クリニックを医療法人化することにはメリットがたくさんあります。所得によっては、個人開業医のままでいるより税率がぐっと低くなりますし、事業拡大もしやすくなります。さらに、家族に理事報酬を支払うことができることや社会的信用度が上がることなどもメリットとして挙げられるので、「そんなにお得なら今すぐ医療法人化したい!」と思うかもしれませんが、法人化には時間もお金もかかります。具体的にどのくらいかかるのか説明していきます。
医療法人設立の流れは?
まずは、医療法人設立の流れを大まかに説明します。
都道府県と設立事前協議をおこなう
医療法人設立の「事前協議」とは仮申請のこと。設立認可申請書を都道府県に提出して、都道府県との事前協議をおこないます。事前協議においては、提出書類や医療法人設立申請書類の内容の確認および修正指示、必要な資料の追加指示や、医療法人設立申請の詳細把握と審査のために、保健所などの医療機関への照会や申請者(医師)に対する面接がおこなわれます 。
医療法人設立説明会に参加する
都道府県ごとに年2回開催されている「医療法人設立説明会」に参加します。都道府県によっては、オンラインで開催している場合もあります。
定款案を作成する
医療法人の定款で最低限定めておくことが必要とされることは以下です。
設立総会を開催する
設立者3名以上による設立総会を開催します。設立総会開催時には、以下の点については議事録に残す必要があります。
医療法人の設立認可申請書の作成・提出
医療法人の設立認可申請書を所轄の都道府県に提出して認可を受けます。事前に、設立事前協議に際して仮申請をおこなっていますが、この際に指摘された箇所を修正したものを提出しなければ、認可を受けることができないので注意が必要です。
設立認可申請書の審査
提出した設立認可申請書をもとに書類審査がおこなわれます。都道府県によっては、代表者の面さん審査、実地審査などもおこなわれます。審査に通過すると、知事からの諮問を受けて都道府県の医療審議会による審査もおこなわれるので、スムーズに進められるよう、対策を講じておくことが大切です。
設立認可書受領2週間以内に法務局へ法人設立登記をおこなう
都道府県の認可が下りて設立認可書が交付されたら、医療法人設立の認可が出たということになるので、法人設立登記をおこないます。登記の手続きは、設立認可書受領から2週間以内におこなう必要があります。
登記する事項は以下の通りです。
ちなみに、従たる事務所を置く場合、主たる事務所の登記をおこなってから2週間以内に従たる事務所の登記をおこなう必要があります。
保険所で診療所開設許可をもらう
法人設立登記完了次第、法人として新たに診療所開設の許可をもらうことが必要です。現地立ち会い検査を受けることも必要です。
保健所に開設届を提出する
診療所開設許可が下りて10日以内に、保健所に開設届を提出します。同時に、法人化する前の個人診療所の廃止届なども提出します。
厚生局より保険医療機関の認定を受ける
保険所の許可が下り次第、厚生局で保険医療機関の認定を受けます。保険医療機関の認可を受けて「保健医療機関コード」が発行されると、医療法人として保険請求をおこなうことができるようになります。同時に、個人の保険医療機関指定廃止届も提出します。
その他
また、そのほか以下の手続きなども必要な場合があります。
銀行口座の名義変更
法人と個人とで資産を明確に区別する必要があります。
電気、ガス、水道、電話などの契約
水道光熱費の支払い口座も名義を変更します。
社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会での手続き
保険医療機関届を提出します。また、社会保険、国民健康保険の入金指定をおこないます。
税務署での手続き
以下の書類を提出する必要があります。
中小企業事業団での手続き
必要に応じて以下の手続きをおこないます。
その他
必要に応じて以下の手続きをおこないます。
医療法人設立にはどのくらいの期間がかかる?
上記スケジュールをそつなくこなしたとして、医療法人設立の準備期間から設立までには1年弱かかります 。なぜかというと、上記スケジュールは自治体ごとに決められていて、そのスケジュールに沿って準備を進める必要があるからです。つまり、設立事前協議も設立許可申請書の提出も、決まった時期にしか応じてもらえないということです。スケジュールは自治体ごとに異なりますが、どの自治体もだいたい年2回程度スケジュールが組まれているので、そのタイミングに合わせて準備を進めることになります 。また、タイミングを逃すと、次のタイミングが訪れる半年後を待たなければならないということになります。
詳しいスケジュールに関しては自治体ごとのホームページなどで確認可能です。たとえば東京都の場合、令和5年度の医療法人設立スケジュールは以下のページで紹介されています。
参照:東京都保健医療局「医療法人設立、解散、合併認可等に係る年間スケジュール(令和5年度)
医療法人設立にどのくらいの費用がかかる?
続いては費用です。医療法人設立に必要な手続きは、専門的な知識なしに進めることは難しいため、行政書士依頼するのが一般的です。業務請負費は行政書士事務所によって異なりますが、相場としては以下の金額程度だと思っておくといいでしょう。
ただし、すべてまとめて依頼することで総額から一定額を割り引いてくれる事務所もあるので、相見積もりを出してもらうことで比較検討するのもいいかもしれません。
医療法人設立の手続きは行政書士以外にも依頼できる?
医療法人設立の書類作成を代行できるのは、法律によって、行政書士または弁護士のみと定められています。代行を請け負ってくれる先をインターネットで探すと、税理士事務所やコンサルタントがヒットすることもありますが、前者の場合、行政書士登録をしている税理士が手続きすることになるのが一般的で、後者の場合、医療法人設立についての相談を受けると同時に、行政書士事務所を紹介されるという流れになるのが一般的です。
医療法人設立に詳しい行政書士に依頼することが肝心!
医療法人設立手続きを行政書士に依頼する場合、「行政書士なら誰でも安心」というわけではありません。医療法人設立に関しての知識や経験が豊富な行政書士に依頼したほうが手続きがスムーズですし、設立後も心強いパートナーとなってくれるはずなので、行政書士選びに妥協せず、ベストなパートナーを選んでくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年2月時点の情報を元に作成しています。