人の身体の状態だけでなく、心の状態にまで目を向ける精神科医という職業は、さまざまなきっかけで憧れの対象となるでしょう。
身内や身近な友だちが鬱になったことをきっかけに、「力になりたい」と思うこともあれば、心理学の本を読んで影響を受けるかもしれません。
では、精神科医になりたいと思ったら、どこで学び、どんな資格をとればいいのでしょうか?また、大人になってからでも目指せるものなのでしょうか?
今回は、精神科医になるためには何が必要かを解説します。
精神科医とは?
精神科医の仕事内容は、簡潔に言うと「つらい気持ちを抱えている人の心の状態を診断して、治療すること」。
患者の心の奥深くまで診るためには、1人1人の生い立ちや考え方、職場や家庭環境なども聴きながら、問診を進めて、最適な治療方法を探っていくことが必要です。
とはいえ、初対面の相手や十分に心を開いていない相手に対して、自分のことをさらけ出すことが困難な患者も多いもの。
患者が無理なく相談できるよう、時にはゆっくりと時間をかけながら相手とコミュニケーションを図ることが必要です。
精神科医が診察および治療を行う主な疾患は、鬱病や双極性障害などの気分障害、適応障害やパニック障害などの不安障害、アルコールや薬物などの依存症などです。
また、近年TVや雑誌で特集されることが多い発達障害や自己愛性パーソナリティ障害などの患者を、家族が連れてくるケースも多々あります。
いずれの場合も、薬物療法または精神療法、またはその両方を組み合わせた治療を行いながら、患者の心を解きほぐしていくことが大切。
生涯通して薬を必要とする患者もいれば、緩解と再発を繰り返す患者もいるので、相手と根気強く向き合う精神力が求められます。
精神科医と心療内科の違いは?
精神科医と似たイメージの診療科として、「心療内科医」を思いつく人もいるでしょう。では、精神科医と心療内科医の違いをきちんと説明することはできますか?
両者の違いは、精神科医が「精神症状をともなう精神疾患」をメインに扱う医師である一方、
心療内科医は「精神的な不調にともなって生じる身体的症状」をメインに扱っているということ。
後者の疾患の具体例としては、ストレスなどが原因とされる過敏性腸症候群や自律神経失調症などが挙げられます。
ただし、総合病院の心療内科では、精神科医や内科医が診療を担当することもあります。
精神科医になるにはどんな学歴が必要?
精神科医になろうと思ったら、大学の医学部または医科大学で6年間学んだ後、医師国家試験に合格することが必要です。
6年の間には、精神科医の専門分野だけでなく、医学全般に関する知識を身に着けます。解剖なども行いますし、病院実習を通してさまざまな経験も積みます。
無事に卒業したら、医師国家試験を受けますが、合格率は約9割なので、中には再受験する人もいます。無事に合格できたら、その後は臨床研修医として基礎的な診療技術取得のために働きます。
臨床研修医としての研修期間は2年間。精神科医希望なら、医局の精神科に所属したり、市中病院の精神科に入職したりしてトレーニングを積むことになります。さらにその後、専攻医としての精神科勤務を経て、ようやく一人前の精神科医になることができます。
では、大学進学の際に医学部を選ばなかった人が精神科医になりたいと思った場合、どうすればいいのでしょうか?
また一から大学に入り直す必要があるかというと、そうではありません。医学部以外の学部で一般教養を学んでいれば、医学部に編入学して医学教育を受けられます。
ただし、どの学校も募集がとても少ないため、かなりの狭き門であることは間違いありません。
精神科医になるにはどんな資格が必要?
精神科専門医の資格を得るためには、専攻医として後期研修をスタートしたら、日本精神神経学会の専門医研修委員会に「研修開始申告書」を提出する必要があります。
その後、指定された医療機関で3年間の研修を行った後、専門医の認定試験に受かれば、専門医の資格を得ることができます。
また、精神科医の資格には「精神保健指定医」もあります。
精神保健指定医は厚生労働省が定める資格で、この資格があれば、患者の意志に関わらず強制入院させることができます。
精神疾患を抱えている患者は、症状が出た際に、自傷行為に及んだり、場合によっては家族や職場の人などに危害を加えてしまうこともあります。そんなときの対応策として、この資格があるのです。
精神保健指定医の資格があれば、患者を措置入院および医療保護入院、応急入院させることができますし、入院中の患者の行動を制限することも可能です。
また、精神医療審査会の立ち入り検査に立ち会う権限も持つことになります。つまり、精神保健指定医の資格は、患者の人権を守りながら、適切な医療を実践できる資質がある証明なのです。
精神保健指定医の資格を得るためには、2年間の初期研修を終えた後、さらに精神科で3年間の研修を積み、措置入院や精神科各疾患のケースレポートを提出することが必須です。
また、資格取得のための用件は以下となります。
- 5年以上の診断または治療従事経験があること
- 3年以上の精神障害診断または治療従事経験があること
- 厚生労働大臣が定める精神障害に対して、厚生労働大臣が定めるレベルの診断または治療を行った経験があること
- 厚生労働大臣の登録を受けた者が厚生労働省令で定めるところによって行う研修の過程を終了していること
他の診療科から精神科に転科できる?
医師になった後、他の診療科から精神科に転科することは可能です。
他の診療科から転科する際、精神保健医資格を有していることは必須ではないので、実際に転科する医師の数も多いようです。
ただし、精神保健医資格保持を入職の条件とする医療機関もあるので、自分のこれまでの経歴や資格に合う職場を探してみるといいでしょう。
ストレスを抱える現代人をサポートする役割を果たそう
ストレス社会と言われる現代において、精神科医のニーズは今後ますます高まることが予想されます。
2020年には、コロナが出てきたことによって不安な気持ちを抱える人が増えたといわれていますし、SNSでの誹謗中傷もたびたびニュース番組に取り上げられるようになりました。
コロナ禍以降、不安な気持ちを抱える人が増えたといわれていますし、SNSでの誹謗中傷もたびたびニュース番組に取り上げられるようになりました。加えて、高齢化社会が進む一方であることから、認知症患者が増加することも考えられます。
そうなった場合、患者本人だけでなく、家族の不安な気持ちを和らげることも、精神科医の重要な仕事になってくることは間違いありません。
幅広い症例に対応できる精神科医となれるよう、日ごろから世間の動向にも目を向けながら、患者の心に寄り添える精神科医を目指してみてはいかがでしょうか。
特徴
対応業務
その他特徴
診療科目
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診療科目
この記事は、2021年6月時点の情報を元に作成しています。