看護師の応募が少なくて悩んでいるなら、男性看護師を積極的に採用していることをアピールするのも一手。
これまでに男性看護師を採用したことがなければ、不安に感じられる要素もあるかもしれません。でも、実は男性看護師の雇用にはメリットがたくさんあります。
ただしもちろん、診療科によっては女性看護師のほうが患者からもニーズが高い場合があるので、積極的に採用したほうがいいかはケースバイケース。
では、どのようなクリニックだと、男性看護師が活躍しやすいのでしょうか?
看護師全体における男性看護師の割合は?
まずは、そもそも看護師全体における男性看護師の割合はどのくらいなのかを確認しましょう。
厚生労働省が公表している「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、2022(令和4)年時点での男性看護師の人数は112,164人です。これに対して女性看護師の人数は1,199,523人なので、男性看護師は全体の8.6%ということになります。
ちなみに、2012(平成24)年時点における男性看護師の割合は6.2%で、男性看護師は数自体年々増えています。
2012(平成24)年 | 2014(平成26)年 | 2016(平成28)年 | 2018(平成30)年 | 2020(令和2)年 | 2022(令和4)年 | |
男女計 | 1,015,744 | 1,086,779 | 1,149,397 | 1,218,606 | 1,280,911 | 1,311,687 |
男性 | 63,321 | 73,968 | 84,193 | 95,155 | 104,365 | 112,164 |
女性 | 952,423 | 1,012,811 | 1,065,204 | 1,123,451 | 1,176,546 | 1,199,523 |
男性看護師のニーズは高い。その理由は?
男性看護師のニーズは年々高まっています。
そもそも、男性看護師が増加することとなった大きなきっかけは、1986年に施工された「男女雇用機会均等法」ですが、その後、4年生の看護大学や看護学校の新設が相次いだことや、震災を機に医療従事者への関心が高まったことで、看護師を希望する男性が増加しています。
それと同時に、日本の少子高齢化が加速化していることで、男性看護師のニーズも増加。どういうことかというと、高齢化が進むと、必然的に健康寿命と平均寿命との差が開き、介護や看護を必要とする人や、対応しなければならない看護師数が増えます。
そうなったとき、患者もしくは訪問看護利用者のうち何割かは、「異性の看護師に介助されるのは恥ずかしい」と同性の看護師を希望します。そのため、男性看護師も女性看護師も同様に必要とされるようになったのです。
また、平均寿命が長くなると、不調の原因やかかりやすい疾患も変わってきます。具体的には、たとえば認知症のケアや身体的なリハビリを必要とする人のパイも増えますし、更年期障害に悩まされる人は男女問わず増加します。その結果として、詳しくは後述しますが、特定の診療科や施設における男性看護師のニーズが高くなります。
男性看護師を雇うメリットは?
続いては、男性看護師を雇うメリットをみていきます。
休職の可能性が低い
自院と考え方などが合わず転職を検討されるのはやむを得ないとしても、問題なく働いてくれていた看護師が、結婚や出産を機に休職に入るとなると、雇っているほうには、おめでとうの気持ち半分、「また新しいスタッフを探さなければいけないのか……」の気持ちも生まれるものです。
その点、男性看護師は出産を理由とする給食の可能性はありません。育休を取得する可能性はゼロではありませんが、取得したとしても、取得前に問題なく働いてくれていたなら、育休後にはすぐに戻ってきてくれるでしょう。
力仕事を任せやすい
患者の介助や医療機器の運搬など、医療機関での業務に歯力仕事がつきものです。その点において頼りになるのは、体力や筋力のある男性です。
男性患者のケアを任せやすい
看護の内容によっては、患者側が、異性に担当されることを嫌がる場合があります。また、男性ならではの悩みを抱えている患者であれば、同性の看護師のほうが相談しやすいと感じるケースも多いでしょう。
トラブルがあったときに頼りになる場合がある
患者が問題行為を起こした場合、女性看護師のみでは適切に対処できないことがありますが、腕力などのある男性看護師であれば、たとえば患者が暴れている際、警察がくるまでの間、取り押さえておいてもらうことなどもできるかもしれません。
また、そもそも、男性看護師がいるとわかっている時点で、患者が無謀なことをおこなう確率が低くなるとも考えられます。
患者からの評価が上がる場合がある
男女の雇用機会は平等だという考えに賛成している患者からは、特に評価されやすくなるでしょう。また、そこまで深く考えていないとしても、「男性看護師が入職したことでなんとなくクリニックの雰囲気がよくなったな」と感じる患者が出てくる可能性もあります。
ただし、これに関しては逆もまた然りで、「看護師は女性の仕事なのになんで男性看護師を雇ったの?」と考える患者も一定数存在するので、自分の考えとは相いれない患者が出てくることは仕方がないと考えましょう。
男性看護師を雇うデメリットは?
続いてはデメリットです。
男性看護師用の更衣室、トイレを用意する必要がある
これから男性看護師を受け入れたいと考えているクリニックにとって、もっとも大きなデメリットとなるのは、男性看護師用の更衣室やトイレを用意しなければならないということでしょう。
開業当時、男性看護師を雇う可能性を考えておらず、現状、女性用の更衣室・トイレしかないとなると、増築したり、他の目的のために用意していた部屋を更衣室にしたりする必要があります。
「下駄箱を増やす」「ロッカーの数を増やす」のように“置くだけ”で済むことではなく、空間を用意する必要があるのですから、敷地面積などによっては簡単ではないでしょう。
自院の診療科と相性がよくない場合がある
女性患者がナイーブな悩みを相談したり、男性に言いにくい症状を診てもらったりする婦人科や美容外科は、患者から、「男性看護師が担当する可能性があるのはイヤ」と思われる可能性もあります。
また、訪問看護ステーションの女性利用者からも、男性看護師は敬遠される場合があります。
男性看護師や活躍しやすい施設や診療科は?
男性看護師を雇うデメリットが大きい診療科がある一方、男性看護師を雇うことで得られるメリットが大きい診療科や施設もあります。たとえば、以下のような診療科や施設がその一例です。
精神科
暴れたりトラブルを起こしたりするタイプの患者が多く通院している精神科は、腕力の強い男性看護師などがいると、万が一のときに頼りになります。
また、メンタルが強い男性看護師であれば、ペイシェントハラスメントにひるむことなく対応してくれるのもメリットです。
整形外科
怪我や疾患のリハビリに通う患者も多い整形外科では、体力や筋力のある男性看護師は、患者にとって頼りがいのある存在となりやすいでしょう。
脳神経外科
脳神経外科も整形外科同様、看護師は患者のリハビリを手伝うことが多いうえ、患者が入院している病棟では、看護師が入浴介助なども担当します。
その際、同性の看護師を希望する患者が多いことから、男性看護師のニーズは必然的に高くなります。
泌尿器科
泌尿器科に通う患者は、男女比でいうと男性の比率のほうが圧倒的に高いのが一般的です。
そのうえ、ナイーブな悩みを抱えている患者が多いことから、医師も看護師も男性であるほうが、患者が安心する傾向にあります。
男性専門外来
泌尿器科以上に、看護師が男性だと患者が安心するのが、男性専門外来です。ED、AGAなどに悩む男性は、悩みに共感してくれる男性看護師だと、安心して自分が困っていることなどを打ち明けやすいでしょう。
救急外来
24時間体制のなか、緊急性の高い患者に対応する救急外来では、看護師も人並み以上の体力が求められます。
そのため、体力のある男性看護師は適任であるといえます。また、患者の状態によっては、患者を抱える必要なども出てきますが、その際も腕力のある男性が頼りになります。
手術室
救急外来同様、患者を抱えるシーンが多くなるのが手術室です。加えて、重量のある機材を運ぶこともあるため、筋力のある男性看護師がいると安心です。
長時間におよぶ手術に対応できるだけの体力と集中力がある男性看護師なら、さらに手術室勤務にうってつけといえます。
介護施設
介護施設では、思うように身体を動かせない利用者をサポートするシーンが多いため、体力や筋力のある男性看護師は活躍しやすいといえます。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションも、介護施設同様、利用者をサポートするシーンが多いうえ、入浴介助などが必要なケースもあるのが特徴です。そのため、男性看護師がいれば、「介助は同性にお願いしたい」という男性利用者からのニーズに応えやすいといえます。
男性看護師の採用でクリニックの雰囲気や評判がガラッと変わることも
これまで男性看護師を雇ったことのないクリニックは、男性看護師を雇うことに関して躊躇う気持ちが多少なりともあるかもしれません。
しかし、前述の通り、男性看護師を雇うと多くのメリットを実感しやすいうえ、クリニックの雰囲気や患者からの評判が大きく変わる可能性も高いといえます。
ただしもちろん、男性であれば誰でも同じ結果が得られるというわけではないので、履歴書や面接を通して、本人のやる気やモチベーションをしっかりと確認することは大事にしてくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年6月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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