長く議論が続いてきた「湿布や花粉症の薬の保険適用見直し」に、ついに期日が決まりました。2026(令和8)年5月29日に健康保険法等の改正法が成立し、2027(令和9)年3月から、いわゆるOTC類似薬77成分・1,042品目について、薬剤費の25%が患者の追加負担(特別の料金)となる見通しです。
ただし、よく誤解されるのですが、これは対象薬が丸ごと保険から外れて全額自己負担になる、という制度ではありません。保険給付は続いたうえで、そこに薬剤費の一部が上乗せされる仕組みです。
この記事では、湿布と花粉症の薬に絞って、何が対象になるのか、いつから、いくら負担が増えるのかを整理します。あわせて、「OTC医薬品」「スイッチOTC」「ダイレクトOTC」という紛らわしい用語の違いもはっきりさせておきます。制度全体の枠組みやクリニックの実務対応については、OTC類似薬とは?2027年3月施行の保険給付見直しと、クリニックが今から備えるべき実務で詳しく解説しています。
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- 湿布や花粉症の薬を保険適用外にしようとする動きがあるのはなぜ?
- 医療費が膨れ上がっている理由は?
- どうすれば医療費を削減できる?
- 湿布や花粉症の薬はいつから保険適用外になる?
- OTC医薬品、スイッチOTC(=スイッチOTC医薬品)、ダイレクトOTC(=ダイレクトOTC医薬品)とは?
- 2027年3月から患者負担が増える湿布、花粉症の薬は?
- OTC類似薬の対象になる薬の一覧(成分・よく処方される薬の例)
- 湿布薬に関しては、2016(平成28)年に処方制限がかけられている
- 湿布の枚数以外にはどんなことが改定されている?
- 医療費削減のための改革が進むなか、自院にできること、すべきことは何であるのかを考えよう
- 患者負担増に伴う患者の動きとして考えられることは?
- クリニック経営への影響
湿布や花粉症の薬を保険適用外にしようとする動きがあるのはなぜ?
まずは、湿布や花粉症の薬を保険適用外としようとする動きの背景に何があるのかを確認していきます。
日本では、すべての国民が平等に医療サービスを受けることができる「国民皆保険制度」が採用されています。そのため、原則としてすべての国民が公的医療保険に加入しており、保険料の負担割合には年齢や収入で差があるものの、誰もが3割以下の自費で医療サービスを受けることができます。しかも、特定の条件に当てはまる人に関しては、1割もしくは0割負担で医療サービスを受けられます。
では、残りの医療費は誰が支払っているかというと、国や自治体です。「国民皆保険制度」は、わたしたちが納めている保険料や税金で成り立っているため、自由診療での治療を選択しない限り、国民は少ない自己負担で医療機関を受診することができていました。
ところが、昨今、この制度を維持することが困難になりつつあります。なぜかというと、医療費が増加しているためです。具体的にどのくらい増加しているかというと、2000年度に給付された医療費総額は約25兆円 でしたが、厚生労働省によると、2023(令和5)年の医療費は概算で47兆3,000億円とされています。なお、2021(令和3)年から2023(令和5)年にかけては3年連続で過去最高を更新したこともわかっています 。さらに、2025(令和7)年は約50兆円になるであろうと見込まれています 。
こうなってくると、どこかで帳尻を合わせなければ、日本の医療制度は崩壊することが予想されます。そのため、さまざまな対策が講じられていますが、そのひとつとして、一部の医薬品を保険適用外にする話が進められているというわけです。
医療費が膨れ上がっている理由は?
医療費が膨れ上がっている理由としてまず挙げられるのは少子高齢化です。2023(令和5)年における国民ひとりあたりの医療費は約38万円 ですが、ある程度成長してからは 加齢とともに抱えている疾患は増える傾向にあるため、少子高齢化が進むにつれて平均値は高くなると考えられます。なお、同年の75歳未満は25万2,000円、75歳以上は96万5,000円であることもわかっています 。
もうひとつの大きな理由は医療の進歩です。そもそも、医療が進歩していることが高齢化促進の理由でもありますが、昔は治せなかった病を治せるようになったということは、新たな治療法や医療機器が開発されているということで、そこには莫大な医療費が費やされてきているはずです。
どうすれば医療費を削減できる?
では、どうすれば医療費を削減できるかというと、まず、前述の2つに対するダイレクトなアプローチは簡単ではありません。年齢を重ねてもなるべく医療機関にかからなくて済むよう、予防医療に力を入れることは大切ですが、それでも100%病気を予防することはできませんし、医療のさらなる進歩は多くの人が望んでいることです。
そのため、それ以外のところでできるだけ医療費の無駄を削減するか、もしくは医療保険料や税金を増やしていくかしか手がないのです。
現状、この両方が進められており、後者に関して、2018年度の保険料は26.9兆円でしたが、2025年度には32.6~32.9兆円、2040年度には47.0~47.9兆円にまで達するという試算が出てい ます。
参照:厚生労働省「2040年を見据えた社会保険の将来見通し」より「医療・介護費の将来見通し」
また、前者に関しては、湿布や花粉症の薬を保険適用外にしようとする動きなどがみられています。これに関して、続けて詳しく解説していきます。
湿布や花粉症の薬はいつから保険適用外になる?
なぜ、湿布や花粉症の薬の給付を見直すことが医療費削減につながると考えられているかというと、市販薬で代替可能な場合があるからです。病院で薬を処方してもらうと患者の自己負担額は3割かそれ以下ですが、市販品として購入すれば全額自己負担です。同じ成分の薬なのに、処方箋を経由するかどうかで公的負担の大きさが変わる。この差を縮めれば、保険財政の負担を軽くできるというわけです。
なお、2027(令和9)年3月から始まる見直しは、対象薬をすべて保険から外して全額自己負担にするものではありません。負担の一部を患者に求めることで差を縮める方式です。詳しくは後述します。
2027(令和9)年3月から、薬剤費の25%が追加負担になる
かつては、健保連から「外皮の温熱・冷却を主な目的として処方する第一世代湿布薬は保険適用外にすべきなのでは?」といった提案が出されるなど、対象範囲をめぐる議論が長く続いていました。日本医師会内でも意見が割れ、いつ実施されるのかも見通せない状態が続いてきました。
この状況が動いたのが2026(令和8)年です。2026年5月29日に参議院本会議で健康保険法等の一部を改正する法律が可決・成立し、2027(令和9)年3月から、OTC類似薬77成分・1,042品目を対象に、薬剤費の25%を「特別の料金」として患者に求める仕組みが始まる見通しとなりました。
ここでいうOTC類似薬とは、市販薬(OTC医薬品)と有効成分・投与方法(剤形や用法)が同一で、1日最大用量も異ならない医療用医薬品を指します。湿布のロキソプロフェンテープ、花粉症のフェキソフェナジン、保湿剤のヘパリン類似物質(ヒルドイド)、便秘薬の酸化マグネシウム(マグミット)などが対象に含まれます。
「全額自己負担」ではなく「3割+25%」
注意したいのは、これが「保険適用外=10割負担」ではないという点です。保険給付そのものは維持されたうえで、薬剤費の25%が特別の料金として上乗せされる、いわば一部保険外併用療養に近い形になります。
3割負担の患者の場合、薬剤費に対する実質的な自己負担は次のようになります。
・薬剤費の22.5%(保険給付が続く75%分に対する3割負担)+薬剤費の25%(特別の料金)=実質47.5%
たとえば薬剤費が2,000円の湿布であれば、従来600円だった負担が950円程度になる計算です。倍近くにはなりますが、市販品を10割で買うより安い水準に収まります。この「思っていたほど跳ね上がらない」という事実は、患者説明の場面でそのまま使える材料です。
負担増の対象にならない患者もいる
すべての患者が一律に負担増となるわけではありません。こども(18歳になった日以後、最初の3月31日まで)、がん・指定難病の治療、国の公費負担医療(生活保護の医療扶助など)、入院中の処方は対象外とされています。加えて、医師が年間を通じた長期の使用を医療上必要と認めた場合や、市販薬の効能・効果では対応できない症状に使う場合なども、特別の料金は求めないとされています。
つまり、対象成分を処方すれば自動的に負担増になるのではなく、医師の判断が入る余地があるということです。ここは診療現場の運用に直結する部分なので、詳しくはOTC類似薬の制度解説記事で整理しています。
OTC医薬品、スイッチOTC(=スイッチOTC医薬品)、ダイレクトOTC(=ダイレクトOTC医薬品)とは?
続いては、前述の背景と関連性の深い「OTC医薬品」「スイッチOTC(スイッチOTC医薬品)」「ダイレクトOTC(ダイレクトOTC医薬品)」の言葉の意味を説明していきます。
OTC医薬品とは?
OTC医薬品とは、薬局やドラッグストアで、ユーザーや自己責任で購入して使用する医薬品を指します。“OTC”は、対面販売を意味する“Over the Counter”の頭文字を並べた言葉です。
一方、病院やクリニックで、医師が診断したうえで処方される医薬品は「医療用医薬品」といいます。
OTC医薬品は、胃痛や胸やけなど、一般の人が自ら判断できる症状への効果が見込まれる医薬品で、有効性や安全性を重視した審査後に販売されています。ただし、服用しても症状が改善しない場合は、服用を中止して、医師などに相談する必要があることが明記されています。
なお、OTC医薬品は大きく「要指導医薬品」と「一般用医薬品」に分類され、さらに「一般用医薬品」は「第1類医薬品」「第2類医薬品」「第3類医薬品」の3つの区分にわけられますが、このうち、薬局やドラッグストアにおいて薬剤師のみが扱うことができるのが「要指導医薬品」「第1類医薬品」で、登録販売者でも販売できるのが「第2類医薬品」と「第3類医薬品」です。
スイッチOTC(スイッチOTC医薬品)とは?
続いては「スイッチOTC」の意味を説明します。
スイッチOTCとは、安全性や有効性が確認された医療用医薬品で、「OTC医薬品」に転用された(=切り替え・スイッチされた)医薬品のことです。
つまり、一部の湿布や花粉症の薬が保険適用外になる可能性があるということは、一部の湿布や花粉症の薬がスイッチOTCとして薬局やドラッグストアで販売されるようになる可能性があるということです。
なお、2023年4月時点において、約100成分、2,700品目のスイッチOTCが調剤薬局やドラッグストアで販売されています 。このことによって、消費者は、これまで医療機関を受診しないと手に入らなかった医薬品を気軽に手に入れられるようになりました。
ただし、スイッチOTC化された医薬品は、医療用医薬品としての販売も続けられていることから、患者は、医療品としてもOTC医薬品を手に入れることができま す。
参照:全国健康保険協会 協会けんぽ「スイッチOTCをご存じですか?」
ダイレクトOTC(ダイレクトOTC医薬品)とは?
ダイレクトOTCとは、医療用医薬品に含有することが承認された新規有効成分入りの医薬品が、一度、医療用医薬品として使われることなく、直接(ダイレクトに)、OTC医薬品として販売することが承認されたものです。
一度も臨床で使用されないまま販売されることになるため、承認までの期間は4~8年と長期間になります。一方のスイッチOTCは、製造販売後調査期間は3年間とされています。
2027年3月から患者負担が増える湿布、花粉症の薬は?
湿布も花粉症の薬も、すべてが対象になるわけではありません。市販薬として薬局やドラッグストアで購入できる成分と同じもの、つまりOTC類似薬に該当するものに限られます。具体的には、次に列挙する薬がこれに当たります(先発品名で記載していますが、同一成分のジェネリック医薬品も同様に扱われます)。
【湿布】
ロキソニンテープ(成分:ロキソプロフェンナトリウム水和物)
市販薬例:ロキソニンSテープ【第1類医薬品】(第一三共)
※こちらは先発医薬品名称ですが、そのほかにジェネリック医薬品も多数あります。これ以降も同様です
ボルタレンテープ(成分:ジクロフェナクナトリウム)
市販薬例:ボルタレンEXテープ【第2類医薬品】(グラクソスミスクライン・CHJ)
セルタッチパップ(成分:フェルビナク)
市販薬例:フェイタス5.0(久光製薬)、バンスキットFBテープ5%α【第2類医薬品】(三友薬品)
【花粉症の薬】
アレグラ(成分:フェキソフェナジン塩酸塩)
市販薬例:アレグラFX【第2類医薬品】(久光製薬)、フェキソフェナジン錠「ST」【第2類医薬品】(協和薬品工業)
アレジオン(成分:エピナスチン塩酸塩)
市販薬例:アレジオン20【第2類医薬品】(エスエス製薬)
クラリチン(成分:ロラタジン)
市販薬例:クラリチンEX【要指導医薬品】(大正製薬)
エバステル(成分:エバスチン)
※エバスチンは、2027年3月1日施行時点の対象医薬品リストには含まれていません。
市販薬例:エバステルAL【第2類医薬品】(興和新薬)
ジルテック(成分:セチリジン塩酸塩)
※セチリジン塩酸塩は、2027年3月1日施行時点の対象医薬品リストには含まれていません。
市販薬例:コンタック鼻炎Z【第2類医薬品】(グラクソスミスクライン・CHJ)
OTC類似薬の対象になる薬の一覧(成分・よく処方される薬の例)
ここまでは湿布と花粉症の薬に絞って紹介しましたが、2027(令和9)年3月1日から追加負担の対象になるのは、ほかにも保湿剤、便秘薬、去痰薬、点眼・点鼻薬、水虫の薬、消毒薬などにわたります。厚生労働省の公表では77成分・1,042品目です。
自分の薬が対象かどうかは、お薬手帳や薬の説明書に書かれた「成分名(一般名)」で確かめるのが確実です。同じ成分であれば、先発品でもジェネリック医薬品でも扱いは同じです。ただし、同じ成分でも飲み薬・塗り薬・貼り薬といった使い方や用量によって対象にならない品目があります(例:ジクロフェナクナトリウムは湿布・塗り薬が対象で、飲み薬や坐薬は対象医薬品リストに入っていません)。下の表は、厚生労働省の「対象となる有効成分の一覧」と「対象医薬品リスト」をもとに、分類ごとに整理したものです(薬の名前の例は、対象医薬品リストに載っている品名から挙げています)。
分類別の対象成分の一覧
| 分類 | 対象になる成分(一般名) | よく処方される薬の名前の例 | この分類で負担がかからない主な場合 |
|---|---|---|---|
| 湿布・塗る痛み止め | ロキソプロフェンナトリウム水和物、ジクロフェナクナトリウム、フェルビナク、インドメタシン、サリチル酸メチルの配合剤(3種類) | ロキソニンテープ・パップ、ボルタレンテープ・ゲル、セルタッチパップ・テープ、ナパゲルン軟膏、イドメシンコーワクリーム、MS冷シップ・温シップ | 重度の変形性膝関節症などで、年間を通じた痛みの管理として使い続けている場合(2028年度末までの経過措置) |
| 飲む痛み止め・かぜ薬 | ロキソプロフェンナトリウム水和物、イブプロフェン、サリチルアミド・アセトアミノフェン・無水カフェイン・プロメタジンメチレンジサリチル酸塩(総合感冒薬) | ロキソニン錠、イブプロフェン錠、PL配合顆粒 | 下の「共通の条件」に当てはまる場合 |
| 花粉症・アレルギーの飲み薬 | フェキソフェナジン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩・塩酸プソイドエフェドリン、エピナスチン塩酸塩、ベポタスチンベシル酸塩、ロラタジン、ケトチフェンフマル酸塩 | アレグラ錠、ディレグラ配合錠、アレジオン錠、タリオン錠、クラリチン錠、ザジテン(シロップなど) | 市販薬にない効き目を目的に使う場合(例:フェキソフェナジンを蕁麻疹や皮膚のかゆみに使う場合) |
| 目薬・点鼻薬 | エピナスチン塩酸塩(点眼)、ケトチフェンフマル酸塩(点眼)、アシタザノラスト水和物、ペミロラストカリウム、フルチカゾンプロピオン酸エステル(点鼻)、モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物(点鼻)、塩酸テトラヒドロゾリン・プレドニゾロン(点鼻) | アレジオン点眼液、ゼペリン点眼液、ペミラストン点眼液、ナゾネックス点鼻液、コールタイジン点鼻液 | 点眼薬を、通年性のアレルギー性結膜炎などで医師の指示のもと毎日、年間を通じて使っている場合 |
| 去痰薬 | L-カルボシステイン | ムコダイン錠、カルボシステイン錠・シロップ | 下の「共通の条件」に当てはまる場合 |
| 便秘薬・胃腸薬 | 酸化マグネシウム、ピコスルファートナトリウム水和物、ビサコジル、マルツエキス、ベルベリン塩化物水和物・ゲンノショウコエキス、イトプリド塩酸塩、炭酸水素ナトリウム | マグミット錠、ラキソベロン錠・内用液、テレミンソフト坐薬、ガナトン錠、フェロベリン配合錠 | 飲み薬を年間を通じて使い続ける必要があると医師が認めた場合(目安はおおむね50週)/妊婦・授乳中で市販薬を使えない場合(例:イトプリド) |
| 保湿剤・皮膚の保護 | ヘパリン類似物質、尿素、白色ワセリン、酸化亜鉛、チンク油、オリブ油 | ヒルドイド(ソフト軟膏・ローション・クリームなど)、ウレパール、パスタロン、プロペト、亜鉛華軟膏 | ヘパリン類似物質・尿素を、アトピー性皮膚炎の治療で医師の指示のもと毎日、年間を通じて使っている場合 |
| ステロイド・抗菌薬などの塗り薬 | ヒドロコルチゾン酪酸エステル、デキサメタゾン、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、ベタメタゾン吉草酸エステル、ベタメタゾン吉草酸エステル・フラジオマイシン硫酸塩、オキシテトラサイクリン塩酸塩・ヒドロコルチゾン、クロラムフェニコール、クロラムフェニコール・フラジオマイシン硫酸塩・プレドニゾロン、イブプロフェンピコノール | ロコイド軟膏、リンデロン-V軟膏、ベトネベートN軟膏、テラ・コートリル軟膏、クロマイ-P軟膏、スタデルム | ステロイド外用薬を、再燃を繰り返すアトピー性皮膚炎の「プロアクティブ療法」として年間を通じて使っている場合 |
| 水虫・カンジダの薬 | テルビナフィン塩酸塩、ブテナフィン塩酸塩、クロトリマゾール、ミコナゾール硝酸塩、イソコナゾール硝酸塩、オキシコナゾール硝酸塩 | ラミシールクリーム・外用液、メンタックスクリーム、エンペシドクリーム、オキナゾール腟錠、フロリード | 下の「共通の条件」に当てはまる場合 |
| 口・唇・皮膚のウイルスや口内炎 | アシクロビル(塗り薬)、ビダラビン(塗り薬)、トリアムシノロンアセトニド(口腔用) | ゾビラックス軟膏、アラセナ-A軟膏、アフタッチ、オルテクサー口腔用軟膏 | 下の「共通の条件」に当てはまる場合 |
| いぼ・うおのめ | サリチル酸(塗り薬・絆創膏) | スピール膏M、サリチル酸ワセリン軟膏 | 下の「共通の条件」に当てはまる場合 |
| 消毒薬・うがい薬 | ポビドンヨード、ヨウ素、希ヨードチンキ、複方ヨード・グリセリン、クロルヘキシジングルコン酸塩、ベンザルコニウム塩化物、オキシドール、エタノール、消毒用エタノール、無水エタノール、イソプロパノール、次亜塩素酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、アンモニア水 | イソジンガーグル液、オキシドール、消毒用エタノール | 下の「共通の条件」に当てはまる場合 |
| ビタミン・その他 | アスコルビン酸、トコフェロール酢酸エステル、沈降炭酸カルシウム・コレカルシフェロール・炭酸マグネシウム、ラメルテオン、フラボキサート塩酸塩、静脈血管叢エキス、ブドウ酒、精製水、ハチミツ | ユベラ錠、デノタスチュアブル配合錠、ロゼレム錠、ブラダロン錠、ヘモリンガル舌下錠 | 飲み薬を年間を通じて使い続ける必要があると医師が認めた場合(目安はおおむね50週) |
※2027(令和9)年3月1日施行時点の内容です。品目は薬価改定などで入れ替わることがあります。
一方、花粉症の薬でもエバスチン、セチリジン塩酸塩、レボセチリジン塩酸塩、ビラスチン、デスロラタジン、オロパタジン塩酸塩、湿布でもケトプロフェン、痛み止めでもアセトアミノフェン(単剤)は、施行時点の対象医薬品リストに入っていません。同じ「花粉症の薬」「湿布」でも、成分によって扱いが分かれます。
負担の対象にならない共通の条件
上の表の薬を処方されても、次のいずれかに当てはまる場合は、薬剤費の4分の1の追加負担はかかりません。
・こども(18歳になった日以後、最初の3月31日まで)
・がんの治療中に、がんやがん治療に関連して生じた症状に使う場合
・指定難病、または小児慢性特定疾病(18~20歳)と、それに関連して生じた症状に使う場合
・国の公費負担医療(生活保護の医療扶助など)で使う場合
・入院中に使う場合(退院時に出される薬も含む)
・体に負担のかかる(侵襲を伴う)検査・処置・手術に伴って使う場合(その後14日分まで)
・医師が、年間を通じて症状が続き、長期の使用が医療上必要と認めた場合
・市販薬で認められている効き目では対応できない症状に使う場合
・妊娠中・妊娠の可能性がある人・授乳中の人が、市販薬を使えない特定の薬を使う場合
また、2027年3月1日より前に出された処方箋を、3月1日以降に薬局へ出した場合(リフィル処方箋の2回目以降を含む)は、追加負担の対象になりません。
いくら増える?抗アレルギー薬30日分の例
厚生労働省の制度概要では、3割負担の人が抗アレルギー薬を30日分処方された場合の薬代の自己負担を、次のように示しています。
・見直し前:540円
・見直し後:790円(約250円の増加)
・参考:同じ成分の市販薬:約1,000円
前提は、同じ成分のうち最も使われている品目の薬価で計算していること、初診料や調剤基本料などの技術料は別にかかること、市販薬の価格は確認できた範囲のネット上の最安値であることです。追加負担の額は「薬価の4分の1×処方された量」で計算され、10円単位に端数処理されます。この追加負担に消費税がかかるかどうかは、2026年末をめどに示される予定です。
自分の薬が対象か分からないとき
対象かどうかは、薬の名前だけでなく、何の症状に、どのくらいの期間使うかによっても変わります。たとえば同じフェキソフェナジンでも、鼻のアレルギー症状に使えば対象、蕁麻疹に使えば対象外です。最終的には、診察した医師が判断します。
迷ったときは、次の順で確かめると確実です。
・お薬手帳や薬の説明書で「成分名」を確認し、上の表や厚生労働省の一覧と照らし合わせる
・診察のときに、処方される薬が追加負担の対象かどうかを医師に聞く。医師は患者から尋ねられたら説明することとされています
・薬局で受け取るときに薬剤師に聞く。処方箋には、医薬品ごとに対象か対象外かが記載されます
・がん・指定難病の治療中、妊娠中・授乳中、長く同じ薬を使っているなど、上の「共通の条件」に当てはまりそうなときは、そのことを医師に伝える
薬を自己判断でやめたり、市販薬に切り替えたりする前に、まず医師・薬剤師に相談してください。
参照:厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の在り方の見直しについて(OTC類似薬の一部保険外療養)」
参照:厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(医療保険部会とりまとめ)」
湿布薬に関しては、2016(平成28)年に処方制限がかけられている
湿布については、2027年3月の見直しを待たずとも、すでに処方できる枚数に制限が設けられています。これは、2016(平成28)年の診療報酬改定によって決められたことで、具体的には「1回の処方箋で出せる枚数は原則70枚」ということが決められ、2022(令和4)年度の改定で原則63枚に引き下げられました。63枚を超えて湿布薬を投薬した場合は、当該超過分に係る薬剤料を算定することができません。
ただし、医師が治療上必要と判断する場合、1回の処方で63枚を超えて処方することは可能ですが、その場合、処方箋の備考欄および診療報酬明細書に、当該湿布薬の処方が必要であると判断した趣旨を記載することが不可欠です。この記載がなければ、当該薬剤料を算定することができません。
湿布の枚数以外にはどんなことが改定されている?
医療費削減を目的に改定されたことは、湿布の枚数だけではありません。代表的な処方制限は次の通りです。
単なる栄養補助目的でのビタミン剤投与は保険の対象外
2012(平成24)年度の診療報酬改定によって、ビタミン剤すべてに関して、単なる栄養補助目的での投与は保険の対象外とされました。ただし、ビタミンの欠乏または代謝異常によって患者がなんらかの疾患や症状に悩まされている場合で、かつ、必要なビタミンを食事によって摂取することが困難であると判断される場合などは、保険の対象であることが認められます。
治療目的以外でのうがい薬の処方は保険の対象外
2014(平成26)年度の診療報酬改定 によって、治療目的のものを除き、うがい薬のみを投与した場合、当該うがい薬に係る処方料、調剤料、薬剤料、処方箋料、調剤技術基本料は算定できないことになりました。
治療目的以外でヘパリン類似物質を処方する場合、保険給付の対象外となる
2018(平成30)年度の診療報酬改定 によって、疾病の治療以外を目的にヘパリン類似物質を処方した場合、保険給付の対象外となることを明確化することが決まっています。
医療費削減のための改革が進むなか、自院にできること、すべきことは何であるのかを考えよう
医療費削減は国にとって大きな課題で、避けて通ることができないものです。そして今回、湿布や花粉症の薬をめぐる議論は「いつか実施されるかもしれない話」から、2027(令和9)年3月という期日を持つ話に変わりました。
さらに、対象成分は今回の77成分で打ち止めとは限りません。制度が定着すれば、対象が段階的に広げられる展開は十分に考えられます。
自院の処方実績のうち対象成分がどれだけあるのか、代替処方をどうするのか、患者にどう説明するのか。施行までに残された時間で決めておくべきことは少なくありません。具体的な準備の進め方はOTC類似薬の制度解説記事にまとめています。
患者負担増に伴う患者の動きとして考えられることは?
対象薬の患者負担が増えると、患者の動きに次のような変化が出る可能性が考えられます。
それぞれ詳しく解説します。
軽症患者・慢性疾患患者の受診控え
打撲による痛みや腰痛などに悩まされている患者が、「湿布は高いから我慢しよう」と受診を控える可能性が考えられます。また、花粉症の薬を必要とする患者が「薬代の差が縮まるなら、再診料がかからないぶんドラッグストアのほうが得だ」と判断する可能性もあります。つまり医療機関からすると、軽症の患者が減る可能性があるということです。
もっとも、前述のとおり実質負担は47.5%程度であり、市販品の10割負担よりは依然として安く済みます。「受診したほうが結局は安い」という事実を伝えられるかどうかで、患者の行動は変わってきます。
リテラシー格差が生まれる
制度が変わったことを知らずに受診した患者が、会計時に「なんでこんなに高いの?」と驚き、窓口で説明を求める可能性が考えられます。特別の料金は保険外の負担であるため、領収証・明細書の表示も従来とは変わります。医療機関側は、受付・会計のスタッフまで含めて説明できるよう準備しておくことが必要です。
クリニック経営への影響
対象薬の患者負担が増えると、クリニック経営に次のような影響が及ぶ可能性があります。
それぞれ詳しくみていきます。
処方に伴う収益の変化
受診を控える患者が増えたり、負担を嫌った患者が対象外の薬への変更を求めたりすることで、処方に伴う収益が変動する可能性が考えられます。影響の大きさは診療科によって差があり、湿布の処方が多い整形外科や、保湿剤・外用薬の処方が多い皮膚科では相対的に大きくなります。
説明負担の増加
従来3割負担で処方してもらえた湿布や花粉症の薬に特別の料金が上乗せされることで、患者が説明を求めてくることが考えられます。診察室で医師が一から説明していては診療が滞るため、院内掲示物を用意したり、ホームページに説明文を掲載したりして、あらかじめ疑問を先回りしておくのが現実的です。
また、「医療上必要」と判断して特別の料金を求めない場合には、その判断根拠をカルテに記録する運用も必要になります。対象成分は今後も追加される可能性があるため、最新の情報をキャッチし続けることも重要です。
医療用医薬品が新しくスイッチOTCになった際には、ニュース番組などでも取り上げられると考えられますが、正しい情報を確認するためには、厚生労働省のホームページなどが役立つので、気になるニュースを見聞きしたときには、情報が正しいかどうかをしっかり確認することを心がけてくださいね。
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この記事は、2025年3月時点の情報を元に作成しています。
