【専門家に取材】35歳前後のクリニック開業は資金面で不利? 融資前に知っておきたいことは?

これから開業したいと考えている医師にとって気になることのひとつが、用意すべき自己資金額。目安となるおおまかな金額は把握していても、年齢などの個別の条件を踏まえると金額が変動するのだろうか? など、不安は尽きません。

そこで今回、クリニック開業支援をおこなう、ジーネット株式会社・代表取締役社長の小野勝広さんに、資金面をはじめ開業の準備に必要なことを教えてもらいました。

目次
  1. 用意したい自己資金の目安は1,000万円~2,000万円
  2. 年齢の若さは融資で不利にならない
  3. 事業計画書の説得力が重要
  4. 自己資金は、基本的にはクリニックの運営には使うことのない「見せ金」
  5. クリニック開業前に、不動産投資は事前に整理しておく
  6. 開業コンサルタントやクリニック専門の税理士さんとつながりを持つことが大事

用意したい自己資金の目安は1,000万円~2,000万円

――まずは開業資金についてお伺いしたいのですが、金融機関の融資を受けたいと考えている場合でも、ある程度の自己資金を用意する必要がありますか?

小野
必要です。一昔前までは、自己資金がゼロでも融資してくれる銀行さんもありましたが、現在では、自己資金ゼロだと相当厳しい査定をされると思っておいたほうがいいです。自己資金を準備することはものすごく大事です。

必要な自己資金の金額はもちろん大きいに越したことはありませんが、金額の大きさに関係なく、医師の本気度や将来性が見えれば融資も問題なく通りうると思います。

――クリニックのケースによると思いますが、ざっくりと目安にできる金額はありますか?

小野
私がこれまで多数の先生方を見てきた肌感としては、1,500万円程度の用意はあったほうがいいように思われます。絶対に1,500万円ないといけないというわけではなく、自己資金額1,000万円で融資してもらえる場合もありますし、2,000万円あれば尚融資してもらいやすくなるでしょう。

年齢の若さは融資で不利にならない

――若いうちに開業した場合、自己資金額が十分に溜まっていない可能性もあると思うのですが、たとえば35歳前後で開業する場合でも1,000万円以上が望ましいですか?

小野
理想とする自己資金額が1,000万円〜から2,000万円だとして、下限の1,000万円あればよいのではないでしょうか。

私の考えですが、融資に年齢は関係ないです。銀行さんは、“若い先生のほうがこれから長く働くことになる分、返済も期待できる”と考えるのであまり心配しなくていいと思います。たとえば50歳の先生と比べても15年長く働けるのですから、そのぶん有利ですよね。

1,000万円に届かず700万円しか用意できない場合も、“年齢的に十分な資金を用意できませんでしたが、これからがんばって返済します”という姿勢を見せればいいと思います。

事業計画書の説得力が重要

――具体的にはどのようにアピールすればいいのでしょうか?

小野
先生の考え方やコンセプトがしっかり伝わる事業計画書を作成できれば銀行さんも納得しやすいです。これは、税理士さんに間に入ってもらって作るのが一般的です。
同じエリア内の競合医院や潜在患者数を記した「診療圏調査」の提出も求められますが、銀行さんのほうでも独自に診療圏調査をおこないます。これは両者を見比べて、信ぴょう性があるかどうかをチェックするためです。

また、最近は事業に対する想いを先生にフリースタイルで書いてもらう銀行さんも増えてきました。これにより、税理士さんやコンサルタントの手が加わっていない先生本来の本気度・考え方が分かります。

・開業を目指した理由
・開業地を選定した理由
・どのようなクリニックにしていきたいか、方針など


上記のような項目を、自分の想いと真摯に向き合いながら作り込むことができれば、35歳前後の若手であっても、経験を重ねた医師より融資の面で有利になることがあると思います。

ただし、冒頭のくり返しになりますが、いくら若いとはいえ、自己資金ゼロだと難しいです。また、少ない自己資金をクリニックに投入することに抵抗がある人もいるかもしれませんが、私の考えだと、自己資金はあくまでも“見せ金”として、クリニックの経営には使わないケースが多いです。

自己資金は、基本的にはクリニックの運営には使うことのない「見せ金」

――「見せ金」とはどういうことでしょうか?

小野
クリニックの開業にあたっては医療機器の導入や内装工事にお金がかかりますし、いざオープンしてからもスタッフの給料や薬品の仕入れなどにお金がかかります。
そうした運転資金は、すべて銀行から融資されたお金でまかないます。通常、運転資金は6カ月分持っておくものですが、なかには6カ月経っても患者さんが増えないケースもあります。そうなるとさらに資金が必要になるものの、銀行さんは追加融資というものを非常に嫌がります。

そこで初めて、自己資金を投入して経営を回していくことになるのです。つまり、6カ月以内に順調に回るようになっていたら、自己資金を使う必要はありません。
ただし、結果的に使わない可能性が高いにしても、さきほど申し上げた通り自己資金ゼロだと融資を受けることは難しいです。

クリニック開業前に、不動産投資は事前に整理しておく

――金融機関に融資をお願いするにあたって、他にも知っておいたほうがいいことはありますか?

小野
まずひとつは、多額のローンがあるとほぼ断られるということです。住宅ローンや車のローンは問題ありません。昨今もっとも問題になっているのは不動産投資です。

もし自分の資金だけで不動産を購入しているのなら、銀行さんは問題にはしないでしょう。しかし、他の銀行さんから融資を受けてマンション投資に充てているのだとしたら、相当厳しい目で見られます。マンション投資は最近の流行りなので、実際にやっている先生もいらっしゃると思いますが、ご自身のクリニックを持ちたいのであれば、不動産投資は事前に整理しておくことをおすすめします。

マンション投資となると融資は億単位になるケースもありますが、結果がよくても銀行さんから見ると“借金”という扱いになるので、開業のための融資は受けられなくなる可能性が高いです。

開業コンサルタントやクリニック専門の税理士さんとつながりを持つことが大事

――より審査に通りやすくなるよう、今のうちからできることはありますか?

小野
昨今、銀行の貸し出す金利は上昇傾向にあるので、審査は非常に厳格になっています。そのあたりの事情に精通している開業コンサルタント、またはクリニック専門の税理士さんのネットワークを活用することをおすすめします。

たとえば、開業したい先生がお近くの銀行さんに訪問して、“クリニック開業の融資を受けたい”と相談しても、おそらくその場で適切な対応をしてくださる人は少ないと思います。銀行さんの中でも、クリニックの融資に関する知識を有している人はほんの一握りです。その担当者にピンポイントでアタックしないと、話が進みません。

そして、その担当者を知っているのが開業コンサルタントやクリニック専門の税理士さんです。もしも今、専門家へのツテがない場合は、先輩の開業医など知り合いを通して探してみるといいと思います。

おそらく、なかには“簡単に融資がおりる”と甘い言葉を掛ける方もいますが、その方は単に依頼を取りたいだけの可能性もありますので、厳しい現実をきちんとアドバイスしてくれる方を選びましょう。

小野 勝広

取材協力 ジーネット株式会社 代表取締役社長 | 小野 勝広

医師の転職支援、クリニック開業支援のスペシャリスト。
転職や開業を「医師のキャリア」という観点から考え、求人や開業物件をただ右から左に流すことに疑問を持ち、あくまでもドクターファーストを貫き通しながら、医師の「キャリア」を中心としてサポート。
公式ホームページでのブログ執筆に加え、YouTube・Facebook・Twitter・Instagram等で積極的な情報発信を行っている。


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執筆 CLIUS(クリアス )

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