令和5年4月から、オンライン資格確認導入が原則として義務付けられています。令和5年1月に療養担当規則等の一部を改正する省令が交付されたことによって、やむを得ない事情がある医療機関には導入義務が猶予される経過措置がとられていますが、現在ではほとんどの医療機関で導入されていると考えられます。では、オンライン資格確認を導入した場合の加算点数はどうなっているのでしょうか? 早速みていきます。
オンライン資格確認とは
オンライン資格確認とは、マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号などによって、オンラインで各患者の加入している医療保険や事故故負担減同額などを確認することを意味します。これによって、期限切れの保険証での受診により発生する過誤請求や、手入力による手間などを減らすことができます。
さらに、マイナンバーカードでのオンライン資格確認であれば、各患者の他院での診療/薬剤情報も閲覧できるため、よりよい医療を提供できるため、医師にとっても患者にとってもメリットが大きいといえます。
参照:厚生労働省「オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)
オンライン資格確認の導入・普及率は?
冒頭で述べた通り、現在、オンライン資格確認導入が原則義務づけられていますが、やむを得ない事情がある医療機関においては導入義務が猶予となる経過措置がとられています。「やむを得ない」とは具体的にどのような事情で、いつまで猶予となるのかというと以下の通りです。
やむを得ない事情 | 猶予期限 |
令和5年末までにベンダーと契約締結しているが、導入に必要なシステム整備が未完了である | システム整備が完了するまで (遅くとも令和5年9月末まで) |
オンライン資格確認に必要な、接続可能な光回線のネットワーク環境が整備されていない | 光回線のネットワークが整備されてから6カ月後まで |
訪問診療のみを提供している | 訪問診療のオンライン資格運用が開始する令和6年4月まで |
改装工事中、もしくは臨時施設である | 改築工事が完了するまで、または臨時施設が終了するまで |
廃止・休止に関する計画を進めている | 廃止・休止まで(遅くとも令和6年秋まで) |
その他 (たとえば、高齢の医師かつ月平均レセプト件数が50件以下など) |
事情が解消されるまで |
参照:厚生労働省「オンライン資格確認等システムについて 」p.6、p.12より一部抜粋
つまり、上記に該当する医療機関以外は、現時点でオンライン資格確認の導入が済んでいるということになりますが、2023年7月時点において、オンライン資格確認導入の義務化以降の導入率に関するデータは存在せず、最新のデータとしては、2023年1月8日時点のもので、「顔認証付きカードリーダー申込数=90.8%」「準備完了施設=48.8%」「運用開始施設数=40.6%」となっています。ただし、顔認証付きカードリーダーの申し込みを完了している医療施設に関しては、その後、導入準備を進めているはずなので、少なくとも9割以上の医療施設が既に導入済みということになるでしょう。
参照:厚生労働省「オンライン資格確認等システムについて 」p.5より一部抜粋
オンライン資格確認の導入・普及に関する加算の特例措置とは?
次は、オンライン資格確認の導入が済んでいる医療機関が取得できる「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」についてみていきます。
「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」の点数は、オンライン資格確認原則義務化以前から決まっていましたが、“医療DXの推進のためのオンライン資格確認の導入・普及の徹底”という観点から、初診時・調剤時の評価が見直されたと同時に、最新時についても新たな評価をおこなう特例措置が講じられました。また、当該加算の算定要件を見直す特例措置も講じられることとなり、特例措置が適用となる期間は、令和5年4月から12月までと定められました。
この特例措置によって加算点数がどう変わったかというと、以下の表の通りです。
現行の加算 | 特例措置(令和5年4月~12月) | ||
初診 | マイナンバーカードを利用しない場合 | 4点 | 6点 |
マイナンバーカードを利用する場合 | 2点 | 2点 | |
再診 | マイナンバーカードを利用しない場合 | 2点 | |
マイナンバーカードを利用する場合 |
参照:厚生労働省「オンライン資格確認等システムについて 」p.14より一部抜粋
オンライン資格確認の加算点数を取得するための要件は?
オンライン資格確認の加算点数を取得するためには、下記の施設基準および算定要件を満たしていることが不可欠です。
【施設基準】
次の事項を院内の見やすい場所やホームページに掲示していること
① オンライン請求をおこなっていること
② オンライン資格確認をおこなう体制を有していること
③ ②の体制に関する事項および質の高い医療を実施するために十分な情報を取得および活用して診療することを、院内の見やすい場所やホームページに記していること
【算定要件】
上記の体制を有していることについて掲示するとともに、必要に応じて患者に対して説明すること
診療報酬上の特例措置はオンライン資格確認に関するものだけではない
令和5年4月1日から適応となった特例措置は、オンライン資格確認の導入・普及に伴うものに加えてもうひとつあります。具体的には、医薬品の安定供給を測ることを目的とした特例措置で、こちらも、令和5年4月~12月に適応となっています。
加算点数は以下の通りです。
対象報酬 | 現行の加算 | 特例措置 |
診療報酬 | 【処方箋料の関係】 ・一般名処方加算1…7点 ・一般名処方加算2…5… |
+2点 |
【入院基本料などの関係(入院初日)】 ・後発薬品使用体制加担1(90%以上)…47点 ・後発医薬品使用体制加算2(85%以上)…42点 ・後発医薬品使用体制加算3(75%以上)…37点 |
+20点 | |
【処方料の関係】 ・外来後発医薬品使用体制加算1(90%以上)…5点 ・外来後発医薬品使用体制加算2(85%以上)…4点 ・外来後発医薬品使用体制加算3(75%以上)…2点 |
+2点 | |
調剤報酬 | 【調剤基本料の関係】 ※特別調剤基本料を算定している場合は80/100に相当する金額 ・地域支援体制加算1…39点 ・地域支援体制加算2…47点 ・地域支援体制加算3…17点 ・地域支援体制加算4…39点 |
+1点 または +3点 |
参照:厚生労働省「令和5年4月1日からの診療報酬上の特例措置等について」
こちらに関しても、自院が該当する場合は、加算点数の取りこぼしがないよう、きちんとチェックすることが大切です。厚生労働省の説明などを読んでもわからないことがある場合は、早めに専門家 に相談してくださいね!
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診療科目
この記事は、2023年8月時点の情報を元に作成しています。