クリニックを開業するなら知っておきたい「薬局との協力体制」の実例

クリニックを開業してから半永久的に続くのは、患者さんはもちろん、薬局との関係です。

本記事では、東京都文京区・坂巻クリニックの院長・坂巻壽医師と、同クリニックに隣接する伊吹堂薬局を経営する高田薬剤師に、協力体制の築き方を伺ってきました。

患者さんに安心・安全な医療を提供し、適切な診療をするために行っていること、心がけていることを、協力体制の例として参考にしてもらえればと思います。

目次
  1. 伊吹堂薬局と連携を始めたきっかけ
  2. 薬局との連携は、なぜ大事?
    1. 致命的なミスを防げる
    2. 患者さんを待たせることなく薬を提供できる
  3. 【クリニック&薬局】スムーズなコミュニケーションの先にある連携体制の実例
    1. 新薬に関する勉強会は、クリニックと薬局で合同開催
    2. コロナ感染症対策として、発熱患者に極力接触しない診察・処方を実施
    3. 新たなツール「オンライン診療」についても相談
  4. さいごに

伊吹堂薬局と連携を始めたきっかけ

坂巻医師
高田さんが経営する伊吹堂薬局との連携を始めたのは、クリニックを継承したタイミングと同時期です。私がこのクリニックを継承する前に院長をされていた先生と高田さんも長い間お付き合いがあり、そのままの患者さんを継承できたこともスムーズな連携につながっていると思います。
高田薬剤師
先生のクリニックと隣接する薬局なので、坂巻先生が継承される前のことも把握してサポートしているつもりです。そのためか、患者さんも安心して通ってくれているように思いますし、その後の坂巻先生との連携によってさらに良い関係を築けていると感じています。

薬局との連携は、なぜ大事?

致命的なミスを防げる

坂巻医師
薬剤師は薬のプロです。医師より薬のことを分かっているので、起こりうるミスを全部チェックしてくれる点はとても心強いです。

例えば、10種類以上の薬を処方し、ひとつだけ処方が漏れてしまった時などは早急に連絡して伝えてくれます。それ以外では投薬の仕方もあります。私があまり慣れていない薬を処方した際は、食後ではなく食前の投与であることを連絡してくださいました。
高田薬剤師
医師のみなさんも全ての薬について把握されていないですし、特に漢方は投薬の仕方がより厳しいですからね。
坂巻医師
また、禁忌もこまめに確認してくださっています。
高田薬剤師
例えば緑内障の方に処方してはいけないものも、患者さんのこれまでの記録や日々のチェックをもとに確認しています。患者さんは内科を受診したときに、既往歴として緑内障を申告しないこともよくありますので、問題があれば先生に連絡を入れて処方を見直してもらっています。
坂巻医師
こちらでしっかり確認しきれなかった部分を全て完璧にチェックしてくださるので、安心して診察できていますね。患者さんに「安全」を提供するには、私も気をつける必要がありますし、薬局など他の段階もはさんでチェックしてもらう必要があると思います。そういう意味でも薬局はとても大切な存在です。
高田薬剤師
先生にそう言っていただけて非常に嬉しいです。ただ、過去にミリ数を間違えることはありました。そういうことがあってから、チェックをさらに厳しく行う等の「気をつける」という体制が完璧に整いました。トラブルはない方がいいですが、間違いが起きることで確実に改善、進歩することも事実です。

患者さんを待たせることなく薬を提供できる

坂巻医師
処方しようと思っている薬の在庫確認の連絡も頻繁です。高田さんのところには「この薬ある?」と頻繁に電話しています。
高田薬剤師
先生の連絡を受けて「確保しておきます」「在庫ありますよ」と返答するようなコミュニケーションは確かによくあります。
坂巻医師
事前に伝えると確保していただけますし、多種多様な薬から何を選ぶかは医師によって癖があるんですよ。それに合わせて在庫を調整してくれるのでありがたいです。患者さんに処方したい時に確実に在庫があることで、お待たせすることなくお渡しできています。
高田薬剤師
普段の会話や処方の内容を見ていくことで、先生それぞれのキャラを把握して、患者さんにスムーズにお渡しできるように…という気持ちはあります。

そういえば、高血圧で通っている患者さんが、先生の考え通りに薬を飲んだら血圧が下がったと喜んでいる方もいますよね。私たちで実現できた感じが喜びに繋がりますし、その感情を先生と共有できるのも連携の良いところだと思います。
坂巻医師
こういった小回りのきくコミュニケーションは、地域での診療ならではないかと思います。嬉しそうに報告してくれるとやっていてよかったと思いますし、その日の患者さんのことを相談してうまくいった時の高揚感は、やりがいにも繋がります。


そして、こういったスムーズな連携をするには、医師が薬局・薬剤師の重要性をちゃんと把握していることも大事です。これは勤務医の頃と開業医の頃とで大きく解釈が変わるというよりも、院内調剤が当たり前だった時代の医師と、医薬分業になってからの医師とでは意識が違うかもしれない。
高田薬剤師
先生が言っているように、昔とは変わってきていますよね。今はお互いを尊重しているような仕組みがあります。
坂巻医師
本当は院内処方にしたほうが儲かるんですよ。ただ、それをしてしまうとミスが起きかねない。やはり医療は、医師が全部やるのではなくそれぞれの分野のプロを信頼して任せるのが重要だと思います。 医師である私たちは薬のプロを相当頼っていますから。
高田薬剤師
先生にそのように仰っていただけるのが非常に嬉しいです。また明日からも仕事をがんばろうと思えます。

【クリニック&薬局】スムーズなコミュニケーションの先にある連携体制の実例

新薬に関する勉強会は、クリニックと薬局で合同開催

高田薬剤師
診察と処方に関する普段の連絡以外では、新薬の勉強会もスタッフを交えて一緒に開いています。
坂巻医師
最近上市された腎性貧血の経口薬について、今度開こうとしているんですよ。いつも通り高田さんに当院に来てもらおうと思っています。
高田薬剤師
私も長いこと薬剤師として働いてきましたが、これまで先生と一緒に勉強会をすることはなかったので貴重です。コミュニケーションもよりスムーズになりますし、坂巻先生が何より患者さんを第一に考えてくださる気持ちが伝わる機会でもあります。

コロナ感染症対策として、発熱患者に極力接触しない診察・処方を実施

坂巻医師
コロナの関係もあって、この時期は発熱患者に対する診療にも気をつかっています。当院だと、表の玄関ではなく、横にある通用口から患者さんに入ってもらい、通常の待合室とは別の空間で待ってもらいます。
処方箋を出したら高田さんのところで調剤していただき、薬も通用口から渡してもらっています。
高田薬剤師
連絡をいただき次第処方箋を受け取り、私やスタッフが通用口に薬を持っていくので、患者さんの移動も最小限に抑えられていると思います。
坂巻医師
患者さんを通常の診察室に案内したり、他の患者さんと同じように薬局に行ってもらったりしたら、当院にとっても薬局にとってもリスクですからね。
高田薬剤師
こちらとしてもすごく助かりますよね。こういった連携は私が知っている範囲では聞いたことがないので、とても円滑にできているのではないかと思っています。

新たなツール「オンライン診療」についても相談

坂巻医師
坂巻医師:今、オンライン診療をやるにあたって、処方箋を薬局にカルテからワンクリックでFAX送信できないか問い合わせているところです。処方箋を出力したものをFAX送信する方法もありますが、もっと効率化できると思っています。
どういう風に送信できるといいのかという部分は高田さんにも見てもらいながら話しています。
高田薬剤師
高田薬剤師:やはり、FAXは誤送信の予防が何より大事です。絶対に避けなくてはなりませんから、個人情報の取り扱いについても確認しながらお話しています。
あとオンライン診療そのものについては、患者さんが使えるかどうかですね。
坂巻医師
そうですね。使いこなせる人は確かに少ないかもしれませんが、いくつかのハードルを把握しながら、日々変化する需要に対応できるよう努めたいです。

さいごに

坂巻医師
クリニックと薬局の連携において大事なことは、「医療は、スタッフ同士、そして患者さんとの信頼関係のもとに成り立っている」という根本的な考えに立ち返ることだと思います。経営面も考える必要はありますが、薬局のみなさんと一緒に、患者さんが安心すること、患者さんが満足して帰ってくれる状況を目指すと良いのではないでしょうか。
高田薬剤師
何かあったらすぐに連絡することもやはり、「適切な医療を提供する」という意識に根ざしていると思います。疑問やミスは後に残さず、患者さんを第一に行動しているつもりです。
坂巻医師
よく医療系のドラマでは、医師と薬剤師がバトルするようなものが描かれていますが、本来は医療を提供するものとして必要なコミュニケーションをとっているだけなので、トラブルはあまりないです。
ありがたいことに見解の違いもなく、双方とも意見をすり合わせながら動けていると思います。

この記事のまとめ
・互いの専門分野への信頼と尊重が、クリニックと薬局の連携の基本
・薬局とのスムーズな連携は、患者さんへのミスのない安心・安全な医療の提供に繋がる
・処方について疑問や不安があれば、トラブルになる前に薬のプロを頼ること
・クリニックと薬局が協力することで、勉強会の開催、オンライン診療の検討、コロナ等の感染症予防を一緒に実施できるケースも
・患者さんの喜びをクリニックと薬局で共有できると、やりがい向上にもつながる


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【開業医にインタビュー:坂巻 壽 医師】3カ月で医院継承できた理由を取材

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特徴

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対象規模

無床クリニック向け 在宅向け

オプション機能

オンライン診療 予約システム モバイル端末 タブレット対応 WEB予約

提供形態

サービス クラウド SaaS 分離型

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、

坂巻 壽

取材協力 坂巻クリニック 院長 | 坂巻 壽

坂巻クリニック・院長。東京医科歯科大学卒。日本内科学会認定医、日本血液学会認定医・指導医。専門分野は血液内科学・造血細胞移植。
日本造血細胞移植学会の理事を務めた後、名誉会員へ。


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高田 尚明

取材協力 伊吹堂薬局 代表 | 高田 尚明

薬剤師。(株)伊吹堂薬局の代表として、文京区の本店、水道店にて調剤を専門とする医薬品、健康食品を取り扱う。


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執筆 CLIUS(クリアス )

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