ネットニュースやSNSを見る限り、紙カルテから電子カルテに切り替えるクリニックは増えている印象を受けますが、実際のところ普及率は推移しているのでしょうか?
今回はそんな電子カルテについて、とくに「クラウド型」にフォーカスを当てて、その特徴や「オンプレミス型」との違い、導入するメリットなどを解説していきます。
電子カルテとは?
電子カルテとは、パソコンやタブレットなどで入力した患者の症状や治療内容などを保管・管理するためのシステムです。
医療分野のIT化は、1960年代のレセコンの登場が最初とされていますが、その後、1970年代にはオーダエントリシステムが誕生して、90年代に入ってからようやく電子カルテが誕生しました。
しかし、患者の診療録を電子的に保存することが認められることとなったのは1999年のこと。この年、厚生労働省から「法令に保存義務が規定されている診療録及び診療諸記録の電子媒体による保存に関するガイドライン等について」が通知され、「電子保存の三原則」を満たしていれば、診療録を電子的に保存してOKだと定められたのです。
また、2005年には、日本医師会の標準レセプトソフトである「ORCA」が誕生。これをきっかけに、次々と電子カルテを開発するメーカーが出てきて、ORCA連動タイプの電子カルテが販売されることとなりました。
つまり、電子カルテの歴史が本格的に始まったのはごく最近のこと。そう考えると、電子カルテの導入がまだであっても引け目に感じることはなく、今から乗り換えてもけっして遅くはないのです。
電子カルテの現在の普及率はどのくらい?
厚生労働省の公表によると、2020(令和2)年時点での、病院における電子カルテ普及率は57.2%、また、クリニックにおける電子カルテ普及率は49.9%と、いずれも半数前後が電子カルテを導入していることがわかっています。
2008(平成20)年に実施された同調査の結果は、病院の電子カルテシステム普及率14.2%、クリニックは14.7%であることから、今後さらに普及率が上がっていくことが予想されます。
病院 | クリニック | |
2008(平成20)年 | 14.2% | 14.7% |
2011(平成23)年 | 21.9% | 21.2% |
2014(平成26)年 | 34.2% | 35.0% |
2017(平成29)年 | 46.7% | 41.6% |
2020(令和2)年 | 57.2% | 49.9% |
医療情報の標準化とは?
電子カルテの普及率が年々上がっている理由のひとつには、厚生労働省が「医療情報の標準化」を推進していることが挙げられます。
医療情報の標準化とは、医療機関内部でのやりとり、または異なる医療機関とのやりとりにおいて、電子データで医療情報を活用できるよう、医療情報システムを標準的な形式のメッセージや、標準とされるコードを用いて設計することです。
このような施策に力を入れる目的としては、医療情報の標準化や共通ICTインフラを整備し、医療の質と効率性が向上して、誰もが安心して暮らせる社会の実現があります。
マイナンバーカードを健康保険証として利用するための整備を進めてきたこともそのひとつですが、普段服用している薬や持病などの情報をオンラインで確認できるようになれば、たとえば、自宅から離れた場所で医療が必要になった患者の処置をスムーズに行うことなども可能となります。
参照: 厚生労働量「医療分野の情報化の推進について」内「医療情報の標準化」 より一部抜粋
電子カルテには「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類がある
電子カルテには、「クラウド型」と「オンプレミス型」の2タイプの電子カルテが存在します。クラウド型電子カルテは、電子カルテのメーカーが用意したサーバーに患者情報を保存するシステムで、オンプレミス型電子カルテは、各医療機関で用意したサーバーに患者情報を保存します。
「クラウド型電子カルテ」という言葉を普段何気なく使っている人も、案外、「クラウド(cloud)」の言葉の意味は説明できないかもしれません。「クラウド」とは、ユーザーがソフトウェアやインフラを持たなくても、インターネットを通じて、サービスを必要なときに必要なぶんだけ利用するという考え方です。
この説明を聞くと、「データを手元に保管できないなんて安全性に不安はない?」「セキュリティは万全なの?」という疑問を抱く人もいるかもしれません。その点に関しては、クラウド型電子カルテを提供しているメーカーももっとも力を入れている点で、万全の態勢を整えています。詳しくは、以下の記事をご参照ください。
参照:【図解】クラウド型電子カルテって本当に安全? セキュリティの仕組みを解説
また、ちなみに「オンプレミス」は英語にすると「on-premises」。プレミスは「建物」「店舗」「施設」などを意味する英語で、つなげると「建物内で」。電子カルテの場合、サーバーが院内にあるということになります。
つまり、クラウド型電子カルテとオンプレミス型電子カルテとの2つを比べたとき、院内に専用サーバーを設置する必要がなく、サーバー設置の費用やスペースが不要で、低価格で導入できるため、クラウド型カルテを選ぶ、という医師も増えてきているようです。そのほかのメリットに関しては、下記記事をご参照ください。
参照: クラウド型電子カルテのメリット・デメリットを、電子カルテ「NOA」開発者が解説
電子カルテを導入するメリットについて
自院にサーバーを設置しなくてよいこと、低価格で導入できることはクラウド型電子カルテ特有のメリットですが、クラウド型、オンプレミス型に共通のメリットもあります。
患者の検索に時間がかからない
紙カルテの場合、患者数が多いと、そのなかから特定の患者のカルテを探すのに時間がかかりますが、電子カルテであれば検索をかければ一発ででてきます。
カルテを保管するスペースが要らない、ペーパーレス
紙カルテは保管するためのスペースを必要としますが、電子カルテはすべてのデータがサーバーに保管されるため、保管スペースの確保が不要です。
読み間違いによる転記ミスがなくなる
記入した人の字が読みにくいと転記ミスのリスクがありますが、電子カルテであればその心配は不要です。
情報共有がスムーズ
紙カルテの運用だと、カルテが手元になければ患者情報を確認することができませんが、電子カルテなら、院内のどこにいても、タブレットやパソコンを使って患者情報にアクセスすることができます。また、スタッフ間での情報共有がスムーズです。
書類作成の手間を削減できる
患者の住所が必要なとき、他院に紹介状などを書くときなど、電子カルテ上のデータを利用すれば簡単に書類を作成することができます。手書きする必要もありません。
レセプト請求の手間を削減できる
レセコン一体型の電子カルテを導入するか、または電子カルテとレセコンを連携させることによって、レセプト請求の手間を削減できます。
患者によりよい医療を提供するために、クリニックに何ができるかを考えよう
長年、紙カルテで運用してきたクリニックにとっては、電子カルテへの切り替えが面倒に感じられて当然ですし、ITが得意ではない医師であれば、なるべくパソコンを触ることなく診療したいと思うこともあるでしょう。
しかし、厚生労働省が医療情報の標準化を進める理由はもっともですし、患者のニーズを考えると、何が最良の選択であるかは自ずと見えてくるはずです。
また、電子カルテのメーカー側も、「データ移行が面倒」「システムに慣れるのが大変」といった医師の悩みに寄り添い、年々、改良を重ねているので、お互いに歩み寄ることで、患者にとってベストな医療を提供できます。
しかも、ランニングコストが安価で、オンライン診療や訪問診療にも使えるクラウド型電子カルテなら、業務効率化にも大いに役立つので、導入がまだのクリニックはぜひこの機会に導入を検討してみてくださいね。
特徴
オプション機能
対象規模
提供形態
診療科目
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この記事は、2023年3月時点の情報を元に作成しています。