クリニックを経営するためにはお金も必要です。開業医は経営者でもあるため、クリニックの利益のことも考えないといけません。お金にまつわる知識はあるに越したことはないでしょう。では、内科、外科、小児科など、細かく分かれている診療科目のうち、最も利益率の高い科目は何かご存じでしょうか?
診療科目別年間の収支
令和元年(2019年)に発表された、厚生労働省の「第22回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」に、「個人一般診療所別収益と費用と粗利比較」というデータがあります。これはクリニックの科目別の収益や利益をまとめたものです。
診療科目別の1カ月当たりの粗利が高い順に以下のようになっています。
診療科目 | 平均月間粗利 | 平均月間収益 | 平均月間費用 |
整形外科 | 約262万円 | 約813万円 | 約551万円 |
小児科 | 約250万円 | 約789万円 | 約539万円 |
皮膚科 | 約226万円 | 約493万円 | 約267万円 |
精神科 | 約214万円 | 約652万円 | 約438万円 |
内科 | 約197万円 | 約637万円 | 約440万円 |
外科 | 約170万円 | 約822万円 | 約652万円 |
耳鼻咽喉科 | 約159万円 | 約554万円 | 約395万円 |
眼科 | 約132万円 | 約451万円 | 約319万円 |
産婦人科 | 約132万円 | 約522万円 | 約390万円 |
※個人の入院診療なしの診療所で見た場合
1カ月当たりの粗利が最も高いのは約262万円の整形外科です。続いて小児科、皮膚科という順になっています。反対に低いのは産婦人科や眼科で、1位の整形外科とは約2倍もの差があります。
単純な収益で見ると、外科が約822万円でトップですが、費用も約652万円と高額なためそこまで粗利は高くありません。一方、費用の面で見てみると、皮膚科は約267万円で最少。収益は約493万円で下から2番目ですが、費用の少なさから高い粗利になっているようです。
では、年間で見た場合はどうなるのでしょうか? 「個人一般診療所別収益と費用と粗利比較」には2年間の平均粗利が掲載されていますので、ご紹介します。
診療科目 | 平均年間粗利 | 平均年間収益 | 平均年間費用 |
整形外科 | 3,160万円 | 9,766万7,500円 | 6,606万8,000円 |
小児科 | 3,007万4,000円 | 9,471万5,000円 | 6,464万2,000円 |
皮膚科 | 2,722万8,000円 | 5,921万3,500円 | 3,198万6,000円 |
精神科 | 2,573万5,000円 | 7,825万円 | 5,251万6,000円 |
内科 | 2,379万6,500円 | 7,654万6,500円 | 5,275万円 |
外科 | 2,049万2,000円 | 9,875万1,500円 | 7,826万円 |
耳鼻咽喉科 | 1,909万3,000円 | 6,652万3,500円 | 4,743万1,000円 |
眼科 | 1,599万4,000円 | 5,422万7,000円 | 3,823万4,000円 |
産婦人科 | 1,587万8,000円 | 6,271万円 | 4,683万2,000円 |
1カ月あたりの粗利が高い順と同じ並びになりましたが、粗利が最も低かった眼科や産婦人科も年間に約1,600万円の粗利。整形外科となると年間3,160万円とかなりの高額です。医療は大きな責任が生じる過酷な仕事ではありますが、それに見合う収益が得られる仕事だといえるのではないでしょうか。もちろん、クリニック経営が順調なら……ではありますが。
診療科目別で見た場合に最も多いのは何科?
診療科目ごとに見た場合、何科の医療機関が最も多いのでしょうか? 厚生労働省の「医療施設調査」によると、令和元年(2019年)10月時点で「活動中の医療施設」は17万9,416件。このうち、先ほどの9つの診療科目ごとの施設数は以下のようになります。
診療科目 | 施設数 |
内科 | 6,705件 |
整形外科 | 4,897件 |
外科 | 4,500件 |
皮膚科 | 3,039件 |
小児科 | 2,539件 |
眼科 | 2,388件 |
精神科 | 1,760件 |
産婦人科 | 1,104件 |
耳鼻咽喉科 | 1,957件 |
ポピュラーな内科が最も多くなりました。また、月間・年間の粗利がトップだった整形外科も4,897件で2番目に多い数字。次は外科で4,500件となっています。先ほどの粗利を踏まえて見てみると、粗利が高かった小児科や皮膚科は、内科や外科と比べて施設数が少ないのが特徴。利益のわりに競合が少ないこともあり、粗利も比較的高くなっているのかもしれません。
「利益率の高い診療科目」をご紹介しました。利益率が高いといっても、今から診療科目を変更することはできませんが、どのくらいなのかを知ることが重要。例えば、同じ診療科目で、平均よりも低ければ、それ以上になるためのモチベーションになりますし、平均を超えていれば、「さらに高みを目指そう」という気持ちになるでしょう。「医療経済実態調査」ではほかにもさまざまな報告がまとめられているので、ぜひご覧ください。
データ引用元:厚生労働省「第22回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」
データ引用元:厚生労働省「医療施設調査」
特徴
対応業務
その他特徴
診療科目
特徴
対応業務
診療科目
この記事は、2021年2月時点の情報を元に作成しています。