医療機関における「シュライバー」の役割は? クラークとの違いは?

「シュライバーの導入をすすめる投稿を見かけることが増えたけど、導入のメリットがわからない」「シュライバーとクラークはどこがどう違うの?」などの疑問を持っている人は案外多いのではないのでしょうか。そこで今回は、シュライバーの役割や導入するメリット、クラークとの違いなどを詳しく解説していきます。

目次
  1. シュライバーとは?
    1. シュライバーのニーズが高まっているのはなぜ?
  2. シュライバーとクラークの違いとは?
  3. 医師事務作業補助者、医療秘書、医療事務の違いとは?
  4. 医療機関がシュライバーやクラークを導入するメリットは?
    1. 医師の業務負担を軽減できる
    2. 患者とのコミュニケーションの質を上げることができる
    3. 患者の待ち時間を削減できる
    4. 患者満足度の向上が期待できる
  5. 医療機関がシュライバーやクラークを導入するデメリットは?
    1. 人件費が上がる
    2. 業務の流れを見直す必要がある
  6. シュライバーやクラークを導入したほうがいい医療機関の特徴は?
    1. 医師もスタッフも業務に追われていて残業続きである
    2. 患者の待ち時間が長い
    3. そもそも医師が電子カルテの操作が得意でない
    4. 幅広い業務を任せられるスタッフを求めている
  7. シュライバーやクラークを導入する流れ
    1. 担当業務を洗い出す
    2. シュライバーやクラークに求めるスキルを考える
    3. コストを試算する
      1. 医師事務作業補助体制加算の点数は?
    4. 待遇を整理する
    5. 採用~教育までのステップを整理する
  8. シュライバーやクラークを導入するにあたっての注意点
    1. 医療事務にできてシュライバーやクラークにはできないことがある
    2. シュライバーやクラークには資格が要らない
      1. 医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)
      2. 医療事務技能認定試験
      3. 医療秘書技能検定試験
      4. 医師事務作業補助技能認定試験(ドクターズクラーク)(R)
      5. メディカル・フロント・コンシェルジュ技能認定
      6. 医事コンピュータ技能検定試験
  9. シュライバーやクラークの教育方法は?
  10. シュライバーやクラークと交わすべき誓約は?
  11. シュライバーやクラークの将来的な展望は?
  12. シュライバーやクラークに関するよくある質問は?
  13. シュライバーやクラーク採用にあたっては、スキル以外に社会人としてのマナーなどもしっかりチェックしよう

シュライバーとは?

まずは、シュライバーはどんな仕事をする人なのかを確認していきましょう。

「シュライバー(Schreiber )」はドイツ語で、日本語にすると「書く人」を意味します。医療機関において「書く人」とはなにかというと、医師のカルテ入力を補助することを意味します。

なんのために医師のカルテ入力を補助するかというと、医師の入力の手間を省くためですが、シュライバーも間違いを犯さないとは限らないため、医師はシュライバーが入力したカルテが正しいかどうかを確認する必要があります。

確認する流れとしては、紙カルテが主流だった時代には、シュライバーがカルテを入力した後に入力後のカルテを医師が確認していましたが、電子カルテを扱う医療機関が増えている現在は、シュライバーと医師が画面を共有してリアルタイムで内容を確認するケースが増えています。

シュライバーのニーズが高まっているのはなぜ?

では、なぜここ数年、シュライバーをすすめる投稿を見かけることが増えたかというと、昨今の働き方改革や新型コロナの感染拡大をきっかけに、労働時間短縮や業務効率化の重要性に注目が集まるようになったためです。つまり、シュライバーを導入することによって、医師の労働時間短縮やクリニックの業務効率化を実現する可能性が高いと考えられます。

なお、シュライバーを導入する医療機関がどのくらい増えているかというと、シュライバーを含む医師事務作業補助者を配置する医療機関の取り組みを評価する加算である「医師事務作業補助体制加算1」「医師事務作業補助体制加算2」の届出を提出している医療機関数の推移が参考になります。

※「医師事務作業補助体制加算1」および「医師事務作業補助体制加算2」については詳しくは後述しますが、簡単にいうと、施設基準を満たした医療機関の入院患者に対して、入院初日に限って算定することができる点数です。

【医師事務作業補助体制加算の届出医療機関数の推移】

医師事務作業補助体制加算1の届出医療機関数(平成26年に新設) 医師事務作業補助体制加算2の届出医療機関数
(平成20年に新設。当時は1、2の区分なし)
平成20年 730件
平成21年 1,098件
平成22年 1,605件
平成23年 1,884件
平成24年 2,154件
平成25年 2,297件
平成26年 987件 1,518件
平成27年 1,109件 1,419件
平成28年 1,652件 1,076件
平成29年 1,758件 1,020件
平成30年 1,859件 969件

参照:NPO法人日本医師事務作業補助研究会「医師事務作業補助者の実態調査」結果報告書

シュライバーとクラークの違いとは?

“シュライバーは医師の電子カルテ入力を補助する人”という説明から、「シュライバーとクラークは何が違うのだろう?」という疑問を抱く人は多いでしょう。

クラークについて知らない人のために説明すると、クラークとは、医療機関において、患者の症状や検査結果、医師の診断などをカルテに入力する人を指します。また、診断書をはじめとする書類作成や診療データの管理など、医療事務に幅広くかかわるケースもありますが、大きな定義としては、ほぼ同義と考えられます。

なお、シュライバーは前述の通りドイツ語ですが、クラーク(clerk)は英語で、書記、事務職員 などを意味するため、日本語訳を比較しても“大まかには同じ”といえるでしょう。

ただし、医療機関によっては、複数人で1人の医師をサポートする場合には、患者の症状や検査結果などを入力する人を「シュライバー」と呼び、診断や治療計画、処置などの医師の所見を入力する人を「クラーク」と呼び、二者の仕事を明確にわけていることもあります。

一方、シュライバーとクラークを同義ととらえているケースにおいては、「シュライバー」「クラーク」のほかにメディカルクラーク」の名称が使われていることもあります。また、前述の通り、「医師事務作業補助体制加算」はシュライバーやクラークなどの医師事務作業補助者を配置している医療機関の取り組みを評価する加算ですが、「医師事務作業補助者」とは、シュライバーやクラーク、メディカルクラークの日本語呼びと考えるといいでしょう。

医師事務作業補助者、医療秘書、医療事務の違いとは?

シュライバーやクラークなどの仕事内容について大まかに把握できたら、次に沸いてくるのが、「医療秘書や医療事務との違いは?」という疑問です。

確かに、「事務作業をおこなうことがある」という点においては共通していますが、具体的な仕事内容には大きな違いがあります。

まず、医療事務は“医療機関の顔”として患者や業者に対応しますが、医療秘書は医師や看護師の事務作業をサポートします。医師事務作業補助者は、前述の通り医師の事務作業をサポートします。

医師事務作業補助者 医療秘書 医療事務
主な仕事内容 ・カルテの入力代行
・医師の、診療行為以外の事務的な仕事のサポート
・一般的な秘書業務
・医療知識を含む秘書業務
・受付業務
・患者や業者の対応
・毎月の保険請求や会計事務全般
主にサポートする相手 医師 医師や看護師 患者や業者

医療機関がシュライバーやクラークを導入するメリットは?

続いては、医療機関がシュライバーやクラークを導入するメリットを確認しましょう。医療機関がシュライバーやクラークを導入するメリットとしては、主に以下の4つが考えられます。

  • 医師の業務負担を軽減できる
  • 患者とのコミュニケーションの質を上げることができる
  • 患者の待ち時間を削減できる
  • 患者満足度の向上が期待できる
  • それぞれ詳しくみていきましょう。

    医師の業務負担を軽減できる

    前述の通り、シュライバーやクラークは、電子カルテの入力サポートに加えて、診断書をはじめとする書類作成や診療データの管理など、医療事務に幅広くかかわることがあります。シュライバーやクラークの導入前は、これらの業務はすべて医師がこなしていたとしたら、医師の業務負担を大幅に軽減できることになります。

    NPO法人日本医師事務作業補助研究会が実施した「医師事務作業補助者の実態調査」でも、「医師事務作業補助者を配置したことによって医師の負担が軽減したかどうか」という質問に対して、「そう思う」と回答している医療機関は86.6%にものぼります。また、負担が軽減したことで、「研究・教育に時間を充てられるようになった」「診療により集中できるようになった」との声も上がっています。

    患者とのコミュニケーションの質を上げることができる

    電子カルテの入力を安心して任せることができるスタッフがいれば、医師は患者の診察・診療に集中することができます。診察・診療中に患者との対話をストップしてカルテ入力する必要もなくなるため、必然的に患者とのコミュニケーションの質が上がります。

    患者の待ち時間を削減できる

    診察・診療と並行してカルテ入力や書類作成を進めることができるため、患者を必要以上に待たせることがなくなります。ブラインドタッチやスピーディなタイピングが苦手な医師は、診察時には患者との対話に集中して、しっかり診察した後に患者を待たせた状態でカルテを入力する場合もありますが 、このタイプは特に、患者の待ち時間削減効果を実感しやすいでしょう。

    「医師事務作業補助者の実態調査」では、「患者から“診察室に医師事務作業補助者がいると安心する”と言われた」「医療情報や返信の対応が速やかになったため他医療機関からの評判もよくなった」などの声も確認できています。

    患者満足度の向上が期待できる

    診察・診療時のコミュニケーションの質が上がり、待ち時間が短縮されれば、自ずと患者満足度が向上すると考えられます。患者満足度が向上して、よい口コミが増えれば、集患・増患につながることも期待できます。

    「医師事務作業補助者の実態調査」における「患者サービスが向上したと思うか?」の問いには、63.7%の医療機関が「そう思う」と回答していることからも、シュライバーやクラークなどの配置が、患者満足度向上に役立っていることがわかります。

    参照:NPO法人日本医師事務作業補助研究会「医師事務作業補助者の実態調査」結果報告書

    医療機関がシュライバーやクラークを導入するデメリットは?

    医療機関がシュライバーやクラークを導入することで、デメリットが生じる場合もあります。考えられるデメリットは主に以下の2つです。

  • 人件費が上がる
  • 業務の流れを見直す必要がある
  • それぞれ詳しくみていきましょう。

    人件費が上がる

    シュライバーやクラークの主な仕事はカルテの入力サポートなので、基本的には、診療時間内は常駐してもらうことになります。そのため、簡単にいうと、現在の人件費に、スタッフ一人分の給料が加算されることになります。

    では、シュライバーやクラークの給与平均はどの程度かというと、正式な統計データなどは存在しませんが、一般的には、医療事務と同程度かそれよりもやや低い水準であると考えられます 。正式な統計データなどはありませんが、目安としては、病棟で働くクラークは年収にして300万円弱、外来でパートタイマーとして働く場合は時給1,000円前後といったところ です。

    そのため、たとえばセミセルフレジやセルフレジを導入することによって医療事務の人数を抑え、代わりにシュライバーやクラークを一人採用するなどすれば、人件費を上げずにクリニックの体制を強化することもできるかもしれません。

    業務の流れを見直す必要がある

    上記に説明した通り、セミセルフレジやセルフレジを導入して、医療事務の業務効率を上げることにした場合、これまでとは業務の流れが多少なりとも変わってくるため、場合によっては業務に関するマニュアルを作り直す必要が生じるでしょう。もちろん、医師本人の業務の流れも変わってくるため、シュライバーやクラークの導入を機に、これまでとは違ったやり方に慣れることが必要になってきます。ただし、いずれにしても、業務効率を向上させるための見直しなので、一時的に面倒だと感じる可能性があるとしても、労力が報われないということは絶対になく、クリニックにとっては大きなプラスとなるはずです。

    シュライバーやクラークを導入したほうがいい医療機関の特徴は?

    続いては、シュライバーやクラークを導入したほうがいい医療機関の特徴をみていきましょう。

    シュライバーやクラークを導入したほうがいい医療機関の特徴としては、次のような特徴が考えられます。

  • 医師もスタッフも業務に追われていて残業続きである
  • 患者の待ち時間が長い
  • そもそも医師が電子カルテの操作が得意でない
  • 幅広い業務を任せられるスタッフを求めている
  • それぞれ詳しくみていきましょう。

    医師もスタッフも業務に追われていて残業続きである

    シュライバーやクラークにカルテ入力補助や書類作成などを任せることができたら、医師も事務スタッフもそれ以外の仕事に専念できるため、超過勤務を避けることができます。

    患者の待ち時間が長い

    医師がカルテを入力するのに時間がかかることに伴い、患者の待ち時間も長くなっているのなら、カルテ入力時間を短縮するためにもシュライバーやクラークを導入することが得策だと考えられます。シュライバーやクラークを導入することでどのくらい待ち時間を短縮できるのかがイメージしづらく躊躇しているなら、まずは週に2、3日などのアルバイトとして採用してみるのもいいかもしれません。

    そもそも医師が電子カルテの操作が得意でない

    「紙カルテから電子カルテに切り替えたばかりで操作に慣れておらず、入力にものすごく時間がかかってしまっている」などの場合も、シュライバーやクラークの導入を検討することが得策です。なかには、「時間はかかるけど自分で入力したい」という医師もいるかもしれませんが、その場合は、カルテの入力に時間がかかることが原因で患者を待たせることのないよう、予約制にするなどなにかしらの対策をとることが望ましいといえます。

    幅広い業務を任せられるスタッフを求めている

    先に述べた通り、シュライバーやクラークは、カルテの入力補助以外にも幅広い業務に携わります。

    外来で働くシュライバーやクラークでは、次のような仕事もこなすことがあります。

  • 患者の呼び出し
  • 問診表記入の案内、病歴や薬歴に関して患者に質問する
  • 患者に検査内容を説明して、同意書にサインしてもらう
  • 検査データの整理やカルテへの添付
  • 次回診察の予約
  • 一方、病棟で働くシュライバーやクラークは次のような仕事をこなすことがあります。

  • 入退院時の手続き対応
  • 面会者への対応、荷物の預かり
  • 検体や書類の運搬
  • 病棟物品の在庫確認および発注管理
  • 患者の移動介助や誘導
  • ナースステーションの掃除
  • そのため、カルテ入力以外にも手が足りていないことが多いなら、シュライバーやクラークを導入することで業務効率が向上する可能性は高いといえるでしょう。

    ただし、次の項目で追って説明しますが、シュライバーやクラークには「できないこと」もあるので注意が必要です。

    シュライバーやクラークを導入する流れ

    続いては、シュライバーやクラークを導入する流れについて解説していきます。シュライバーやクラークを導入する際は、次の3つの手順に沿って必要な準備を進めていきます。

    1. 担当業務を洗い出す
    2. シュライバーやクラークに求めるスキルを考える
    3. コストを試算する
    4. 待遇を整理する
    5. 採用~教育までのステップを整理する

    それぞれ詳しくみていきましょう。

    担当業務を洗い出す

    漠然と「医師事務のサポートをお願いできると助かる」と考えている状態でシュライバーやクラークを導入しても、導入効果を最大化することができません。そのため、まずはシュライバーやクラークを採用した場合、具体的にどんな業務を任せたいのかを考えることが大切です。

    医療事務や看護師などの既存スタッフでうまく回せていない部分はどこなのか、シュライバーやクラークでなければできない業務は何なのかを考え、シュライバーやクラークに任せたい業務を書き出していきましょう。その際、医療事務や看護師の意見も聞きながら、一つひとつの業務のプロセスについて確認していくことが重要です。

    シュライバーやクラークに求めるスキルを考える

    後述しますが、シュライバーやクラークには資格が要らないため、看護師のように、「未経験であっても一通りのことは授業や実習を通して身に着けている」ということはありません。

    そのため、自院が理想とするシュライバー・クラーク像を明確にすることがとても大切です。タイピングスキルのレベル、情報処理能力、患者やその家族とのコミュニケーションスキルなどの理想を考えておくことで、履歴書や面接でのチェックポイントが明確になります。ただし、特にコミュニケーションスキルなどに関しては、面接でうまく見極められない可能性も高いので、院長以外のスタッフも同席するなどして、多角的に評価することが大切です。

    コストを試算する

    対費用効果を考えることはとても大切です。シュライバーやクラークひとりを雇うのにどのくらいかかるのか、それだけのコストをかける価値があるのかを考える際には、前半で触れた「医師事務作業補助体制加算1」「医師事務作業補助体制加算2」の施設基準をクリアした場合の加算点数にも目を向けたいところです。

    医師事務作業補助体制加算の点数は?

    医師事務作業補助体制加算とは、前述の通り、施設基準を満たした医療機関の入院患者に対して、入院初日に限って算定することができる点数で、加算するためには、医師数に対する必要人数や、勤務形態をはじめとするいくつかの要件を満たす必要があります。

    医師事務作業補助体制加算の点数は、医師15人以上に対して1人以上雇用した場合、医師20人に対して1人以上雇用した場合、医師25人に対して1人以上雇用した場合、医師30人に対して1人以上雇用した場合で、次のように点数が決められています。

    15対1:加算1=295点、加算2=245点
    20対1:加算1=245点、加算2=198点
    25対1:加算1=198点、加算2=188点
    30対1:加算1=178点、加算2=143点

    待遇を整理する

    シュライバーやクラークを募集する前に、待遇について整理することは不可欠です。これはどんな職種についてもいえることですが、求職者に求めるスキルや資格、担当してもらう業務内容、給与などの条件を細かく設定できていなければ、求職者サイドは不安な気持ちになってしまいます。

    採用~教育までのステップを整理する

    求人を開始する前に、採用から教育までのステップをきちんと決めておくこともとても大切です。求人を開始してすぐに理想の人材が見つかる可能性もゼロではないので、即採用できる体制を整えておきましょう。

    シュライバーやクラークを導入するにあたっての注意点

    シュライバーやクラークを導入するにあたっては、注意すべきことがあります。具体的には以下の2点です。

  • 医療事務にできてシュライバーやクラークにはできないことがある
  • シュライバーやクラークには資格が要らない
  • それぞれ詳しく解説していきます。

    医療事務にできてシュライバーやクラークにはできないことがある

    シュライバーやクラークは、医療事務とは異なり、レセプト業務をおこなうことができません。そのため、医療事務を採用する代わりにシュライバーやクラークを採用するというわけにはいきません。医療事務を2人採用する代わりに、医療事務1人、シュライバーまたはクラークを1人採用という選択肢ならあり得ます。

    シュライバーやクラークには資格が要らない

    シュライバーやクラークは資格不要です。そのため、経験者採用ということにしなければ、未経験者が応募してくることも考えられます。未経験者を採用して育てていくことももちろん悪いことではありませんが、即戦力を求めている場合は、面接時にパソコンスキルなどをしっかり確認することが大切です。

    なお、以下のような資格を持っているシュライバーまたはクラークであれば、タイピングスピードや医療用語の理解などに問題がない場合が多いでしょう。ただし、資格を保持しているシュライバーやクラークは、よりよい条件で働ける医療機関に勤めたいと考えるのが一般的なので、競合と比べて給与を高く設定することなどが必要となってきます。

    【シュライバーやクラークの技能と関連する資格】

    医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)

    医療事務技能認定試験

    上記2つは医療事務試験なので、パスしている人は、医療事務としても働けるということになります。

    参照:一般財団法人日本医療教育財団「技能審査認定 医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)(R)」

    参照:技能認定振興協会「医療事務技能認定試験」

    医療秘書技能検定試験

    医療秘書は、主に医師の仕事の事務的なサポートをおこないます。診察に同席してカルテを入力すること もあるので、資格を保持しているなら、それができることが証明されているということになります。

    参照:一般社団法人医療秘書教育全国協議会「医療秘書技能検定試験」

    医師事務作業補助技能認定試験(ドクターズクラーク)(R)

    こちらは、シュライバーやクラークとしてのスキルが十分あることを証明する資格です。

    参照:一般財団法人日本医療教育財団「技能審査認定 医師事務作業補助技能認定試験(ドクターズクラーク)(R)」

    メディカル・フロント・コンシェルジュ技能認定

    メディカル・フロント・コンシェルジュ技能認定は、医療機関のフロント業務における患者対応に必要な知識と技能のレベルを評価するものです。メディカル・フロント・コンシェルジュ業務や診療報酬に関する知識が問われる試験ですが、タイピング技能が測られることはありません。

    参照:一般財団法人日本医療教育財団「技能審査認定 メディカル・フロント・コンシェルジュ技能認定」

    医事コンピュータ技能検定試験

    医療事務、コンピュータの知識に加えて、レセプト作成能力も問われる試験です。

    参照:一般社団法人医療秘書教育全国協議会「医事コンピュータ技能検定試験」

    シュライバーやクラークの教育方法は?

    シュライバーやクラークとしての経験豊富な人材を採用した場合、教育に時間やお金をかける必要性は低いですが、未経験者採用も視野に入れているなら、教育方法についても考えておくことが賢明です。

    教育方法は、「自院でマニュアルの用意や指導をおこなう」「シュライバーやクラークの教育を提供している機関を利用する」の大きく2つにわけられますが、前者は、マニュアルの用意にも個別指導にも時間もかかるので、おすすめとしては後者になります。

    厚生労働省のホームページには、医療クラークを導入した病院の取り組みと効果についてまとめた資料がアップされていますが、このなかで紹介されている、「日本病院会」開催の講座を活用するのも一手。32時間のe-ラーニング講座が消費税込み30,000円なので、医療機関にとってもさほど負担とはならないはずです。

    参照:厚生労働省「医療クラーク導入の取り組みとその効果について」

    参照:一般社団法人日本病院会「医師事務作業補助者コース」

    また、単純にパソコンのタイピングスピードを上げる訓練をしてほしいということなら、オンライン上には、キーボードのブラインドタッチ練習用・スキル判定用のサイトがいくつもあるので、利用しやすそうなものを選んで、スタッフのスキル向上に活用してもいいかもしれません。

    参照:毎日5問のタイピングトレーニング

    シュライバーやクラークと交わすべき誓約は?

    シュライバーやクラークの採用後、スキル・知識面での教育と並行して、「医師事務作業補助者」という立場についての理解を深めてもらうための啓もうを図ることも大変重要です。

    なかでも重要なのは、医療従事者には守秘義務が課せられていることを理解してもらうことです。患者の同意を得ることなく、患者以外の者に対して診療情報の提供をおこなうことで罰せられる可能性があること、個人情報保護法に違反した場合、医療機関でもしかるべき対応をとることになることを伝え、同意を得たうえで働き始めてもらうことが肝心です。

    もちろん、誓約書にサインしてもらうだけでなく、医療従事者としての心構えについて研修などでもきちんと伝えられるよう、マニュアルを用意したり、研修内容を常にアップデートさせたりといった工夫も大切です。

    シュライバーやクラークの将来的な展望は?

    本記事前半で、近年、シュライバーのニーズが高まっていることを伝えましたが、今後もニーズが高まり続けるかというと、そうとは限りません。なぜかというと、シュライバーやクラークの主な業務であるカルテ入力代行は、技術の進化によって、AIにとって代わられつつある側面があるためです。

    既に、診察時の会話をAIが要約して、SOAPを自動で下書きしてくれる「AIクラーク」なる製品も登場しています。

    参照:電子カルテAI音声入力「MEDISMA AIクラーク」

    ただし、AIの音声入力システムは今のところ100%ミスがないというわけではないため、本製品も“SOAPの入力”ではなく“SOAPの下書き”にとどまっている状況です。しかしながら、下書きがあれば、それをもとにカルテを入力すれば医師の作業負担が軽減されることは間違いないため、人間のクラーク導入を経験することなしに、AIのクラークを導入してみるという医療機関も出てくるでしょう。なにせ、AIの場合は、初期費用はある程度かかるとはいえ、教育費や給料などの経費を削減できるため、ランニングコストとして考えるとお得だともとれるためです。

    しかし一方で、人間のクラークにも、「患者やスタッフとのコミュニケーションを大切にして、院内に温和な空気をもたらしてくれる」「事務作業以外の業務も依頼できる」などのメリットがあります。これらはAIクラークには決してできないことなので、「医療機関がシュライバーやクラークに何を求めるか?」によって、今後は選択肢が二極化してくることが予想されます。

    シュライバーやクラークに関するよくある質問は?

    続いては、シュライバーやクラークに関してよくある質問とその答えをみていきましょう。

    Q:シュライバー導入に診療報酬上のメリットはある?
    A:前述の通り、「医師事務作業補助体制加算1」「医師事務作業補助体制加算2」を加算できる可能性があります。ただし、どちらの加算も施設基準などを満たしていることが不可欠です。

    Q:シュライバーやクラークのカルテ入力代行には、患者の同意が必要?
    A:同席してカルテ入力を代行する場合、事前説明や同意が望ましいとされています。事前説明や同意に関して医療法などで定められているわけではありませんが、少なくとも、患者が不安に感じて質問してきた場合には、きちんと説明できるように準備しておくことが大切です。

    Q:既存スタッフにシュライバーやクラークの業務を兼任してもらうことは可能?
    A:先に解説した通り、シュライバーやクラークなどの医師事務作業補助者と、医療事務、医療秘書は携われる業務に違いがあります。また、医師事務作業補助者は基本的に医師の事務作業をサポートすることが役割なので、医師事務作業補助者として採用した場合、受付・会計業務や看護師のサポートなどはできないということになります。

    Q:派遣や業務委託での導入は可能?
    A:可能ですが、カルテ情報の取り扱いやセキュリティ面に関してきちんと契約を交わすことが不可欠です。

    Q:AI音声認識ソフト(ボイスレコーダー)やAIクラークとの併用は可能?
    A:実際、人間によるタイピングと音声認識ソフトを組み合わせる事例も増えてきています。

    シュライバーやクラーク採用にあたっては、スキル以外に社会人としてのマナーなどもしっかりチェックしよう

    業務効率化を目的にシュライバーやクラークを採用しても、タイピングスキルが遅かったり、医療用語の理解が足りず間違いだらけだったりすると導入メリットが半減するため、スキルを重視するのは当然です。同じ理由から、未経験であれば伸びしろをチェックすることは不可欠ですが、それ以外に、社会人としてのマナーなどをチェックすることもとても大切です。看護師や医療事務の採用時と同じく、礼儀正しく、周囲ともうまくやっていけるかどうかを見極めないと、後々、院内で人間関係のトラブルが起きる可能性もあります。それを防ぐためにも、人材選びには妥協しないようにしてくださいね。

    Mac・Windows・iPadで自由に操作、マニュア ルいらずで最短クリック数で診療効率アップ

    特徴

    1.使いやすさを追求したUI・UX ・ゲーム事業で培って来た視認性・操作性を追求したシンプルな画面設計 ・必要な情報のみ瞬時に呼び出すことが出来るため、診療中のストレスを軽減 2.診療中の工数削減 ・AIによる自動学習機能、セット作成機能、クイック登録機能等 ・カルテ入力時間の大幅削減による患者様と向き合う時間を増加 3.予約機能・グループ医院管理機能による経営サポート ・電子カルテ内の予約システムとの連動、グループ医院管理機能を活用することにより経営サポート実現 ・さらにオンライン診療の搭載による効率的・効果的な診療体制実現

    対象規模

    無床クリニック向け 在宅向け

    オプション機能

    オンライン診療 予約システム モバイル端末 タブレット対応 WEB予約

    提供形態

    サービス クラウド SaaS 分離型

    診療科目

    内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、