スタッフの仕事ぶりの良し悪しは、クリニックの評判に大きく関わります。そのため、クリニック側はスタッフの教育についてしっかり考えることが大切。では、どのような点に注意しながら教育をおこなっていけばいいのでしょうか? 早速みていきましょう。
スタッフ教育における4つのベース
1.経営理念の共有
スタッフを教育するうえでもっとも大切な土台となるのが、クリニックの経営理念の共有です。そのためにもまず、採用の時点で自院の経営理念をしっかりと説明することが不可欠。理念に納得してもらったうえで雇ったスタッフは、経営理念を遵守しながらともに成長していく大切なパートナーです。採用後には、スタッフが一丸となって同じ目標に向かって進めるよう、常にスタッフにも見える位置に経営理念を掲示しておくといいでしょう。
2.チームワーク
医療の質や安全性を高めるためには、チームワークが不可欠です。患者の情報を共有できていなければ思わぬ事故につながる可能性もありますし、仕事の効率も落ちてしまいます。スタッフ一人ひとりにチームワークの重要性を認識してもらうことで、教育の礎を築くことが大切です。
3.各自の役割認識
経営理念を理解して、チームで医療を実践する。このことにおいて一人ひとりが考えるべきは、「そのなかで自分には何ができるのか? 何をすべきか?」ということです。自らその答えを導き出せないには、「自分の役割を認識する重要性」を教えていくことも大事です。
4.知識のアップデート
2年に一度の診療報酬改定や、患者情報の共有、顧客からのニーズ、門前薬局や周辺クリニックとの情報交換など知識をアップデートするのに勉強会などを開催するのも有効です。適宜行うのも良いですが、毎週●曜日の診察後、診察前に30分程度行うなど定例会として設定するのもおすすめです。その際は、勤務扱いにするか、任意出席にするか事前にスタッフにアナウンスしておくと、トラブルなく、参加同意が得られやすいでしょう。
スタッフ教育を成功させるために用意したいもの
続いては、スタッフの教育のために、具体的にどんなことをおこなえばいいのかを説明していきます。
1.チームワーク力を高める仕組み作り、環境作り
チームワーク力を高めるためには、全員で課題を共有して、具体的な数値目標を立てるなどの工夫が不可欠です。たとえば、「診察の待ち時間を減らして患者満足度を高める」ことが課題なら、まずは現状の一人ひとりの待ち時間を記録するところからスタートして、その数字をどこまで短縮したいかの目標を掲げ、目標達成のために一人ひとりにできることを考えます。
同時に、全員が気持ちよく働けるような仕組み作り・環境作りにも注力することが大切。たとえば、「言った/言わない」で揉めることがないよう、重要な連絡事項は全員が見える場所にテキストとして残す決まりを設けたり、コミュニケーションを円滑にすべく月に一度はMTGの機会を設けたりと、できることはたくさんあります。
2.基本行動マニュアル
基本的な行動に関するマニュアルがあると、新人は仕事を覚えやすいですし、教育する側はスタッフの仕事ぶりを公平に判断できます。そのため、昇給の有無を検討する際などにも役立つでしょう。
マニュアルの作り方に決まりはありませんが、カテゴリごとのチェックリストを作成しておけば、達成度がわかりやすいです。たとえば受付事務のマニュアルであれば、以下のようなカテゴリやチェックリストが考えられるでしょう。
(カテゴリ)
(チェックリスト)
(カテゴリ)
(チェックリスト)
また、マニュアルは一度作ったらそれで終わりではなく、最低でも一年に一回はアップデートの必要がないか、わかりにくい点はないかなど見直しできるといいでしょう。
スタッフ教育の進め方は?
続いては、スタッフ教育の進め方について考えていきましょう。
まず、教育全般において言えることですが、一人ひとりの段階に合った教育をおこなうことがとても大切。医療業界に長く働いている人とそうでない人、働き始めたばかりのスタッフと1年以上働いてくれているスタッフへの教育は、当然ながら内容が異なります。
また、「ここまでできたら終わり」というゴールもありません。なぜなら、知識や技術は生涯磨き続けられるものですし、医療そのものも進歩し続けます。加えて、患者のニーズも不動ではないので、それに合わせて教育もアップデートしていく必要があるのです。
スタッフ教育のファーストステップとしては、院内の業務フローを伝えて、そのなかで各自が担当する業務を確認してもらいます。一日のスケジュールや担当業務だけでなく、月次、年次の業務も確認してもらえば、全体像をつかんでもらいやすいでしょう。
ちなみに、開業時であればファーストステップを遂行するのは基本的に院長自身となりますが、2年目以降などに新規スタッフを採用する場合は、先輩となるスタッフが指導を担当できるような態勢を整えていくことも大切です。
ファーストステップをクリアして一通り業務を任せられるようになってきたら、初心を忘れて仕事ぶりが疎かになることもあり得ます。そのため、定期的にテコ入れすることも大事です。たとえば、半年に一度面談を設けて、各自に振り返りをおこなってもらうことも有効。同時に、次の半年の目標を掲げてもらうことで、スキル向上も見込みやすくなります。
この振り返りは、半年に一度の面談時におこなうのみでは「どのくらいできているのか?」の評価が曖昧なうえ、スキルアップの効果が半減するので、「評価シート作成」→「月ごとに振り返り」の手順でおこなうとなおいいでしょう。
「褒めて伸ばす」など教育の基本も意識したい
スタッフ教育で思うように成果が出ない場合、スタッフのモチベーションに問題があることもあります。「叱られてばかりでイヤになった」「うまくできても誰にも褒められないからがんばろうと思えない」というパターンは意外と多いもの。スタッフの成長が認められた場合などに一声かけてあげるだけでも、「ちゃんとわたしのことを見てくれているんだ!」といううれしさからやる気を出してくれるものなので、普段のコミュニケーションから意識して変えていけるといいですね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2022年5月時点の情報を元に作成しています。