在宅医療が普及しない理由は?患者や患者家族が抱える不安、医師側の障壁を調査

第一次ベビーブーム世代が75歳以上になる「2025年問題」。医療・看護・介護の受け皿となる地域包括ケアの要として、在宅医療の普及が求められています

厚生労働省が発表した「在宅医療を受けた推計外来患者数の年次推移」(厚生労働省:平成29年(2017)患者調査)によると、在宅医療を受けた患者数は2008(平成20)年から右肩上がりとなっています。

一方で、在宅医療の普及には障壁があるとの指摘もあります。(参考:長尾和宏、マイナビDOCTOR スペシャルコラム「在宅医療はなぜ浸透しないのか~町医者が考える問題点」)

本記事では、在宅医が抱える在宅医療を実施するにあたっての障壁と、患者や患者家族が抱える、在宅医療に踏み切るまでの不安についてご紹介します。

【データ】在宅医療の普及を妨げる理由

厚生労働省医政局指導課 在宅医療推進室「在宅医療の最近の動向」(P.11 在宅医療推進にあたっての課題)によると、在宅医療が普及しない原因は複数あります。

引用:在宅医療推進室「在宅医療の最近の動向」(P.11 在宅医療推進にあたっての課題)

●○●○●在宅療養移行や継続の阻害要因●○●○●
・往診してくれる医師がいない
・訪問看護・訪問介護体制が整っていない
・介護してくれる家族がいない
→医療等のサービス提供量および効率化が必要

・介護してくれる家族に負担がかかる
→家族支援が必要

・24時間相談にのってくれるところがない
→24時間在宅医療体制の構築が必要

・症状が急変したときの対応に不安・症状急変時すぐに入院できるか不安
→後方支援体制の強化が非有用

医療等のサービス提供量および効率化/24時間在宅医療体制の構築ができていない

在宅医療の普及を阻害する理由のひとつとして、医療等のサービス提供量を増やすことや効率化すること、さらには24時間体制の構築などができていない事実があります。

たとえば、在宅担当医師数の分布を見ると、算定のある届出診療所全体の72.4%が1人体制で診療していることがわかります。

参考:日本医師会総合政策研究機構 野村真美、出口真弓 日医総研ワーキングペーパー「在宅医療の提供と連携に関する実態調査」在宅療養支援診療所調査 No.183 P.11

また、緊急時の診療体制を在宅担当医師人数別にみると、医師1人体制の届出診療所では、「①1人の医師で対応」が86.3%を占め、「②自院の複数の医師が当番で対応」は極めて少なく、2.6%となっています。

このような状況を、医師はどのように感じているのでしょうか?

次にご紹介する図は、24時間体制に対応できる医師がいる 1,483 施設を対象にしたものです。

24 時間体制の医師数区分別にみると、1〜2人体制の少人数体制の届出診療所では、7割以上が負担感を持っていたのに対し、3人以上の場合は負担感を感じる割合が10ポイント近く減少しています。

参考:日本医師会総合政策研究機構 野村真美、出口真弓 日医総研ワーキングペーパー「在宅医療の提供と連携に関する実態調査」在宅療養支援診療所調査 No.183 P.41

このことから、24時間体制を担当する医師数の少なさが、負担感に少なからず影響を与えていることが分かります。

~伸び悩む在宅医療~
在宅医療の担い手の中心は60代、70代である。世間一般で言うならばリタイア組という世代が24時間365日という労働基準法とは無縁である在宅医療を担っている。都市部では若い世代の医師が何人か集まり交代制で24時間対応する在宅専門クリニックが増えているが、全国的にみれば一部である。多くの若い開業医には24時間365日対応が大きなネックになっている。では夜間対応は看護師がすればいいじゃないか、という声が聞こえてきそうだ。しかしそうはいかない場合が多い。医師が診察しないと薬の処方も看護師への指示もできないのが日本の法律である。引用元:長尾和宏、マイナビDOCTOR スペシャルコラム「在宅医療はなぜ浸透しないのか~町医者が考える問題点

【取材】現役医師が考える、在宅医療の普及を妨げる要因

岐阜県岐阜市に構える「なかうずらクリニック」にて、外来・在宅をともに診ている後藤芳文先生も、以下のように話しています。


「たとえば当院は在宅療養支援診療所ですが、その際の施設基準である時間外対応加算1および在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料などを点数として加算できることになっています。これらの条件を満たすには、24時間365日の体制を組まなければならないので、人員配置や、医師本人の精神的、体力的負担がネックになっている可能性はあると思います」

【取材】自宅で過ごすことをためらう患者が多い理由

患者側の目線では、以下のような内容が、在宅医療が普及しない原因に関係していると考えられます。

家族支援/後方支援体制が強化できていない

厚生労働省の調査によると、自宅以外で最期を迎えることにした患者の多くは

  • 「介護してくれる家族等に負担がかかるから」
  • 「症状が急に悪くなった時の対応に自分も家族等も不安だから」

との考えを持っていたことが分かっています。

参考:平成30年3月、人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会「人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書」P.54 (1-3) 自宅以外で医療・療養を受けること、または最期を迎えることを希望した理由

実際に在宅医療を受けた患者の家族の中でも、このような不安を抱えている人や、実際に家族支援の大変さを訴える人は少なくありませんでした。

医者や看護師がいない中で急変したらどうしよう、近くに対処できる人がいないことで、助かる命が助からなくなってしまったらどうしようなどと、不安はありました。<患者家族:香川県・30代・女>

家族に介護や夜間の不安が増えるので、ちゃんと対応できるかが不安でした。<患者家族:新潟県・50代・女性>

母以外の家族は夜遅くまでフルタイムで働いていたため、母一人が対応することになり、メンタル面、体力面、かなりの負担がありました。<患者家族:大阪府・40代・女性>

在宅医療について開業医ができるアプローチ方法

世間では「在宅は大変」「在宅は不安」というイメージが先行しているように思います。

しかし、在宅医療は特別な処置・ケアをすることが目的ではありません患者さんがありのままの姿で自宅で過ごすのが在宅の目指す姿です。

なかうずらクリニックの後藤先生はこのように語ります。

「これまで勤務医として入院患者を診ていたことがある先生であれば、根本は在宅医療も同じだと思います。ただそのときの対応が、施設や居宅に変わっただけです。

もちろん在宅医療(訪問診療・往診)ならではのコミュニケーションなどは必要ですが、もし外来の患者さんで通院の困難な方がいるのであれば、少しずつ在宅を進めてみてもいいのではないかと思います。

私は2020年11月に開業し、上記のような流れでコツコツ在宅医療を始めたところ、今では30〜40名の在宅の患者さんを診る、在宅療養支援診療所までになりました。

今のところ、外来とのバランスを考えながら患者さんに向き合えている認識です。あまり構えすぎる必要はなく、スモールスタートで良いと思いますよ」

Mac・Windows・iPadで自由に操作、マニュア ルいらずで最短クリック数で診療効率アップ

特徴

1.使いやすさを追求したUI・UX ・ゲーム事業で培って来た視認性・操作性を追求したシンプルな画面設計 ・必要な情報のみ瞬時に呼び出すことが出来るため、診療中のストレスを軽減 2.診療中の工数削減 ・AIによる自動学習機能、セット作成機能、クイック登録機能等 ・カルテ入力時間の大幅削減による患者様と向き合う時間を増加 3.予約機能・グループ医院管理機能による経営サポート ・電子カルテ内の予約システムとの連動、グループ医院管理機能を活用することにより経営サポート実現 ・さらにオンライン診療の搭載による効率的・効果的な診療体制実現

対象規模

無床クリニック向け 在宅向け

オプション機能

オンライン診療 予約システム モバイル端末 タブレット対応 WEB予約

提供形態

サービス クラウド SaaS 分離型

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、

執筆 CLIUS(クリアス )

クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。


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