないためにも、弱みを見せることは有効。しかもそのことが、病棟の雰囲気作りにも大きく影響します。弱みを見せられることができる人は、性格的に正直で、素直に周囲に甘えたり頼ったりできるように思います。このようなことからも、弱みを見せられる人の周りには「助けよう」「支えよう」などの思いを持った人が集まってくるので、自然とみんなで「協力しよう」といった雰囲気になるのです。

これは、医師だけでなく看護師にも言えることですが、忙しくて人手が足りないからといった理由から、自分ひとりで抱えこむと、それが大きな事故に繋がったりします。そのようなことがないよう「手伝ってもらっていいですか?」など素直に声を掛けやすい雰囲気づくりをすることも重要です。

明るく前向きな医師

患者は、医師の表情や声のトーン、言葉の一つひとつにいたるまで、医師の言動をとてもよく見ています。医師が暗い顔でくると、何か悪い知らせがあるのではないかと思うし、あまりにもそっけない態度をされると、自分のことはどうでもいいのかと思いがち。このことからもわかるように、医師の雰囲気は、患者にとっても病棟にとっても非常に重要なものになのです。

暗くなりがちな医療現場ですが、トップである医師が明るく前向きな方であると自然と周りもついていくようになり、病棟の雰囲気も良いものになっていきます。時には明るく前向きな態度が失礼と感じられる場合もあるので注意が必要ですが、スタッフ間においては、明るければ明るいほど切磋琢磨の気持ちが芽生え、相乗効果にもなりますので、ぜひ医師のみなさんには実践していただきたいと思います。

まとめ

医師のみなさんの中には、医師の雰囲気が病棟の雰囲気に影響するなんて大げさだと思った方もいらっしゃると思います。ですが、みなさんが思っている以上に、看護師も患者も医師と話したい、もっとこうすれば病棟の雰囲気が良くなるのにと思っています。お忙しいのは重々承知ですが、ご紹介したポイントをいくつか意識的に取り組んでいただくことで、病棟の雰囲気が格段によくなりますのでぜひ実践していただきたいと思います。

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菊池

執筆 現役看護師 ライター | 菊池

医療に携わる仕事がしたいと思うようになり小学生にして医者を志すも、学んでいく中で最も患者さんに寄り添うことができる看護師を志すように。現在は宮城県にて看護師として働いている。


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