【開業医にインタビュー:吉武光太郎医師】開業準備で役立ったセミナーは?

クリニック開業に関する情報は、先輩医師や同僚の話だけでなく、書籍・雑誌、インターネットなど世の中にあふれています。最近では医業コンサルタント主催のワークショップ、関連セミナーも増えています。

今回の「開業医にインタビュー」では、2019年のクリニック開業に際し、いくつかのセミナーを受講し、経営だけでなく円滑なコミュニケーションのノウハウなども多角的に学ばれた吉武医師に、クリニック開業前に参加して役立ったセミナーについておうかがいしました。

目次
  1. 形成外科医として開業するきっかけを教えてください
  2. 開業するためにまず始めたことは何でしたか?
  3. 参加してみて、役立ったセミナーを教えてください
    1. (1)「M.A.F」開業医による開業医のための日本最大のコミュニティ
    2. (2)「医療経営大学」偉人の叡智が学び、仲間と出逢い、成果が保証される場
    3. (3)「アチーブメント」目的達成の歓びを全ての個人と組織に
  4. セミナーに参加し失敗したことや不信感を抱いたことはありますか?
  5. セミナー以外で、開業の準備期間にプロの力をかりたところはありますか?
  6. 開業される医師、開業予定の医師へのアドバイスを教えてください

形成外科医として開業するきっかけを教えてください

私が形成外科を選んだ理由は、患者さんの悩んでいる部分を綺麗にして喜んでもらうことが好きだからです。「ただ切る」だけではなく「綺麗にする」ことへの追求が私の理想だったこともあり、形成外科が自分の理想とする診療に一番合っていると思っていました。

開業のきっかけは、父親が歯科医だったことが関係しています。親の世代では歯科医は開業するのが当たり前だったことから、いつからか自分の中でも「医師が開業するのは当たり前だ」と考えていました。
開業に向けて、大学病院や総合病院の形成外科だけでなく、美容外科や皮膚科でも働き、自分の理想を叶えられるよう経験を積んできました。

そのおかげで、今のクリニックでは形成外科の視点で美容にアプローチしつつ、保険診療で皮膚科も診ています。

開業するためにまず始めたことは何でしたか?

開業準備に注力したいと考えていたので、まずは大学病院を退職しました。そして自分の理想を叶えるためのスキルを身につけようと思いました。開業医の場合、勤務医と違って医業に留まらず経営者としてのノウハウを身につけ、実践できる必要があると考えたからです。

医師が開業するための情報は、インターネットや先輩医師から収集していました。また、開業した先輩医師が「セミナーに行きました」とSNSなどで報告する投稿をよく見ていたので、「開業のためにはまずセミナーだ」と自然と思うようになり、参加しはじめました。

参加してみて、役立ったセミナーを教えてください

たくさん参加しましたが、なかでもおすすめしたいセミナーが3つあります。

(1)「M.A.F」開業医による開業医のための日本最大のコミュニティ

まずはじめに参加したのが、医療法人梅華会グループの理事長を務める梅岡比俊先生主催「M.A.F」のクリニック経営セミナーでした。このセミナーは3カ月に1回行われており、以下の8つのテーマを徹底的に学ぶことができます。

1 集患
2 仕組化
3 スタッフ教育
4 権限委譲
5 ブランディング
6 ES(従業員満足)向上
7 リーダー育成
8 時間管理

開業医として活躍している他の参加者と意見交換できたのもいい経験でした。クリニックの経営についてお互いの知識や経験、ノウハウなどの情報をシェアし、学び合う機会を得られたセミナーだと思います。

M.A.F
主催・梅岡比俊。開業医による開業医のための日本最大のコミュニティ。クリニック経営のあらゆる問題解決をサポートする。
▶︎ホームページはこちらから

(2)「医療経営大学」偉人の叡智が学び、仲間と出逢い、成果が保証される場

さらに、有明みんなクリニックの理事長・小暮裕之先生が学長を務める「医療経営大学」では、開業し軌道に乗せるための方法、開業する際に欠かせないこと、経営に必要なことなどを学びました。
具体的には、ドラッガーの5つの質問を活用しての事業の再定義やマーケティングやマネージメント・ビジネスマインド・ブランディング・ジョイントベンチャーなどです。他のセミナーでは学べない、テレビ出演やSNSなどのパブリシティ・デジタル戦略についてのプログラムもとても役立っています。

医療経営大学は少人数制です。
宿題や行動計画の発表などを通し、目標を達成するためのあらゆる学びがありました。全12回・月1回の開催となっていて、毎週のビビリチャレンジ(世界的な経営コンサルタントであるジェームス・スキナー氏が提唱するもの。知らず知らずのうちに自分を制限している枠がないか振り返り、その枠を広げるために毎週、ビビることを最低1つ計画し、実践するという試み)の報告があるためモチベーションも維持しやすく、自分に合っていたと思います。開業した後にも参加し、今では准教授を務めるほどになりました。

医療経営大学
主催・株式会社クラインレーベン/株式会社PersonalMarketing。
全国から医師が集結し、地方・日本・世界の医療を変えるため、自力・他力・釈迦力を重ね、自益・他益・公益を得るビジネスマインド(経営哲学・情報技術)を養う。
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(3)「アチーブメント」目的達成の歓びを全ての個人と組織に

そして、人材教育コンサルティングを行うアチーブメント株式会社のセミナーに参加したことも、とても大きな意味を持ちました。こちらは医師や開業に関するセミナーではないのですが、「自分に足りないマインドに気づけた」という点が私にとって最大の学びです。

今となっては少し恥ずかしいですが、私は学生の頃から「先生、先生」と言われてきたことにより「自分はすごい」「自分は正しい」と本気で思っていました。自分の意見が正しいと思っているため、私と異なる考えを持つ人に対して、「間違いを正してあげなければ」と使命感さえ思っていました。

しかし、それは医師のライセンスがあり、病院や医局に所属しているから成り立っていただけです。

開業医となると、その思考やコミュニケーションでは上手くやっていけません。スタッフなど周りの人たちも、自分の中での正しさをもとにした意見や考え方がある。それに私は耳を傾ける必要がありますが、これまで行ってきた聞き方・伝え方を調整する必要があると思い、セミナーの参加を決めました。
セミナーを通して、目標達成の仕方だけでなく、人とのかかわり方・他人の意見の受け入れ方を知り、コミュニケーションの大切さに気づきました。今では看護師や受付のスタッフの意見も自然と尊重できるようになったと思います。あのセミナーがなければ、開業しても今ほどは上手くいっていなかったかもしれません。

人材教育コンサルティングアチーブメント
主催・アチーブメント株式会社。「目標を達成する歓びを全ての個人と組織に」をモットーに、提供するすべてのサービスの土台に選択理論心理学と目標達成の技術をおいている。個人と組織の目標達成を支援する人材教育コンサルティング会社。
▶︎ホームページはこちら

セミナーに参加し失敗したことや不信感を抱いたことはありますか?

失敗したり騙されたりした経験はないのですが、個人情報も聞かれますし、営業されないか心配ですよね。参加費も高価なものもあれば、無料のものも非常に多く、迷われる方もいると思います。

私がセミナーに参加するうえで大切にしたのは、「だれがセミナーをしているのか」「そこで何が学べるのか」ということです。その時の自分の目的に合わせてセミナーを選ぶと、教わったことを吸収しようという意欲も生まれ、自身にとって意味のあるセミナーにつながると思います。

ちなみにセミナーで得られるものは、知識やノウハウだけでなく、目標となる人・良いメンターに出逢う機会、それに伴う人脈などさまざまです。
私は、実際にセミナーでお世話になった先輩医師のご縁で、現在はセミナーで教える立場にも立っています。このようなできごとを振り返ってみても、私はセミナーに参加してよかったと思います。そして、開業に向けて学びの目的がある方には、セミナーをひとつの選択肢として考えていただければと考えています。

セミナー以外で、開業の準備期間にプロの力をかりたところはありますか?

銀行からの融資を申請する際の書類や事業計画書、開業のために必要な保健所申請や社会保険局申請に関する届出などは、薬の卸の方に手伝ってもらいました。

クリニック開業のコンサルはいくつもあります。私は最初、コンサルには頼らず自身で準備していたのですが、書類の準備、銀行へ行くこと、細かな契約…といったさまざまな作業に時間がとられ疲弊してしまいました。そんな時に、薬の卸の方が無料で手を貸してくれると分かり、コンサルの役回りをお願いしました。

今思えば、最初からお願いすればよかったです。お願いしてからは、自分で行うよりもスムーズにものごとが進み、分からないなりに自分で実施していた作業がいかに時間を要していたか気づきました。

開業される医師、開業予定の医師へのアドバイスを教えてください

開業のための情報はあふれています。セミナーに行くのも、コンサルに頼むのも一長一短があります。もし、今から何かにトライするなら、医業だけでなく経営者視点も養えるようにしたほうがいいかもしれません。

そして、自分が何に時間やお金をかけられるのか、かけたいのかを大切にしてほしいです。
私がセミナーで得た人間関係や情報のネットワークは、一人では実現しえないものばかりです。私にとってはその経験や繋がりが今の自分を作っています。

ぜひ、「クリニック経営」を多角的な視野で捉えられるよう、開業準備をしていただければと思います。 

吉武 光太郎

取材協力 笹塚駅前こたろ形成皮ふ科クリニック 院長 | 吉武 光太郎

埼玉医科大学卒業後、形成外科を専門に勤務。大学病院、総合病院、美容外科勤務を経て、2019年3月に「笹塚駅前こたろ形成皮ふ科クリニック」を開業。日本形成外科学会認定 形成外科専門医。


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