新型コロナウイルスが発見されて以降、特に緊急事態宣言中は、「医療崩壊」というキーワードを耳にしない日がない日々。誰もが、日本の医療が抱える課題について考えさせられることとなりました。そんななか、病床不足に関するニュースを見聞きする日もあれば、コロナ患者を受け入れた病院は、そうでない患者の足が遠のくため経営的に厳しくなっていると報道される日も。では、実際のところ、クリニックの売上にコロナの影響はあったのでしょうか? 詳しくみていきましょう。
第1回目の緊急事態宣言以降、入院外件数が減少
公益社団法人 日本医師会がおこなった定例記者会見によると、2020年4月から6月にかけての入院外件数は、ほとんどの診療科で減少。第1回目となる緊急事態宣言が発令されたのが2020年4月7日なので、感染リスクを減らすために受診を控えた人が多かったことが推測されます。
2020年3月 | 2020年4月 | 2020年5月 | 2020年6月 | |
内科 | ▲8.0 | ▲13.5 | ▲17.2 | ▲8.9 |
小児科 | ▲22.4 | ▲37.4 | ▲45.1 | ▲32.7 |
外科 | ▲12.2 | ▲17.3 | ▲18.1 | ▲10.5 |
整形外科 | ▲7.5 | ▲17.1 | ▲16.6 | ▲6.6 |
皮膚科 | ▲1.7 | ▲13.2 | ▲5.9 | 4.9 |
産婦人科 | ▲4.2 | ▲13.2 | ▲12.4 | ▲3.4 |
眼科 | ▲12.9 | ▲26.4 | ▲24.2 | ▲7.4 |
耳鼻咽喉科 | ▲29.2 | ▲39.0 | ▲38.7 | ▲31.1 |
また、2020年7月から8月にかけても入院外件数は減少。特に減少率が高かったのが小児科で、7月は31.6%、8月は30.6%減少しています。
2020年7月 | 2020年8月 | |
総数 | ▲9.8 | ▲8.0 |
内科 | ▲7.2 | ▲5.5 |
整形外科 | ▲7.6 | ▲5.9 |
耳鼻咽喉科 | ▲20.4 | ▲16.9 |
小児科 | ▲31.6 | ▲30.6 |
参照:公益社団法人 日本医師会「新型コロナウイルス感染症の診療所経営への影響―2020年7~8月分-」
入院外総点数も比例して減少
続いては、同じ期間の入院外点数をみていきましょう。入院外件数が減れば、当たり前ですが入院外総点数も減少します。
2020年3月 | 2020年4月 | 2020年5月 | 2020年6月 | |
内科 | ▲85.5 | ▲11.6 | ▲12.1 | ▲2.4 |
小児科 | ▲22.3 | ▲38.4 | ▲44.9 | ▲31.9 |
外科 | ▲10.7 | ▲18.5 | ▲17.2 | ▲7.7 |
整形外科 | ▲6.3 | ▲18.3 | ▲14.9 | ▲1.6 |
皮膚科 | ▲2.6 | ▲15.2 | ▲6.0 | 6.2 |
産婦人科 | ▲4.4 | ▲14.9 | ▲11.9 | ▲0.1 |
眼科 | ▲7.6 | ▲19.7 | ▲21.4 | ▲2.0 |
耳鼻咽喉科 | ▲30.9 | ▲42.6 | ▲40.1 | ▲28.5 |
特に減少率が高い小児科は、子どものコロナ感染を防ぐため、よほどのことがない限り来院したくないと考える人が多かったのでしょう。また、なかには「学校や休みになったから部活などでの受傷が減っている」「子どもが外で遊ばなくなったことから、けが人が減っている」などの理由 もあるようです。
2020年7月 | 2020年8月 | |
総数 | ▲6.6 | ▲5.5 |
内科 | ▲4.8 | ▲3.8 |
整形外科 | ▲4.0 | ▲3.2 |
耳鼻咽喉科 | ▲22.3 | ▲18.4 |
小児科 | ▲29.9 | ▲28.2 |
参照:公益社団法人 日本医師会「新型コロナウイルス感染症の診療所経営への影響―2020年7~8月分-」
3枚目より一部抜粋
1施設あたりの医業収入の推移は?
続いては、1施設あたりの医業収入の推移をみていきます。こちらは、診療科でわけずに全体で集計。2020年4月から8月にかけては、下記の表のとおり減少傾向にあります。
2020年4月 | 2020年5月 | 2020年6月 | 2020年7月 | 2020年8月 |
▲15.4 | ▲16.5 | ▲8.0 | ▲6.8 | ▲4.9 |
参照:公益社団法人 日本医師会「新型コロナウイルス感染症の診療所経営への影響―2020年7~8月分-」
4枚目より一部抜粋
1施設あたりの医業収入の対前年同月比は?
続いては、同期間中の対前年同月の医業収入との比較です。対前年同月との差がもっとも大きいのは5月で、有床診療所は▲1,295千円、無床診療所は▲2,174千円という結果です。
2020年4月 | 2020年5月 | 2020年6月 | 2020年7月 | 2020年8月 | 4月~8月平均 | |
有床診療所 | ▲928(千円) | ▲1,295 | 419 | ▲1,089 | ▲852 | ▲749 |
無床診療所 | ▲2,151 | ▲2,174 | ▲1,195 | ▲1,099 | ▲803 | ▲1,484 |
参照:公益社団法人 日本医師会「新型コロナウイルス感染症の診療所経営への影響―2020年7~8月分-」
※5枚目より一部抜粋
クリニックの売上減少に対する対策は?
ここまで売り上げが落ちると、運営を続けることが難しくなりそうですが、コロナ禍においてもっとも必要とされている業界であることは間違いないので、国として対策をとることが求められてきました。たとえば、医療機関・薬局等における感染拡大防止等の支援として用意されたのが、「新型コロナ緊急包括支援交付金」。2020年4月1日から2021年3月1日にかけて、有床診療所は上限2,000千円、無床診療所は上限1,000千円として交付されました。
また、これまで、初診料の288点は対面の場合のみ算定されていましたが、電話等を用いた場合も、初診料として214点が算定されることに。電話等再診時の医学管理料に関しては、月1回147点加算されることになりました。
今後も売上減少は考えられる?
2021年10月時点では、ワクチンの効果なのか感染者数は着実に減り、緊急事態宣言も解除されています。しかし、冬には第6波が来ると言われていますし、先のことがどうなるかは誰にもわかりません。新たな変異種が出てくる可能性などもゼロとは言えないので、国が対策を強化してくれることも期待しつつ、自院でできることも考えていく必要がありそうです。
特徴
対応業務
その他の業務
診療科目
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対応業務
その他特徴
診療科目
この記事は、2021年11月時点の情報を元に作成しています。