産業医の資格を取ればどんなメリットがある?

近年、テレビなどでも「産業医」という言葉を耳にする機会が増えています。報道番組やワイドショーはもちろん、2020年には、日本テレビ系ドラマ『#リモラブ~普通の恋は邪道~』で波留さん演じるヒロイン・大桜美々の職業が産業医という設定だったことから、産業医という職業の認知もぐっと高まりました。ドラマの中で、美々は企業内診療室に勤務していましたが、実は産業医の資格があれば非常勤職員として働くこともできます。その点も含め、産業医の資格をとっておくことにどんなメリットがあるのかをみていきましょう。

目次
  1. 産業医とは?
  2. 産業医の資格はどうすれば取れる?
    1. 産業医の要件
    2. 基礎研修の内容
      1. 前期研修
      2. 実施研修
  3. 常勤と非常勤の違いは?
  4. 専属産業医になるメリットは?
  5. 嘱託産業医になるメリットは?
  6. 医師としての可能性を広げるためにも、産業医の資格を取得しておいて損はなし

産業医とは?

まずは、産業医とはどういう職種なのかを説明します。

産業医とは、事業場における労働者の健康管理にまつわることについて、専門的な視点からの指導および助言をおこなう医師のことです。一般的な内科医などとは異なり、おこなうのは指導や助言のみ。心身の不調を治すための処置や治療はおこないません。

「事業所」と一口に言っても規模も働いている人数もさまざまであるため、産業医の選任条件にも違いがあります。常時労働者数50人以上の事業所は1人以上の産業医の選任が必要で、常時労働者数3,001人以上の場合は2人以上の産業医の選任が必要です。また、「常時労働者数1,000人以上」もしくは「特に健康を害しやすい環境または化学物質などを使用する事業所で、常時労働者数が500人以上」の場合は、その事業所に専属の産業医を選任することが義務付けられています。

参照:厚生労働省・都道府県労働局労働基準監督署「産業医について~その役割を知ってもらうために~」1ページ目より一部抜粋

産業医の資格はどうすれば取れる?

医師であれば誰でも産業医になれるのかというと、そういうわけではありません。厚生労働省・都道府県労働局労働基準監督署によって、産業医の要件は以下のように定められています。

産業医の要件

産業医は、以下のいずれかの要件を備えた者から選任しなければならない

  1. 厚生労働大臣が指定する者(日本医師会、産業医大学)がおこなう研修を修了した者
  2. 産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業して、その大学がおこなう実習を履修した者
  3. 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保険衛生である者
  4. 大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師またはこれらの経験者

一から産業医を目指すとなると、最短ルートは1であるという人が多いでしょう。といっても、1の研修は60分の講習を50単位以上取得する必要があるため、医師としての仕事をこなしながら終了までこぎつけるにはある程度時間がかかります。ただし、産業医科大学などでは、最低限必要な50単位を6日程度で取得できるように短期集中型講座が開設されているので、現在当該大学などで学んでいる医師の卵であるなら、短期間で取得できるチャンスは利用しておきたいところです。

参照:厚生労働省・都道府県労働局労働基準監督署「産業医について~その役割を知ってもらうために~」2ページ目より一部抜粋

また、研修における50単位の内訳は、日本医師会が主導する「日本医師会認定産業医制度」の場合、以下の通りとなります。

基礎研修の内容

前期研修

総論 2単位
健康管理 2単位
メンタルヘルス対策 1単位
健康保持促進 1単位
作業環境管理 2単位
作業管理 2単位
有害業務管理 2単位
産業医活動の実際 2単位

実施研修

主に職場巡視などの実地研修、作業環境測定実習などの実務的研修 10単位以上

後期研修

地域の特性を考慮した実務的・やや専門的・総括的な研修 26単位以上

参照:日本医師会認定産業医制度「日本医師会認定産業医」制度について

常勤と非常勤の違いは?

冒頭で述べた通り、産業医の働き方には常勤(専属)と非常勤(嘱託)があります。

専属の場合、契約を結んだ事業場に所属して、その事業場のみの産業医療を担います。平均的な一日のスケジュールとしては、午前中に職場巡視、午後に健康相談室での対応などをこなします。また、週に1日程度、「研究日」という名目で臨床のアルバイトなどをおこなうことが認められているケースもあります。

嘱託の場合、契約を結んでいる事業場は一社とは限りません。ただし、月に数回程度、契約を結んでいる各事業者の巡視をおこなうことになるので、巡視をこなせないほど多くの事業場と契約を結ぶことはできません。嘱託産業医は、基本的には医療機関に所属または自院で働きながら、月に数日、数時間のみ、契約先の事業場に通うのが一般的です。

専属産業医になるメリットは?

続いては、専属産業医、嘱託産業医それぞれのメリットをみていきましょう。

まず、専属産業医のメリットは、ワークライフバランスを保ちやすいということでしょう。産業医としての仕事部分だけにフォーカスすると、嘱託産業医にも言えることですが、時間外勤務や日当直、オンコール業務がなく、勤務時間が安定していることは大きな魅力です。

また、福利厚生が充実している大手企業の専属産業医であれば、有給休暇などを取得しやすいのもメリットです。

嘱託産業医になるメリットは?

嘱託産業医の仕事は、1回あたりの勤務時間が1~2時間と短いため、空いた時間を有効に使って高収入を目指すことができるでしょう。複数の事業場と契約を結べば、その分、収入アップを目指せます。また、所属先や自院での仕事も続けることができるので、産業医として培った傾聴スキルなどを本業に活かせるのも魅力。また、さまざまな事業所を垣間見ることで、働く人がどんな悩みを抱えていて、どんなことが原因で心身に不調をきたしやすいのかがわかることは、医者としてのスキルアップにもつながるのではないでしょうか。

医師としての可能性を広げるためにも、産業医の資格を取得しておいて損はなし

メンタルヘルス対策を重視する企業が増えている世の中の流れを考えても、今後も産業医のニーズはますます高くなるに違いありません。「自分もチャレンジしてみたいけど現在の仕事にもやりがいを感じている」ということなら、嘱託産業医として本業に支障をきたさない範囲からスタートしてみることも可能です。トライした結果、働く人が毎日気持ちよく働けるようサポートすることに大きなやりがいを感じれば、複数の企業の嘱託産業医を兼任することもできるので、今のうちに資格を取得しておけば、仕事の幅や将来の可能性も広がるかもしれませんね。

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