病院やクリニックでのキャリアを考えるとき、将来の選択肢のひとつとして浮かぶのが「事務長」です。事務長には、院長の家族や親族が就任する場合もありますが、医師や医療技術者、または一般企業や金融機関、公務員出身者などが就任することもあります。それぞれの得意分野が異なるのは、病院やクリニックによって事務長に求めるものが異なるから。「経理のプロを入れたい」と考える病院もあれば、「マーケティング能力に長けた人がいい」と考えるクリニックもあります。では、事務長を目指すためには、若いころにどんな経験を重ねていればいいのでしょうか? また、事務長になるとどんな業務に携わることになるのでしょうか? 今回は、事務長の仕事や年収について解説します。
クリニックの事務長の仕事とは?主な仕事内容
国内医療法人の場合、基本的に「院長=病院全体の管理者かつ診療に関する責任者」「事務長=経営の責任者」です。中には、院長も事務長も医師だという病院やクリニックもありますが、医療と経営は分けて考えるのが一般的です。つまり、事務長の仕事は、総務から人事、営業にいたるまでの経営に関すること全般ということ。
具体的な仕事としては、以下のような仕事が挙げられます。
事務長の仕事
- 厚生局、保健所、自治体などへの対応
- 病院の入出金の管理
- 人事の管理
- 設備および備品の管理
- 医療機器の取引先への対応
- 廃棄物業者および清掃業者への対応
- 経営に関わる内容全般
- その他、院内、院外のさまざまな事象への対応
- クレーム対応
また、ときには院長代理として業務をこなさなければならないこともあるほか、病院スタッフの相談役や補佐役を求められることもあります。
クリニックの事務長の平均年収は?
全体のまとめ役から雑務まで幅広い仕事に対応することが必要となると、気になるのが年収です。事務長の年収は、病院やクリニックの規模はもちろん、医療法人なのか公立なのか私立なのか個人なのかなどでも変わってきます。さらに、能力に応じて変動する場合もありますが、平均すると約700万円から1,000万円で、高度な治療をおこなう病院の場合は、1,000万円を超えることもあります。また、事務長が医師で、理事長や副院長などの肩書きも有している場合は、2,000万円を超えることもあります。
どうすれば事務長になれる?
将来、事務長になりたいなら、早いうちから準備をしておくに越したことはありません。では、どうすれば事務長になれるのでしょうか? 先に述べた通り、事務長として病院全体をまとめるためには、さまざまな立場の人と積極的に交流する必要がありますし、病院の外にも目を向け、医療業界の動きをいち早くキャッチする能力も求められます。「人生100年時代」と言われる今、病院やクリニックに求められることは大きく変わってきていますし、在宅医療や地域医療へ貢献することも考えなければならないかもしれません。それだけでなく、集患増患の対策につながるマーケティングなど、医療以外に関わる知識も増やしておきたいところです。また、DPC(包括医療費支払い制度)を適用したうえでの収入支出管理もできなければなりません。
すべての能力を等しく伸ばしていくことは至難の業ですが、事務長としての責務を果たすために最低限抑えておかなければならないことを学びながら、自分の得意分野の知識を磨いていくのはひとつの手でしょう。
では、具体的にはどんなふうにキャリアを重ねていけばいいかというと、冒頭に述べた通り、事務長になるルートはいくつかあります。医療機関や民間企業、官公庁、教育機関などで事務職の経験を積んだ後、事務長に就任ケースもありますし、医師や医療技術者として働いた後、事務長に抜擢される人もいます。
抜擢待ちではなく自分から積極的に事務長を目指したい場合は、一部機関で用意されている、事務長養成講座を受講するのも手。座学やレポート提出を通して、書類作成や行政への手続き、人事採用、スタッフ教育、経営や戦略のノウハウ、セミナーの企画方法などを学ぶことができます。また、適任者を事務長として採用した後、グループ内の施設で、戦略立案や企画、運営、経営、集計、分析、業務の効率化などに関する研修をおこなっている医療機関も存在します。
そうした医療機関を自分で見つけたいなら、医療機関をあつかう転職サイトなどへ登録するのが一番です。なぜなら、他の医療機関に事務長を募集していることを知られたくない病院がほとんどで、募集が公開されているケースが少ないためです。
病院事務長として高収入を目指すなら、規模が大きい病院を狙うのもアリ
事務長を目指したい理由は人それぞれ。「医療機関で働いてきた経験を活かして新たなチャレンジをしたい」と意欲を燃やしている人もいれば、より高い年収を目指している人もいるでしょう。高収入を目指したいなら、規模が大きい病院の理事長になることを目指して、今のうちから研鑽を積むのがベスト。または、クリニックや病院を運営経営しながら事務長を務めることもできるので、どんなふうにキャリアを重ねていきたいか、早い段階からしっかりと考えておけるとよいですね。
特徴
対応業務
診療科目
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この記事は、2021年6月時点の情報を元に作成しています。