精神科は、数ある診療科の中でもある意味かなり特殊な科となっています。一般科は、患者さんが望んで受診し診察や治療を受けますが、精神科では患者さん自ら望んで病院に来ることはほとんどありません。精神科には「強制的な入院」というものがあります。強制的に入院して治療を受けさせられる患者さんは、治療への参加意欲はほぼありません。それでも病気を治療して社会に戻れるよう、看護スタッフは患者さんが治療意欲を高められるように介入する必要があります。看護師や医師の人柄や態度によっては患者さんに受け入れてもらえず、治療がかなり困難なことも。今回は、実際に精神科で看護師として勤務していた私が、患者さんに好かれる医師の特徴を7つ紹介します。
1.患者さんの話を聞いてくれる
精神科の先生は、先生一人あたりが抱えている患者数が多いためかなり多忙。しかしそんな中でも、忙しい時間の合間を縫って患者さんの病室に話を聞きにいく先生がいます。
一方で、立ち話で済ませてすぐに別の患者さんのところに行ってしまったり、患者さんの顔を見て「元気そうだね」と声をかけて去ってしまったりする先生もいます
精神科を受診している患者さんの中には、上手に自分の気持ちを伝えられない人、言葉にするのが難しい人もいるので、そうした医師とのコミュニケーションには不満を抱えていることもあります。
きちんとまとまった時間を設け、座って患者さんと話をしてくれる先生は、患者さんにとって安心できる存在であり、とっても好かれています。
2.患者さんに対して愛想が良い
精神科の構造は他の病院とは大きく異なっています。普通、ナースステーションはオープンな環境のことが多いですが、精神科は強化ガラスで覆われ各所に鍵が付いており、患者さんがナースステーションに入れないようになっています。安全上の都合でこういった構造になっており、患者さんはスタッフに気軽に話しかけに来ることは難しい状況です。
そういった状況だからか分かりませんが、私が働いていた病院では患者さんたちがナースステーションのガラスにぴったりと張り付いていました。他の精神科病院に勤めている看護師仲間も、常に5,6人の患者さんがナースステーションの窓ガラスに顔をくっつけて中を覗いていると話していました。
きっと患者さんはスタッフと話したい、仲良くなりたいと思い窓ガラス越しにナースステーション内を眺めているんだと思います。その証拠に患者さんたちは看護師と目が合うと微笑み、手を振ったりとリアクションしたり、紙にメッセージを書いて見せてくれたりします。そんな状況が四六時中続きますが、手を振り返すなど患者さんに対して愛想よく対応してくれる医師は人気です。
3.治療薬の相談に乗ってくれる
私が勤めていた精神科病院には10年、20年以上治療を続けている患者さんも多くおり、治療薬についてかなり詳しい患者さんも多くいました。一方、薬に関して無頓着な患者さんも。生活全般に関して自己決定するのが難しく、後見人をたてている患者さんもいるので薬に関して理解できない、分からないという方も多かったです。
このように精神科の患者さんは、人によって判断力や決定能力がさまざまなので、治療方針に関しても主治医や家族で相談し決定していく場合もあります。そういった場合でも実際に治療を受けているのは患者さんですので、患者さんから内服薬を減らしてほしいというお願いや注射で治療してほしいなどの要望を伝えられることも。看護師はそういった相談を聞くことはできますが、実際に処方できるのは先生なので、最終的には医師と患者で相談してもらうことになります。
中には、はなから患者さんの減薬や薬の中止は受け入れないという先生もいます。治療方針があり、中断せずに効率的に治療を行うために服薬継続は大切ですが「薬は変えない」と言い切られたり、「薬に関する話はしない」と先生から言われたりすると、患者さんも不安感や不信感が募ってしまいます。
治療薬の相談も快く聞いてくれる先生は好かれていました。
4.外出・外泊を許可してくれる
冒頭でも説明したとおり精神科には強制的な入院があるので、病院の至るところが施錠されており原則的に自由に出入りができません。外出・外泊に関しては主治医の許可が必要になります。
自分が外に出られない状況で何年も入院していると想像したら、外出はもちろん外泊や退院だってしたくてたまらないですよね。外出・外泊の許可に関しては、患者さんの精神状態によって下りるかどうかが決まります。誰でも外出・外泊できるというわけではありませんが、ずっと外に出られない状況は患者にとってかなりのストレスとなります。
もし外出はできないとしても、どのような状態になれば外出が可能なのか、外出できるようになる時期の目安を伝えるなど、患者さんの気持ちに寄り添って配慮してくれる医師は好かれます。
5.時には叱ってくれる
精神科で働くスタッフは、時には教育者としての役割を求められることもあります。精神科疾患を抱える患者さんは、症状によっては逸脱行動や病院のルールを破る行動をしてしまうこともあります。
私が働いていた頃に実際にあったのは、夜間、男性患者が女性患者の病室に忍び込もうとする事件や、他の患者さんのデザートを盗む事件です。こういった出来事があった際は患者さん同士で解決するとさらなるトラブルに発展する恐れがありますので必ずスタッフが介入します。
その際に問題を起こした患者さんに注意する必要があります。看護スタッフからももちろん注意を促しますが、担当の医師にも報告し医師からも注意してもらいます。
中には優しく声をかける先生もいますが、厳しく指導する医師もいます。患者さんは「〇〇先生から怒られちゃった」と厳しく言われたことを笑顔で報告してきてくれます。真剣に指導してくれる先生の姿は、患者さんにとってきちんと思ってくれてるんだなという印象に映るようで、信頼されていることが多かったです。
6.手紙やプレゼントを喜んでくれる
精神科では、作業療法と呼ばれる治療がおこなわれています。作業に集中することで精神の安定を図る目的で、患者さんは折り紙や色塗り、ミサンガ作りなど自身で選択した軽作業をおこないます。
私の勤めていた病院では、作業療法の時間を楽しみにしている患者さんも多く、カラフルなミサンガや好きな絵柄を色塗りしたりしていました。患者さんの中には、キレイに色塗りした絵柄にメッセージを添えたものや、完成したミサンガをプレゼントしてくれる人もいました。プレゼントしていただいた際にはありがたく受け取り、患者さんが集中して作業に取り組んだことを肯定的に評価し、より治療に意欲的に取り組めるよう声掛けしていました。
手紙やミサンガなどのプレゼントを、お世話になっている医師に渡す患者さんもいます。医師は忙しいことが多いですが、患者さんは先生に喜んでもらえるのを心待ちにしています。患者さんのプレゼントに感謝し、喜んでくれる先生は人気が高いです。しかし中には、もらったプレゼントをナースステーションに捨てて帰ってしまう先生もいました。
7.治療の成果を褒めてくれる
精神科の患者さん多くは病気を自覚せず、自身の妄想や幻覚を現実のものとして認識していることが多くあります。
治療に関しても、初めは自身には必要のないものだと考えている場合が多いですが、医療スタッフのアドバイスや家族からの説得を受け、治療を開始します。徐々に薬の効果で妄想や幻覚などが軽減し、現実と妄想の区別が付き、自身が見ていた世界は病的なものだったのかと自覚できるようになります。
治療の過程では病気を自覚するのが難しいため、自身に必要な治療をおこなっているように感じてしまったり、治療に対して悲観的になったりしてしまうことが多々あります。ですが、治療を続けていれば症状は軽快し少しずつ寛解に近づいていきます。
その過程で、患者さんが治療に積極的に参加している態度を肯定的に評価することは非常に重要です。患者さんが強い信頼を寄せている医師から肯定的な評価を受けたら、患者さんはよりやる気を高められます。厳しいだけでなく、褒めてくれる医師は患者から信頼され、好かれています。
まとめ
いかがでしたか?
今回は患者さんに好かれる精神科ドクターの特徴を紹介しました。
少し特殊な性質のある精神科では、厳しさと優しさを兼ね備え、患者に寄り添ってくれる医師が人気です。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2021年7月時点の情報を元に作成しています。