10月28日、「CLIUS クリニック開業マガジン」を運営する株式会社Donutsのクラウド型電子カルテ「CLIUS」では、「コロナを乗り越えるクリニック経営戦略と感染拡大を防ぐ院内レイアウト・三密対策が学べる!」と題したオンラインセミナーを開催。
本記事ではそのセミナーから、第1部の株式会社日本医業総研 代表取締役・猪川昌史氏による公演『コロナによってもたらされた クリニック開業と経営の新たな視点』の公演動画とその概要をご紹介します。
<セミナー概要>
・日時:2020年10月28日(水)19:00〜
・会場:オンライン(ウェビナー)開催
・費用:無料
・プログラム:
【第1部】
「コロナによってもたらされた クリニック開業と経営の新たな視点」 株式会社日本医業総研 代表取締役 猪川 昌史 氏
【第2部】
「With コロナ時代の医院建築」 三井ホーム株式会社 施設事業本部 マネージャー 田中 哲也 氏
講演動画
新型コロナウイルス感染症の拡大がクリニック経営に与えた影響
再生時間:2分5秒〜
新型コロナウイルス流行の影響で、緊急事態宣言が発令された2020年4・5月には来院患者数が大きく減少。特に、小児科と耳鼻咽喉科で顕著だった。このように医療機関での受療抑制が起こる一方、「在宅医療」はその影響がほとんどなく、むしろプラスに転じるクリニックも。
また、コロナウイルスに関する情報が交錯する中で、特に受付事務などのスタッフは精神的負担が大きかったと思われる。そのため、離職者も出ていた。合わせて、診療後の消毒といった通常業務以外の業務でスタッフの負担増。
新規開業では通常、内科系の損益分岐点を黒字化までおおむね1年ほどと見越しているが、現在は最低でも18ヶ月から約2年程度を見ている。さらに、収入が落ち切ってしまう前に医院を継承したいと考える高齢の開業医や、すでに利益が出ているクリニックを継承したほうが良いと考える医師が増えたことで、継承開業は増加傾向にある。
【セミナー資料内容】
①感染リスクに伴う受診抑制
厚生労働省が2020年8月19日の中央社会保険医療協議会に報告したデータによると、医科の入院外のレセプト件数は3月は前年同月比89.6%、4月は同80.8% 、5月は79.0%で、5月は前年同月比で20%以上落ち込んだ。
新型コロナウイルス感染症の流行により、症状が軽ければ受診しないなど、患者の受療行動そのものが変わったとの見方もある。
②来院患者についての当社クライアントデータ
全280件の医療機関(クリニック)のデータ
概ね20~50%減
一部診療科では最大80%減
③患者離れか?
慢性疾患の患者さんは、処方日数を伸ばしている
生活様式の変化で医療機関への受診機会が減少
④影響がない、伸ばしている診療科
在宅医療
⑤スタッフ
従業員は、メンタル的に厳しい
通常業務以外の業務の発生
⑥新規開業は
3月以降、新規で開業された先生方は軒並み50%以下の立ち上がり
下半期に開業を検討していた先生方は、来年春先以降へ
⑦継承開業は、以前より多くなっている
新型コロナウイルス感染症の拡大による患者心理の変化
再生時間:11分10秒〜
感染リスクを考え、不急の診療については医療機関での受診回数が減り、診療間隔が空くように。一方でコロナウイルスに感染した場合、持病があると重篤度が高くなりやすいので、自身の持病を調べたりといった、予防や自己管理意識が強まった。
また、キャッシュレス決済への需要が高まるなど、クリニックの感染対策や院内状況に患者の目がより一層向けられるようになった。
【セミナー資料内容】
①不急診療の見直し
感染リスクの軽減ありきの受診
受診日数(回数)の減少
②非接触
キャッシュレス・自動精算機・マイナンバーカード
③自身の健康状態
基礎疾患 予防意識の高まり
④医療機関の選別
不安要素のない医療機関へ
患者をいかに優先した医療機関であるか
診療体制・環境・患者本位の診療
オンライン診療への期待と可能性
再生時間:15分5秒〜
全国的に見てもオンライン診療は、クリニックでの採用率は10%満たない程度。まだまだ有効なツールとなっていない面もあるが、オンラインでの初診から50%弱が再診につながっているといったデータなどを見ても、今後、確実に普及していくと考えられる。
【セミナー資料内容】
①ますます期待が高まる分野
コロナ禍の時限立法だったものが、正式なものに
②初診からの対応
専用アプリ・近い将来の5G
オンライン初診から再診につながっているのは約50%弱
基本的にきっちりとした方が多かった(血圧データ添付など)
困るのは決済方法 請求書→次回持参→カード
アンダーコロナ・アフターコロナでのクリニック開業戦略
再生時間:17分5秒〜
来院患者が減ったことで、診療単価よりも患者数の多さに頼ったクリニック経営が難しくなる傾向が見られた。リスクを踏まえながら来院した患者を、密集した待合室で長時間待たせて、短時間の診察ですませることは、患者の価値に応えているとは言えない。
また、コロナ禍を踏まえた新規開業のスタイルが今後、患者にとってのスタンダードとなる可能性も。新規開業したとあるクリニックを例にとると、受付スタッフが常駐せずに、予約はWEB予約のみ、事前のWEB問診の後は初診時のみ受付スタッフから診察券を渡され、診察後は電子カルテのデータが連動している自動精算機に診察券をかざすだけで精算まで完結するスタイルも登場。
「集団→個別」「効率→価値」「密集→分散」といった変化のポイントを押さえることが、患者さんの価値に応えることとなる。
【セミナー資料内容】
[ポイント]
集団→個別
効率→価値
密集→分散
↓
患者さんの価値に応える
①感染対策と免疫力向上
②正しいコロナ対策・健康管理法
免疫力低下を防ぐアプローチ
③患者心理に応える
予約システム・時間帯区別・場所
④スタッフの業務
平常時には出来ない業務を行う
⑤薄利多売(安価な単安)→個への対応(価値)
診療内容と診療単価→本来の診療へ
⑥経営数値のタイムリーな把握
試算表→月次・日時
レセプト分析→単価・地域
来院分析→曜日時間帯別・ルート
⑦ホームページ
感染予防対策のアピール等々
診療所のコロナ対策実例
再生時間:25分00秒〜
コロナ対策として、発熱外来やPCR検査のために専用スペースを確保する。テナントで動線が分けられない場合も、駐車場などがあればそこにテントを張ったり、ワンボックスカーを借りてきて検査スペースとする、といった方策を打つクリニックも。そのほか、発熱外来専用の時間帯を設けるといった対応も考えられる。
改めて、受診するクリニックを選ぶ際の患者さんの意識(見る目)が変わってきていることを再認識しておく必要がある。
【セミナー資料内容】
・発熱外来患者の専用動線確保
・発熱外来は、時間帯予約
・入口の自動ドアの電源をOffにして、看護師の検温等を受けなければ入出室出来ない
・戸建開業を活かし、PCR検査と発熱外来のスペースを確保
・駐車場に、発熱外来のスペース確保
・ワンボックスのレンタカーを借りて、検査スペースを確保
・クリニックビルの共用部を待合として利用
・感染隔離室を設置し、電子カルテ端末を設置して診療
・カウンセリングルーム(精神科)の椅子の配置を工夫
・入り口に、サーマルカメラを設置
・入出前の検温で、37.5℃を超える患者は外でお待ちいただき医師が外で診察し、門前払いしない
・空調の設置の仕方を工夫し、通常待合室から隔離室方向に空気が流れるように設計
・業務用の空気清浄機を天井に設置
・自動釣銭機、セルフレジ、キャッシュレス決済
近年の診療所をとりまく環境
再生時間:29分48秒〜
厚生労働省が発表しているデータをつぶさに見ていくと、2017年の来院診療所の純新規開業は約1900件、純廃業は2100件弱。都道府県別に見ると、純増しているのは東京、千葉、神奈川といった関東圏や大阪などで、他は純減。一般的にクリニック・診療所の新規開業は6000件ほどといわれているが、それは健診施設なども含めての数字で、来院診療所は2000件程度、さらに全国的に見て純減に転じているのが現状。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2021年2月時点の情報を元に作成しています。
取材協力 株式会社日本医業総研 代表取締役 | 猪川 昌史
1988年、数百の医療機関をメインクライアントに持つ大手会計事務所に入職。医療機関の税務・会計業務に携わるとともに、医療法人設立部門の統括を歴任。1997年、株式会社西日本総研(現・株式会社日本医業総研)の創設に参画し、組織的な開業コンサルティング・スキームを確立。シニアマネージャー、取締役を経て、2020年6月より現職。現在までに500件超の診療所開業をサポートし、そのすべてを成功に導く指揮を執ってきた。現在は新規開業サポートのかたわら、事業承継案件に数多くの実績を上げている。
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執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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