電子カルテは非常に便利なもので、「医師にとっては必須ツール」といわれているのですが、一方で普及が遅々として進まないという現実があります。なぜ電子カルテは普及しないのでしょうか?
平成29年度で導入率は半数以下
電子カルテの普及具合を確認してみましょう。厚生労働省の調査によれば、2017年(平成29年)段階で以下のようになっています。
種別 | 割合 |
一般病院 | 46.7% |
400床以上の病院 | 85.4% |
200~399床の病院 | 64.9% |
200床未満の病院 | 37.0% |
一般診療所 | 41.6% |
参照・引用元:厚生労働省公式サイト「電子カルテシステム等の普及状況の推移」
一般病院では電子カルテの普及率は半分以下です。しかし、病床数が増えるほど普及率が高く、400床以上になると「85.4%」に達し、200床未満の「37.0%」とは大きな乖離が生じています。また、一般診療所の普及率が「41.6%」にとどまっていることから、規模が小さくなるほど電子カルテの普及は進んでいないと見ることができます。
電子カルテ導入の最大の難関はコスト
電子カルテを導入しない最大の理由はコストです。ひと昔前は、「1床当たり100万円の導入費がかかる」などといわれました。また、「オンプレミス型」※の場合、5年に一度などのタイミングでリプレース費用が発生し、ランニングコストは増大します。例えば、20床あった場合「2,000万円」の費用がかかると概算でき、コストパフォーマンスを考えれば割に合わないと判断する医師・クリニック院長が多かったと推測できます。
実際、電子カルテを導入していない医師・クリニック院長に取材してみると「高いから」という回答が多いのです。
※「オンプレミス型」「クラウド型」の違いについては『クリニック開業ナビ』の以下の記事を参照してください。
紙カルテに慣れている医師は電子カルテに興味を持たない
紙カルテに慣れているので電子カルテへの移行に抵抗があるという医師・クリニック院長も少なくありません。日本最大級の医療専門サイトという「m3.com」のリポートには、電子カルテに対して以下のような医師からの意見が挙げられています。
非常勤先の病院で使用したが、使い勝手が悪いことこの上ない。価格も他の一般業務用と比較して高すぎる。災害等で長時間停電時のことを考えると紙カルテが一番。【開業医】
この年になって、今さら紙カルテから電子カルテに変えられないのが本音だ。【開業医】
表示が小さいものが多い。開く・閉じる際の待機時間が長いものがあって、意外に紙カルテより人数がさばけない。ランニングコストが高すぎる。導入しても補助や点数加点がない。など、問題点が多すぎて導入に踏み切れない。「待ち」です。【開業医】
残念ながら現在の電子カルテはいずれのシステムも紙カルテには及ばず、見落としの原因にもなっているなど惨憺たる状況。【勤務医】
眼精疲労になるし、入力に追われ患者さんの顔を見られなくなる。【開業医】
入力がメインになって、患者の顔を見ないで話すことが多く、問題だと思う。【勤務医】
参照・引用元:m3.com「電子カルテ規格統一化に「賛成」、開業医の36.3%、勤務医の52.7%」
このように実際に電子カルテを使ってみた結果、「紙カルテ」の方がいいとする医師も多いことが分かります。
ITリテラシーの問題
電子カルテ導入が進まない理由の一つに「ITリテラシーの欠如」を挙げる識者もいます。
厚生労働省の2018年(平成30年)の「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によれば、医師の平均年齢は以下のようになっています。
種別 | 平均年齢 |
病院 | 44.8歳 |
診療所 | 60.0歳 |
参照・引用元:厚生労働省「2018年(平成30年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」p6,表3
小規模な診療所になると、医師の平均年齢は「60.0歳」です。「70歳以上」の医師も「20.2%」になります。必ずしもそうではないかもしれませんが、やはり高齢になるほどITリテラシーは低いと考えられます。パソコンの使用を前提とする電子カルテの普及が小規模な医療施設で進まない理由は、「高齢化」にあるのではないか?というわけです。
投資額の回収が困難
電子カルテの導入が進まない理由として、「コストパフォーマンスの計測が難しい」という点を挙げることもできます。そもそも電子カルテの導入効果というのは金額に換算しにくいものです。カルテの記入が簡単になる、会計事務が効率化されるといっても、例えばそれで診療費が余計にもらえるわけではありません。また、「1床につき100万円」などという単価では、「回収できない」と医師・クリニック院長が考えるのも無理はありません。
しかし、現在では「1床につき100万円」といった単価は過去のものです。より安価に導入できる診療所向けの電子カルテシステムも登場しているのです。
まとめ
厚生労働省の旗振りにもかかわらず、日本では電子カルテの導入がスムーズに進んでいるとはいえません。小規模の医療施設、診療所においては特に進んでいません。主な原因はコストですが、現在では小規模なクリニック用により安価な電子カルテがリリースされています。昔触ってみて「ダメだ」と感じた医師の皆さんも、ぜひ最新の電子カルテを試してみてください。考えが変わるかもしれませんよ。
特徴
オプション機能
対象規模
提供形態
診療科目
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2021年1月時点の情報を元に作成しています。