クリニックの承継におけるうまい資金調達・支払い方法

個人立、医療法人立を問わず、承継案件が増加しています。いわゆる売り案件は実にさまざまですが、譲渡契約を締結し、承継する人がお金を出して営業権を買うといったことが行われます。この場合、売り手・買い手双方がスムーズにお金をやりとりできる方法を考えなければなりません。買い手側の資金繰りについても同様です。今回は、承継の際のうまいお金の支払い方・調達方法の例をご紹介します。

目次
  1. 「持ち分」をそのまま評価すると調達金額が大きくなる
  2. 実は「解決法」はある!
  3. まとめ

「持ち分」をそのまま評価すると調達金額が大きくなる

株式会社のM&Aの場合には、最初出資した株式の価値が上昇し、いざ譲渡という段になると、その株式を時価で評価して買い取る――といったことが行われます。

「持ち分あり」の医療法人の場合も、本質は「株式会社」と同じで、「持ち分」というかつて出資した分が時間の経過と共に大きく膨らんでいます。例えば、昔出資した2,000万円、あるいは3,000万円が1億円の価値になっているといったケースは少なくありません。

例えば2,000万円の出資金が貸借対照表上はそのまま2,000万円で残っているのですが、これを承継する現在の価値に再評価し、「1億円」で売買する、ということが多々あります。多くの仲介業者ではこのように計算していたりします。

このケースでは売り手は持ち分を1億円で売ることになります。買い手は1億円を調達して、これを支払い、その医療法人のオーナーになるわけです。

ところが、この方法にはデメリットがあります。

①個人の医師がこの案件を「買う」ために調達する資金1億円は、「持ち分」いわば「株式」を買うためのものになる。そのため、銀行からすると融資したお金の用途が「投資」に区分されるものになり、往々にして融資の許可が下りない。

②銀行から融資を受けられたとしても返済期間が短くなったり、金利が通常よりも高くなったりする。

潤沢に自己資金があれば別ですが、このような案件は買い手からすれば資金調達が難しいものなのです。

③資金調達ができたとしてもこの1億円には経費性がない

というデメリットもあります。持ち分、いわば株式を買うためのお金ですので経費にならないのです。

ですから、1億円を調達して売り手に1億円を支払えば、1億円の資産のあるクリニックが手に入るのですが、クリニックの経費に計上することができませんので、返済金額がそのまま個人の負担になって非常に苦しい状態になる恐れがあります。

実は「解決法」はある!

例えば「2,000万円分の持ち分でスタートしたが内部留保(現金)が8,000万円になっており、固定資産が2,000万円ある計1億円の医療法人」があったとします。

このような売り案件があった場合、買い手が1億円まるまる調達しないで済む方法はあるのでしょうか? まるでパズルのような問題ですが、これをいかに解くかが仲介業者の腕の見せどころなのです。

実は、例えば以下のような解法があります。

8,000万円の内部留保は退職金として持ち出してもらいます。残っている固定資産2,000万円分は最初の持ち分2,000万円と同じで、これを持ち分として売買してもらうのです(退職金8,000万円を除くと出資金2,000万円で資産2,000万円という開業したときと同じ状態になっているわけです)。

そうすると、買い手の調達するお金は2,000万円で済みます。また、売り手に支払う退職金8,000万円は医療法人の経費になります。8,000万円も出金すると医療法人が赤字になるかもしれませんが、この赤字は欠損金として10年間繰り越すことができる(事業開始年度2018年4月1日以降/これ以前は9年間)ので、医療法人の経営的にも助かります。

1億円を吐き出すスキームはこれでいいのですが、これに営業権の売買が付きます。これが例えば3,000万円だった場合には、買い手は新たな理事長になった後に、銀行から新たに3,000万円を「医療法人」として融資を受け(つまり個人として調達しなくてもよい)、これを先ほどの8,000万円にプラスし、1億1,000万円を退職金として支払えばいいのです。また、営業権は経費になり減価償却可能です。

こうすれば、買い手、すなわち承継する医師は、個人として調達する資金は最小限の2,000万円で済み、あとの資金は医療法人の経費にすることが可能というわけです。

売り手側からすれば、本来固定資産は現金化できないものですが、それも一応持ち分の売買という名目でお金にでき(2,000万円)、後は全て退職金(内部留保の8,000万円 + 営業権3,000万円)という名目で取り出すことができる――というスキームになります。

もちろん、資金調達の準備、つまり銀行からの借り入れ交渉はあらかじめ進めておかなければなりません。

まとめ

というわけで、できるだけ買い手、承継者の資金負担が小さくなるようなスキームの一例をご紹介しました。仲介業者、コンサル業者の中には、このようなプランを考えずに、今回ご紹介した例でいえば、買い手に「1億円超を調達してください」と丸投げのところもあります。もし、承継案件を考えるのであれば、長い経験を持つプロに仲介を依頼するようお勧めします。

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