看護師として働き始めたものの、さまざまな理由で一旦、医療の世界から身を引く人も少なくありません。
看護師の資格を持ちながら、現在看護師として働いていない「潜在看護師」は約70万以上いると言われています。
これだけの人数が、資格がありながら看護師として働いていないのですから正直驚きを隠せません。しかし、看護師が働く世界は厳しい世界なので、仕方がないことなのかもしれません。
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潜在看護師となった理由
医療の世界では、看護師不足は何年も前から問題視されていました。
看護師の資格を取得したものの、看護師として働いていない潜在看護師は多く、そうした事態を解消するために国や地方はさまざまな取り組みをおこなっています。
ですが、今も解消されていません。
潜在看護師となった理由は人それぞれ違うため、簡単に解消することは困難となってくるのではないでしょうか。
潜在看護師となった理由は主に
- 結婚、出産、育児
- 精神的苦痛
- 患者さんが亡くなったことへのトラウマ
- 夫の転勤
- 夜勤ができない
などがあげられるのではないかと思います。
特に多いのは結婚や出産、育児でしょう。
結婚、出産、育児
結婚や出産、育児などのライフスタイルの変化はキャリアにも大きく影響を及ぼします。
出産してすぐに復帰するつもりだったけど、すぐに次の子を妊娠して、実質二度目の産休や育児休暇を経て、気が付いたら数年が経っていたなんてことも決して珍しいことではありません。
しかし、出産や育児で一度臨床から離れた人は、看護師の仕事を辞めたいわけではない場合が多いです。
育児に専任するために離れるだけであって、落ち着けばまた、復職を考える人も多いのです。
出産は女性にしかできないことです。
早く復職したいと考えていても、ブランクが長くなってしまうことは本人にとっても辛いことかもしれません。
次第にブランクの長さがネックとなり、なかなか復帰への一歩を踏み出せなくなる人も多いのではないかと思います。
精神的苦痛
看護師の世界では、人間関係に悩まされることも少なくありません。
近年、男性看護師も増えてはきていますが、まだまだ女性の多い社会です。
女性特有の人間関係があり、それによってうつ病になってしまうというケースも珍しくないことなのです。
一度、精神的苦痛で看護師を離れた人の復職は難しいのかもしれません。
看護師を離れ、精神的に落ち着いたときには数年が経過。
しかし、復職したことによって、また症状が再燃するかもしれません。
また、内服薬といったもので症状を抑えている場合は、副作用なども考えられるので、仕事をしていくことが困難となる可能性もあります。
精神的苦痛によって臨床を離れてしまった場合は、復職はしてみたけど数か月でまた辞めてしまったり、早いと数日で休みがちになったりする場合も少なくありません。
患者さんが亡くなったことへのトラウマ
看護学生のときは、患者さんが亡くなる瞬間に立ち会うことはありません。
しかし、実際に臨床で働き始め、目にすることでショックを受ける人もいます。
その辛さから看護師を続けられず、一度は離れてしまう人もいますが、看護師という仕事が嫌いになったわけではないので、気持ちも整理がついたときに復職する人もいます。
患者さんと関わることが好きな人も多いため、人の死との関わりの少ない診療科に進み看護師を続ける人もいます。
しかし、医療現場で働いている以上、人の死に立ち会う可能性はゼロではありません。
わたしの後輩も、患者さんが亡くなったことに対するショックから一度臨床を離れたものの、3ヶ月後に復帰した看護師がいまいた。
復帰後はリハビリ病棟へ移動しましたが、2ヶ月程たった頃、同じように人が亡くなる瞬間に直面したことがあり、また離れてしまうのではないかと心配しましたが、以前ほどのショックはなく、むしろ生前の患者さんとより深く関われたことで前向きになれたと話していました。
誰しもが同じように感じるとは限りませんが、患者さんとの関わりで克服できたケースだったのかもしれません。
夫の転勤
夫の転勤により、何度か転職を繰り返している看護師も少なくありません。
看護師であれば、就職先に困ることがないと思われがちですが、実はそうでもないんです。
夫が転勤族であるために、制約があり、病院が提示する条件に合わせて働けないことが多いのが現状です。
夫が転勤族である場合、早いと1~3年の間で転勤を通達され、夫についていくために、その都度仕事を辞めなくてはなりません。
転勤の間隔は会社によって差はありますが、引っ越しの準備などをしながら、市役所や病院の退職の手続きをしなくてはならないので大変なことではあります。
夫が転勤族の場合は、前向きな人であれば「いろいろな病院や施設で働ける」「交友関係が広がる」「観光気分でストレス解消ができる」などを聞くことがありますが、それよりも大変なことが多いようです。
「また1から仕事を覚えなくてはならない」「人間関係を作りあげていかなくてはならない」「正職員として働きづらいため賞与がもらえない」など精神的にも辛くなることが多いようです。
常に頭の中に「いつ転勤するかわからかない」という意識があるため、積極的に行動できなかったり、家族や仕事の将来の計画が立てづらかったりといった不安もあります。
そのため、派遣会社で働いてみたり、看護師を離れて家庭に入ったりする人もいます。
転勤が理由で仕事を何度も辞めてしまっている場合、不採用になるということは少ないかもしれませんが、それなりの条件は提示されることはあるかもしれません。
夜勤ができない
医療機関であると、一番気になるのが夜勤に関する条件でしょう。
夜勤したいという気持ちはあっても、「シングルマザーのためひとりで子どもの面倒を見ないといけない」「夫の帰りが遅い」「身近に協力者がいない」など、さまざまな理由で夜勤ができない人がいます。
保育所などに子どもを預けられる時間には制限がありますし、夜間、子どもを預けらえる施設は少ないです。
また、利用料金もかかるため、何のために仕事をしているのかわからなくなるといったこともあるでしょう。
病棟の場合、子どもが小さいうちなどは2年ほど夜勤を免除されることもありますが、それを過ぎてくると夜勤を打診されることもあります。
病院は、夜勤ができる人の数によって利益が変わってきます。
そのため、1人でも多く夜勤してもらいたいというのが病院側の本音でしょう。
しかし、病院の都合で育児を疎かにすることはできません。
融通を利かせてもらえないなら、正職員ではなくパートを選択するしか方法がなくなってくる場合もあります。
そうなれば金銭的に難しくなり、病院を辞める選択をすることもありえます。
ブランクを持つ看護師が抱える不安
いくら経験があったとしても、ブランクが長くなれば誰でも不安になります。
ブランクのある看護師の心配は「今、自分が持っている知識や技術が通用するか」ということです。
短い期間のブランクであれば、自分次第で穴を埋めることはできますが、10年以上であると、それなりに努力も必要になってくるでしょう。
常に医療は進化し、病院もIT化が進んでいます。
特に電子カルテの普及により、紙カルテとの違いを目の当たりにして落ち込んでしまい、復職をためらってしまう人もいるでしょう。
看護師歴4年、ブランク10年の看護師
わたしが新人として入職したとき、看護師歴3年の先輩がいました。
入職したときにはすでに妊娠していたその先輩は、
ほどなくして産休に入り、無事出産して育児に励んでいました。
そして育児休暇が終わり、復帰するときに2人の妊娠がわかりました。
1人目で悪阻がひどく休みがちになっていた先輩は、2人目でも悪阻がひどく入院していました。
その後、悪阻が治まり、少しずつ仕事はしていましたが、完全とは言えません。
わたしも先輩の身体を気遣いながら仕事をしていましたが、気がついたときには、産休の時期になっていました。
その後、2人目も無事出産して復帰する連絡を頂きましたが、
育児休暇が終了して復帰するや、今度は1ヶ月後に3人目の妊娠がわかったのです。
3人目は、1人目、2人目のときより悪阻は少なかったようですが、とにかく身体の怠さが強く起きていられない状態で、休みがちになっていました。
そして3人目も産休、育児休暇をとり復帰するかと思っていましたが復帰はせず、一旦看護師の道を離れました。
やはり3人の子どもの年齢が近いことで手がかかり、「仕事ができる状態ではなかった」と話を聞きました。
それから、数年経ち子どもが落ち着いてきたからと、復職する連絡をもらいました。
その頃には1人目の出産から数えて約10年の月日が経っていました。
元々、その先輩とはICUで一緒に働いていましたが、子どもの育児で夜勤ができなかったので内科病棟で働くことが決まりました。
ブランク歴10年でも身体には染みついていた
その先輩が医療の世界から10年離れているうちに変わったことがたくさんあったそうです。
まず、電子カルテの導入です。
その先輩の育児休暇前はまだ紙カルテの時代でした。
電子カルテを導入することは耳にしていましが、すべてのことが電子化され紙運用がなくなっていたことに驚いたそうです。
元々、パソコンの操作は得意な方ではないため、操作ができるかどうかに不安があったそうです。
しかし、実際に働き始めると徐々にできるようになってはいったそうです。
一番変化があったのは、10年という歳月による体力的な変化です。
10年前であればスムーズに動けた身体も、年を重ね、思った以上に動けなくなっていたことには自分でも驚いたと話していました。
知識や技術面に関しては忘れていたところもありますが、元々、ICUで働いていたこともあり、基本的な部分はまだ染みついていたそうです。
そこが救いだったと話されていました。
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染みついた技術は忘れない
この先輩は、働いている期間より、ブランクの方が長いです。しかし、何度も繰り返された技術はブランクを感じさせないほど身体に染みついているのです。
ブランクがある看護師は、期間が長ければ長いほど不安も強くなってくると思います。しかし、経験のある看護師は例えブランクがあっても、身体に染みついた知識や技術から、即戦力として歓迎する医療機関があることも確かです。
潜在看護師は約70万人、看護師が足りないと言われている医療業界に、ぜひまた復帰してもらいたいものです。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2021年7月時点の情報を元に作成しています。
執筆 男性看護師ライター | ベル
看護師歴14年目。救急、ICU、外科、内科を経験トラブルも多い看護の世界でいろいろいあってもこの仕事が好きな男性看護師。 現在、管理職として働きながらブログなどでも経験を活かしたノウハウを執筆しています。
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