
ビルの1階に調剤薬局が入り、2階には内科、3階には皮膚科……といったメディカルビル、最近増えてきているようです。
ほかにも、たとえば駅近くの大きなビルのワンフロアに内科、眼科、皮膚科など各診療科目のクリニックが入っている、といった医療モールも増加傾向にあります。
メディカルビルや医療モールには、それだけのメリットがあるはずです。今回は「医療モールで開院するメリット・デメリット」について、約40年にわたり医療モールでの開院を手掛けてきた『日本調剤株式会社』に伺いました。
医療モールで開業するメリット
まずは医療モールでの開業についてのメリットからお伺いしてみました。
広告費を削減できる
モール全体が医療機関で構成されているため、広告を打たなくても認知されやすいことです。
今は、昔のように「開業すれば食べていける」時代ではないため、集患に力を入れることが不可欠。場合によっては、さまざまな種類の広告を出すなど、時間とお金をかけなければ患者に見付けてもらえないこともあります。
しかし、医療モールであれば、近隣エリアの住民やオフィスワーカーは「何かあればあそこに医療モールに行けばいい」と把握していることがほとんど。そのため、余計なコストをかける必要がありません。
ワンストップの医療を提供できる
患者の症状や検査結果によっては、他の診療科への紹介が必要なことがあります。
たとえば、糖尿病内科にかかっている患者であれば、眼科や整形外科の診療を必要としていることがあるでしょう。その際、同じ建物内に他の診療科が入っている医療モールであれば、すぐに紹介することが可能です。
場合によってはその日のうちにすぐに診てもらうこともできるため、患者に大きな安心感を与えることもできるでしょう。
より自分の専門に合った患者の来院が見込める
ただし、医療モールによっては、モール内に同じ診療科のクリニックが入居しているため、患者の奪い合いになるということもあるかもしれません。
それを防ぐためにも、わたしたちが企画している医療モールに入居するクリニックには、基本的には複数の診療科目を標榜しないようお願いしています。
たとえば、内科が専門の先生で乳幼児の診察もおこなう先生にも、小児科は標榜せず内科だけにしてもらうということです。これによって、それぞれの先生が自分の専門に特化した患者をより多く診ることができます。
医療モール始動前の入居であれば内覧会も注目してもらえる
また、医療モールは、空きさえあればいつからでも入居可能ですが、モールそのもののオープン当初の入居であれば、他のクリニックと一緒に内覧会を開催できるため、潜在的顧客からの注目度も高くなります。
また、建物完成前にも、医療モール建築中であることを示す垂れ幕を垂らすことが多いので、開業を待ち望んでいる近隣住民も多くいるということになります。
初期費用を安く抑えることができる
コスト面のメリットに関しては、イニシャルコストを削減できることが挙げられます。
1人での開業の場合、土地、建物のほか内装工事台も自己負担となりますが、医療モールでの開業であればビルの持ち主はオーナーであるため、基本的には内装費用のみを負担することになります。
内装費用は、エリアや建物によっても異なりますが、おおよそ坪50万円なので、30坪ほどの小規模なクリニックであれば約1,500万円ということになります。
一方、戸建てだと初期費用はどのくらいかというと、こちらもエリアや診療科などによって異なるものの、おおむね1億円程度。かなり差があることがわかると思います。
立地条件がよい場合が多い
また、医療モールは駅近、駅ビルなどである場合が多いことから、患者が気軽に訪れやすいのも大きなメリットです。
駅ビルであれば、通勤や通学で駅を利用している人は普段から存在を認識していますし、買い物のついでにクリニックを受診しようという人も多いでしょう。
複合商業施設内の医療モールの場合は、施設の駐車場が使えるため、駐車場を自院で用意する必要もありません。
トイレ掃除などに時間を取られることがない
医療モールのクリニックは、トイレを共有している場合が多いです。尿検査が必要な診療科などはその限りではありませんが、眼科や皮膚科などであれば、共用トイレを活用することで、掃除の手間を省けます。
医療モールで開業するデメリット
次に、デメリットについてもお伺いしてみました。
医療モールによっては、モール内に競合がある場合も
先に述べた通り、当社が手掛けている医療モールに入居するクリニック様には、複数の診療科目を掲げないようお願いしていますが、運営側の方針によっては、それをよしとすることもあるでしょう。
その場合、モール内に競合が入っている可能性があることになります。
人間関係が煩わしい場合がある
また、医療モール内に気が合わない人がいる場合は、人間関係を煩わしく感じることがあるでしょう。
1人での開業であれば、基本的には周辺のクリニックとも距離があるためさほど気を遣う必要がありませんが、同じ建物内で毎日顔を合わせる相手とソリが合わないとなると憂鬱に感じる人もいるかもしれません。
特に、人づきあいが苦手なタイプや、ひとりで集中して仕事したいタイプなどは向いていないかもしれません。
内装に制限がある
医療モールは自分の持ち物ではないため、内装工事に制限がある場合がほとんど。また、外壁などは、周囲との調和がとれなくなる可能性があることもあり、基本的には変えることができません。
医療モールによっては駐車場の収容台数が少ない場合がある
医療モールによっては駐車場の収容台数が少ない場合があります。もしくは、複合施設のワンフロアが医療モールである場合など、収容台数は多くても常に満車気味な場合もあります。
そのことが患者の不満につながることも考えられます。
同モール内の他クリニックの影響を多少なりとも受ける
モール内に評判のよくないクリニックがひとつでもあれば、モール全体のイメージが下がる場合があります。
もちろん、反対に自分のクリニックが原因でモール全体のイメージを下げる場合もあるので、一蓮托生であることを常に胸に刻んでおくことをおすすめします。
診療時間に関して、モールの規定に従わなければならない場合がある
物件によっては、日曜日が休館日だったり、21時以降は出入りができなくなったりします。その点に関しては、事前にしっかり確認して、自院の希望と合わないなどの場合によっては交渉も視野に入れてもいいかもしれません。
医療モール物件の探し方
続いては、医療モール物件の探し方について伺ってみました。
現状は開業コンサルタントからの情報収集がベター
たとえば、個人的に物件を知っている開業コンサルタントなどはいますが、物件情報をまとめているWebサイトなどは現状存在しません。
当社では、これまでの開発の経験、あるいは人脈から得た物件情報を「サイトにご登録いただいた先生方」に公開しています。
もし、ご興味があるようでしたら当社の運営する「メディカルセンター」にアクセスしていただければと思います。建設予定の物件などもご覧いただけます。
また、ご登録いただいた先生宛てに月2回、メールマガジンをお送りしているのですが、その中で新規物件のご紹介をしています。
――「医療モールで開業したい」という医師は増えていると思うのですが。
はい。そういった先生は多くいらっしゃいまして、物件が足らないのが現状です。「いち早く物件の情報が欲しい」というご要望を頂いておりますので、そのためにもメールマガジンを配信している次第です。
――『日本調剤株式会社』さんに相談するのが最も話が早いのでしょうか。
私どもでももちろんけっこうですし、最近増加している医療コンサルタントの方にお話しいただくのでもいいと思います。当社では医療コンサルタントの方々とも密に連絡を取って、情報交換をさせていただいております。
『日本調剤株式会社』の運営する『MedicalCenter.jp』
「人口の増えるエリア」を探すのがおすすめ
今、日本は全体としも人口が減っていますので、対策を取っていないエリアのほとんどは人口減少に向かっていると考えられます。
一方、いまだにタワーマンションが建てられて人口が増加している場所もあります。「まだ人が増えるエリア」を見つけて開業するのがよろしいのではないでしょうか。
そういうエリアをいち早く見つけた方が勝者になると思います。また、医療モールで開業したいのであれば、ぜひご相談をいただけたらと思います。
医療モールの紹介件数が最も多いのは?
『日本調剤株式会社』によれば、昭和当時に企画された医療モールに入居した医師の多くが、現在もそこで診療を続けているとのこと。クリニックを移転させる医師はほとんどいないのだそうです。
このことからも、やはり医療モールでの開業は堅く、末永く継続できることがわかります。
「ここで開業したい」という希望の場所に医療モールができるという情報をキャッチしたら、すぐにエントリーしましょう。人気の場所はすぐに埋まってしまうそうです。
また前述の通り、医療モールの新規案件というのが一括して集まるサイトは現状存在しません。扱ってきた件数、紹介件数が最も充実しているのは、今回ご紹介した『日本調剤株式会社』の MedicalCenter.jp とされています。
もし、医療モールで開業したいという希望があるのでしたら、『日本調剤株式会社』に相談してみてはいかがでしょうか。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2022年3月時点の情報を元に作成しています。