
社会人になって初めての職場では、新人という立場で慣れない環境というだけで精一杯なのに、それ以上に頭を悩まされることがあります。それはなにかというと、誰しもぶつかる、先輩看護師、通称「お局」との人間関係です。
わたし自身もまさにそのひとり。やっとの思いで看護師になった結果、初めての職場で悩みのタネとなるのは、業務内容でも患者さんとのコミュニケーションでもなく、「お局看護師」との人間関係だったのです。
わたしの配属先は緩和ケア病棟ということもあり、看護師の平均年齢も40~50代と比較的高めでした。本記事では、そこで出会ったお局看護師たち、そしてその看護師たちが夜勤中に起こしたいざこざについてご紹介していきます。
お局にはいろんなタイプがいる
わたしがいた職場の看護師の平均年齢が40代以上。そのうちのほとんどがお局状態でした。
ただでさえ看護師は、職業柄、気が強くないとやっていけないというのに、最前線で何十年も活躍してきたそのお局たちは、一筋縄ではいきません。
ところで、みなさんは「お局」と呼ばれる人にどのようなイメージをお持ちでしょうか?
- 口調が強め
- 新人だけに冷たいorきつい態度を取る
- いつも怒っているように見える
- とっつきにくい
- 職場で年齢や勤務年数が1番上で気を遣う
このように、あまり良いイメージを持たれていない方がほとんどだと思います。
そのような王道タイプのお局ももちろんいましたが、その他にもいろんなタイプのお局をここではご紹介していきたいと思います。
愚痴・悪口エンドレスお局
このタイプのお局は、とにかく何に対してもネガティブなことしか言いません。
新人のころは特に、右も左もわからず、病棟内の人間関係も詳しく知らないので、愚痴や悪口を聞かされてもうなずくことしかできませません。そうすると、周りに「あの人に共感している」と思われている場合もあり、とても働きにくかったことを今でも覚えています。
わたしが実際に経験した話を簡単にご紹介します。
そのお局は病棟の副師長で、立場的にも彼女にもの申す人はいませんでした。
師長の意見にさえ、平気で反論するような人でした。
ある日、そのお局とお昼休憩が一緒になった際、別の看護師の話題になりました。
「わ~また誰かの悪口かな~。巻き込まれたくないな」と思いながらも恐る恐る話を聞くことにしました。
内容は、2児のパパである看護師が、もうすぐ3人目が生まれるにあたり、時短勤務を師長に相談していることへの不満でした。
医療現場自体どこも人手不足なのが現状ですが、そのような事情では仕方がないし、むしろお祝いの言葉のひとつでもないのかと正直思いました。
わたしは、彼が3人目ができていたこと自体知らなかったので、純粋に驚きとおめでたいという気持ちしか抱きませんでしたが彼女は違いました。
彼は実家が農家で、田植えや稲刈りのシーズンには毎年長期休暇を取っていました。
そのような背景もあって、お局は彼に対して以前からあまり良く思っていなかったのでしょう。
彼の時短勤務の件についても、「時短で働くくらいなら育休とったらいいと思わない? 中途半端に働かれたらかえって周りが仕事しづらいって思わないのかな」と言われました。
わたしは独身で子どもも居ないので、育児やお金の面での大変さは一般教養レベルしか持ち得ていませんでいたが、そのお局は3人のお子さんがいるのです。
境遇は違えど、子育てをしながら看護師の責務をまっとうする大変さを誰よりも知っているはずなのに、どうしてそんな心ないことが言えるのか驚きしかなくとりあえず、
「これから〇〇さん大変ですね」
としか言うことができませんでした。
その後も彼女はいろんな人にこの話をしたそうで、話を聴かされた誰もが、わたしのように当たり障りのない返答をしていたと周りから聞きました。
結局彼は時短勤務をすることになりましたが、そのお局は彼に対して、「みんなあなたの時短勤務について良く思ってないよ」といわんばかりの態度や空気を毎日ふりまいていました。
おせっかいお局
このお局に対してはわたしはそこまで苦手意識はありませんでしたが、とにかく周りの看護師たちが嫌っていたのでご紹介したいと思います。
小見出しそのままなのですが、人のすることや話していることにすぐに横から口を挟む方でした。
口を挟むといっても愚痴や悪口ではなく、「それは~した方がいんじゃない?」といった、いわゆる “おせっかい”。 よくいえば “世話焼き” な方でした。
経験年数が浅く、年齢も若めの看護師には、頼りになる先輩として慕われていたと思います。
ですが前述したように、わたしが働いていた病棟はベテラン看護師ばかりであったため、「いちいちあなたに言われたくない」といった理由で嫌われていました。
その方は日本赤十字病院やその他の急性期病院での経験もあり、口を開けば「急性期病棟だったら~」など自身の経験をもとに話していたことがあまり良く思われていなかった理由のひとつです。
なんせわたしのいた病棟は緩和ケア病棟。
急性期とは、患者さんの状態も異なれば業務内容もぜんぜん違うのです。
それなのに、彼女はいつも急性期に居た頃のころをするのでみんなから煙たがられていました。
動かないお局
このタイプのお局には、遭遇したことがある方が多いのではないでしょうか。簡単に以下のような特徴があります。
- 基本的にパソコンの前から動かない
- 受け持ちではない患者のナースコールをとらない
- 委員会の準備等を理由に若手看護師に仕事を押し付ける
彼女に対してのクレームが1番多かったことから、師長が1度注意したところ、「みんなで協力してやるのが普通でしょ?」と返していたそうです。
実際彼女は「協力」という言葉にはほど遠く、ただ自分がやりたくないことはやらず誰かに押し付けているだけでした。
夜勤中に起こったお局同士の口論
続いては、夜勤中に勃発したお局同士の口論についてご紹介します。
周りからの評判は最悪?地獄の夜勤のはじまり
この口論を起こした2人は、前半でご紹介した「おせっかいお局」と「動かないお局」でした。
わたしの働いていた病棟では、看護師2名、看護助手1名の計3名で夜勤をしていました。
ここではおせっかいお局(50代)をA、動かないお局(50代)をB、看護助手をCとして、どんなことが起こったのかご紹介していきます。
わたしはこの病棟にきたばかり。夜勤は2回目で、夜勤独り立ちに向けて、A指導のもとその日の夜勤をスタートしました。
その日の夜勤リーダーはAで、基本的な指揮を取る役回りでした。
私はABと夜勤をするのは初めてで、事前に他の看護師から「あの2人とか~、頑張ってね(笑)」とだけ言われました。
その言い方からして良くない雰囲気は感じましたが、大先輩であることには変わりないので、少しでも知識が増えれば勉強になるといった気持ちで挑みました。
患者の情報を把握していない?
いざその日を迎えると、夜間の時間帯は何か特別なことが起きることはありませんでした。2人とも、「何かわからないことある?」「コーヒーでも飲んで休憩してきていいからね」など気にかけてくださり、このまま無事に夜勤が終われば良いなと思っていました。
ところが、ほんの些細な出来事をきっかけに事件が起きたのです。
それは朝の5時前から全員でおむつ交換に周っていたときのことでした。
CがBの受け持ち患者のおむつ交換に入ろうとしたとき、微弱ながらも「てんかん発作」のような動きをしていたのを発見。
Cは、発作が起きていることをすぐにBに報告しました。
するとCはBから「え? てんかん持ってる人なの?」と聞かれたと言います。
看護師相手にならまだしも、助手に病気のことを尋ねるなど言語道断。
Cは病名までは把握しておらず、とにかくリーダーのAにも報告しなくてはと思い、Cは急いでわたしとAのところに来ました。
逆ギレ? 喧嘩勃発
一連の流れを聞いたAは、血相を変えてその患者の部屋に向かいBと合流しました。
その瞬間「なんで患者の情報把握してないの! 助手さんに聞いてどうするの!」と叱責しました。
わたしもCも、「そう言われて仕方ないよな……」と思って聞いていましたが、次の瞬間、
「情報もなにも、わたしこの人初めて受け持ったんだよ? 1回で全部把握できるわけないでしょ? ていうかリーダーのあなたは知ってたの? 知ってたんなら教えてくれてもよくない?」
とBがまさかの逆ギレをしてきたのです。
Aの叱責よりもはるかに威圧的な態度で言い返すBの姿を見て唖然としました。
双方の言い分はさておき、指摘に対して全く受け止めようとしない姿勢に驚きました。
結局、その患者は日々てんかんの薬を服用しており、以前も別の病院で何度も発作を起こしていたということがわかりました。
この事実に関しても、「Bは何の薬かも調べずに飲ませているってこと?」とAは思ったようでさらにBに詰め寄りました。
A「ここは緩和だからまだ多めに見ることができるけど、これが術後間もない人とか急性期だったらありえないから」
B「結局大事に至らなかったからもういいでしょ。そんなに急性期が好きなら異動希望だしたら?」
聞いてるだけでヒヤヒヤしましたし、正直今後Bには極力関わりたくないなとまで思いました。
わたしの母親程年の離れている大人であるBが、こんなにも責任感がないどころか、むしろ責任転換しようとしている姿に驚きしかありませんでした。
A派閥、B派閥
結局その夜勤は丸く収まることはなかったそうで、わたしは定時に帰らせてもらえましたが、AとBは師長を挟んで1時間以上も話し合いをしたそうです。
後日周りの看護師から聞いた話では、以前からAとBはそりが合わず、今回はわたしの指導ということもあり、ベテランのAとBがペアで夜勤をすることになりましたが、みんな口をそろえて「やっぱりね」という感じでした。
それから2人は夜勤のペアにされることはなく、AはBの、BはAの悪口を言い周っていたので、いつの間にか「A派閥」「B派閥」が病棟内にできてしまっていました。
まとめ
結局1年後の4月、AもBも別の病棟に異動になりました。
派閥ができたこと、シフトが組みづらいことなどさまざまな理由での異動だったようですが、その他看護師たちはホッとしたようで胸を撫でおろしていました。
私のように大きな病院でしたら異動もあるためまだマシなのですが、規模の小さな病院だとなかなかスタッフが変わるということも難しいためお局問題に苦しんでいる方も沢山いらっしゃると思います。
お局に逆らうと痛い目にあうと思ってなかなか悩みを打ち明けれない方が多いですが素直に誰かに話してみると意外と自分と同じ気持ちの人がいたりする場合もあるので思い切って周囲に話してみたり、あまりにもひどい時は上の人に相談して協力してもらうのもアリです。
無理なく過ごしやすい環境で働けることを願っています。
この記事は、2021年6月時点の情報を元に作成しています。