公務員や一般企業で働く会社員は概ね定年が設定されていますが、医師の場合はどうなのでしょうか? 勤務医か開業医かによっても違いがありそうですが、実際のところどうなのでしょう? 早速みていきましょう。
医師の定年は決まっている?
結論からいうと、医師の定年退職制度の有無は、働いている医療機関や働き方によって異なります。主たる3つの働き方についてみていきましょう。
国公立病院勤務医の場合
国公立病院では、医師の定年は65歳と定められています。ただし、なかには5年程度の継続雇用がある病院も存在します。
民営病院勤務医の場合
民営病院は、病院の規定として60歳から65歳くらいを定年と定めている場合がほとんど。ただし、院長をはじめとする幹部に昇進した医師に関しては、定年制度が適用されていないことが多いです。
開業医の場合
開業医は自営業に分類されるため、定年はなく、いつ辞めるかは自分次第です。体力の低下を理由に早めに医師を辞める人もいるかもしれませんが、クリニックの経営者という形で現役を続行して、実務は「雇われ院長」に任せるという手もあります。
また、非常勤の医師やフリーランスとして働く医師も、開業医と同じく、年齢に関係なく働き続けることができます。
では、施設の種別にみた、医療施設に従事する医師の年齢はどのような分布になっているのでしょうか? 「平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、まず、年代別医師の割合は以下のグラフで表される通りです。
また、施設の種別にみた、医療施設に従事する年齢別医師数は以下の通りです。
年齢 | 29歳以下 | 30 ~ 39 歳 | 40 ~ 49 歳 | 50 ~ 59 歳 | 60 ~ 69 歳 | 70 歳 以 上 |
---|---|---|---|---|---|---|
割合 | 9.40% | 20.70% | 21.60% | 21.60% | 17% | 9.70% |
医師数 | 29378 | 64508 | 67384 | 67274 | 53016 | 30403 |
定年を迎えた後も、医師として活躍することが可能
定年制度がある病院で働いていた場合、定年を迎えた後は医師の仕事が続けられないのでしょうか?答えはNO!定年後も、医師として働くことは可能です。ただしもちろん、定年を迎える前と同じ働き方を続けられるわけではありません。
常勤で働きたいなら、60歳以上または65歳以上でも手を挙げることが可能な再就職先を見つける必要があります。ただし、自覚のあるなしに関わらず、若いころと同じくらい長時間働くことは身体にも負担をかけてしまうかもしれません。それを踏まえたうえで、早い段階から定年後のプランを描いておけるといいでしょう。
定年後も見据えて早めに準備を進めておいたほうがいい理由
特に外科医の場合、定年後も現役医師として働き続けようと思ったら、視力や手先の器用さに衰えを感じない年齢のうちに、内科へ転科するなどの策を取っておくのが賢明かもしれません。しかし昨今は遠隔手術の研究スピードがアップしているため、近い将来、遠隔での手術が現実のものとなった暁には、実際に執刀する医師に対して指示を出す側として活躍する道なども考えられそうです。
65歳以上の医師に人気のキャリアとは?
続いては、65歳以上の医師に人気の働き方についてみていきましょう。定年を迎えた医師にとっての理想の転職先は、人それぞれの思いはさておき、基本的には当直や異動などの体力的負担が少ないに越したことはないでしょう。そうした観点からもおすすめで、かつ実際に人気の働き方は以下の4つになります。
1.非常勤医
65歳以上の医師の定年後の働き方としてもっとも多いのは、医療機関の非常勤医です。業務内容は原則、常勤医と変わりませんが、勤務はほぼ日勤のみ。週1の勤務でOKという医療機関もあります。昨今、医師不足といわれている日本では、今後も常勤医の激務解消のために、非常勤医が重要視されることが考えられます。
2.健康診断医
健康センターなどに勤務する健康診断医の仕事は、病気を治すことではなく見つけること。患者の既往歴や生活習慣についてのヒアリングなどを通して、簡単な生活指導もおこないます。健診用バスでの移動もありますが、遅い時間まで働くことはなく、午前中のみの勤務なども洗濯できます。
3.介護老人保健施設の医師
介護老人保健施設での主な仕事は、リハビリテーションを中心とした入居者の日常生活の健康管理および健康指導です。また、施設長の役職も兼ねる場合があります。その場合は、介護職員や看護職員、リハビリスタッフへの指示、人材の管理および配置、施設の財務管理、入居希望者への入居可否判断などもおこなうことになります。
4.産業医
企業で働く従業員の健康を守るのが、産業医の仕事。従業員が心身ともに健康な状態で長く働けるよう、職場の巡視、作業環境による健康リスクの評価および改善、従業員への健康教育、各事業場が設置している衛生委員会への参加、従業員への健康診断などの業務をおこないます。
実際のところ、定年後ってニーズがあるの?
厚生労働省が公表している「平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、2018(平成30)年の医師数の総数は311,963人。このうち、53,016人が60歳~69歳で、30,403人が70歳以上という結果が出ています。60歳を過ぎてもこれだけの割合の医師が働いているということは、それだけニーズがあるとうことです。
参考:平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況-p.5より一部抜粋
生涯現役で活躍するためにも、早い段階から定年後の準備を進めておいて損はなし!
働き方によっては、生涯現役で働くことができる医師という職業は、年齢を重ねてもバリバリ働きたい人や仕事が生き甲斐という人にはぴったりだといえそうです。しかし、視力や体力は誰しも加齢とともに落ちるものなので、長く働き続けたいという思いがある人ほど、早い段階から将来のキャリアを考えて人生を設計する必要がありそうですね。
特徴
対応業務
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診療科目
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この記事は、2021年7月時点の情報を元に作成しています。