スタッフを雇用するときに注意すべき人件費の計算とは?

クリニックでスタッフを募集する際には「給与をいくらに設定すればいいだろうか」と考えるでしょう。例えば「看護師1人35万円、事務職1人25万円として……」などと計算するのではないでしょうか。しかし、給与の額面が35万円でも実際にクリニックが負担する費用はそれでは済みません。今回は、人件費の注意すべき点についてご紹介します。

目次
  1. 健康保険・厚生年金などを忘れないで
  2. 「医療保険」については3パターンある
    1. 医療保険
  3. 「年金保険」については2パターン
    1. 年金保険
  4. 「雇用保険」と「労災保険」でもクリニックの負担がある!
  5. 給与額面「35万円」の人を雇用すると……

健康保険・厚生年金などを忘れないで

医師・クリニック院長は経営者で、人を雇用する立場ですから、「健康保険」「厚生年金」など社会的セーフティーネットの費用を負担しなければなりません。

公的な保険制度と呼ばれるのは以下の5つです。

  • 医療保険
  • 年金保険
  • 介護保険
  • 雇用保険
  • 労災保険

このうち「介護保険」は年齢が40歳になった月から強制的に加入。被保険者と「国・都道府県・市区町村」が「1:1」でお金を拠出する仕組みになっていますから、クリニックからの余分の支出はありません。

「医療保険」「年金保険」「雇用保険」「労災保険」の4つについては、クリニックからの支出があります(国民健康保険と医師国民健康保険組合の場合はなし:後述)。

「医療保険」については3パターンある

まず「医療保険」には以下の5つがあります。

医療保険

  • 健康保険(全国健康保険協会、健康保険組合)
  • 国民健康保険
  • 共済組合
  • 船員保険
  • 後期高齢者医療制度

クリニックで人を雇用する際に関係のある「医療保険」は、「健康保険」と「国民健康保険」です。

このうち「健康保険」では、保険者が「全国健康保険協会(いわゆる「協会けんぽ」)」になる場合と、「健康保険組合」になる場合があります。

「協会けんぽ」の場合には、保険料は被保険者と事業主で折半ですから、クリニックの負担が生じます。また、保険料は「標準報酬月額」という算定基準によって決まり、報酬が上がると基本上がります。つまりクリニックの負担も増えます。

例えば、東京都で給与の額面が35万円の場合には、「350,000~370,000円」の25等級で標準報酬月額は「36万円」になります。すると健康保険料は月額3万5,532円で、これを被保険者とクリニックで折半しますから、クリニックの負担は「1万7,766円」です。これが給与以上に支払う金額です。

参照・引用元:『協会けんぽ』「令和2年9月分(10月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)」

一方の「健康保険組合」では、「地区の医師会か大学医師会に所属する医師とその家族や従業員」の場合には「医師国民健康保険組合」に加入できます。こちらは事業主負担はありません。また、月々定額ですので、従業員の給与が上がっても負担が増えません。協会けんぽと違って賞与に対して保険料を支払わなくても済みます。

最後に「国民健康保険」ですが、これは個人事業主が加入するもので、クリニックで雇用する人が個人事業主の立場で働く場合にはこれに加入します。「国民健康保険」の場合には、被保険者が保険料を全額負担しますので、クリニックの事業主負担はありません。

「年金保険」については2パターン

次に「年金保険」ですが、以下の2つがあります。

年金保険

  • 国民年金保険
  • 厚生年金保険

「国民年金保険」は上記の「国民健康保険」と同じで、基本個人事業主が加入するもので、保険料は全額被保険者が負担します。そのため、クリニックの支出はありません。

「厚生年金保険」の場合は、被保険者と事業主が折半して保険料を負担します。上記と同様、東京都で給与の額面が35万円の場合には、「350,000~370,000円」の22等級で標準報酬月額は「36万円」。22等級の厚生年金の保険料は月額6万5,880円で、これを折半しますから、クリニックの負担は「3万2,940円」です。これが給与以外に支払う金額です。

「雇用保険」と「労災保険」でもクリニックの負担がある!

「雇用保険」と「労災保険」でもクリニックの負担が発生します。

「雇用保険」の場合には、2020年度の保険料率は「9/1,000」です。これを被保険者が「3/1,000」、事業主が「6/1,000」負担します。

ですので、給与額面が35万円なら、被保険者は「1,050円」、クリニックは「2,100円」の負担になります。この2,100円が給与以外の支出です。

最後に「労災保険」ですが、この保険料は事業主負担です。2020年現在、保険料率は「3/1,000」ですので、給与額面が35万円の場合には、クリニックは「1,050円」の負担になります。この1,050円が給与以外の支出です。

参照・引用元:『厚生労働省』「令和2年度の雇用保険料率について」

参照・引用元:『厚生労働省』「労災保険率表(平成30年度~)」

給与額面「35万円」の人を雇用すると……

そのクリニックが個人事業主か医療法人か、また従業員数かなど、条件によって上記の「医療保険」「年金保険」の組み合わせも変わるのですが、協会けんぽ・厚生年金で労働保険(雇用保険と労災保険を合わせた呼称)もあり、フルで保険完備の素晴らしい職場を想定してみましょう。

給与額面35万円で1人雇用すると、その給与以外にクリニックが負担する金額は以下のようになります。

「協会けんぽ」(医療保険) 1万7,766円
「厚生年金」(年金保険) 3万2,940円
雇用保険 2,100円
労災保険 1,050円
合計 5万3,856円

ですから、額面給与35万円でも保険完備で毎月「40万3,856円」は支出する、と計算しておかないといけないのです。

医師・クリニック院長の皆さんは、人を雇用する際には保険料も考慮して実際にはいくらかかるのか、事前にきちんと計算しておくことをお勧めします。

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執筆 コラム配信 | クリニック開業ナビ

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