今の仕事がより楽しく、
ラクになる電子カルテが理想です

CLIUS技術顧問・大橋産科婦人科院長
大橋克洋 医師
大橋産科婦人科院長

(公益社団法人)東京都医師会で医療情報担当の理事や、(公益社団法人)日本医師会で医療IT検討委員会委員長を務めるなど、医療ICT化や電子カルテの普及に尽力。



1985年には診療録の電子化を目指し、「WINEプロジェクト」を開始。後に電子カルテ「NOA」を開発。

2008年には同アプリをオープンソースとしてウェブ上で公開する取り組みを始め、医療業界の中で注目を集めてきた。

2019年より、株式会社Donutsの提供する、クラウド型電子カルテ『CLIUS(クリアス )』の技術顧問に就任。

電子カルテの歴史とともに歩んできました

大橋先生が85年から始めて電子カルテのプロジェクトや、当時の医療業界でのICT化の状況を教えてください

私がパソコンを始めた80年前後は、医療業界で「コンピュータ」というと、大病院が医事会計システムにメインフレームなどを導入していた程度でした。医師が現場で使えるシステムは検査のオーダー程度しかありませんでした。

そこで私は最初に、看護師の給与計算や財務会計の簡単なアプリケーションを作りました。産婦人科だったこともあり、85年頃には、最後の生理日をもとにお産までの日数等を計算する診察用のアプリを自作・運用しました。

しかし、当時のコンピュータは文字情報しか扱えなかったので、シェーマはありません。93年頃からSteve Jobsの開発したNeXTコンピュータの登場により、コンピュータ上で画像なども扱えるようになり、本来の意味としての「電子カルテ」になっていきました。
また、当時「開業医が電子カルテを作った」ことには大きなインパクトがあったようです。厚生省(当時)の責任者やメーカーの担当者が見学に来たり、新聞社が取材に来たりすることがありました。

その頃私は、電子カルテの普及に関して「初期の電子カルテは大病院でなく、開業医から始まり、ある程度形ができたところで大病院へ移っていくだろうな」と感じていました。大病院は設備投資にお金がかかり、小回りも利きません。当時はまだ電子カルテが「得体の知れないもの」とされていたので、簡単には導入されないと考えていました。

案の定、最初は診療所の開業医がさまざまな電子カルテを使い始めました。
その流れを受けて、後に富士通やIBMといった大手メーカーが病院用の電子カルテを作り始めることで業界として大きくなっていきました。

1999年、厚生省(当時)発表の「診療録等の電子媒体による保存について」により、公的に電子カルテが認められました。電子カルテの普及に伴い、医師にはどのようなメリットがありましたか?

参考:診療録等の電子媒体による保存について



簡単に患者さんの情報を検索して探せるようになりました。
また、カルテの内容が整理されることで、さまざまなデータを結びつけながら診察出来るようになったところがメリットです。特に定型的な作業がぐっと能率化されたことは大きいです。


私は電子カルテを開発する上で、次のような三原則を掲げています。

・「紙のカルテで出来たことはすべて出来なければならない」
・「紙のカルテより使いにくくてはならない」
・「紙のカルテに出来ないことが出来なくてはならない」

一番目から二番目までは電子カルテ発展の流れを示唆するものですが、これだけでは単に紙のカルテと同じになっただけ。三番目の実現により初めて電子カルテのメリットが生きてきます。

これらの原則をもとに開発して、整理された情報をすぐに見ながら診察できるようになったと思います。

「紙のカルテより電子カルテのほうが入力に時間がかかる」というケースもあるようですが、原因はなぜですか?

導入直後は慣れるまで多少時間がかかります。ただ、約1ヶ月程度経てば医師やスタッフもうまく扱えるようになっているはずです。もしそれ以降になっても電子カルテを使うことで仕事の能率が落ちてしまうなら、電子カルテの出来が悪いということです。

カルテを電子化することで、今の仕事がより楽しく、ラクにならないといけません。電子カルテ導入で作業の煩わしさが増えたら本末転倒ですよね。


そもそも私が電子カルテを作った目的のひとつは、「賢くて手際の良い医療秘書が欲しい」ということでした。もちろん資金が潤沢であれば医療秘書を雇えばいいんですが、お金がなかったので補助的な部分は全部コンピュータにやってもらおう、そのためには自分で作ってしまおうと考えたのです。最初の電子カルテ開発プロジェクトを「WINEプロジェクト」と命名したのは、WISE and NEAT すなわち「賢くて手際の良い(医療秘書)」という意味でした。


今後、電子カルテの普及率は8〜9割に届くでしょう。今の大学病院はほぼ電子カルテを使っているので、勤務医が開業する際に紙だけでカルテを書こうとは、あまり思わないはずです。
これからは、電子カルテがないと診療が出来なくなってしまう医者も増えるでしょう。
私自身、今は電子カルテがないと仕事ができない状態です(笑)。ワープロがないと漢字が書けない人が多いように。

CLIUSの印象、今後期待することを教えてください



CLIUSは、今まで見てきた中でも非常にスマートな電子カルテだと思います。2018年にリリースされたものなので、使い勝手の向上やメンテナンス性などを精査して、より熟成したものにしたいです。

機能開発の優先度などは日々のMTGで話し合っておりますが、スタッフ同士のコミュニケーションは密で、雰囲気がいいと思います。
開発スピードなどの技術的な面はレベルが高いですが、開発における人員の使い方などは、改善の余地があるように思えます。

私自身は30年間、診療現場で毎日電子カルテを使い、同時に日々改良を加え開発してきた経験があります。
開発したカルテをオープンソースとして一般開放し、ユーザーのニーズなどに対応してきた経験や知識をCLIUS に反映させ、医療現場に「快適でより良い作業環境」を提供できればと思います。
実際にCLIUSに触れてみる

他の記事を見る

  • 日本大学病院 循環器病センター / 湖北台診療所 和久井 真司 医師
    日本大学病院 循環器病センター / 湖北台診療所

    和久井 真司 医師

    • 心臓血管外科

    CLIUSはクラウド型であることを感じさせない動作の速さが良いと思います。

    もっと見る
  • 津山中央病院 宮島 孝直 医師
    津山中央病院

    宮島 孝直 医師

    • 外科

    監修医として本質的に使いやすい理想のカルテを作り上げるために、一緒に取り組んでいます。

    もっと見る

かんたん登録でCLIUS(クリアス)をお試し