神経疾患の一つである「てんかん」は、いつ発作が起こるのか予測が難しく、またその頻度も高いため、治療には医師だけでなく家族のサポートも不可欠です。『ノックオンザドア株式会社』では、『nanacara』と『nanacara for Doctor』という2つのサービスで、てんかんの子供を持つ家族と、治療に当たる医師をサポートしています。今回は、『nanacara』『nanacara for Doctor』がどんなサービスなのか、開発の背景なども踏まえご紹介します。
てんかん患者・医師の声から生まれたサービス
――『nanacara』とはどんなアプリなのでしょうか?
『nanacara』は、患者ご家族とてんかん専門医の声から生まれたアプリです。発作記録機能、服薬履歴機能、医師とつながる機能が主な機能です。『nanacara』で記録した情報は、『nanacara for Doctor』に集約されます。医師は患者さんの発作回数や発作時の動画などが確認できるため、正確な状況を把握した上で、適切な治療が行えるようになります。
――開発の背景を教えてください。
「スマホでもっと簡単にてんかん発作を記録できたら、診療の役にも立つし、日々のケアや生活にゆとりを持ってのぞめるかもしれない」という考えの下、2018年1月にプロジェクトがスタートしました。
最初は患者ご家族とてんかん専門医の会話から始まり、それから2年以上にわたり、延べ250名以上の患者さんやご家族と綿密なディスカッションを重ねてきました。また、アプリのテストにも患者さんとご家族が参加し、さまざまな課題が話し合われました。
「家族で情報を共有したい」「発作が起きたらすぐに記録を取りたい」など、寄せられた声を機能に反映するために、何度もアプリ設計を見直しました。てんかん専門医にもヒアリングを重ね、2020年3月に完成したのが『nanacara』です
――『nanacara for Doctor』はどのような経緯で生まれたのでしょうか?
『nanacara』の利用者から「『nanacara』で記録している発作情報や動画を診療時に先生と共有したい」との要望が多く寄せられたからです。『大阪市立総合医療センター 小児青年てんかん診療センター/小児神経内科』に協力・監修いただき、2020年10月よりサービスを開始しました。
すでに100以上の医療機関で用いられている
――現在どのくらいの数のクリニックに採用されているのでしょうか?
2022年3月現在、『nanacara for Doctor』は全国で100施設を超える医療期間にて導入され、200名以上のてんかん専門医の方々にご活用いただいております。また、『nanacara』は1万6,000ダウンロードを記録しています。
――医療機関ではどのように活用されていますか?
『nanacara』アプリで記録した発作記録情報を診察時に『nanacara for Doctor』で利用する事で、患者さまの日々の発作記録情報や、服薬履歴を確認するといった使い方が多く見られます。総じて、てんかん診療の「質の向上」に活用されていると感じています。
――これから開業する医師にひと言お願いします。
クリニックは開業される地域の医療に必要不可欠な存在です。また、患者さんが地域で継続性のある適切な医療を受けられるようにするため、クリニックと患者さんとのつながり、クリニックと地域の医療機関とのつながりを作ることが求められているかと思います。弊社では、患者さんの生活を豊かにするサービスを先生と一緒に作ってまいりますので、ご期待いただきたいです。
『nanacara』『nanacara for Doctor』の機能と特徴
『nanacara』の機能・特徴
『nanacara』は以下のような特徴を備えています。
発作記録機能
発作が起こった際の様子の録画、時間計測ができます。録画開始ボタンと計測開始ボタンは大きく表示しており、突然の発作でも対応しやすい工夫がされています。
グラフ作成機能
発作記録を自動でグラフ化します。回数のほか、発作の種別も自動で作成してくれます。その日の体調もスタンプで記録できるため、体調と発作の状況を併記可能な点もポイントです。
医師との情報共有機能
ワンタイムパスワードを入力することで、アカウントを医師と共有することができます。記録したデータは医師側の専用メニューから閲覧可能です。
『nanacara for Doctor』の機能・特徴
『nanacara for Doctor』は以下のような特徴を備えています。
発作状況が分かりやすい
「見やすさ」「操作性」に注力しており、特に患者さん個人の発作状況はグラフで分かりやすく表示されています。また、『nanacara』に記録した動画も確認できるため、より正確な状況判断や治療が可能になります。ヒアリングの負担軽減にもつながります。
患者さんの状況は24時間確認可能
患者さん側で「ワンタイムパス制限解除」を行うことで、24時間医師側でも患者さんの状況が確認できるようになります。医師側も常に患者さんの状況が確認できますし、患者さん側に「先生とつながっている」という安心を提供できます。
ダウンロードなどの手間がかからない
『nanacara for Doctor』はブラウザ上で利用する形となり、アプリやソフトのインストールは不要。パソコンとインターネット環境さえあればすぐにでも使える手軽さも魅力のひとつです。
他システムとの連携
『nanacara for Doctor』は電子カルテとの連動が可能です。患者さんの記録はPDFで出力できる形になっており、PDFを印刷してスキャンすることで、電子カルテに保存ができます。
『nanacara』『nanacara for Doctor』の導入プロセス
『nanacara』はダウンロードしてユーザー登録を行うことで利用可能です。ダウンロードから登録、基本操作をまとめた動画がYouTubeにアップされているので、患者さんに動画を案内してダウンロードしてもらうという形でもいいでしょう。
『nanacara for Doctor』を導入したい場合は、ホームページから問い合わせすることで、最短翌日の診療から利用することが可能です。クリニック側で用意するものは、パソコンもしくはタブレットとインターネット環境のみとなります。
『nanacara』『nanacara for Doctor』の導入費用
『nanacara』の基本機能は全て無料。『nanacara for Doctor』も現在は全ての機能が基本無料で利用できるようになっています。
『nanacara for Doctor』のサポート体制
導入したい場合、また導入後に何か分からないことがあった場合は、専用のフォームから問い合わせる形になります。
『nanacara for Doctor』「お問い合わせ」フォーム
導入サポート、操作方法、トラブルなどについて、営業担当者が対応してくれます。
『nanacara for Doctor』利用者からの声
実際に利用しているクリニックからは、「患者さんの情報を『正確に共有・把握・保存』することができる」「患者自身の成人期移行の一助になる」「医師と患者家族との距離感が縮まる」といった声が寄せられているとのこと。
『nanacara for Doctor』は全国100以上の医療機関で導入されるなど、てんかん治療を行うクリニックから大きな支持を得ているサービス。医療の質を高めるという意味でも、てんかん診療には欠かせないツールといえるでしょう。今後、てんかん診療に当たる開業医の方は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
取材協力:ノックオンザドア株式会社
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2022年6月時点の情報を元に作成しています。