カンファレンスって必要?

本記事をご覧になっている皆さんの職場では、どのくらいの頻度でカンファレンスが開かれていますか?

医療現場に限らず、情報の交換や共有を目的として開かれるカンファレンスですが、果たして必要でしょうか?

  • みんなで患者の情報を共有することは非常に重要
  • 違った視点でさまざまな意見交換ができる
  • 日々密に情報交換をしていればわざわざカンファレンスを開く必要はない
  • 人手不足により業務的にも手一杯なためカンファレンスの時間確保が難しい

このように実際の現場ではカンファレンスに対して必要・不必要両方に対しての意見があります。

ここではその双方の意見について詳しくご紹介して、最終的にカンファレンスは必要なのか考察していきたいと思います。

目次
  1. カンファレンスとは
    1. カンファレンスのメリット
    2. 心優しい患者・Aさんに関しての出来事
    3. ある日、Aさんにトラブルが……
    4. 原因はAさんの気遣いだった
    5. 普段あまり交流のない職種の方の意見が聞ける
    6. カンファレンスのデメリット
    7. 医師が来れなければ詳細な意見交換はできない
    8. 更に人手不足に
  2. どのようなカンファレンスが必要?
    1. 緊急性のある場合
    2. 看護師だけではどうにもならない場合
  3. まとめ

カンファレンスとは

私が働いていた病院では、毎週決まった曜日に病棟内でカンファレンスが開かれていました。

参加者は医師、看護師、薬剤師、PT、OT、MSW等で、内容としては患者の日頃の様子や変化、退院に向けてについてなど多岐に渡り、1時間程おこなわれていました。

カンファレンスのメリット

カンファレンスの最大のメリットは、上記で紹介したようなさまざまな職種同士で意見交換することができること。自分では知り得なかった、専門分野ならではの視点を知ることができます。

実際に私がカンファレンスに参加した際に、「カンファレンスって必要だな」と感じた出来事をいくつかご紹介したいと思います。

心優しい患者・Aさんに関しての出来事

・Aさん(足首の骨折、装具着用、夜間は装具外す、歩行見守り)

Aさんは日頃から思いやりのある方で、私たち看護師だけでなく同部屋の患者にも気遣い、自宅にいるご主人のためにも早く退院して帰らないといけないといつも話していました。

そのような思いもあってか、Aさんは足に痛みを感じながらも熱心にリハビリに取り組み、一刻も早く退院できるよう日々励まれていました。

歩行時は装具を着用する必要がありましたが、四六時中付けていると傷口が蒸れたり足自体が浮腫んだりとトラブルを起こしかねないので、夜間寝ているときは、装具は外すことになっていました。

そのことはAさんも了承済みでした。

ある日、Aさんにトラブルが……

Aさんは歩行できるものの痛みがまだあるため、時折ふらつくことがあり、そのためトイレに行く際もコールで看護師を呼んでいただき、見守りというかたちで対応していました。

ある日の朝、申送りでAさんの足の傷口が膿んでしまっていること、装具着用側の足が痛みで歩けない程浮腫んでいるとの報告がありました。

Aさんは、毎日午前と午後の2回のリハビリと、自分でもベッド上で軽い運動をするなど、早く退院したい一心で一生懸命だったので残念に感じましたが、、なぜこのようなことになってしまったのかと疑問にも思いました。。

案の定、予定していた退院日は白紙になってしまい、Aさんにその旨を伝えたところ「仕方ないね。また迷惑かけるね」と落ち込むどころか申し訳なさそうにしていました。

私はAさんに早く退院してもらい一心で、そうなってしまった原因を探すことにしました。

原因はAさんの気遣いだった

この出来事があった次の日、病棟カンファレンスがありました。

Aさんの件ももちろん議題に上がり、なぜAさんの状態が悪化してしまったのかようやく原因を知ることができたのです。

Aさんは夜の間は装具を外すことになっていましたが、状態が悪くなる数日前から、夜も装具をつけっぱなしで寝ていたことが原因だったのです。

なぜAさんは外すことを了承してくれたにも関わらず夜に装具をつけたままにしたのかというと、Aさんが私たちへ気遣いしたためだったのです。

Aさんは特に夜間帯に何度もトイレに行きたくなるため、何度もコールを押すこと、そのたび装具を私たちに着けてもらうことに申し訳なさを感じていて、私たちが装具を外した後にこっそり自分で付けていたとリハビリスタッフに話していたそうです。

その話を聞くまでは、

  • 薬が合っていないのかな
  • 食事の塩分量が多いのかな

など環境的な要因しか考えていませんでした。

Aさん自身も苦しい状況にあるにも関わらず、私たちに負担を掛けまいと気遣いしたことが、結果的にA自身を苦しめることになってしまっていたのです。今後2度と同じことがないよう、環境的なものばかりに目を向けるのではなく、患者さんの内面的な部分にも寄り添うことの必要性を改めて確認することができました。

そして、このカンファレンスを通して、仕事中、無意識に患者さんの前で忙しそうにしてしまい、患者さんに気を遣わせてしまっているという事実を知ることができました。そのことから、非常に実りあるカンファレンスだという風に感じました。

このように、患者さんが看護師には言いづらい本当の思いなどを他スタッフから聞くことができることもあれば、気を付けなければいけないことを再確認できたりするのは大きなメリットと言えるでしょう。

普段あまり交流のない職種の方の意見が聞ける

普段あまりじっくり話せない、医師や薬剤師、MSWなどと意見交換できるのもメリットです。患者さんの退院がスムーズに決まるよう一丸となってサポートできたり、薬をもっと効き目のいいものに変えてもらえたりと、さまざまな角度から協力して支えあえるようになるからです。

カンファレンスのデメリット

これまでの内容で、カンファレンスにデメリットなんてあるの? と思われている方もいるかもしれませんが、デメリットはあります。

実際に私がデメリットだと感じたことをご紹介したいと思います。

医師が来れなければ詳細な意見交換はできない

私が働いていた病棟では、患者全員を何名かの医師で割り振り担当するというスタイルでした。

そのため、カンファレンスの際も医師たち全員に参加してほしいところなのですが、ただでさえ人手不足ですので全員の医師がそろうことはほぼありませんでした。

医師が来られなかったら、その医師の担当の患者さんの情報は聞けないってこと? と思うかもしれませんが、参加できない医師はあらかじめ他の医師に代弁を頼んでいるのでその点は大丈夫でした。

ですが、大事なことのみしか伝達していないのがデメリットの一つでした。一見効率的なように思えますが、日々、患者さんと関わっている私たち看護師は、カンファレンスを通して医師に聞きたいことが山ほどあるのです。

忙しいため来られないのは仕方ありませんが、それが何度も続くと、意見交換もできないのに要所だけを伝えるならメールでもいいのではと思ってしまうのが正直なところでした。

更に人手不足に

カンファレンスに参加している人がいるということは、現場にいるスタッフが減っているということ。つまり、人手不足な現場が更に人手不足になっているということです。

実際、カンファレンス中にナースコールが多かったり、不穏な患者から目が離せなかったりしても、記録することもままならないくらい忙しいことが多々ありました。

このたね、カンファレンスのある日は必然的に残業が多くなってしまうので、カンファレンスする必要があるのかと師長に抗議する看護師も少なくありませんでした。

どのようなカンファレンスが必要?

メリット、デメリットの両方を見て、結局カンファレンスって必要なの? と思う方がいらっしゃると思います。

そこで次は、カンファレンスが必要な場合についてご紹介します。

緊急性のある場合

私がいた病棟には、認知症で不穏になると怒りっぽく凶暴になる、非常に危険な患者さんが複数名いた時期がありました。

認知症患者というものは非常にデリケートで、近くで同じ認知症患者が騒いでいると、悪い影響を受けて同じような行動をとることが多いです。

なので、1人が不穏になると2人、3人と伝わってしまい、片時も目を離せない状況になってしまいます。

そうすると、本来やるべき業務をおこなうことができず残業することになったり、夜間の場合、他の患者さんまで寝不足になってしまったりなど負の連鎖なのです。

このような状況にスタッフの人手不足が重なると状況は最悪で、きちんと医師や薬剤師と話す時間もなくなります。

こうした場合は、たとえ人手不足でも、その日だけはスタッフを多く配置するなどしてカンファレンスをおこなう必要があります。

いろんな職種のスタッフに現状を知ってもらうことで打開策が見つかる可能性がありますし、実際に他の病棟から応援で何名か来てもらえることにもなることもあります。そのため、緊急性がある場合は、病棟だけのことでなく病院全体のこととしてカンファレンスをおこなうのが望ましいです。

看護師だけではどうにもならない場合

あるとき、病院から退院して施設に移ることが決まっている患者さんがいました。ただし、「歩行できるようになってから」というのが条件。しかし、転倒して骨折したために入院した患者さんは、また転倒することを恐れて、歩くことを怖がっていました。

私たち看護師は退院支援に力を入れていますが、リハビリなどの専門外のことについては限界がありました。

このように、看護師のサポートだけではどうにもならない場合、カンファレンスを開き、患者さんの本当の思いを専門のスタッフに伝えることが必要です。

まとめ

医療現場は人手不足なところがほとんどですが、患者さんの数は増えていく一方です。

病棟だけの問題、看護師だけの問題と思わず、そこに携わるスタッフみんなの問題として捉えることで、カンファレンスを開く必要性・重要性が理解できてくるのではないでしょうか。

私の経験上、意見交換がしっかりできている病棟は空気も良くとても働きやすいです。

多くの人と協力して信頼関係を築けているかどうかで、仕事のしやすさも周囲からの評判も大きく変わってくることを日々実感しています。

カンファレンスをただの情報共有や意見交換だというふうに思わず、スタッフそれぞれの視点からの意見を聞くことで自身のスキルアップにもつなげよう! という思いでカンファレンスに参加していただきたいと思います。

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菊池

執筆 現役看護師 ライター | 菊池

医療に携わる仕事がしたいと思うようになり小学生にして医者を志すも、学んでいく中で最も患者さんに寄り添うことができる看護師を志すように。現在は宮城県にて看護師として働いている。


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