M&Aに関する用語では、専門家でないと知らない用語がたくさんあります。そのため、病院やクリニックのM&Aに興味があるなら、最低限の用語は学んでおきたいところです。今回はそのなかから、「のれん代」について説明していきます。
「のれん」の言葉の由来は?
「のれん代」は、貸借対照表における勘定科目のひとつに使われている会計用語で、譲渡企業(売り手)の純資産額(時価)と実際の譲渡価格(=M&A総額)の差額を指します。
なぜ、純資産額と譲渡価格に差があるかというと、譲渡価格には「数字では表せない企業価値」が含まれるためです。つまり、数字では表せない企業価値が高ければ高いほど、のれん代が高くなるということになります。
「負ののれん」が発生する場合もある
ただし、数字で表せない企業価値は必ずしも高いとは限りません。譲渡企業にマイナス要素が多い場合、譲渡価格が純資産額を下回る場合があります。その場合、「負ののれん」ということになります。
「のれん」の言葉の由来は?
「のれん代」の「のれん」の言葉の由来となっているのは、飲食店などの店先にかかっている「暖簾(のれん)」です。どの店の暖簾も、その店の顔となっているだけでなく、信用力やブランド力を表す看板でもあることから、病院やクリニックのM&Aにおいて使われる「のれん」も、病院やクリニックが積み重ねてきた信頼やブランド力などの、数字では表せない価値などを示す言葉として使われています。
「のれん代」の主な構成要素は?
のれん代の構成要素としては以下のような要素が挙げられます。
など
これらの要素は、M&A後の経営状況にも大きな影響を及ぼすことが考えられます。そのほか、クリニックのアクセスのよさなども、M&A後の収益力を左右する要素 といえるので、すべての無形資産を金銭的に評価して「のれん代」にひっくるめて考えることができます。
「のれん代」と「営業権」の違いとは?
「営業権」は、「のれん代」と似た意味を持つ用語ですが、譲渡価格の考え方において違いがあります。どんな違いがあるかというと、のれん代はM&A総額から純資産を減算することで算出しますが、一方の営業権は、「譲渡対象の病院・クリニックの純資産に価値を加算する」という考え方によって成り立っています。計算式にすると、「譲渡対象の病院・クリニックの純資産+営業権=譲渡価格」ということになります。
「のれん代」の算出方法は?
目に見えない資産である「のれん」はどのようにして算出すればいいかというと、直近1~5年の間の営業利益をもとに、いくつかの調整項目を考慮したうえで算出するのが一般的です。どのような調整項目が考慮されるかというと、以下の3点が考慮される場合が多いです。
なぜこの3点かというと、これらの支出は、本来のクリニックの事業価値を算出するためには不要なので、これらの金額を少なく調整することによって相対的に利益が上がることとなるためです。
「のれん代」はあくまでも目安と考えよう
ここまで説明してきた通り、基本的には、数字では表せない企業価値が高いほど、のれん代は高くなるということになります。ただし、のれん代が高ければ高いほどいいということはなく、いくら実際に価値がある病院・クリニックであったとしても、譲渡したいのに後継者が見付からないのであれば意味がありません。そのため、場合によってはのれん代を平均よりも下げることが得策ですし、譲渡先を急いで見つける必要がないのなら、ひとまずは高めの金額に設定して譲渡先を探すのもあり。いずれにしても、のれん代はあくまでも目安と考えて、うまいこと交渉を進められるようにしてくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年1月時点の情報を元に作成しています。