開業コンサルは見た!美容クリニックの開業時資金の内訳を公開。失敗談もあり

今回の記事では、自費の性質が強い、美容クリニックならではの考え方や開業資金の使い方について解説します。

目次
  1. 開業資金と振り分けについて
    1. 【不動産】
    2. 【内装】
    3. 【最新設備】
    4. 【人件費】
    5. 看護師 平均年収比較
    6. 【ホームページ・広告】
    7. 【その他】
      1. ロゴマーク、院名について
      2. 皮膚科の併設、提携
  2. 資金振り分けの失敗談
    1. 【内装にこだわりすぎた】
    2. 【スタッフへの給料】
    3. 【賃貸費用】
  3. まとめ

開業資金と振り分けについて

開業資金については、開業する場所はコンセプトによって違いが出てきます。もちろん、予算や見込み収支などからある程度の予測を立てた上で開業資金を設定するかと思いますが、最低でも5000万円程度の開業資金は必要になるかと思います。また、こだわりをもった設備や内装を鑑みて、都市部での開業では1億5000万〜2億円程度の開業資金を予算として計上していたケースもあります。

一般的に美容クリニックに通院する患者は術前の姿にコンプレックスを持っている場合が多く、来院する際も帽子やマスクなどで極力顔がばれないようにして通院しています。エステやサロンのように気兼ねなく通院できれば良いかと思いますが、そのように捉える患者は少ないのが現状です。つまり、美容クリニックが目立ちすぎると患者が来院しにくくなるため、ビルのテナントに入るケースも珍しくありません。となると、土地や建物の費用を安価に抑え、他の費用に回すという選択肢も生まれます。
私の経験上、下記のような資金の振り分けが多くみられました。

項目 金額 備考
不動産(敷金・礼金・仲介手数料 他) 1200万円 家賃80万円/月×12カ月+@
設計(内装・外装・看板 他) 3000万円 一般的なクリニックよりも高級感を含ませた内装や個室も数などにより上下します
医療機器・システム 5000万円 シミ、シワ取りに必要となるレーザー機器が数千万円など、高額になるケースが多い
人件費(採用・研修 他) 300万円 医師、スタッフ採用、接遇費用など
ホームページ・広告 500万円 宣伝状況に応じて安価になるケースもあり
その他 500万円 上記に対する追加費用、予備費
合計 1億500万円

以下では、それぞれについて詳細を解説します。

【不動産】

テナントで考えると、家賃の12カ月分+礼金や敷金、仲介手数料をベースとして検討していただくのが良いと思います。過去に私が担当した美容クリニックにおいては、テナント契約の際に、1年以内の退去で違約金が発生するケースもありますので「仮に患者数が少なく、経営が赤字になったとしても1年間は家賃を払い続けられる予算取り」という意味合いで、家賃12カ月分を予算としてみていただくように勧めていました。

建築して開業する場合は”家賃”という概念ではなく、”融資返済1年分”という形で話をするケースが多かったです。1年というくくりに縛る必要はありませんが、不動産を手放すことで設備の移設なども検討する必要が出てくるので、余裕を持った予算取りをお勧めしています。

【内装】

美容クリニックでは、内装の美しさも重要なポイントの1つです。
待合の椅子は単なる長椅子ではなく、お洒落なカフェのようなソファーを用意したり、照明をシャンデリアにしてみたりなど、それぞれのクリニックごとににコンセプトは違えど、“美しさ”を重視した内装という意味では共通しているところがあります。

もちろん、その分コストはかかります。他の診療科のクリニックが用意する椅子が5,000円/脚のところ、美容クリニックの場合2万円/脚というところもあります。こだわるとキリがないですが、高級ホテルのラウンジのように仕立てるのであれば家具の1つ1つに多額の費用が必要となります。また、患者同士が顔を合わせないようにするため、間取りを工夫することも重要です。

【最新設備】

最新の設備が整った美容クリニックは、それだけ効果的な施術を受けられることにもつながるため、老若男女問わず人気があります。そこを集患の要として考えている先生も少なくありません。
例えば、私が担当した先生の中には「シミ取り用と刺青除去用のピコレーザー(2500万円相当)だけは絶対に導入する」という方もいらっしゃいました。
このケースに限らず、美容クリニックの場合、レーザー治療器はほぼ必須の機器となるので、最低でも2000〜2500万円程度は機器のベース費用と考えても良いかもしれません。
その他、イオン発生器、生体情報モニタ―などについては、ベースの価格を考慮した上でどのくらい揃えられるのか?を検討する必要があります。

【人件費】

美容クリニックのスタッフには医師のほかに看護師、カウンセラーなどのほか、一時的ですが脱毛などの練習モデルも必要になります。また、美意識をより高めるため、礼儀作法の研修に参加したりすることもあります。これまでの経験から、人件費として考えられる費用をリストアップしてみました。

項目 費用
スタッフの給料(年収)看護師 500~600万円(インセンティブあり)
スタッフの給料(年収)カウンセラー 300~500万円(インセンティブあり)
スタッフの給料(年収)受付スタッフ 300~450万円(インセンティブあり)
ユニフォーム 0.5~1.5万円/着
小物代(ボールペン、手帳ほか) 2,000円/セット

まず、給料についてですが看護師は一般的な病棟看護師と同水準程度の給料が平均となっています。夜勤がない分、看護師側からすると「割の良い診療科」となるでしょう。

看護師 平均年収比較

(クリニック看護師) 年収 夜勤 インセンティブ
美容クリニック 500~600万円 基本的になし あり
その他診療科 400~500万円 有(有床診療所の場合) なし

また美容クリニックには、特有の”インセンティブ”の制度があることが多いです。
”指名料”や”紹介料”といった、自身が営業して来院された患者がいた場合にインセンティブとして+@の給料を支払う、というものですね。要するに、スタッフのがんばり次第では給料を多く払う必要もあるということです。
カウンセラーや受付スタッフについても、他の診療科と比べると比較的高水準に設定されているケースが多いようです。

ユニフォームについては、ブランドものを選択しない限りは他のクリニックと大きくは変わらないと思います。小物代についてですが、こちらはスタッフで統一感を持たせるためにボールペンや手帳に病院のロゴ入りのものを支給されていたところもありました。必ずしも用意する必要はありませんが、汚れたボールペンを使っているよりは清潔で印象は良いかもしれません。

【ホームページ・広告】

至極当然のことですが、マーケティングには資金を投じてしっかりと対策していました。
ホームページや広告においては特に力を入れている方も多く、自院でターゲットとなる患者層と他院の患者層の擦り合わせ、他院の強みとする施術内容などが挙げられます。

後発で開業した場合、話題性で一時的に集患が見込まれるかもしれませんが、集患が長く続く(良い口コミで広がる)ことが非常に重要ですので、せめて同市内の同業他社情報は把握しておくべきかと思います。

【その他】

ロゴマーク、院名について

前述の内装についても触れましたが、美容クリニックとして「キレイで高級感溢れる」ことが基本となることから、ロゴマークや院名も非常にこだわりを持たれている先生が多かったです。院名については、覚えやすさも重要なポイントですが、私が担当したクリニックは全てヨーロッパ由来の院名でした。名前の美しさと”ヨーロッパ”というイメージが決め手になっているようでした。

皮膚科の併設、提携

皮膚科を併設したり、提携したりすることで、集患効果が一層高くなる可能性があります。強みとする施術にもよるかと思いますが、脱毛や脂肪吸引のほか、シミ取りや皮膚トラブルの治療まで対応することができれば、それぞれがWin-Winの関係になれるため、皮膚科のDrを誘致して開業するところもありました。自院の特徴に+@となる得るのであれば検討してみるのも良いかと思います。

資金振り分けの失敗談

私がこれまで経験した中で、想定以上に費用がかかり資金の振り分けを誤り、想定よりもはるかに多くの資金を使ってしまった先生もいらっしゃいました。いくつかご紹介しますので、美容クリニック開業時の資金振り分けを考える際に、ご参考にしていただければと思います。

【内装にこだわりすぎた】

”内装には費用をかける”というお話をしましたが、当然費用をかけすぎることは厳禁です。私が担当したとある先生は「クリニックを高級ホテルのようにしたい!」と仰られていました。床は全面大理石、天井にはシャンデリア、高級家具を取り揃えて、高級アロマを常に炊いて・・・と色々な要望をかなえて行くうちに、昨今の原材料の価格高騰も重なり、最終的な内装費用は予算+800万円の3300万円となり、その分他の費用を抑えざるを得ないことになっていました。
内装に関しては着工が進んでいくと後戻りできなくなるので、こだわりを持つことは重要ですが、予算全体のバランスを見ながら話を進めていくようにしていくべきだと感じました。

【スタッフへの給料】

美容クリニックは主に自費であることから患者が根付けばスタッフへの給料を高く設定することも可能かと思いますが、開業前から高めに設定することは非常に危険です。開業後、患者数が予想を下回り、給料値下げの交渉をスタッフとするも決裂し、スタッフが辞めていったクリニックもありますのでご注意ください。

美容クリニックの看護師は給料面で好待遇であることから、待遇次第で他の美容クリニックへ転職されるといったケースもよく耳にします。また、看護師のネットワークはかなり強く、噂はすぐに広まってしまうので新たに人を雇うまでに時間がかかる可能性もありますので、クリニックとスタッフの双方が納得できる形を取れるように細心の注意を払ってください。

【賃貸費用】

初期投資を少なくしたいということから、立地条件があまりよくない(駐車場がない、駅から遠いなど)テナントを借りた例があります。いくら美容クリニックといえども、あまりにも立地条件が悪すぎると集患の見込みは下がります。特に開業時は知名度が低いことから、集患が確保できるまでに時間がかかりすぎてしまう可能性があります。もちろん医師の知名度や技術力に定評があり、それらをしっかり広報できている状況であれば、極端な話、悪条件が重なった立地での開業でも問題ないかもしれません。しかし、立地条件が良いに越したことはないので、ある程度の費用をかけて納得できる場所を確保する必要があると思います。

まとめ

美容医療を専門とする美容クリニックは、美の追求を通して患者のQOLを向上させる目的があります。自分らしい美しさを手に入れようとする患者は、数ある美容クリニックの中から、どの美容クリニックが一番自分に合っているのか、ということを意識して選んでいます。また、美容クリニックは医療機器にも多額の資金が必要となります。コンセプトを明確にした上で、どの部分をピックアップして開業資金を振り分けるのか、今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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対象規模

無床クリニック向け 在宅向け

オプション機能

オンライン診療 予約システム モバイル端末 タブレット対応 WEB予約

提供形態

サービス クラウド SaaS 分離型

診療科目

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執筆 医療ライター ken

銀行にて融資/開業支援部門にて従事したのち、医療機器メーカーに転職。基幹病院からクリニック、動物病院まで幅広い営業顧客を有する。
現在は営業の傍ら開業支援業務も行い、多数の社内表彰を受賞。『顧客に寄り添った価値提案』をモットーにしています。


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