より良い医療を提供するためにクリニックの連携をサポート。「患者さん紹介先登録プロジェクト」とは?

2021年8月、『株式会社NYAUW』が「患者さん紹介先登録プロジェクト」という活動をスタートさせました。同プロジェクトは、活動に参加する医師に「いつもの紹介先」を登録してもらい、情報を蓄積・共有するという試み。今回は、同プロジェクトを展開する株式会社NYAUWの井手武代表にお話を伺いました。井手代表は現役のクリニック院長でもあります。

目次
  1. 医師が持つ有益な情報を共有
  2. クリニック同士で協力して適切な医療を提供
  3. クリニックで頑張っている先生をスターにしたい

医師が持つ有益な情報を共有

――今回のプロジェクトが生まれた背景を教えてください。

「患者さんを他院に紹介する際に他院の情報が分からない」というのは、私個人の長年の課題でした。そのため、「自分の専門ではないけど、大学病院に送るほどではなさそうだ」というケースでは紹介先が分からないという状況に陥ってしまうのです。そのため、それぞれの医師が持つ紹介先情報を共有するプロジェクトを起こしました。

――特に開業直後などは紹介先に苦労しそうですね。

そもそも、医師が持っている「ほかの医師の情報」は、エリアと専門性が異なると一般の人とほとんど変わりません。とはいえ、専門外だからといって「別の専門のクリニックに診てもらってください」というのも問題です。医師でさえもどこに紹介すればいいのか分からない状況で、患者さんが分かるわけがありません。

ネットではそのクリニックの評価や点数が出ていますが、ネットの評価だけでは判断できません。評価が低くても実は良いクリニックということもあります。一方、地域の先生が培ってきた紹介先の情報は、単に専門性や地域、技術だけでなく、人間性も評価してのものです。それぞれのクリニックが持っている紹介先は、高性能なフィルタリングにかけられた結果ともいえます。こうした有益な情報を共有することで、患者さんも評価の高い医師を紹介してもらえるし、医師も患者さんに適切な医療を提供できます。

クリニック同士で協力して適切な医療を提供

――ほかに本プロジェクトの「狙い」にはどんなことが挙げられますか?

クリニック同士でお互いにカバーしていこうという「マインドづくり」も本プロジェクトの狙いです。開業医は一人ではどうしようもありません。意気揚々と開業しても、結局日々の業務に忙殺され、とても自分一人では患者さんをカバーし切れないのです。しかし、開業医同士で情報を共有すれば、大きな一つのチームで医療を提供できるようになります。紹介先をシェアするのはあくまでその入り口です。

――同じ志を持つ同士で協力すれば、より良い医療を提供できるようになりますね。

同じようなマインドの先生同士で連携することで、新しい課題も浮き彫りになりますし、個々では解決が難しかった問題に向き合えるようになります。とはいえ、現状はそうした同じようなマインドを持つ医師同士で連携するという取り組みがありません。数十万という医師の名前を集めることはできても、実際にそれぞれが連携して活動していないと意味はないのです。

クリニックで頑張っている先生をスターにしたい

――登録や情報の共有はどのようにして行いますか?

まずは「患者さん紹介先登録プロジェクト」のHPにアクセスしてもらい、登録したい先生のFacebookアカウントでログインします。ログインをすることで紹介先の登録や閲覧が可能になります。登録されている紹介先は都道府県や専門でフィルタリングできます。また、参加を希望する医師の情報は管理サイドで確認できますので、登録した人が本当に医師であるかの確認は行います。もし医師でないと分かった場合にはユーザーデータを消去します。

――利用する上での注意点はありますか?

大きな病院ではなく、信頼できる街のクリニックを登録してもらいたいですね。クリニックの先生の中には、本当は高い専門的な技術があるのに、なんでも屋のようになっているケースも少なくありません。そうした先生に、自らが専門とするステージで活躍する機会が得られるようにしたいと思っています。クリニックで頑張っている先生たちにスターになってもらいたいですね。また、今回のプロジェクトは、大きな病院に患者さんを紹介する機会を減らすことで、病院の負担を下げる目的もあります。病院から逆紹介を受ける場合でも、クリニック同士で連携を図り、紹介先情報を共有することでカバーできるようになればうれしいです。

――最後に今後の展望を教えてください。

現在はワントゥーワンでさまざまな医師の方にプロジェクトの意図を説明して、協力してもらっている状況です。しかし、自分が直接説明できる範囲でしか動けていないので、私と同じ眼科の先生が中心です。個人では限界がありますので、例えば健康保険組合や、企業の健診センターなどと協力して、活動を広げていければと考えています。また、今回の活動は「地域とエリアを超える」ことが目的ですので、さまざまな地域のさまざまな専門医の先生に参加してもらいたいと考えています。参加する先生と紹介先情報が増えると、どの先生が「ハブ」なのかも見えてきます。地道ながらもまずは活動を皆さんに知ってもらい、少しずつですが参加してくれる先生の数を増やしていきたいと思います。

――ありがとうございました。

紹介先の共有は、地域との連携、またほかのクリニック情報が乏しい開業したての医師にとっては非常に有益です。クリニックを開業した際は、「患者さん紹介先登録プロジェクト」に参加してみてください。

「患者さん紹介先登録プロジェクト」HP

取材協力:株式会社NYAUW

クリニック開業ナビ

執筆 コラム配信 | クリニック開業ナビ

「クリニック開業ナビ」では、クリニック開業時、業者選びに役立つ情報や、資金調達、物件選定や集患対策といった多岐にわたる開業プロセスをコラム記事として提供いたします。


他の関連記事はこちら