電子カルテの多くは、幅広い診療科で用いることができるよう、汎用性が高いものになっています。しかし、診療科によっては、汎用性よりも専門性が求められることもあります。例えば「精神科」は、専門的な電子カルテが必要な診療科だといわれています。精神科向け電子カルテのトップシェアを誇る『株式会社レスコ』に、精神科で専門性の高い電子カルテが求められる理由や、精神科における電子カルテ導入の現状などを伺いました。
精神科のニーズに応じた電子カルテは少ない
――なぜ精神科では専門性の高い電子カルテが求められるのでしょうか?
精神科医療においては、その時々の症状だけでなく、その患者さまの「成育環境情報」(一人ひとりの価値観を形成する、生まれてから現在までの生活環境や家庭環境などのバックグラウンド)を知ることが非常に重要とされています。
また精神科には、一般的な外来診療を行うクリニックのほか、デイケアや訪問看護スタッフなどによるチーム医療を行なう「多機能型精神科診療所」もあるなど、診療形態が多岐に渡ります。
こうした精神科ならではの特徴から、精神科で求められるニーズは他の診療科とは異なります。「精神科でも使える電子カルテ」ではなく、「精神科専用の電子カルテ」が必要なのです。
――精神科での電子カルテ利用は進んでいるのでしょうか?
精神科医療のニーズに応えられる電子カルテは市場に多くありません。結果として精神科での電子カルテの普及はあまり進んでいないと考えられます。
地域包括ケアにも対応した精神科向け電子カルテ
――なぜ精神科向けの電子カルテを開発しようと考えたのでしょうか?
『Waroku(ワロク)』には、「記録の輪」という思いが込められています。「これからの精神障害にも対応した地域包括ケアシステム(以下、「にも包括」)」の時代に対応できる、新しい電子カルテを作りたい」という思いで、まずは施設外でも利用可能なクラウド環境での電子カルテを作ろうと考えました。そこで生まれたのが、2017年5月にリリースした精神科クリニック向けクラウド型電子カルテ『Warokuクリニックカルテ』です。
――「地域包括ケア」というのがポイントになるのですね。
現在は、さらなる結びつきを強めた「地域医療連携」が求められています。そのため、レスコは地域包括・連携に寄与するためのシステム構造「地域カルテ」の構想を生み出しました。「地域カルテ」とは、クラウド環境の共通基盤『Warokuプラットフォーム』上に、病院向け・クリニック向け・訪問看護向けなどのそれぞれのシステムを構築します。
情報の一元管理やAPI連携によるスムーズな情報共有を可能になるだけでなく、基盤に蓄積した情報をデータヘルスに活用できるなど、「にも包括」時代の地域医療連携をサポートするためのシステム構造となっております。
――「地域カルテ」の考えはどのような取り組みに生かされていますか?
弊社では、この「地域カルテ」の考えと、レスコが培ってきた精神科向け電子カルテの経験と知見を活かし、精神科病院向けクラウド型電子カルテ『Warokuホスピタルカルテ』(2022年2月発表。同年5月ファーストユーザー提供予定)を開発しました。現在提供中の『Warokuクリニックカルテ』『Waroku訪問看護』『Warokuパブリックヘルス』についても、順次『Warokuプラットフォーム』への移管を進めていく予定です。
また、「にも包括」時代に向けて、患者さまのライフログを統合化し、PHRに利活用できるデータとして環境整備を整えていくことも考えております。『Warokuプラットフォーム』という電子カルテの基盤上に、各施設の電子カルテを構築することで、これまで以上の情報共有が実現可能となります。
――これから開業を考えている精神科医に向けてひと言お願いします。
診療録の保存期間は5年と言われておりますが、一般的に治療に時間がかかる精神科はその限りではありません。精神科の診療録は、患者さまの生涯に渡って保存しなければならないともいわれています。
電子カルテを選定される際は、システムの内容はもちろん、作っているメーカーの将来性、事業継続性を見ることも必要です。実際、「長く付き合っていけるメーカーなのか」を判断材料にしている先生も多くいらっしゃいます。セキュリティ対策、BCP対策、レスポンスなど、気になる点があれば遠慮なくお問い合わせいただき、納得できる電子カルテを選択いただきたいと思います。
『Warokuクリニックカルテ』の機能と特徴
『株式会社レスコ』が提供する『Warokuクリニックカルテ』は、精神科クリニック向けのクラウド型電子カルテです。外来受付から診療、会計、次回予約までを一つのシステムでサポートしてくれます。
『Warokuクリニックカルテ』は以下の特徴があります。
1.読みやすい
一般的な電子カルテと異なり、精神科診療の機能に絞っているため「精神科医が知りたい情報」をストレスなく扱うことができます。患者さんの基本情報だけでなく、治療歴・生活歴・サマリーを時系列でスライド表示できる形になっており、診察の合間でも患者情報を把握しやすくなっています。また、受付患者数、受付からの経過時間など診察状況がひと目で確認できます。
2.書きやすい
また、あらかじめ精神科でよく利用するテンプレート(サンプル)を搭載。記載する際ににはキーボード入力ではなく、簡単なマウス操作での記録が可能です。テンプレートは、クリニック側で自由に編集可能です。「文書管理機能」もあり、簡単な操作で「診断書」や「紹介状」などの文書を生成できます。
また、基本的な心理検査項目をあらかじめ準備。そのままオーダーすることが可能です。処方についてもオーダーパレットからワンクリックオーダーができる仕組みです。精神科診療での処方は前回と同じ、または薬の増減をするケースが多いため、前回の内容がそのまま表示されるなど指示が容易にできる工夫もされています。
3.手軽に使えるクラウド型
インターネット環境とパソコンがあればすぐに利用できる手軽さも特徴のひとつ。常に最新バージョン(クリニック側でアップデート作業の必要なし)が利用でき、サーバーのメンテナンスも不要です。データは安全なデータセンターへ保管されているため、もしものときの備えになります。
4.豊富なオプション機能
オプションとして「Web予約」機能が備わっているため、スムーズな受付・診察が可能です。予約対応は365日24時間。患者カルテと一度ひも付けすれば、その後も予約情報と患者カルテが連携し続ける形です。また、デイケアの指示や受付、日報記載などが可能な「デイケア機能」、オーダー内容を総合的・多角的にチェックする「処方チェック機能」もオプションとして用意されています。
精神科医療機関での活用例
特に精神科のニーズにマッチした機能として「成育歴」と「情報共有機能」が挙げられるとのこと。『Warokuクリニックカルテ』では、患者さんの成育歴を登録・管理することが可能。診察前の短い時間でも患者様の状態把握をスムーズに行えるよう、エピソードや治療歴などの記録をグラフやチャートなどの形式で、視覚的にタイムライン表示する工夫が行われています。
また、医師の記録だけでなく、全てのスタッフの記録が一カ所(カルテページ)に集まり時系列に並んで表示されます。これにより、情報を集めるために複数のページを開く必要がなくなり、スムーズに情報共有できます。他にもメッセンジャー機能を搭載しており、スタッフ間でより細かな情報共有が可能です。
『Warokuクリニックカルテ』の活用例を聞いたところ、クラウドの特性を活かした、ACTや訪問診療、訪問看護での利用が多いとのこと。また、多機能型精神科診療所では、デイケア機能を生かした運用が行われています。その他、『Warokuクリニックカルテ』や『Waroku訪問看護』などレスコのツール同士を連携させ、同じ法人内で情報共有しながら利用している医療機関もあるそうです。
他システムとの連携
『Warokuクリニックカルテ』の医事会計は日医標準レセプト『ORCA』もしくは、富士通レセコン『HOPE SX-S』、『SX-R』と連携して行います。また、予約についてはシステム自体に予約機能が備わっていますが、他社予約システムとの連携も可能です。外注検査との連携も可能です。
『Warokuクリニックカルテ』の導入プロセス
『Warokuクリニックカルテ』は、まず体験版の利用からスタートとなります。ホームページから体験版の申し込みを行うと、体験版利用に必要なIDとパスワードが発行されます。その後、本格的に利用したい場合に製品版の申し込みを行う形です。体験版利用から運用スタートまでの期間は約3カ月程度必要となります。
その間、クリニック側ではインターネット回線の準備やパソコン、プリンターなどの用意を行います。また医事会計システムのベンダーとの相談(システム構成や導入スケジュール)もクリニック側で行う必要があります(レスコ側で紹介することも可能)。
※より詳細な導入例は以下の「体験版お申込みから導入までの流れ」をご確認ください。
『Warokuクリニックカルテ』の導入費用
導入費用はオプションなどの導入により価格が変わります。見積りについては、下記の「お問い合わせフォーム」から連絡し、個別対応になるとのこと。
『Warokuクリニックカルテ』のサポート体制
『Warokuクリニックカルテ』は専用サポートページを用意しており、利用の際に困ったことや対処方法の案内を行っています。通常時は平日9時~18時の対応で、専用サポートページからの連絡となります。また、カルテが利用出来なくなったなどの緊急障害時については24時間365日対応を行っています。
『Warokuクリニックカルテ』利用者からの声
実際に導入しているクリニックからの感想を聞いてみたところ、
といった声が寄せられているとのこと。
一般的なクリニックとは患者さんへの向き合い方や診療のプロセスが異なる精神科では、汎用性よりも高い専門性のある電子カルテが必要です。『Warokuクリニックカルテ』は、精神科での診療で求められるニーズを高いレベルで満たしています。今後開業するという医師だけでなく、すでに開業している院長も導入を検討してみてはいかがでしょうか。
取材協力:『株式会社レスコ』
精神科クリニック向けクラウド電子カルテ『Warokuクリニックカルテ』
特徴
オンライン診療機能
システム提携
診療科目
この記事は、2022年6月時点の情報を元に作成しています。