将来的に開業を視野に入れているなら、医療法人化についても一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
しかし、開業している医師を見ると、クリニックを医療法人化している人も、そうでない人もいます。
医療法人化するとメリットも多そうなのに、医療法人化しない理由とはなんなのでしょうか?
「医療法人化しない理由」を考えるにあたり、まずは医療法人化するメリットとデメリットを比較してみたいと思います。
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医療法人化するメリット
1.給与所得控除を受けられる
クリニックの所有者および経営者が医療法人になれば、形式上、医師への報酬は法人から給与から支払われるということになります。
そうなると、給与所得の控除を受けられるようになります。
2.家族に役員報酬を支払える
家族を医療法人の役員ということにすれば、役員報酬を支払えます。もちろん、この役員報酬に対しても控除が適用されます。
3.所得税や住民税の最高税率が下がる
所得税や住民税などの個人課税は、法人課税に切り替わります。
そうなると最高税率が下がるので、節税効果が見込めます。
4.家族に対して退職金を支払える
退職金の支給は、個人事業の場合認められていません。
しかし、医療法人であれば、院長や理事長、家族にも支給できます。
退職金は通常の給与よりも節税面で優遇されるため、結果的に節税につながります。
5.事業を拡大しやすい
クリニックを法人化すると、分院展開や介護事業所の開設など、複数のクリニックや事業所の経営が可能となります。
これによって必ずしも高収入を得られる、というわけではありませんが、少なくとも手広い経営による高収益化にチャレンジできます。
6.将来、子どもがクリニックを承継する際、新たな開設許可が不要
将来的に子どもにクリニックを承継してほしい場合でも、医療法人であれば、その際に新たな開設許可を受ける必要がありません。
医療法人化するデメリット
1.法人設立の手続き、運営管理が複雑になる
法人設立の手続きが複雑で、それをクリアしたのちにも、各都道府県などへ定期的に届出や報告をする必要があります。
定期的に届出が必要なのは、
- 「決算報告の届出」「資産総額の登記」(以上、年1回)
- 「役員重任の登記」(2年に1回)
の2つです。
運営上の義務としては、
- 「社員総会の開催」 (年2回)
- 「理事会の開催」(年2回)
- 「監事による監査」(年1回)
などが挙げられます。
またその他にも、法人名や所在地が変更となる場合や、定款の記載事項などを変更したい場合にも、その都度手続きが必要となります。
2.社会保険・厚生年金への加入が必須になる
法人である以上、社会保険と厚生年金には必ず加入しなければならないため、必要経費が増えます。
社会保険料は給与の約30%で、そのうち50%を法人で負担するルールとなっているため、従業員をたくさん雇っている場合、負担はかなりのものとなります。
3.税理士、司法書士、行政書士などへの依頼費がかさむ
医療に集中しようと思ったら、事務手続きは専門家に依頼するのが賢明です。
しかしその分、依頼費用がかさむことは覚悟しておかなければなりません。
とはいえ、専門家に依頼すれば、申告や申請の手続きにおけるミスを防げますので、健全な運営ができるでしょう。
4.医師の資金と法人の資金が明確に区分される
医療法人の資金を理事長が個人的に使用した場合、法人から理事長への借金とみなされることになります。
こうした行為は、時として金融機関からの信頼を損ねる原因にもなりかねません。新たな融資を受けにくくなる可能性もあります。
自分に支払う役員報酬を増額して回避することもできますが、報酬を増やすとそのぶん所得税や住民税は増えます。
5.借入金の引継ぎができない
開業医となって間もない医師が医療法人化を検討する際に、もっとも注意すべきは負債の引き継ぎです。
医療法人化する際、内装や医療機器などの設備投資にかかった費用は引き継ぎが認められますが、運転資金である借入金は、引き継ぎが認められていません。
そのため理事長(≒開業医師)が自身の役員報酬から返済しなければなりません。
このことを念頭に置き、個人診療所で借り入れする際には、設備投資に充てる資金は「運転資金」として借りないようにしましょう。
6.法人の解散には数か月かかる
医療法人を解散する場合、都道府県に届出をしなければならない他、法務局で解散の登記を行う必要があります。
届出の種類は解散事由によって異なりますが、たとえば社会総会決議によって解散する場合、「解散許可申請」が必要となります。
解散許可申請の仮申請受付時期は各都道府県で決められているため、事前の審査、本申請と手続きを進めると、許可が下りるまでに約半年かかります。
7.解散する際に、残余財産が出資者に分配されない
医療の公益性・非公益性の観点から、残余財産は国や地方公共団体などに帰属することに決まっています。
このことに関して、「なんで一生懸命貯めたお金を没収されるのか?」と不満に思う人は多いのではないでしょうか。
8.理事長であっても、医療法人から追い出される場合がある
医療法人の構成員は、株式会社における株主にあたる「社員」です。
社員は、社員総会において一人あたり一票の議決権を持っており、法人におけるあらゆる重要事項は、社員の過半数の議決によって決まっています。
つまり、社員の過半数をうまく操れば、理事長を医療法人から追い出すこともできるということになります。
医療法人化したほうがいいクリニック、医療法人化しないほうがいいクリニック
次に、「医療法人化する必要があるクリニック」「医療法人化しないほうがいいクリニック」について解説します。
医療法人化したほうがいいクリニック
「医療法人化のメリット」の項でも述べた通り、事業展開をするためには医療法人化が必須です。
開業医として地域住民に医療を提供していくなか、たとえば「高齢者の役に立つべく訪問看護ステーションの事業所を運営したい」などの思いが芽生える場合もあるかもしれません。
実現化したい構想があるなら早めに準備を進めましょう。
医療法人化しないほうがいいクリニック
「医療法人化のデメリット」で述べた通り、医療法人の設立や管理、運営はとにかく煩雑。
個人クリニック開業の手続きさえ面倒くさくて、思い出すだけでも嫌気がさす……という医師は、医療法人化が大きな負担となる可能性が高いといえます。
また、節税効果がさほど望めず、医療法人化した場合かえって損をするクリニックも、医療法人化は避けるのが賢明ではないでしょうか。
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医療法人化を考えるならメリット・デメリットを考慮しよう
メリット、デメリットを比較すると、自分にはどちらが向いているのかが明確になってくるもの。
「税制面」「煩雑さ」など一つひとつの項目ごとに比較検討しながら、自院にぴったりなほうを選択できるといいですね。
また、「今はまだどちらか決められそうにない」と感じるなら、ゆっくりと時間をかけて機が熟すのを待つのもよし。
後悔のない選択を心がけてください。
特徴
対応業務
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診療科目
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この記事は、2023年11月時点の情報を元に作成しています。