赤ちゃん誕生の瞬間に立ち会うこともある産婦人科医の仕事は、大きな責任も伴いますが、やりがいもひとしおです。しかし同時に、訴訟リスクの高さや激務による医師不足が原因で、分娩に対応できなくなる医療機関も増えています。では、昨今の産婦人科医の働き方としてはどのような選択肢があるのでしょうか? 年収事情などと併せてみていきましょう。
産婦人科の平均年収は1,466万円
産婦人科で働く医師の年収は、すべての診療科のなかでもトップクラスの水準を誇ります。労働政策研究・研修機構が実施した「勤務医の就労実態と意識に関する調査 」によると、平均年収は1,466万円。全診療科中第1位である、脳神経外科の1,480万円の次に高い水準となっており、脳神経外科と比べても大差ありません。
順位 | 診療科目 | 平均金額(万円) |
---|---|---|
1位 | 脳神経外科 | 1480.3万円 |
2位 | 産科・婦人科 | 1466.3万円 |
3位 | 外科 | 1374.2万円 |
4位 | 麻酔科 | 1335.2万円 |
5位 | 整形外科 | 1289.9万円 |
6位 | 呼吸器科・消化器科・循環器科 | 1267.2万円 |
7位 | 内科 | 1247.4万円 |
8位 | 精神科 | 1230.2万円 |
9位 | 小児科 | 1220.5万円 |
10位 | 救急科 | 1215.3万円 |
11位 | その他 | 1171.5万円 |
12位 | 放射線科 | 1103.3万円 |
13位 | 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 1078.7万円 |
参考:勤務医の就労実態と意識による調査 – p.30 一部抜粋
産婦人科医の年収を受け取っている内訳は以下の通りです。
産婦人科医の年収毎割合
年収 | 割合 |
---|---|
300万 円未満 | 0.80% |
300~500万円未満 | 2.30% |
500~700万円未満 | 5.40% |
700~1,000万円未満 | 13,8% |
1,000~1,500万円未満 | 27.70% |
1,500~2,000万円未満 | 29.20% |
2,000万円以上 | 20.80% |
年収1,000万円以上の産婦人科医の割合は77.7%。このうち、1,500万円~2,000万円未満の産婦人科医は29.2%、2,000万円以上の産婦人科医は20.8%にも上ります。
参考:勤務医の就労実態と意識による調査 – p.30 一部抜粋
40代で半数以上が年収2,000万円超え
年代 | 600万未満割合 | 600万~1,000万円未満 | 1,000万~1,400万円未満 | 1,400万~2,000万円未満 | 2,000万円以上 |
---|---|---|---|---|---|
20代 | 100% | 0% | 0% | 0% | 0% |
30代 | 14% | 29% | 14% | 29% | 14% |
40代 | 0% | 0% | 17% | 17% | 67% |
50代 | 0% | 0% | 17% | 50% | 33% |
60代 | 0% | 0% | 0% | 40% | 60% |
続いては、年代別に年収をみていきます。リクルートドクターズキャリアによると、20代の産婦人科医の年収は600万円未満。30代に入ると、年収600万円未満の医師は14%にまで減り、40代ではゼロとなります。同時に、40代では、半数以上となる67%の医師の年収が2,000万円を超過。働き盛りの年代で、かなりの金額を稼げるということになります。
参考:産婦人科の年収事情 | リクルートドクターズキャリア - 年代毎の年収事情 一部抜粋
給与水準が高い理由は、当直の多さや訴訟リスクの高さなど
なぜこれほどまでに給与の額が高いかというと、分娩がいつ始まるかわからないことからオンコールや当直が多いなど、かなり激務である場合が多いから。また、分娩に関わるトラブルによる訴訟リスクが高いため、特に経験の浅い医師は敬遠しがちなことから、医師確保のために給与が上がっているのも事実です。
また、分娩をおこなわない婦人科であっても、産科と連携しながら不妊治療をおこなったり、子宮や卵巣などの婦人科系機関に関連する病気を診察したりするため、確かな技術と知識が必要なため、給与の水準が高くなっています。
産婦人科医は、開業によって年収を上げられるとは限らない
では、開業医になるとさらに給与の水準が上がるかというと、一概にそうとは言えません。産科医および婦人科医の給与を勤務医、開業医別にみると、年収2,000万円以上の医師の割合は、圧倒的に勤務医のほうが高いのです。特に、医師不足が深刻な地方の産科クリニックは、4,000万円から5,000万円という破格の年収を提示することもありますし、産科医として勤務すれば高い水準の給与を得られることは間違いありません。
一方、産婦人科として開業した場合の年収は、およそ2,600万円から3,000万円といわれています。ただし、この数字は経営が軌道に乗った後の数字。開業からしばらくは、開業資金の返済に追われることを念頭に置いておきましょう。開業のために必要な資金の総額は、5,000万円から6,000万円程度。土地や建物代に約3,000万円、超音波診断装置やX線撮影装置などの機器および内診台や診療用ベッド、電子カルテ、受付カウンターなどの設備には約2,000万円かかるほか、人件費や医薬品代も必要だからです。
不妊治療などに特化したクリニックを目指せば、収入UPにつながりやすい
では、開業して高収入を得るためにはどうすればいいかというと、産科医ではなく婦人科医として診療をおこなうのもひとつの手。たとえば、不妊治療に特化した専門クリニックを目指すなら、熟練した治療技術や高い知識が必要となりますが、高齢出産する女性が増えている昨今はニーズも高いため、実績を出し続ければケタ外れの収入につながることもあるでしょう。
患者は女性。女性の気持ちに寄り添った診療が大切
産婦人科医として開業して成功するための秘訣は、なんといっても「女性の気持ちに寄り添うこと」。妊娠を希望していてもなかなかうまくいかない女性や、分娩を控えている女性はもちろん、女性特有の病気を患っている女性もとてもナーバス。また、更年期障害や尿モレをはじめ、人には言えない悩みや不調を相談にくる患者に対しても、しっかりと寄り添って話を聴いてあげたいものです。
女性の心と身体に寄り添った診察や治療が求められるだけに、SNSや口コミサイトで評判が広がるのもあっという間。中には、医師の腕や人柄だけでなく、受付スタッフの対応や院内の清潔さなどを評価してくる患者もいるので、快適さやサービスの質にもこだわるのがベストといえるでしょう。
女性特有の疾患の予防や、地域の大病院との連携も大きな課題
患者から評価される病院を目指すことは開業医にとって大切なことですが、産婦人科医にとって大切なことはほかにもあります。そのひとつが、乳がんや子宮がんなどの予防に貢献すること。ひとりでも多くの女性にがん検診を受けてもらえるよう、積極的に働きかけることを忘れないでください。また、なにかあったときにすぐに患者を送ることができるよう、日ごろから地域の大病院と連携しておくこともとても大切。女性たちの健康を守るため、産婦人科医として何ができるかをしっかり考えておきたいものですね。
特徴
対応業務
その他特徴
診療科目
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診療科目
この記事は、2021年6月時点の情報を元に作成しています。