これから電子カルテを導入しようとしているクリニックにとって気になるのが、各メーカーの電子カルテの評判でしょう。そこで今回は、数ある電子カルテのなかでも注目されている電子カルテのひとつ、「Dynamics(ダイナミクス)」の評判に迫ってみます。
「ダイナミクス」のコンセプトは?
まずは「ダイナミクス」がどんな電子カルテであるのかを説明します。「ダイナミクス」は、内科医の吉原正彦先生が、経費削減・業務効率化・診療の質の向上を目的に開発した電子カルテ・レセプトシステムです。現場の診療を熟知した医師自らが開発した使い勝手のよいソフトを、全国の医師にも使ってほしいと、1998年より配布を開始。現在では、約4,000軒の診療所で使われています。
「ダイナミクス」の利用料は?
当初の目的通り、利用料はリーズナブル。使用許諾料税込220,000円+月額使用料税込11,000円で、2年目以降は月額税込11,000円のみ。バージョンアップやヘルプデスク利用料、診療報酬改定対応の料金はすべて含まれているうえ、パソコンの台数が増えても使用料に変動はありません。
「ダイナミクス」の機能や特徴は?
レセコン・電子カルテ一体型で、医師が診療しながら会計を確認できるため、業務の合理化にも役立ちますし、診療報酬改定時の対応は迅速。厚生労働省が策定した「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」「電子保存の三原則」に完全対応していることや、正規版プログラムがソースを公開していて、ユーザー自身でカスタマイズできることなども魅力といえるでしょう。
ちなみに、「カスタマイズ可能なソフト」と聞くとハードルが高いと感じてしまうかもしれませんが、「ダイナミクス」を使うために最低限必要なパソコンのスキルは決して高くは設定されていません。「フォルダの作成」「ファイルの名前変更、コピー、貼りつけ」「webサイトからのダウンロード、保存、解凍、USBメモリの利用」「メールの送受信」ができれば十分です。
また、定期的に開催される例会およびメーリングリストを通じて寄せられた意見を積極的に開発に取り入れていること、ユーザー同士で意見交換できることを大きな魅力だと感じている医師も多いようです。
「ダイナミクス」のユーザーからはどんな声が上がっている?
続いては、実際にダイナミクスを使用しているクリニックのユーザーボイスをみていきましょう。
「開業当初からダイナミクスを利用しています。当時はまったくのPC初心者で保険請求の知識は皆無でしたが、PCの設置は診察机のみ。診察しながら所見入力、画像、ECGなどがあれば保存して、診察終了後には院内用薬情あるいは院外処方箋、領収書をプリントしてスタッフに手渡し。スタッフが調剤と代金清算をおこなっています。ダイナミクスはLANを介して多数の端末から入力可能ですが、医師が診察しながら入力するのが一番効率的だと感じています。多数端末入力に伴うトラブルもなく快適に使えることもあり、ダイナミクスを使っているうちにPC操作に自信がつき、経理への興味も湧いてきました。ダイナミクスから抽出した数字を入力すれば簡単かつ正確に確定申告の書類を作成できます」(高知県『潮見台診療所』)
「テンプレートや投薬・検査などのセットを自分好みに変更していくと、どんどん使いやすくなります。しかも、簡単に変更可能です。また、ユーザーのメーリングリストが充実していて、全国の先生方とつながれる点も魅力です。ダイナミクスの話題以外に保険の情報なども入手できますし、ダイナミクスに関する要望を開発者の吉原先生に直接届けることもできます」(宮城県『神経内科クリニック仙台』)
「私は糖尿病専門医として、低血糖対策、末梢神経障害問診、年間検査計画(尿中微量アルブミン) HbA1c、グリコアルブミン、1・5AG、C64、C128、PWV、IMT、CPR、 体重、血圧、薬物管理、インスリン導入、インスリン教育、CGM画像管理、CGM予約管理、CGMダイナミクス一体化組み込みなど 数多くのシステムを活用しています。また、ダイナミクスにはさまざまなデータを取り込めるのも魅力です。私は取り込んだデータを最大限活用して、年間で講演10本、糖尿病総会1本、研究発表2本、地方発表会2本ほどをこなしています」(福岡県『りい内科クリニック』)
電子カルテ「ダイナミクス」の評判は?
続いては、ダイナミクスの評判をランキングから考察していきます。日経メディカルOnlineの医師会員を対象に実施された「電子カルテ・ICT導入に関するアンケート2021」の結果、ダイナミクスはシェアランキング第3位にランクインしています。トップ10は以下の通りとなっています。
≪電子カルテ導入シェアランキング2021≫
順位 | 前回 | 企業名、代表的な製品名 | 形式 |
---|---|---|---|
1位 | 1位 | PHC「Medicomシリーズ」 | オンプレミス型 |
2位 | 6位 | ユヤマ「BrainBoxシリーズ」 | オンプレミス型/クラウド型 |
3位 | 5位 | ダイナミクス「Dynamics」 | オンプレミス型 |
同率4位 | 6位 | エムスリーデジカル「M3 Digikar」 | クラウド型 |
同率4位 | NEW | シィ・エム・エス「Doctor’s Desktop3」 | オンプレミス型 |
同率4位 | 10位 | 富士フィルムヘルスケアシステムズ「Hi-SEEDシリーズ」 | オンプレミス型/クラウド型 |
同率4位 | 2位 | 富士通Japan「HOPE」シリーズ | オンプレミス型/クラウド型 |
同率8位 | 9位 | キャノンメディカルシステムズ「TOSMECシリーズ」 | オンプレミス型 |
同率8位 | 2位 | ラボテック「SUPER CLINIC」 | オンプレミス型 |
同率10位 | 2位 | ビー・エム・エル「Medical Station」「Qualis」 | オンプレミス型 |
同率10位 | 6位 | 島津メディカルシステムズ「SimCLINICシリーズ」 | オンプレミス型 |
同率10位 | NEW | Donuts「CLIUS」 | クラウド型 |
同率10位 | NEW | MIU「Dopanet Doctors」 | オンプレミス型 |
また、同じアンケートにおける開業年数別の電子カルテのシェアランキングでは、「開業16~20年以下」「開業21年以上」の2つの部門で1位にランクインしていることから、電子カルテ黎明期からダイナミクスは支持率が高かったこともわかります。
オンプレミス型、クラウド型それぞれのメリット、デメリットも考えて電子カルテを選ぼう
これから電子カルテ導入を考えているなら、ランキングの順位のほかに、各電子カルテの特徴や、オンプレミス型/クラウド型の違いやそれぞれのメリット、デメリットにも目を向けることが大切です。形式の違いや各メーカーの特徴がわかれば、より自院にぴったりな電子カルテが見つかりやすくなりますよ。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2022年3月時点の情報を元に作成しています。