厚生労働省が行っている調査に「無承認無許可医薬品等買上調査」というものがあります。これは認可を受けていない医薬品成分が含まれる物品を実際に購入し、その成分を調べるという調査。HPではその結果を公表し、注意喚起を行っています。今回は、この「無承認無許可医薬品等買上調査」についてご紹介します。
危険な無承認無許可医薬品の調査
当たり前の話ですが、医師が処方する薬や、薬局で販売されている薬は、「医薬品」に分類されるものです。薬は人の生命に関わるものですから、長い時間をかけて問題がないか調べられた末に国から認可を受け、人の手に渡るようになっています。
しかし、世の中には医薬品でもないのに、病気に対して効果があるとうたった製品も多く出回っています。また、医薬品成分を含んでいるのに、医薬品として承認を受けずに販売されているものも少なくありません。こうしたものは「無承認無許可医薬品」と呼ばれており、有効性や安全性の確認がされていないため非常に危険です。
昨今はインターネット上で、さまざまな健康食品が販売されており、それらには医薬品成分が含まれている可能性が高いと指摘されています。そこで、厚生労働省は対策の一環として実際に無承認無許可医薬品を購入し、その成分の調査を行っているのです。
実際に健康被害を生じる成分が検出されている
無承認無許可医薬品等買上調査では、販売されている健康食品や健康グッズから実際に医薬品成分が検出されています。
2020年11月に発表された最新の調査(令和元年度調査)では、健康食品など155製品を購入し、国立医薬品食品衛生研究所で分析。その結果、1製品からブフォテニンが検出されました。ブフォテニンは、徐脈、不整脈、血圧低下といった健康被害が生じる恐れのある成分で、強壮効果のあるオイルに使われていたとのこと。
また、その前年の平成30年度の調査でも155製品を購入して調査したところ、4製品から医薬品成分を検出しています。強壮を目的として販売されている製品からは、リドカインや、頭痛を引き起こすタダラフィル、さらには、国内で承認されていないチオデナフィル、ノルカルボデナフィルといった成分も検出されました。これらは医薬品成分を含んでいながらも承認を受けておらず、医薬品としても販売されていません。誰でも安易に手に入れることができるわけですが、健康に深刻な被害をもたらす可能性もあるのです。
海外から薬を個人輸入する際も注意が必要
海外のインターネットサイトで、日本国内向けに海外製の医薬品が販売されていることがあります。薬の個人輸入は特定の条件の下、自分自身で使用する場合に限り可能で、一定の範囲内であれば地方厚生局に届け出をする必要はありません。しかし、海外製医薬品は含有成分が表示されているものよりも過剰であるケースや、本来含まれているはずのない医薬品成分が含まれていることもあります。そのため、厚生労働省では、インターネット上で日本向けに販売されている海外製の医薬品や健康食品を購入し、成分の分析を行っています。
2020年7月発表の平成30年度の「インターネット販売製品の買上調査」によると、海外のインターネットサイトで日本向けに販売されていた健康食品67製品のうち、49製品から医薬品成分を検出したとのこと。含まれていたのはシルデナフィル、タダラフィル、チオデナフィルなどで、シルデナフィルとタダラフィルは、国内で認められている最大用量の2倍以上が含まれていました。そのため、服用すると重大な健康被害が生じる恐れがあると、厚生労働省は注意喚起を行っています。
このように、国内で流通している健康食品や、インターネット上で購入できる海外製の健康食品や医薬品は、「危ないもの」も少なくありません。誰でも手軽に購入できるため、例えば、医薬品成分が含まれる健康食品を摂取して健康被害が生じた人が、診てもらおうと来院する可能性も少なくないのです。その際、摂取した健康食品が分かれば、そこから診療方針を決めることもできますから、後学のためにも厚生労働省のページをチェックしてみてはいかがでしょうか?
参考:『厚生労働省』「健康被害情報・無承認無許可医薬品情報」
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この記事は、2021年3月時点の情報を元に作成しています。