紙カルテの電子化の際に守るべきガイドラインとは?

たまった紙カルテをなんとか電子化したいと考える医師・クリニック院長は多いでしょう。カルテをパソコン上で閲覧できるようになれば、紙カルテのようにかさばらず、保管場所もいりません。紙カルテを電子化するには、一つ一つスキャナーにかけてスキャンするしかないのですが、その際には『厚生労働省』の定めたガイドラインに沿って行わなければなりません。このガイドラインについてご紹介します。

目次
  1. 厚生労働省のガイドラインとは?
    1. スキャンの精度は300dpi、RGB各8ビット以上
    2. 汎用性が高いフォーマットはPDF
    3. スキャンの終わった紙カルテは廃棄しても構わない
    4. 改ざんを防止するため情報を作成、または入手してから1日以内にスキャンを行わなければならない
  2. まとめ

厚生労働省のガイドラインとは?

「厚生労働省」は医療のICT化を進めようといろいろな施策を行っており、それに合わせてガイドラインの公表、改定も進めています。医療に関わるICT機器の安全性について示した「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」も「第5版」まできました。

このガイドラインの中に「9 診療録等をスキャナ等により電子化して保存する場合について」という章があります。紙カルテをスキャンする際にはこの内容に沿っていなければなりません。以下が、具体的な「最低限のガイドライン」として提示されています。

C.最低限のガイドライン

1.医療に関する業務等に支障が生じることのないよう、スキャンによる情報量の低下を防ぎ、保存義務を満たす情報として必要な情報量を確保するため、光学解像度、センサ等の一定の規格・基準を満たすスキャナを用いること。

またスキャン等を行う前に対象書類に他の書類が重なって貼り付けられていたり、スキャナ等が電子化可能な範囲外に情報が存在したりすることで、スキャンによる電子化で情報が欠落することがないことを確認すること。

○診療情報提供書等の紙媒体の場合、診療等の用途に差し支えない精度でスキャンを行うこと。

○ 放射線フィルム等の高精細な情報に関しては日本医学放射線学会電子情報委員会が「デジタル画像の取り扱いに関するガイドライン3.0版(平成27年4月)」を公表しており、参考にされたい。

○このほか心電図等の波形情報やポラロイド撮影した情報等、様々な対象が考えられるが、医療に関する業務等に差し支えない精度が必要であり、その点に十分配慮すること。

○一般の書類をスキャンした画像情報は、汎用性が高く可視化するソフトウェアに困らない形式で保存すること。また非可逆的な圧縮は画像の精度を低下させるために、非可逆圧縮を行う場合は医療に関する業務等に支障がない精度であること、及びスキャンの対象となった紙等の破損や汚れ等の状況も判定可能な範囲であることを念頭に行う必要がある。放射線フィルム等の医用画像をスキャンした情報はDICOM等の適切な形式で保存すること。

2.改ざんを防止するため、医療機関等の管理責任者は以下の措置を講じること。

○スキャナによる読み取りに係る運用管理規程を定めること。

○スキャナにより読み取った電子情報と元の文書等から得られる情報と同等であることを担保する情報作成管理者を配置すること。

○スキャナで読み取った際は、作業責任者(実施者又は管理者)が電子署名法に適合した電子署名・タイムスタンプ等を遅滞なく行い、責任を明確にすること。なお、電子署名については「6.12 法令で定められた記名・押印を電子署名で行うことについて」を参照すること。

3.情報作成管理者は、上記運用管理規程に基づき、スキャナによる読み取り作業が、適正な手続で確実に実施される措置を講じること。

長々と書いていますが、要は以下のように命じています。

  • 実務に堪えるように「高解像度のデータ」としてスキャンしなさい
  • 紙カルテに添付されたフィルムなども全部スキャンしなさい
  • スキャンした画像は誰でも簡単に見られるフォーマットで保存しなさい
  • 改ざん防止のためにスキャン作業に関わる責任者を明確にしなさい
  • スキャンしたデータにはその責任者が電子署名を行いなさい
  • スキャンした日時のタイムスタンプなどのデータも記録しなさい

これだけ読んでも「高解像度のデータって具体的にどんなもの?」と疑問が湧くはずです。このような疑問については、「「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版」に関するQ&A」という別の文書に回答が掲載されています。

読むのが面倒でしょうから回答だけ以下に挙げます。

スキャンの精度は300dpi、RGB各8ビット以上

第3版まではこのように回答されていたのですが、現在市販されているスキャナーはこれを満たしているのが普通なので特に気にする必要はありません。しかし、スキャンした画像内の小さな文字がつぶれて読めない、などがないよう注意しなければなりません。

汎用性が高いフォーマットはPDF

「誰でも簡単に見られるフォーマット」で、特に指定はありませんが「厚生労働省」が例に挙げているのはアドビの「PDF」です。ですのでPDF形式で保存するのが無難です。

スキャンの終わった紙カルテは廃棄しても構わない

上記の「最低限のガイドライン」の中には書かれていませんが、「「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版」に関するQ&A」では、スキャンして保存した電子データの方を診療録として法定期間内(診療が終わってから5年間)保存するのであれば、紙カルテは廃棄しても構わないと述べています。ただし、廃棄作業を行う際は個人情報保護の観点から十分に注意して行わなければなりません。

改ざんを防止するため情報を作成、または入手してから1日以内にスキャンを行わなければならない

(ただし深夜に来院し、次の日が休診である場合等は営業日として1日以内)

まとめ

紙カルテをスキャンして電子データ化する場合には、今回ご紹介したガイドラインに沿った形で行わなければなりません。紙カルテの電子化を考えている医師・クリニック院長はご注意ください。「厚生労働省」の原文を知りたい方は、本記事末のURLを参照してください。

参照・引用元:「厚生労働省」「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5版」

参照・引用元:「厚生労働省」「「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版」に関するQ&A」(以下同)

Mac・Windows・iPadで自由に操作、マニュア ルいらずで最短クリック数で診療効率アップ

特徴

1.使いやすさを追求したUI・UX ・ゲーム事業で培って来た視認性・操作性を追求したシンプルな画面設計 ・必要な情報のみ瞬時に呼び出すことが出来るため、診療中のストレスを軽減 2.診療中の工数削減 ・AIによる自動学習機能、セット作成機能、クイック登録機能等 ・カルテ入力時間の大幅削減による患者様と向き合う時間を増加 3.予約機能・グループ医院管理機能による経営サポート ・電子カルテ内の予約システムとの連動、グループ医院管理機能を活用することにより経営サポート実現 ・さらにオンライン診療の搭載による効率的・効果的な診療体制実現

対象規模

無床クリニック向け 在宅向け

オプション機能

オンライン診療 予約システム モバイル端末 タブレット対応 WEB予約

提供形態

サービス クラウド SaaS 分離型

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、

クリニック開業ナビ

執筆 コラム配信 | クリニック開業ナビ

「クリニック開業ナビ」では、クリニック開業時、業者選びに役立つ情報や、資金調達、物件選定や集患対策といった多岐にわたる開業プロセスをコラム記事として提供いたします。


他の関連記事はこちら