汎用性が高く、運用しやすいカルテが求められています
先生がこれまで見てこられた、電子カルテの変遷を教えてください
今では医療機関に電子カルテが導入されているのが当たり前の時代になっていますが、その歴史はまだ20年程度です。20年くらい前に、病院全体 の診療や会計業務の効率化を行う、オーダリングシステムが導入されました。それが基盤になり、カルテの電子化が広まりました。私が勤務医から開業医になったのは18年前ですが、丁度その頃は電子カルテの黎明期だったと思います。当院が開院した当初はまだ電子カルテの完成度が低く、導入費用も今よりずっと高かったので、紙カルテで診療していました。その頃すでにレセコンの使用は当たり前になっており、受付の事務員が紙カルテの内容をレセコンに打ち込んでいました。2009年に電子カルテを導入しましたが、検査や処方内容を入力するとレセコンに直接反映され、領収書 と明細書が出てきます。電子カルテはあくまで紙カルテの代わりで、電子データで診療内容がやりとりされるように なったというものです。
私の息子は2013年に医師になりましたが、勤務し始めた病院ではすでに電子カルテが導入 されていました。この世代の医師にとっては電子カルテが当たり前になっていて、電子カルテがない状態での業務は信じられないと言っています。ですから、今では新規に開業される先生のほとんどが電子カルテを導入されますし、当クリニックが入居している医療モール(院長の平均年齢約60歳)でも、13診療所の半分くらいで電子カルテが導入されていますので、普及が進んでいるという状況でしょうか。
電子カルテを取り巻く環境について教えてください
現在日本の電子カルテは、機種決定・購入・使用の全てを院長が決めて自分で購入していますが、例えば台湾では、国が電子カルテへの交換システムに補助金を出すなどし、国を挙げてカルテの電子化に取り組んでいます。その結果、今では全ての医療機関で電子カルテが使用されているそうです。これにより国がビッグデータの収集を行い、診療情報の共有や市場調査も進んでいます。アメリカでもそういうところはありますよね。
日本における大病院の電子カルテは結構寡占状態ではないでしょうか。500床規模の病院になると、リニューアルやデータ出力だけで数年で数十億もの費用がかかります。それに比べると、クリニックの電子カルテのマーケットはまだ小さいですが、 徐々に完成度の高い電子カルテが出てきていると思います。
先生が電子カルテで重要視されていることを教えてください
本来電子カルテは汎用性がなければならないはずです。ですから、電子カルテはデータの書き出しが容易であることが何よりも重要だと考えています。過去に電子カルテに入れたデータを、医療施設をまたいで使えないと意味がないんです。従って、多数の患者のデータを汎用データとして短時間に書き出す機能が最も重要になります。電子カルテはパソコンですから、ハードはもちろん、OSもバージョンアップは避けられません。電子カルテの入れ替えの際、データを書き出すだけなのにお金を取るようなメーカーもありますが、その財源は医療費から支出されていることを忘れないでほしいと思います。
もう一度言います。
「電子カルテで一番重要なのは、データの書き出し能力です。」
その他の重要な点は運用のしやすさでしょうか。
クリニックの受付事務員は、まだまだ医事会計の能力、保険診療の知識が要求されます。もし仮に慣れていない人が受付業務を行うとなると、電子カルテ側からレセコンの出力まで医師が全てやらなくてはなりませんが、そんな時間を取ることができる医師はほとんどいません。
理想としては医師は医療の部分だけ入力して、あとは受付で確認・補足・会計計算をして、患者の診療が終わるという流れです。となると電子カルテやレセコンの出来不出来が重要になります。
CLIUSの良いと思ったところを教えてください
以前の電子カルテから現在の電子カルテにデータを移すのに、かなりの時間を要した経験があるので、ORCAの過去データからDOできる機能が良いと思います。 この機能はバイタルの記録にも使えますので、検診がある施設だと便利だと思います。
添付関係でいえば、シェーマが使いやすいです。画像をカルテにドラッグアンドドロップで添付できるのも便利で、スキャナーと組み合わせると非常に使いやすいと思います。
あとは一番面倒だと感じている診療情報提供書の作成で、処方した薬の飲み方まで取り込めるのも便利だと思っています。
その他の操作面では、処方の際に同じ用法の薬剤がひとつのレシピの中に複数入力できることや、この際の薬剤に対する病名のサジェスト機能も便利ですね。でも病名が多いと探すのは大変そうかな。
CLIUSはデータの出力は、標準でできる仕組みになっているのが良いと思います。そこからも解るように、CLIUSは現場で使いやすいようによく考えられていますので、医療者側に立った良心的な姿勢に共感しています。