医者の態度が悪いと患者クレームが来たら?クリニック院長が知っておくべき対応法

クリニックの運営において、医師の態度が悪いという患者クレームは避けて通れない問題です。患者からのクレームに適切に対応することは、クリニックの評判を守り、患者満足度を高めるために非常に重要です。本コラムでは、医者の態度が悪いとクレームが来た際の対応方法について、クリニック院長が知っておくべきポイントを解説します。

目次
  1. クレームを受けやすい医者の態度とは
    1. 患者が不快に感じる態度の具体例
      1. 言葉遣いの悪さ
      2. 冷たい対応や無関心
      3. 過度に専門的な用語を使う
      4. 話を聴く姿勢が悪い
  2. クレームを言いやすい患者の特徴と対応方法
    1. クレームが多い患者の特徴と対応方法
      1. 不安やストレスを感じている患者
      2. 説明不足で疑問や不満を持つ患者
      3. 医療機関に不慣れな患者
    2. カスタマーハラスメント(モンスターペイシェント)への対応
      1. カスハラの具体例
      2. 社労士の目線で見るカスハラへの対応策
      3. インターネット上の悪意のある口コミへの対処法
  3. クレームを受けた場合の失敗対応、正しい対応
    1. 失敗対応の例とその結果
      1. 無視や放置
      2. 過剰な防衛的対応
      3. 説明不足や情報提供の不足
    2. 正しい対応方法
      1. 患者の話を丁寧に聴く
      2. 別室対応
      3. 複数人対応
      4. 誠実な対応と謝罪
      5. 解決策の提示と実行
      6. 記録を残す
  4. 継続的なPDCAサイクルの活用法
    1. PDCAサイクルの基本と重要性
      1. Plan(計画):クレーム予防策の立案
      2. Do(実行):予防策の実施
      3. Check(評価):効果の測定と分析
      4. Act(改善):改善策の実行と次の計画
    2. PDCAサイクルの実践例
      1. 成功事例
      2. 失敗事例と改善ポイント
  5. まとめ

クレームを受けやすい医者の態度とは

医者の態度が悪いというクレームが頻繁に発生するのは、どのような態度が患者を不快にさせるかを理解することが重要です。以下に、患者が不快に感じやすい態度の具体例を挙げます。

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患者が不快に感じる態度の具体例

言葉遣いの悪さ

医師が患者に対して無礼な言葉遣いやぞんざいな言葉遣いをすることで、患者は不快に感じることがあります。例えば、命令口調や高圧的な言葉遣いは、患者にとって威圧感を与え、安心感を損ないます。また、丁寧な言葉遣いが欠けていると、患者は自分が軽んじられていると感じることがあります。患者とのコミュニケーションでは、敬意を持った言葉遣いを心掛け、丁寧かつ親切に接することが重要です。

冷たい対応や無関心

診察中に医師が患者に対して冷たい態度や無関心な態度を示すこともクレームの原因になります。例えば、患者の話を聞かずに診察を進めたり、忙しそうに見える態度を取ることは避けましょう。また、質問しにくい雰囲気を作ってしまうことも、患者にとっては大きなストレスとなります。患者は自分の健康状態を気にかけてもらいたいと感じているため、冷たい対応は信頼を損ないます。医師は患者に対して親身になって対応し、患者が安心できるよう心掛けることが大切です。

過度に専門的な用語を使う

医師が過度に専門的な用語を使い、患者が理解できない説明をすることもクレームの原因です。医療の専門用語は患者にとって難解なことが多いため、わかりやすく説明することが求められます。患者に対して平易な言葉で説明することで、患者は自身の健康状態や治療方針を理解しやすくなります。

話を聴く姿勢が悪い

電子カルテばかり見て患者を見ないことや、身だしなみが悪いこともクレームの原因となります。患者は、自分が医師にしっかりと向き合ってもらえていないと感じると、不安や不満を抱くことがあります。医師は患者と目を合わせ、身だしなみに気を配り、丁寧な態度で話を聴くことが重要です。これにより、患者は自分が大切にされていると感じ、信頼関係を築くことができます。

クレームを言いやすい患者の特徴と対応方法

全ての患者に対して丁寧に接し、しっかりと説明することが基本です。患者は、丁寧な対応を受けることで安心感を得ますし、わかりやすい言葉で診療内容や治療方針を説明されることで理解が深まり、不安や疑問が解消されます。このようにすることで、患者の満足度が向上し、クレームの発生を防ぐことができます。では、具体的にクレームを言いやすい患者の特徴について見ていきましょう。これを理解することで、事前に対策を講じることが可能になります。

クレームが多い患者の特徴と対応方法

不安やストレスを感じている患者

不安やストレスを感じている患者は、些細なことでもクレームを言いやすくなります。例えば、診察の待ち時間が長いことや治療に関する説明が不十分な場合、患者は不安を感じ、その結果としてクレームが生じることがあります。医師やスタッフが丁寧に対応し、患者の安心感を高めることが重要です。

説明不足で疑問や不満を持つ患者

治療や診察に関する説明が不足していると、患者は疑問や不満を持ちやすくなります。例えば、治療の選択肢やリスクについての情報が十分に提供されないと、患者は不安を感じ、それがクレームにつながることがあります。医師やスタッフが丁寧に対応し、患者に納得してもらうことでクレームを予防することができます。

医療機関に不慣れな患者

医療機関に不慣れな患者は、不安や心配からクレームを言いやすい傾向にあります。例えば、初診の患者や医療機関を訪れることが少ない人々は、クリニックのシステムや医師の対応への不安を感じやすく、クレームが発生することがあります。こうした患者には特に丁寧な説明とフォローが求められますので、クリニックのシステムや対応の流れをしっかりと説明し、信頼を築くことが重要です。

カスタマーハラスメント(モンスターペイシェント)への対応

カスハラの具体例

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、 当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるものと考えられています。世間一般では、過度なサービス要求や従業員への暴言などが含まれます。これを医療機関の文脈に置き換えると、モンスターペイシェントと呼ばれることがあります。具体的には、診療時間外の対応を強要する、無理な診察を求める、感情的な暴言や脅迫などが含まれます。
医師には応召義務があり、患者からの診療依頼に対して正当な理由がない限り断ることができません。しかし、この義務は無制限ではなく、過度な要求などがあった場合には、適切な対応を取ることが認められています。
このようなカスハラ行為は、医療従事者に大きなストレスを与え、業務に支障をきたすことがあります。従って、労働環境を守るためにも、適切な対応策を講じることが重要です。

社労士の目線で見るカスハラへの対応策

社労士として、カスハラへの対応はクリニック全体の労働環境を守るためにも非常に重要だと考えています。まず、カスハラが発生した場合には、冷静かつ適切に対応することが求められます。感情的にならず、患者の話を丁寧に聴き、適切な説明を行うことが基本です。また、カスハラに対するクリニックの対応方針を明確にし、全スタッフに周知徹底することが重要です。具体的な対応策としては、以下のようなものがあります。
記録を残す
カスハラの詳細な記録を残し、再発防止に役立てる。具体的な事例を記録することで、対応策の見直しや改善に役立ちます。
スタッフの連携
カスハラ対応を一人で抱え込まず、上司や同僚と連携して対応する。連携することで、適切な対応策を講じることができます。
法的機関への相談
必要に応じて弁護士や警察などの法的機関に相談し、適切な対応を取る。法的な助言を得ることで、クリニック全体の安全と働きやすさを確保することができます。
これらの対応策をスタッフに教育し、定期的に見直しを行うことで、クリニック全体の安全と働きやすさを確保することが重要です。対応策については、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を参考にしてください。

インターネット上の悪意のある口コミへの対処法

当法人では顧問先のクリニックから、悪意のある口コミがGoogleマップに書かれてしまったという話もお聞きします。クリニックの評判に大きな影響を与えることがありますので、これについても以下のような対応を参考にしてください。
冷静な対応
感情的に反応せず、冷静に状況を分析します。悪意のある口コミに対してすぐに直接反論することは避け、時間を置くなどして、冷静に対応することが重要です。
適切な対応策
悪意のある口コミに対して、事実確認をした上で事実と異なる点を明確にし、誠実な姿勢で返答することは効果的です。患者の気持ちに寄り添うことで、改善する場合があります。
Googleへの削除依頼
必要に応じて、Googleに対して削除依頼をします。依頼をしても、削除されるかどうかはGoogleの判断に委ねられます。
法的手段の検討
口コミが事実無根であり、名誉毀損に該当する場合には、法的手段を検討します。弁護士に相談し、適切な対応を取ります。

クレームを受けた場合の失敗対応、正しい対応

クレームを受けた場合の対応が不適切だと、患者の不満が増幅し、問題が深刻化することがあります。ここでは、失敗対応の例とその結果、正しい対応方法について解説します。

失敗対応の例とその結果

無視や放置

クレームを無視したり放置したりすると、患者の不満は増幅し、より深刻な問題に発展することがあります。例えば、クレームを受けても対応せずに放置すると、患者は自分の意見が軽視されていると感じ、さらに不満を抱いてしまいます。迅速かつ丁寧な対応が求められます。

過剰な防衛的対応

クレームに対して過剰に防衛的な態度を取ることも失敗の原因です。患者は自身の意見が軽視されていると感じ、信頼関係が崩れてしまいます。例えば、患者のクレームに対して反論ばかりすることで、患者は理解されていないと感じ、不満が募ります。

説明不足や情報提供の不足

クレーム対応において、説明不足や情報提供の不足は問題を悪化させます。例えば、患者に対して十分な情報を提供せずに対応すると、患者は疑問や不安を抱き、不満が増大します。患者に対して十分な情報を提供し、納得してもらうことが重要です。

正しい対応方法

患者の話を丁寧に聴く

クレームを受けた場合、まずは患者の話を丁寧に聴くことが重要です。患者の気持ちを理解し、共感を示すことで信頼関係を築きます。患者が抱える不満や問題点を的確に把握し、適切な対応策を考えるためには、患者の話をしっかりと聴くことが必要です。

別室対応

話を聴く際には、他の患者に影響を与えないように別室で対応することが有効です。落ち着いた環境で患者の話を聴くことで、冷静な対応がしやすくなり、患者の気持ちも和らげることができます。別室対応を行うことで、患者と医療従事者の双方が冷静に対話できる環境を作り出せます。

複数人対応

クレーム対応には、複数のスタッフが関与することが望ましいです。上司や他のスタッフと連携することで、より適切な対応が可能になります。複数人で対応することで、患者に対して安心感を与えるとともに、スタッフ間での情報共有もスムーズに行えます。これにより、一人にかかる負担を軽減し、最善の対応ができるようになります。

誠実な対応と謝罪

誠実な態度で対応し、必要に応じて謝罪することが重要です。謝罪は問題解決の第一歩であり、患者の怒りを和らげる効果があります。例えば、診療に対する不満があった場合、誠実に謝罪し、今後の対応について説明することで、患者の信頼を回復することができます。ただし、何でも謝罪するのではなく、事実と反することに対しては柔和に正しい事実を伝えることが重要です。また、理不尽な対応を求められた場合には、クリニックのルールを丁寧に説明し、適切な対応を心掛けましょう。このバランスを保つことで、信頼関係を維持しつつ、公正な対応が可能となります。

解決策の提示と実行

具体的な解決策を提示し、それを実行することがクレーム対応の鍵です。患者に対して問題解決に向けた具体的なステップを示し、実行することで信頼を回復します。例えば、診療体制の見直しやスタッフの教育強化など、具体的な改善策を示すことで、患者の納得を得ることができます。

記録を残す

クレーム対応の過程や結果を詳細に記録することも重要です。記録を残すことで、再発防止策の検討や将来の対応に役立てることができます。また、記録を基にスタッフ全員で情報共有を行うことで、クリニック全体の対応力を向上させることができます。記録は後々のトラブル解決や改善のための貴重なデータとなります。

継続的なPDCAサイクルの活用法

クレーム対応全般に言えることですが、効果的に行うためには、PDCAサイクルを継続的に回すことが重要です。ここでは、PDCAサイクルの基本と重要性、実践例について解説します。

PDCAサイクルの基本と重要性

Plan(計画):クレーム予防策の立案

クレームを予防するための計画を立てることが重要です。クリニック全体でどのような対応が必要かを明確にし、具体的な計画を作成します。例えば、クレームの発生原因を分析し、それに基づいた予防策を計画します。医師の言葉遣いや態度に関するクレームが多い場合は、接遇研修やコミュニケーションスキル向上の研修計画が含まれます。

Do(実行):予防策の実施

立案した計画に基づいて、クレーム予防策として、医師に対する接遇研修やコミュニケーションスキル向上の研修を実施します。例えば、定期的な接遇研修を行い、医師が患者に対して適切な態度で接することを確認します。また、実践的なコミュニケーションスキルのトレーニングを通じて、患者との信頼関係を築くための具体的な方法を学ばせます。さらに、医師が日常業務の中でこれらのスキルを活用できるよう、フィードバックを行います。

Check(評価):効果の測定と分析

実施した予防策の効果を測定し、評価します。例えば、患者アンケートやフィードバックを定期的に収集し、医師の態度や言葉遣いに対する患者の満足度を確認します。また、クレームの発生状況を確認し、研修やトレーニングの効果を分析します。この評価により、どの程度クレームが減少したか、患者の満足度が向上したかといった予防策の効果を具体的に把握します。

Act(改善):改善策の実行と次の計画

評価の結果をもとに、予防策や研修プログラムの改善を行います。例えば、患者の満足度が向上していない場合やクレームが減少しない場合、研修内容やトレーニング方法を見直します。また、新たに発見された問題点に対応するための追加策を計画し、実行に移します。このような、医師の態度改善に向けた継続的な取り組みを実施し、クリニック全体の対応力を向上させます。

PDCAサイクルの実践例

成功事例

クリニックAでは、医師の態度改善を目的に、接遇研修とコミュニケーションスキル向上トレーニングを定期的に実施しました。研修後、患者アンケートで満足度を測定し、クレームが50%減少しました。さらに、医師だけでなくスタッフミーティングでフィードバックを共有し、日常業務に反映させました。その結果、患者から「親身な対応」「分かりやすい説明」といった高評価が増え、クリニック全体で改善の成果を共有し、信頼度と患者数が向上しました。
また、電話応対の改善とクレーム防止策として、電話の録音を導入しました。これにより、応対内容を確認し、より効果的な対応が可能になりました。加えて、特定のスタッフへのクレームを防ぐために名札をあえて付けないという工夫も行いました。これにより、スタッフの心理的安全性が確保され、安心して業務に集中できる環境が整いました。

失敗事例と改善ポイント

一方、クリニックBでは、医師の態度改善に向けた計画が曖昧で、研修も一度だけの実施にとどまりました。患者アンケートも実施せず、具体的な効果測定を行わなかったため、クレームが減少しませんでした。特に、「説明が不十分」「冷たい対応」といった声が多く寄せられました。改善ポイントとしては、詳細な計画立案、定期的な研修の実施、定期的な患者アンケートの実施が必要です。患者アンケートを定期的に実施することで、患者の声を直接収集し、リアルタイムでの対応や改善が可能になります。また、フィードバックの共有を徹底することで、持続的な改善が図られるでしょう。

まとめ

本コラムでは「医者の態度が悪いと患者クレームが来たら?クリニック院長が知っておくべき対応法」というテーマで詳しく解説しました。クレーム対応は信頼を築くために不可欠で、継続的な改善が求められます。日常的なコミュニケーションと患者の声に耳を傾ける姿勢が重要です。定期的なトレーニングとフィードバックを活用し、スタッフ全員が学び続けることで、より良い対応が可能となり、患者満足度の向上に寄与します。
当法人では顧問先のクリニックから接遇研修のご要望も非常に多くいただいています。経験豊富なコンサルタントが対応致しますので、お困りの際は是非ご相談ください。
社労士として、クリニック全体の労働環境を守り、スタッフと患者双方にとってより良い環境を作ることが求められていると、日々感じています。コラムの内容が皆様のより良い労働環境の実現の一助となれば幸いです。

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わたしたちはドクターの皆様の声に耳を傾け、人に関する法律のスペシャリストとして 「職員の労働トラブルに関するアドバイス」、「院内ルール作成」等を得意とする社会保険労務士事務所です。 人事労務に関する相談サポートにより、診療や経営に専念して頂く事が可能です。 診療所特有の人事労務相談は専門家でなければ適切なアドバイスはできません。弊社はこれまでの実績により的確なアドバイスを行い、労務管理をサポートします。

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高橋友恵

執筆 社会保険労務士法人アミック人事サポート代表社員/社会保険労務士/医療労務コンサルタント | 高橋友恵

2004年アミック労務管理事務所を開設。2010年に株式会社日本医業総研にて人財コンサルティング部マネージャーとして人事コンサルティング・接遇講師・院内業務改善コンサルティング等を実施後、2016年に社会保険労務士法人アミック人事サポートを設立。医療機関特有の人事労務に精通し、これまで350件の関与実績がある。


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