「ハラスメント」と聞くとみなさんはどのようなものを想像しますか?
- モラルハラスメント
- マタニティハラスメント
- パワーハラスメント
このように、最近はさまざまなハラスメントすなわち「嫌がらせや・いじめ」があります。
そのなかのひとつであるセクシャルハラスメント、略してセクハラは、「性的不快感を生じるもの」との定義で、異性に限らず同性同士でもありうる問題です。また、未だに女性の問題としてメディアなどで取り上げられることが多いですが、男性に関してはどうなのか、医療現場での実態をお伝えします。
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ジャッジの難しいセクハラ問題
医療や福祉といった人対人の現場は、どうしても人との距離が近くなってしまいます。そのため、これはセクハラになるのか? とどこか疑問を持ちながらも、日々、働き続けている方も多くいらっしゃいます。なぜなら、ハラスメントというものはされた側が「不快」と感じるとそれはもうハラスメントになるため、判断が難しい場合があるのです。
では次に、実際にセクハラにあった男性医師・看護師の話をご紹介します。
男性研修医が受けたセクハラ
私がいた病棟での話です。4月から男性研修医のAが配属されることになり、独身の女性看護師は特に盛り上がっていました。Aはとても仕事熱心。年齢性別問わず日々いろんなスタッフに話しかけたり質問したりしていました。患者に対しても「未熟者ですが宜しくお願いします」と挨拶をしたり、寝たきりの患者のところへも足しげく通ったりしていました。
いつもは冷たい看護師が……
Bは看護師歴20年程のベテラン女性看護師。少し口調がきついところがあったので、後輩看護師たちから少し距離を置かれていました。Aが病棟に来てすぐ、BはAに話しかけに行きました。AはBがどのような人物かそのときはまだ知らなかったので普通に話していましたが、Bの日ごろの他の看護師や患者に向けての態度を見ていくうちに、だんだんBがどのような人物なのか理解していくようになりました。
ある日勤帯で患者の布団から薬が1錠出てくるという事件が起きました。その薬はいつのものかわからない状態でしたが、その日の受け持ち看護師Cは間違いなく飲ませたと主張していました。内容がどうあれ事故は事故なので、その日のリーダーであるBに報告することになりました。するとBは血相を変えて、ステーションのみんながいる前でCをこっぴどく叱っていました。服薬管理不十分とはいえ、原因はCだけにあるわけではないとみんな思っていましたが誰、もBを止めることはできませんでした。そのときちょうど、Aが病棟にやってきたのです。偶然にもAはその患者の担当医をしており、事故の一連の流れを聞くことにしました。AはBに対していくつかのことを伝えました。
- 怒るときは誰もいないところで、1対1でおこなうこと
- みんなで患者を見ているのだから1人を責めずに皆で協力して業務をおこなうこと
AがこのようにBに伝えたと師長に報告したことで、私含め他の看護師にも伝えられたため、こうした裏事情を知ることができました。話を戻して、年齢的にもAはBより一回り以上下であるにも関わらず、誰も意見することのできなかったBに対してそこまで言えるAにみんな驚いていました。
「自分に意見してくれた人は久しぶり」
この出来事があったことで、BはAに対して怒るかと思いきや、「歳も下で自分に意見してくる人が久しぶり出てきてくれてなんだか嬉しかった。ありがとうございました」とAに対してお礼を言っていたと言います。Bは内心、周りが自分の目を気にしてびくびくしながら仕事をしている姿にいつの間にかイライラしていて、後輩の看護師と話したくても日頃からコミュニケーションを取っているわけでもないからつい仕事に対してのことしか話せなくなっていたとAに話していたそうです。Bの話を聞いたAは、孤独から人との距離感がわからなくなってしまったのだなと感じたそうで、私たちにも「Bさん本当は優しい人だから普通に話してみたらどうかな」と言われることもありました。その後も、Aは積極的にBに話しかけるようになり、Bも以前より表情も穏やかで笑顔も増えた印象でした。
行動がエスカレート
それ以来、BはAのことをとても慕っていると、誰が見てもわかる程になっていました。仕事のこと以外の話をAにしているところを目撃した看護師もいたし、師長も、Bが以前より明るく人当たりが柔らかくなったのはAのおかげだと話していました。ですが、Bの思いはそこで止まることがなかったようです。同僚看護師が目撃した話ですが、Bの受け持ち患者の退院が決まった際、その患者に特に思い入れがあったBはとても喜び、その直後、廊下ですれ違ったAの手を握り、感極まってその患者のことを伝えていたと言います。嬉しいとはいえ男性医師の手を握るほど? とそのときは思いましたが、Aも一緒に喜んでいたようなので聞き流すことにしました。
それからというものBの行動はどんどんエスカレート。そんなある日、驚くべき瞬間を見てしまったのです。そのときの私たちの制服は、ファスナーの上からボタンをかけるタイプのもので、かがんだりしても決して胸元は見えない構造でした。苦しくて一番上のボタンを一つ開けている人もいましたが、師長に厳しく指導されるほどでした。そのような厳しい規則がある中、Bはボタンを一つ外しファスナーも少し下げ、かがむと胸元が見える着こなしをしていたのです。それも、Aと病室で2人きりになるときや夜勤中にしているところを何度も見たことがあったのです。でも、ただの偶然かもしれないと思い誰にも話すことはしませんでしたが、事件はすぐに起こったのです。
最悪な結果へと発展
それからというもの、Bは人目を盗んではAの近くに行って、話したりボディータッチしたりしていることが複数の看護師に目撃されるようになりました。そんなある日、珍しくAがBに対して強く発言していました。Aいわく、患者のことでBに対し無理なお願いをしたところ、「A先生だからやりますけど、他の先生だったら私絶対やりませんよ」と言われ、Bは「人によって仕事の範囲が変わるのか」ときつく言ってしまったと言います。数日後、Bと私が夜勤中に、Aが病棟にきて、先日はきつく言ってしまったとBに謝罪にやってきたのです。私自身も、わざわざ謝りに来るなんてやっぱりA先生は優しいな~と思っていたところ、BがAを連れて休憩室に向かって行きました。20分程経って2人は戻って来ましたが、表情がどこかおかしかったのです。Aは眉間にしわをよせ何か考え込んでいる様子で、BはAとは打って変わって晴れ晴れとした様子でした。
その後、Aは急に違う病院で研修することになり退職してしまい、後にBも一身上の都合とのことで急に退職してしまったのです。普通であれば退職理由は個人情報でもあるので公開されない場合がほとんどですが、Bの場合はみんなにも知っておいてほしいとの理由で師長の方から話がありました。その原因というのが、Aに対してのセクハラだったようです。
- 強引にAへ好意を伝えていた
- B自身の体を見せたり触らせたりしようとした
- 無理矢理2人きりになる空間へ連れて行っていた
他にも「キスされそうになった」「歓迎会などを理由に連絡先を交換したところ日に日に関係のない連絡が来るようになった」などあったものの、Aは研修医という立場上、誰にも相談することができず他の病院で一からやり直すことにしたそうです。では、なぜBも辞めることになったのかというと、Aにきっぱり振られたことが精神的にショックだったようで辞める流れになったようです。
みんなに敬遠され孤独だったBに医師としてサポートしようとしたAでしたが、最終的にこのような結果になってしまったことを、私を含め他の看護師みんなとても残念がっていました。
男性看護師が受けたセクハラ
女性患者は男性看護師を拒否する方が多いです。逆に、女性看護師に対して恥じらいを持つ男性患者もいらっしゃいますが、こちらのパターンのほうが少ない印象を受けます。そのような現状を知る中で、とても驚く事件が起きたのでご紹介します。
女性看護師より男性看護師?
女性患者Aは気難しい方。特に女性看護師に対しては、
- 女なのに気が利かないなんてモテないわよ
- そんな雑なやり方して、自分の親にもそんな風にするの?
- 若いからって私みたいなおばさん下に見てるんでしょ
など、看護に関係のないことやモラルを傷つけるような発言を日々していました。
ですが、男性看護師Bに対しては違ったのです。
男性看護師を指名?
AはBと会うやいなや、「この人を今度から私の受け持ちにして」と言ってきたのです。理由はわかりませんでしたが、正直、看護師みんなAには頭を抱えていたので、反論するとまた何を言われるかわからないと、BにAの受け持ち看護師になってもらうことにしました。
それからというもの何かあるたびにAはコールでBを呼び出して談笑するなど、時にはBが30分ほどAの部屋から出てこない時もありました。師長も容認しており、Bも「僕は大丈夫です」とのことだったのでそのまま担当してもらうことになりました。
人目を盗んで
Aはシャワー・トイレつきの個室に入院していました。ある日、医師やリハビリスタッフから1人で入浴していいとの許可が出たため、Aは好きな時間に好きなだけ入浴できることになりました。それまでというもの、看護助手介助のもと患者共有のシャワー室で入浴していたのですが、そこでもクレームなどさまざまな問題を起こしていたため、部屋で一人で入れることになりみんなホッとしていました。医師の許可が下りたくらいですから、Aは身の回りのことはほとんど1人でできる状態でした。ですが、そこまで状態が良くなっているにも関わらず、AがBを呼び出す回数は増えて言ったのです。
個室ということもあり、BがAにされたセクハラは、
- シャワー中に呼びだされて胸が痛いとの理由で数分間胸を触らせられた
- 腕が上がらないとの理由でドライヤーをお願いされたがその間Bは全裸だった
- 手がしびれているからとトイレでズボンとパンツをおろすようお願いされた
内容だけを聞くと患者が無理なことを看護師に頼んでいるだけのように聞こえますが、Bはほぼ自立しているため、これはまぎれもなくセクハラの一つとしてみんなが認識していました。
はじめは快く引き受けてくれていたBですが、日に日に看護に関係のない要望や性的なお願いをされることが増えたようで、コールがなっても行きたくないと話すまでになっていました。Bが限界を迎えそうな頃、Aはようやく退院しましたが、BはAとのことがトラウマになったようで、個室の女性患者の部屋に入るのが怖いと心に傷を負ってしまいました。
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まとめ
医療現場は監視カメラがついていないところが多く、決定的証拠を抑えることができないことが非常に厄介なポイントでもありますが、冒頭でも先述しましたように、セクハラとは被害者が「不快」と感じればそれはセクハラとみなされるのです。泣き寝入りするケースが多く見られる問題ですが、勇気を出して周囲に話すことも、次の被害を防ぐために非常に重要です。私がこの2つの事例を通して感じたことは、病院側はこのようなハラスメント問題を軽視しており、全力でスタッフを守ろうとしてくれないということです。もちろん、そのような病院ばかりではありませんが、もっと表立って取り上げる必要性がある問題だと思いますので、スタッフを守ってくれる病院がもっと増えればいいなと感じました。
特徴
対応業務
診療科目
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診療科目
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この記事は、2021年8月時点の情報を元に作成しています。