診察室に用いるデスクは、一般事務用のものを使っているという医師も少なくありません。しかし、やはり診察用に特化したデスクは、診察がスムーズに行えるような工夫が用いられているため、使い勝手もよく、診察のクオリティーアップに貢献します。では、診察用デスクに備わった機能・特徴とはどのようなものでしょうか? 診察用デスクを手掛けるコクヨ株式会社ファニチャー事業本部TCMマーケティング部の坂井伸孝さんに伺いました。
特徴の異なる3タイプの天板
――御社で取り扱っている診察用デスクで、特に人気のシリーズを教えてください。
坂井さん 弊社の主力製品が「インフォントi(アイ)」というシリーズです。
――「インフォントi」の特徴は何でしょうか?
坂井さん 弊社の診察用デスクは、特に医師、看護師、患者さんの動線をできるだけ最小限にすることを意識して開発しています。例えば、医師が患者さんを診察する際、症状を説明する際に、余計な動きが必要になると説明も満足に行えません。インフォームド・コンセントが難しくなるのです。そのため、特徴の異なる3タイプの天板を用意しました。
――3タイプそれぞれについて解説をお願いします。
坂井さん まずは一般的なストレートタイプです。こちらは患者さんに触れて診察しやすいため、「接触診察型」と呼んでいます。外科や整形外科など、医師が触診を行う科目にお勧めです。
坂井さん 次に患者さん側が丸く広がっているラウンドタイプです。PCの画面と医師、患者さんの位置が三角形になるような配置となっており、症状の説明など対話がしやすいのが特徴です。ラウンドの部分に資料を置いて話をするなど、使い勝手がよく、「インフォントi」の主力となっている形状です。
――インフォームド・コンセントに適しているということですね。
坂井さん そうですね。ストレートタイプよりも患者さんと対話しやすい形状といえます。さらに対話を重視したタイプとして天板がL型なったものもあります。
坂井さん こちらは患者さんと「対面」して会話しやすいのが特徴です。例えば、心療内科・精神科といった、患者さんとの接触がなく、対話を重視する科目、また患者さんと物理的距離を取る必要があるケースなどに適した形状になっています。
――診療科目や診察の方法によって、適した形状が選べるのですね。
坂井さん 「ラウンド」と「ストレート」の天板は、奥行を2サイズから選べます。例えば、ストレートの場合は700mmと600mmの2つがあります。奥行600mmにすると作業スペースが少なくなってしまうものの、天板が小さな分、スペースが確保できます。
――診察室のサイズに応じて選べるのはいいですね。
坂井さん インフォントiの特徴には、配線のしやすさもあります。電子カルテが導入されると設置する機器が増え、配線が煩雑になり取り回しに苦労されることと思います。インフォントiは着脱しやすく、コード取り出しの向きを選べる配線カバーやケーブル類を整理するためのフック類も備えているのでお勧めです。
特殊なオーダーにも対応
――その他の特徴を教えて下さい。
坂井さん デスクのサイド(患者さん側)に、荷物置きをオプションで設けることが可能です。患者さんに荷物を置いてもらう場合、体を動かさずにすぐに置ける位置に棚やかごを用意できればいいのですが、スペースの問題で難しいというクリニックも見られます。その場合は患者さんがいちいち立ち上ったり、動いたりする手間がかかります。デスクに設置することで、動きを最小限に抑えられます。
――これも省スペースという意味で重宝しそうです。
坂井さん 荷物置きに関しては、お客様から「杖を置けるようにしてほしい」という要望もあり、杖用のホルダーを別注で設けることも可能です。また、サイド収納を医療クラークが横で作業できるような特殊な形状にしてほしいといったオーダーもありました。
――そうしたオーダーにも対応してもらえるのですね。
坂井さん 「こうしてほしい」というものがあれば、注文時にご相談いただきたいと思います。全てのご要望を満たすことはできないかもしれませんが、お客様のご要望に柔軟に対応できるのも、コクヨの強みです。
――その他のオプションについて教えて下さい。
坂井さん 他には、PCモニターなどを設置するハンギングフレームは、シングル、ダブルの2種類のサイズがあり、パネルを装着するかどうかを選べます。
坂井さん 荷物置きと同じくオプションですが、PCを天板下に収納できるPCハンガーや、X線写真などを見るシャウカステンホルダーも用意しています。邪魔になりやすいPCケーブルも内部に収納できるようになっています。
コスト面や用途、スペースを踏まえて適した製品を選ぼう
――価格を教えてください。
坂井さん 本体の価格は消費税抜きのメーカー希望小売価格で10万~15万円前後。ここにハンギングフレームなどをセットにした場合はだいたい20~25万円前後になります。実際には販売会社さんに見積依頼をしていただければと思います。
――導入したい場合は、コクヨさんにお願いすればいいのでしょうか?
坂井さん 全国の販売会社さんにご連絡いただく形になります。そこから、どんな形状がいいのか、オプションはどうするのかといった相談を進めていただきます。もちろん、コクヨのお客様相談窓口に問い合わせいただきましたら、販売窓口をご案内しますので、気軽にご連絡ください。
――実物を見たいという場合はどうすればいいですか?
坂井さん その場合は、ショールームにお越しいただけたらご案内いたします。
――今回は診察用デスクについて伺いましたが、一般事務用のデスクを使う医師も多いのでしょうか?
坂井さん そうですね。コスト面などを考え、一般的な事務用デスクを要望されるケースもあります。その場合は、「インフォントi」のベースになっている「iS」シリーズという、スタンダードなタイプのデスクをご提案しています。こちらはサイズのバリエーションが豊富で、スぺースが限られているクリニックでは重宝されています。場所や用途によって選んでいただくといいですね。
診察用デスクの特徴について、コクヨ株式会社にお話を伺いました。コストやスペースの面を考慮して、一般事務用を用いるケースも多いそうですが、診察内容や科目に適した天板を選べ、医師だけでなく患者さんのことも考慮した工夫は、専用品ならではの魅力です。より良い医療を提供するためにも、診察用デスクの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
取材協力:コクヨ株式会社
特徴
建築内容
依頼内容
職種
診療科目
特徴
職種
建築内容
依頼内容
診療科目
この記事は、2021年7月時点の情報を元に作成しています。