クリニックの待ち時間が長いことは、患者にとって大きなネガティブ要素のひとつ。
「予約したのに待たされた」「待っている間に院内感染したらどうするんだ!」という不満は、悪い口コミにもつながりかねません。
クリニック側で待ち時間を短縮させるための取り組みを行うことで、できるだけネガティブな評価を減らしたいものです。
では、どうすれば待ち時間を短縮できるのでしょうか?
患者さんはどのくらい待っている?
待ち時間短縮のためにできる対策を考える前に、実際のところ患者はどのくらい待っているのかを見てみましょう。
『厚生労働省』の「平成29年受療行動調査(確定数)の概況」によれば、患者さんの「待ち時間」については以下のようになっています。
参照・引用元:『厚生労働省』「平成29年受療行動調査(確定数)の概況」
当然かもしれませんが、規模の小さな病院では患者の待ち時間は短め。約57%の外来患者が、待ち時間が30分未満と回答しています。
しかし逆にいえば、30分以上になると患者さんも「他の病院より長いなぁ」と感じることになるでしょう。
そうなると医師の診療がどんなに良くても「あそこに行くと待ち時間が長いからなぁ」といったマイナスのイメージを持たれるかもしれません。
また、『日本医師会』による「第5回 日本の医療に関する意識調査」によると、患者の医療機関に対する不満第1位は「待ち時間」だという結果が出ています。
満足していない項目 | 比率 |
待ち時間 | 44.4% |
医師の説明 | 43.4% |
治療費 | 41.4% |
医師の態度や言葉使い | 29.3% |
医師の知識や技術 | 25.3% |
診察日や診療時間 | 25.3% |
検査や画像診断 | 14.1% |
看護師の態度や言葉使い | 8.1% |
待ち時間を長くしている原因とは
待ち時間を長くしている原因として考えられることはいくつかあります。
一人ひとり丁寧に診察をしている
丁寧な診察は悪いことではありません。
しかし、それによって待ち時間が大幅に増えてしまうのは問題です。
また、高齢患者の拠り所となっている場合などは、ドクターと会話できることを楽しみに来院する患者も多いため、どうしてもひとり当たりの診察が長くなりがちなケースも……。
予約の患者で手一杯
予約の患者を優先的に診察すると、必然的に予約外の患者は長時間待たなくてはならなくなります。
クリニック側としても当たり前のことを当たり前にやっているだけなので、そこを患者さんのクレームにされてしまうと、つらいところがあるのではないでしょうか。
受付・会計システムを取り入れていない
受付や会計をすべて人が行っているクリニックで多いケースです。
1回の対応自体はそこまでの時間を取られないかもしれませんが、それが10回20回と重なってくるうちにその分時間もかかりますし、手間や作業の切り替えのストレスも発生してしまうかもしれません。
問い合わせフォームや自動応答電話を設置していない
予防接種の時期や花粉症シーズンなどの繁忙期は、問い合わせの電話がかかってくることも多くなります。
そのすべてに対応していたら、そのほかの業務が滞ってしまうことは、想像に難くないでしょう。
待ち時間を減らすためにできること
あらゆる原因で伸びていく、クリニックの待ち時間。
続いては、そんなクリニックとしても患者さんとしても煩わしい待ち時間を減らすためにできることを考えていきましょう。
「待ち時間を減らす」方法としては、実際に時間を減らすことのほかに、「体感待ち時間を減らす」方法もあります。
待ち時間対策:設備面での対応
まずは設備面に関してできることをみていきます。
Wi-Fi
Wi-Fiを導入しておけば、患者がスマホで暇つぶしできるため、「体感待ち時間」が少なくなるはず。
テレビ
テレビも患者の暇つぶしになるため、体感待ち時間削減に役立ちます。
ただし、患者のなかには、テレビが付きっぱなしなことをうるさく感じる人もいるため、音量はできるだけ小さくするかもしくは無音で映像だけ流すことをおすすめします。
雑誌、週刊誌
テレビとは異なり、それぞれが好みの読み物を手にとれるのもメリットのひとつ。
患者層の趣味に合った雑誌や週刊誌をそろえるようにしましょう。
ただし、昨今は特に、感染を気にする人が多いので、感染対策には気を配りましょう。
手指の消毒をできるよう消毒スプレーなどを用意しておくことはもちろん、年季の入った書籍などは置かないようにするなどの工夫をすることもいいかもしれません。
ウォーターサーバー、自動販売機
喉をうるおしたり気分転換したりすることも、待つことのつらさを緩和してくれます。
キッズスペース
小児科や、小児の患者が多い耳鼻科などは、キッズスペースを用意しておけば子どもたちの体感待ち時間を減らせるでしょう。
座り心地のよい椅子、ソファ
リラックスして座っていられる椅子やソファがあれば、長い待ち時間でもある程度は負担が軽減されるはず。
水槽
キレイな熱帯魚が泳いでいる水槽があれば、それだけで心安らぐこともありますし、魚を目で追っているうちにあっという間に時間が経っていたということもあるでしょう。
デジタルサイネージ
院長のプロフィールやクリニックの方針などを流すと、初めての患者さんには特に、興味を持って見てもらえます。
待ち時間対策:システム面での対応
続いてはシステムの導入に関してです。
予約システムの導入
待ち時間対策としてもっともおすすめできるのは、「診療予約システム」を導入することです。
クリニックのホームぺージ等に予約システムを導入しておくと、患者さん自身でスマホやPCから予約を入れてクリニックを訪問できます。
また、自分の順番近くになるとスマホに通知を送ることもできますので、患者はクリニックの待合にいなくても構いません。カフェなどで時間を潰してもらうことも可能です。
待合でじっと待つ必要がないので、患者さんへのストレスはほとんどないといっていいでしょう。
また、今何番の人が診察を受けているのか、何人待っているのかなどの情報も送れますので、患者により正確な待ち時間を知らせることが可能です。
患者さん視点で一番つらいのはおそらく、待ち時間についての情報がないことです。だからこそ、明確な待ち時間をお知らせでk理宇システムの導入は、心理的な負担軽減のためにもおすすめです。
ただし、ここで重要なのはクリニックに合った診療予約システムを導入することです。ここを間違うと、スタッフのワークロードが増えたり、かえって患者に負担をかけたりといったことが起こります。
電子カルテの導入
電子カルテがあれば、問診の結果や診療経過を記録できるだけではなく、患者の予約管理や会計、オンライン診療などにも活用できます。
電子カルテを導入することで、カルテを探す手間が省けるメリットや字が読みやすくなるメリットがあり、業務の効率化が図れます。そ
れによって待ち時間も大いに短縮できることになります。
問診システムの導入
初診の患者さんや久しぶりに受診される患者には、問診が必要になります。
問診システムとは、タブレットやスマートフォンから患者自身で入力してもらい、電子カルテと連携させるものです。
問診システムを導入することで、問診での対応時間やカルテに入力する際の時間の短縮が可能になり、入力漏れもなくなります。
自動精算機の導入
総合病院ではよく見かける自動精算機。
最近では、新しく開業するクリニックで導入されることもあるのではないでしょうか。
自動精算機wお導入することにより、診察の会計をすべて患者さんがひとりで行えます。それにより、事務員のリソースの確保や、会計の時間短縮にもつながります。
金銭の受け渡しミスがなくなることも大きな利点だといえますね。
業務の分担・役割の整理
業務の分担、役割の見直しも待ち時間短縮につながります。
医師がスピーディに検査の指示を出しても、たとえば採血するスタッフが手間取ればそのぶん時間のロスになりますし、会計に時間がかかっても渋滞を引き起こしてしまうことがあります。
そのため、優秀なスタッフを採用することや、スタッフを育成することも考えていけるといいでしょう。
スタッフ育成に時間がかかりそうな場合は、スタッフ増員も視野に入れることも一手です。
もしもクレームが入ってしまったときは…
いろいろ対策をしていても、どうしても避けられないのが「待ち時間が長い!」とのクレーム……。
あまり多くはないかもしれませんが、もしもクレームが入ってしまったら、「怒られてイヤだな」「面倒くさい患者だな」と悲観的な思いをするはずです。
しかし、クレームを入れる患者はなぜイヤなことをわざわざ言ってくるのかと言えば、「改善してほしい」からこそ。
真摯に耳を傾けると、「なるほど。うちのクリニックは配慮が足りなかった」と気づかされることもあるかもしれません。
もしかしたら、そのクレームを活かすことで、患者満足度はより向上するかもしれません。
ここでは、もしも実際にクレームが入ったしまったときの対応についてご紹介します。
クレームを聞くときの基本姿勢
傾聴
相手の言葉に耳を傾けた結果、「診察が長引いているのだから、待たせてしまうのはしょうがないじゃない!」などとこちらの事情をぶつけたくなることもあるでしょう。
しかし、クレームを受けているときには、よほど筋の通らないクレームでない限り、「至らない点を教えてくださりありがとうございます」という気持ちで傾聴するのがベストです。
ポイントは、相手の話は遮らずに最後まで聞き、反論や言い訳をしないこと。
相手の言い分に対して同意できることに対しては、「おっしゃるとおりです」と言葉でも共感を示しましょう。
謝罪・解決策の提案
一通り話を聴き終えたら、「ご不快な気持ちにさせてしまって申し訳ございません」と謝罪することも大切。
ただし、たとえば、「いかなる場合も予約時間ぴったりに診察を開始すべき」などの言い分で100%受け入れるのは難しい場合は、
しっかりと謝罪したうえで、「●曜日のこの時間帯でしたら比較的すいていますので予約をお取り直しいたしますか?」などの解決策を提案するのもいいでしょう。
感謝
謝罪や解決策の提案を終えた後は、「言いにくいことをおっしゃってくださりありがとうございました」と感謝を述べましょう。
患者さん側も、(多くのケースでは)相手を不快な気持ちにさせたくてクレームを入れているわけではありません。
「こんなこと言いたくなかった」「こんな病院もう来たくない」と思っている患者さんにひとことお礼を言うことで、「改善に向けて動いてもらえるならこれからもお世話になろう」と思ってもらえるかもしれません。
まとめ
新しいシステムやサービスの導入は面倒だし、患者には迷惑をかけてしまうけど今のままでいいや……。
そんな思いが頭をよぎることもあるかもしれません。
しかし、業務効率化につながるシステムやサービスを導入することは、結果としてクリニックにとっても大きなメリットをもたらします。
残業が減れば人件費削減にもつながりますし、よい口コミが増えれば集患効果も期待できるでしょう。
一気にすべてを変えていくのは難しくても、1つひとつ順番に導入していくことはさほど大変ではありません。
ぜひ、できることからはじめてみてくださいね。
特徴
予約・受付機能
提供システム
その他機能
対応言語
システムとの提携
診療科目
特徴
対応言語
予約・受付機能
提供システム
診療科目
特徴
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提供形態
システム提携
機能
診療科目
この記事は、2021年9月時点の情報を元に作成しています。