クラウド型電子カルテの「クラウド」とは?
クラウド型電子カルテの「クラウド」とはどういった意味なのでしょうか?
「雲の中で管理されている」といったイメージはあるものの、いまいち理解しきれていない方に向けて、ここでは「クラウド」(クラウド・コンピューティング)や「サーバー」の基本的な仕組みやその意味を、図を交えてわかりやすく解説していきます。
データを保存・管理している「サーバー」って何?
クラウドについて理解するために、まずは「サーバー」について知っておきましょう。
サーバーとは「サービスを提供するコンピュータやソフトウェア」を意味します。反対に、「サービスを提供されるコンピュータ」を「クライアント」と呼びます。
サーバーにはさまざまなデータが保存、管理されています。
クライアントは接続されているサーバーにデータなどを要求することで、サーバー側からのデータやサービスを受けることとなります。
このサーバーには複数のコンピュータ(クライアント)が接続できるようになっていて、サーバーはそれぞれのクライアントが要求した個別のデータを送り返します。
このように、複数のクライアントがネットワークを介してサーバーとつながる形式を「クライアント・サーバーモデル」と呼びます。
例えば、あなたがホームページを見ようとした場合、自分のパソコン(パーソナル・コンピュータ/クライアント)はインターネットを通じて、そのホームページのデータが格納されているサーバーに「このページが見たい」という要求を送ります。
そうしたら、サーバーはあなたのパソコンにホームページの情報を送ります。これにより、あなたのパソコンでホームページが閲覧できるようになります。
「クラウド」サービスの仕組み
それでは、今回の本旨となる「クラウド」とはどういったものなのでしょうか? 答えは、“インターネットを介してサービスを提供する形態や考え方”です。
クラウドサービスが普及する以前は、例えばメールや文書作成をするためには、自身のコンピュータに専用のソフトウェアをインストールしなければなりませんでした。メールを作成して送受信するためのソフト、文書や表を作るためのソフト……データを処理するためには、それらを自分のコンピュータに組み込まなければならなかったのです。
そうすると必然的に、性能の悪いコンピュータではデータ処理に時間がかかったり、問題が生じることもありました。
一方、クラウドサービスでは、これまで自身のパソコンにインストールしたソフトウェアが担っていたデータ処理などを、サービスの提供側であるサーバーが実行してくれます。そのため、専用のソフトウェアを自身のパソコンにインストールする必要もありません。
クラウドサービスの利用者は、サーバー側で処理してくれたデータやサービスを受け取って利用できるようになります。
ちなみに、こうしたサービスが「クラウド」と呼ばれるようになったのには、これまで自分のパソコンで行っていたデータ処理が、インターネットの先にあるサーバーによって実行される(どこで処理をしているのかがわかりづらい)ことから、“雲の上で起こった結果を手元に持ってくる”といったイメージにつながったとされています(諸説あり)。
「オンプレミス」と「クラウド」の違い
また、電子カルテを選定する際に検討されるのが、「クラウド」にするか「オンプレミス」にするか、という点です。オンプレミスについても、先ほど説明したサーバー・クライアントモデル(複数のクライアントがネットワークを介してサーバーとつながる形式)であることには変わりありません。
では、何が違うのかというと、コンピュータ間をつなぐネットワークがインターネットか、それともローカルネットワークかという違いになります。
ローカルネットワークとは、院内ネットワークなどのように狭い範囲に限定されたネットワークです。ローカルネットワークでは限られたコンピュータ間でのデータのやり取りが可能となります。ちなみに、ローカルネットワークは、いわゆるLAN(Local Area Network)とも呼ばれています。
この、インターネットを介さないローカルネットワークで接続されているのがオンプレミス型の電子カルテです。オンプレミスの場合、一般的にサーバーは自院に設置することとなります。一方で、サーバー・クライアント間をインターネットでつなぎ、サーバー上でデータ処理をする仕組みをとっているのがクラウド型電子カルテです。
サーバー上でデータを処理するのは同じですが、そのデータをクライアントとやり取りするのがインターネットか、ローカルネットワークなのか。導入コストやメリット、デメリットなどは異なりますが、基本的な仕組みとしてはこの違いでしかありません。
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クラウド型電子カルテの仕組み
ここまで、クラウド型電子カルテの仕組みを知るために、「サーバー」や「クラウド」の仕組みや意味について見てきました。それでは、実際のクラウド型電子カルテはどのように患者情報や主訴といったデータを管理・運用しているのでしょうか。その仕組みについてご説明します。
記入したカルテの内容はどうやって管理されているの?
一般的なクラウド型電子カルテの場合、契約している電子カルテサービスにログインすることで、自身のコンピュータ(クライアント)が電子カルテ事業者の管理しているサーバーに接続されます。こうして画面に表示されたカルテに入力した所見やSOAPといったデータは、インターネットを経由して第三者がアクセスしても判読できないよう加工され(暗号化)、サーバーに送られます。
データが送られたサーバーは契約者ごとに区分けされており、送信されたデータがほかの契約者(医院やクリニック)と混同されることはありません。こうして送られたカルテデータはサーバー上で管理・保管され、再診の際などにはインターネットを通じて同一患者の過去のカルテデータが送られてきます。
パソコンが壊れても、クラウドならデータを復元できる「バックアップ」の仕組みって?
クラウド型電子カルテのメリットとして、よく挙げられるのが「バックアップとしての有用性」です。
先ほど説明したように、クラウド型電子カルテではカルテデータはサーバーが保管・管理しています。
そのため、もし自身のパソコンが壊れてしまったとしても、カルテデータはサーバーに残っているため、被害を受けません。別のコンピュータ(クライアント)から契約している電子カルテサービスにログインすれば、過去のカルテデータがそのまま残っています。
一方、オンプレミス型の場合、クラウド型と同様にクライアントが壊れてしまってもサーバーが無事であれば、データの復元が可能です。しかし、サーバーが壊れてしまった場合、そのサーバーとは別にバックアップを取っていない限り、データの復元はできません。
クラウド型でもサーバーが壊れるリスクがないとは言えません。ただ、サーバーの置かれているデータセンターが複数存在してバックアップを取るなど、災害復旧(DR)対策がなされていることも多いです。
クラウド型電子カルテを使うために必要なもの
ここまで、電子カルテを例にとって「クラウド」について解説をしてきました。ここでは、実際にクラウド型電子カルテを使うために必要なものについて説明をします。
インターネット環境
「クラウド」とは、“インターネットを介してサービスを提供する形態や考え方”であるため、インターネット環境が必須となります。反対に言えば、理論上ではインターネット環境のある場所であれば、クラウド型電子カルテは世界中のどこでも使うことができます。
クライアント(パソコン)
電子カルテを表示し扱うためには、クライアントとなるパソコンなどのデバイス(電子機器)が必要です。
パソコンはもちろんのこと、近年ではタブレットパソコンに対応したクラウド型電子カルテも登場しています。タブレットパソコンでの電子カルテは、通常の診療だけでなく訪問診療でも広く活用され始めています。
クラウド型電子カルテサービスとの契約
当然ながら、クラウド型電子カルテを使うには電子カルテ事業者と契約を結ぶ必要があります。それぞれの電子カルテによって特徴や、できる/できないことなどが違ってくるので、比較検討した上で、ご自身に合った電子カルテを選ぶことをオススメします。
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なお、「クラウド」という言葉については現在、厳密な定義づけがなされておらず、本稿では一般的に使われる用語として説明しました。「論理分割」や「ベアメタルサーバー」といった専門的な用語および定義についてはここでは扱いませんので、ご了承ください。
特徴
予約・受付機能
対応言語
システムとの提携
提供システム
診療科目
この記事は、2020年4月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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