医療法人化するにはどうすればいい?

「医療法人」には税制上のメリットが多く、個人事業でクリニックを始めても、売上がある程度の規模になってくると、「医療法人にした方がいいのでは?」という気持ちが芽生えるでしょう。では、医療法人化するにはどうすればいいのでしょうか。今回は、個人事業から医療法人にする際の流れ、また手続きについてご紹介します。

目次
  1.  医療法人化の手続きの概要
    1. 「診療所開設届」(医療法人の場合はまず「診療所開設許可申請書」)
    2. 「保険医療機関指定申請書」
    3. 「診療所使用許可申請書(有床の場合)」
    4. 事業主たる「医療法人」の設立から始めます
  2. 「医療法人」を設立する
    1. 「医療法人設立認可申請書」にはたくさんの添付書類が要る!
    2. 医療法人設立認可申請書(様式1)
    3. 「仮申請」から「本申請」に進みます
    4. 「医療審議会」で認可が決定される
  3. 設立許可が出たら「登記」します
    1. 医療法人設立登記申請書
  4. 医療法人成立後の申請と手続き
    1. 医療機関として認められるよう開設許可申請書を出す!有床なら使用許可申請も要る
    2. 社会保険診療が行えるように申請書を出す
    3. 廃院届けを出す
    4. 他にも「行うこと」はたくさんある

 医療法人化の手続きの概要

まず手続きの流れを大づかみでいいので理解してください。

現在、個人事業主として経営している診療所を医療法人化する場合には、手続き上は「医療法人を新設」し、これまでの「個人の診療所を廃止」する(廃院)という二つを行わなければなりません。

面倒くさい話なのですが、個人事業としてクリニックを開設した際に各監督官庁に提出した届け出、申請書は基本引き継ぐことができません。

そのため、最重要の3つの届け出・申請書である

「診療所開設届」(医療法人の場合はまず「診療所開設許可申請書」)

この届け出・申請書が認められて初めて医療法上の医療機関になれます。

「保険医療機関指定申請書」

社会保険診療を行うための申請書。これが認可されて初めて「医療機関コード」が発行されます。

「診療所使用許可申請書(有床の場合)」

有床の場合、この使用許可申請が受理されないと入院患者を受け入れることができません。のみならず、新しい医療法人に必要な届け出・申請書は全て新しく出し直す必要があるのです。「またあれをしなくちゃいけないのか」とうんざりされるかもしれませんが、新しい医療法人は、「これまでの個人立の診療所とは別のもの」という立て付けですので、同様の手続きが必要になるのです。

その上で、新しい医療法人が開設されたら、「個人の診療所を廃止」する(廃院)手続きを行います。

事業主たる「医療法人」の設立から始めます

何から始めるかといえば、まず「医療法人の設立」です。個人事業主の場合には、事業主体が「その人」ですから、保健所に「診療所開設届」を出すことから始められるのですが、医療法人化するのであれば、その届け出を出すための事業主体を作るところから始めないといけないのです。

ですので、大づかみにいうと、

  • 医療法人の設立
  • その医療法人が事業を行う診療所の開設(個人事業主と同じように各種届け出・申請書の提出)
  • 個人立の診療所の廃院

を行う必要があります。

「医療法人」を設立する

というわけですので、まず「医療法人」を設立します。しかし、新しい医療法人が認可されるまでには6カ月ほどかかります。

手続きは、大まかに以下のようなステップを踏みます。

  1. 申請書の準備
  2. 「医療法人設立認可申請書」の提出
  3. 医療法人の認可
  4. 医療法人の登記

4.までいってやっと医療法人として社会的な活動の認められる事業主体となるのです。

医療法人設立の認可は都道府県の首長が行います。すなわち東京都なら東京都知事の許可を得なければ設立することはできません(医療法第44条)。

ですので、医療法人設立の申請書「医療法人設立認可申請書」は、各都道府県の福祉保健局に提出することになります。この申請書の受け付け、医療審議会(後述)の開催、認可書の交付の日程は、各都道府県によって異なります。

例えば、東京都の場合、2020年の設立許可申請は、

申請書の受付機関 2020年8月24日~28日
医療審議会の開催 2021年2月初旬
認可書の交付 2021年2月下旬

というスケジュールでした。8月に申請書を出して翌年の2月に許可書の交付ですから、やはり6カ月かかるのがお分かりいただけるでしょう。もし許可されなかったら、申請書提出からやり直しですので、準備をしっかり行うようにしてください。また、上記のような都道府県別のスケジュールを各ホームページで確認してください。

「医療法人設立認可申請書」にはたくさんの添付書類が要る!

東京都を例に取ると、「医療法人設立認可申請書」を提出するときは以下の添付書類を付けて提出します。

医療法人設立認可申請書(様式1)

項目
受付表 定款(寄附行為)
設立総会議事録(様式2) 財産目録(様式3)
財産目録明細書(様式4) 不動産鑑定評価書
減価償却計算書(様式5) 現物拠出の価額証明書
基金拠出契約書等(様式6-1~4) 預金残高証明書
診療報酬等の決定通知書 設立時の負債内訳書(様式7-1、2)
負債の説明資料(様式8) 負債の根拠書類
債務引継承認願(様式9-1~3) リース物件一覧表(様式10)
リース契約書(写し) リース引継承認願(様式11)
役員・社員名簿(様式12) 履歴書(様式13)
印鑑登録証明書 委任状(様式14)
役員就任承諾書(様式15) 管理者就任承諾書(様式16)
理事長医師免許証(写し) 管理者医師免許証(写し)
理事医師免許証(写し) 診療所等の概要(様式17-1)
施設等の概要(様式17-2) 周辺の概略図
建物平面図(1/50~1/100程度のもの) 不動産賃貸借契約書(写し)
賃貸借契約引継承認書(覚書)(様式18) 土地・建物登記事項証明書
近傍類似値について(様式19) 事業計画書(2カ年または3カ年)(様式20)
予算書(2カ年または3カ年)(様式21) 予算明細書(様式22)
職員給与費内訳書(様式23) 実績表(2年分)(様式24)
確定申告書(2年分) 診療所の開設届および変更届の写し

参照・引用元:『東京都福祉保健局』「医療法人設立認可申請書チェックリスト」

このように大量の書類が必要で、またこれも申請時期および都道府県によって変化しますのでホームページでの確認が必要です。

「仮申請」から「本申請」に進みます

上掲のような大量の書類を提出して不備があったら認可されないのか、と心配になるでしょうが、そのために「仮申請」「本申請」という制度が敷かれています。

例えば、東京都の場合には「医療法人設立認可申請・登記の手順」を以下のように説明しています。

参照・引用元:『東京都福祉保健局』「第4章 医療法人設立認可申請の手順」

上掲のとおり、「設立認可申請書の提出(仮申請)」となっていますね。1度目に申請書を提出するときはあくまでも「仮申請」なのです。その後、「設立認可申請書の審査」の過程があって、ここで書類の不備を修正したり(追加書類を求められることもあります)、保健所等の関係機関への照会、面接なども行われて、本審査に進めるかどうかが決まるのです。添付書類の不備などはこの審査段階で、関係部局と相談の上、指導どおりに修正すればいいでしょう。

気を付けたいのは、医師・院長だけではなく、関係者の面接も行われることがある点です。

  • 新しい医療法人の役員・社員
  • 融資をしてもらった銀行関連
  • 医療機器などのリース契約企業
  • 賃貸物件の場合、オーナー

なども関係者ですので、面接が求められる可能性があります。ですので、これら関係者には「医療法人を設立しますので、もしかしたら面接があるかもしれません。そのときはよろしくお願いいたします」とあらかじめ連絡を入れておきましょう。

仮申請でどうしても駄目な場合は最悪「申請の取り下げ」になりますが、OKであれば「本申請」に進みます。

「医療審議会」で認可が決定される

「本申請」の後、「医療審議会」で医療法人の設立を認めるかどうかの審議が行われます。この「医療審議会」とは、「医療法」の規定に基づいて各都道府県に設置された諮問機関で、与えられた権限によって医療計画や医療法人の設立・解散などを調査審議します。

委員は医師、歯科医師、薬剤師などの資格を持ち、医師会などの重鎮で構成されています。偉い人ばかりなので、時間を取るのも難しいため、審議会は頻繁には行われません。医療法人設立認可のチャンスが年に1度程度となっているのは、審議会の開催頻度にも関係しています。

それはともかく、この医療審議会で「問題なし」と判断される(答申が出る)と医療法人設立の認可書が知事の名前で交付されます。

設立許可が出たら「登記」します

「医療法人」の設立許可が出たらいよいよ「登記」です。法人登記は、商号(社名)や本社所在地、代表者の氏名と住所、事業の目的など、法人に関する重要事項を法務局に登録し、一般に開示できるようにすることをいいます。

これを行わないと社会的に事業主体と認められません。登記が完了して初めて医療法人が成立するのです。

注意していただきたいのは、認可書を受領した日から2週間以内に法務局で登記を行わなければならないことです。医療法人の場合には、以下のような記載が求められます。

  • 名称
  • 目的および業務
  • 事務所(所在地)
  • 設立年月日
  • 存続期間または解散の事由を決めたときはその期間または事由
  • 資産の総額

また、申請時の必要書類は以下になります。

医療法人設立登記申請書

  • 設立認可書(または所轄庁の認証のある謄本)
  • 定款
  • 理事長の選出を証する書面
  • 理事長の就任承諾書
  • 資産の総額を証明する書類(財産目録)
  • 委任状(代理申請の場合)

この時点では登記が終わっていないので、保健所に診療所の開設届け出を行っておらず、事務所の所在地も何もないかもしれませんが、手続きの順番としては、

認可⇒登記⇒保健所へ「診療所開設許可申請書」申請

という順番ですので致し方ありません。

また、気を付けていただきたいのは、登記が終わったら、「医療法人の登記事項の届出」(東京都の場合)を都道府県の福祉保健局に提出しなければならないことです。東京都の場合は、添付書類は「登記事項証明書(履歴事項全部証明書)原本」ですが、これは各都道府県によって異なりますので、ホームページで確認の上、書類を準備してください。

参照・引用元:『東京都福祉保健局』「医療法人の登記事項の届出」

医療法人成立後の申請と手続き

ここまで終わったら、医療機関として活動できるように監督官庁に各種申請を行います。

例えば、東京都の場合は以下のフローになります。

参照・引用元:『東京都福祉保健局』「第5章 医療法人設立認可後の手続」

上掲の「登記届」より下の作業が必要になります。

医療機関として認められるよう開設許可申請書を出す!有床なら使用許可申請も要る

まず、所管の保健所に提出する「診療所開設許可申請書」です。これが受理されないと医療法上の「医療機関」と認められません。この申請書が提出された後には保健所による立ち会い検査などがあります。これをクリアする必要があります。

開設が許可された後に、有床の場合には保健所に「病院(診療所)使用許可申請書」を提出し、許可を得ます。入院患者を受け入れる場合にはこの許可はマストです。無床の場合はこの申請は必要ありません。

開設許可が下りたら、忘れないように開設届(10日以内)を提出します。また、必要に応じて「診療用エックス線装置備付届」なども必要になります。

社会保険診療が行えるように申請書を出す

次に「保険医療機関指定申請書」を管轄する厚生局へ提出しなければいけません。この申請が受理されないと、社会保険診療を行うことができません。ここで注意したいのは、各地域の厚生局の直近の申請締め切り日をきちんと確認し、間に合うように提出することです。

各地域の厚生局で微妙に異なりますが、保険医療機関としての指定は原則「毎月1日」1回となっています。そのため、締め切りに間に合わないと保険医療機関になるのが1カ月後ろになってしまうのです。指定日の前月に、

  1. 申請
  2. 書類審査
  3. 地方社会保険医療協議会への諮問・答申

が行われ、その結果、翌月の1日に「保険医療機関指定」となります。1回しかないのは、③の協議会が月1度しか行われないためです。1日以降の日付けであれば、申請時に希望の日付けを記入することで、その日を「指定日」とすることは可能です。ただし、あくまでも「1日以降の日付け」であって前倒しできるわけではありません。

救済措置としてさかのぼって「保険医療機関の指定日」を決めることはできますが、

(1)保険医療機関等の開設者が変更となった場合で、前開設者の変更と同時に引き続いて開設され、患者が引き続き診療を受けている場合

(2)保険医療機関等の開設者が個人から法人組織に、または法人組織から個人に変更となった場合で、患者が引き続いて診療を受けている場合

(3)保険医療機関が病院から診療所に、または診療所から病院に組織変更となった場合で、患者が引き続いて診療を受けている場合

(4)保険医療機関等が至近の距離(原則として2km以内)に移転し同日付けで新旧医療機関等を開設・廃止した場合で、患者が引き続いて診療を受けている場合

参照・引用元:『関東信越厚生局』「保険医療機関・保険薬局指定申請書(様式11)」

といった条件を満たし、それが認められた場合のみです。個人事業から医療法人になる場合には「2」に該当します。診療期間に空白を作らないように、必要とあれば遡及の特例措置を使いましょう。

廃院届けを出す

新しい医療法人が開設されたら、個人立の診療所の廃院を行います。所管の保健所には「病院(診療所)廃止届」、厚生局には「保険医療機関廃止届」を提出します。「病院(診療所)廃止届」は「開設届」と、「保険医療機関廃止届」は「保険医療機関指定申請書」と同時に出すといいでしょう。

他にも「行うこと」はたくさんある

このように、個人事業から医療法人に移行といっても、行うことはクリニックを新設するのと大して変わりません。

上掲は社会保険診療が行える最小限の申請ですが、他にも必要なら基本診療科や特掲診療科の届け出、難病指定医療機関の指定申請なども行います。雇用している人の健康保険、厚生年金なども、事業主が変わることで新たに申請し直します。なんのことはない、これまで個人事業で必要だった全ての届け出・申請は医療法人として新たに行わなければならないのです。

また、電気・ガス・インターネットなどのインフラの名義変更、医療機器がリースならその名義変更を行う必要もあります。

忘れがちなことに「銀行口座の開設」があります。社会保険診療の報酬は新しい法人口座に入れなくてはなりません。銀行口座の開設には、

  • 医療法人の登記簿謄本
  • 印鑑証明(法人印)
  • 定款

などが必要になります。

このように、医療法人が首尾良く設立できたとしても、その後にしなければならないことは尽きないのです。

個人事業から医療法人化するには非常に多くのタスクをこなす必要があります。また上記のとおり約6カ月が必要です。多大な時間と労力(そしてお金)をかけて医療法人化しても、「想像していたのと違う」という結果になったら目も当てられません。また、一度医療法人を設立すると基本的に後戻りはできません。

ですので、個人事業から医療法人化する際にはよく考えてから行うことをお勧めします。

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