クリニック開業にあわせて検討すべき「リスク」と必要な4種類の保険を解説

家族を守る大黒柱として、勤務医時代にも生命保険や賠償責任保険に加入していたドクターが多いでしょう。

しかし開業となれば、組織を守る経営者としての立場も加わり一層責任は重くなります。自身や家族に加えて、クリニックやそこで働くスタッフ、スタッフの家族のことのリスクも想定する必要が生じます。とは言え、優先度の低い補償を手厚くすることで保険料が経営の負担になるようでは本末転倒です。

この記事では、クリニックの新規開業時点にスポットを当ててリスク別に必要な保険を4つ紹介します。ぜひ参考にしてください。

目次
  1. クリニック経営と家族を守るための保険活用
    1. 事業計画は院長とクリニックがあってこそ成り立つ
    2. クリニック開業時に入っておくべき保険は4種類
  2. 1:休業補償の考え方
    1. 所得補償保険
    2. GLTD(団体長期障害所得補償保険)
  3. 2:建物や医療機器にかける火災保険
    1. 火災保険特約による休業補償は新型コロナもカバー
  4. 3:医師賠償保険
  5. 4:融資、借入金に対する生命保険
  6. 融資を受ける時点で専門家に相談してください

クリニック経営と家族を守るための保険活用

ほとんどの新規開業クリニックが事業者としては小規模なものです。休業や災害、医療事故や訴訟等に対する適切な備えがなければたちまち事業者として立ち行かなくなる恐れがあります。

開業時は、個人事業主として開業するケースも多いでしょう。その場合、勤務医のときとは異なり、クリニックの負債も院長個人が背負うことになる無限責任となるので、クリニックの資産だけでは負債を支払えない場合は、個人の財産を使って弁済しなければなりません。

事業計画は院長とクリニックがあってこそ成り立つ

クリニック経営の中核は言うまでもなく院長です。金融機関などから開業資金、運転資金を借り入れる際に作成する事業計画書は、クリニックの設備や機器があり、そこで院長を中心に医療が提供されることが前提に組み立てられています。

したがって院長自身または建物や設備のいずれかになんらかの不具合が起こると、直ちに操業が止まってしまい、収入が途絶えるリスクがあることをおさえなければなりません。

クリニック開業時に入っておくべき保険は4種類

開業時に加入しておくべき保険は以下の4種類です。

1. 休業補償
2. クリニックの建物とか内装医療機関に対しての火災保険
3. 医療事故に対する賠償責任保険
4. 借入金に対する生命保険

どのような点に注意すべきかを以下で、ひとつずつ解説します。

1:休業補償の考え方

借入金の返済や賃料、従業員の給料などは固定費のため、休業の場合も支払う必要があります。そのため、通常通り診療していたときに見込まれる所得が一部でも補償される保険に加入しておくとよいでしょう。

所得補償保険

院長が療養せざるを得ない場合に、その間の所得を補償する保険です。開業時点で加入する院長が多いのが特徴です。

相場としては月額3万円程度の掛け金で、短期の休業から長期療養ケースまでを組み合わせたプランニングが可能です。

GLTD(団体長期障害所得補償保険)

所得補償保険と同じく病気やケガのために就業不能となった場合の所得を補償するタイプの保険です。医療法人で働く医師などが加入しているケースも多いので、独立開業前から知っているというドクターも多いかもしれません。

2:建物や医療機器にかける火災保険

診療所の建物や設備の損害への準備も欠かせません。火災はもちろんですが、台風や豪雨による浸水被害など、最近は自然災害も多いため被害額が大きくなるケースもあります。

保険会社からは事業者向けの「店舗総合保険」への加入を勧められることがあるでしょう。

クリニックが1階にある…水害への備えを手厚く
自動車の交通量が多いので事故による物損に備える
高額な機器や設備の盗難に備える

などクリニックの特性にあわせて、代理店や保険会社に相談するとよいでしょう。

火災保険特約による休業補償は新型コロナもカバー

火災保険に特約を追加しておくと、火災や台風の影響で休診するときに見込まれる収入を確保できます。また、新型コロナで院長やスタッフが感染した場合や、保健所の指示でクリニックを消毒するなど休診を指示された場合にも支払いの対象となります。

休業期間でも変動しますが100~200万円の補償が受け取れるので、本来の収入には達しなくても、固定費支払いなどのアシストにはなるでしょう。

3:医師賠償保険

勤務医のときにも自身で「医師賠償責任保険」に加入していたケースも多いでしょう。医療事故などが生じた際に賠償に加えて弁護士の費用などもカバーされるものです。

しかし開業医では管理者としての責任の範囲が広がるため、勤務医時代の賠償保険とは別物と考える必要があります。

開業医向けの賠償保険では院長自身の医療行為だけでなく、スタッフが賠償事故を起こしてしまった場合や、非常勤医師の管理責任もカバーされます。さらにクリニック内で起きた物損、人損の事故にも対応するケースもあるのです。

医師会に入会している場合は、独自の医師賠償責任保険制度が利用可能です。日本医師会と地域医師会、保険会社が協力して紛争処理を行うもので、「身体の障害につき損害賠償を請求され、その請求額が100万円を超えるもの」が対象となり、1事故1億円の支払い上限など
の規定が設けられています。

特約を追加すると、開設者・管理者として自身以外が起こした医療事故の賠償責任にも備えられる仕組みもあります。

出典:日本医師会|日本医師会医師賠償責任保険制度

日本医師会の「100万円以下は免責」という点をカバーするには、所属している学会や、出身大学または地元の医師会のいずれかを頼るのがおすすめです。

4:融資、借入金に対する生命保険

融資・借入金に対する生命保険を新たに検討すべきでしょう。開業前にすでに個人としてほとんどの人が生命保険に加入済みと考えられますが、今回のものは、院長が死亡した場合に「家族へ財産を残す」ためではなく、「家族へローンが残らないように備える」ため目的が大きく異なります。

通常、金融機関で融資を受ける際には団信(団体信用生命保険)にセットで入り、院長にもしものことがあっても借金の返済義務が免除されるようにします。ただし自動的に団信に加入すると割高になる可能性もあります。

団信の保証を手厚くしようとすると、ローン金利が高くなるケースもあるので注意が必要です。また団信では契約者が死亡時は補償されても、病気やケガによって長期間仕事ができない場合は補償外です。この場合入院保険に加えて、冒頭で紹介した休業補償は収入の補填のために不可欠となるでしょう。

団信ではなく生命保険という選択肢もあります。院長の年齢が若い場合や、喫煙歴がない、いわゆるメタボ体型に該当しないなどでは、生命保険のほうが2割程度も保険料が安くなる可能性があるのです。また逆に持病が原因で団信に加入できない場合も別建ての生命保険加入を考えなくてはなりません。

融資を受ける時点で専門家に相談してください

事業主となると、サラリーマン時代とは保険の考え方も変わってきます。しかしクリニックのニーズや院長家族の状況も千差万別のため、保険代理店などに相談するのがよいでしょう。

今回紹介した4つの保険は異なる種類なので、複数の保険会社を組み合わせるのが効果的です。また生命保険は融資時点、休業補償と賠償責任保険は開業日の少し前、火災保険は内装工事が完了するくらいの時期から保険契約を開始すると安心です。

「何か」が起きてからでは遅く、開業が近づけば他にもさまざまな仕事が増えるため、まとまった時間を取るのが難しくなります。保険がかかっていない期間を作るのはリスク管理から好ましくないので、まずは融資が決まるタイミングで、一通りの保険説明を受けておくことをおすすめします。

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藤原友亮

執筆 執筆者 | 藤原友亮

医療ライター。病院長や医師のインタビュー記事を多く手がけるほか、クリニックのブログ執筆やSNS運用なども担当。また、法人営業経験が長く医療機器メーカーや電子カルテベンダーの他、医師会、病院団体などの取材にも精通している。


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