医院開業時の薬局の選び方

私は調剤薬局の薬剤師です。調剤薬局の新規店舗開発の業務に関わっているので、医師の方が開業されるときに面談をさせていただく場合もあります。そこで私たちが見ているのは、開業希望の医師のバックグラウンドや、患者さんに向けた診療に対する想いなどです。しっかりとした経験に基づく熱い想いのある医師には、開業後のスタッフも一緒になって患者さんに向き合うことができますし、患者さんはそれに呼応するように増えていきます。

その患者さんへのアプローチに対して、薬局も共に、薬を中心とした専門領域でアプローチをかけていく。シナジー効果で、クリニックと薬局はその地域に受け入れられると考えております。つまり、クリニックと薬局が両輪で頑張ることで、患者さんの満足度が上がっていくのです。

目次
  1. パートナーとなる薬局
    1. きちんと話ができる薬局
      1. 1.院長と薬局長は根本が全く違う
      2. 2.薬局長とはいつ会うか
      3. 3.薬局長は異動する場合がある
    2. 自分の理念を共有できる薬局
      1. 1.治療の一端に薬局も関わる
      2. 2.理念共有ができていないとクリニックも流行らない
      3. 3.理念共有が治療方針・処方意図の根源
    3. 共に歩むことができる薬局
      1. 1.一緒に隣を歩ける薬局
      2. 2.言いなりになることは「共に歩む」とは言わない
  2. 最後に

パートナーとなる薬局

クリニック開業の際に、いわばパートナーとなるのが調剤薬局です。たくさんある中でどのような薬局がパートナーとして最良であるのか。意外とクリニック開業時に重要視していない薬局の選び方をお伝えしたいと思います。

きちんと話ができる薬局

当たり前のように聞こえると思いますが、意外とそうではありません。その理由をご説明します。

1.院長と薬局長は根本が全く違う

開業医は、自身が現場の責任者であり全体の舵取りを行います。しかし多くの調剤薬局、チェーン薬局の場合は薬局長=社長ではありません。大手調剤薬局の場合は、社長自らが動くこともないでしょう。新規店舗開発担当者が、恐らく最初に会う担当者となるでしょう。また、現場の責任者となる薬局長と初めて会うのが、オープン直前、最悪オープン後ということも珍しくありません。実際に薬局が決まった後に薬局長を決めることになるのが通常なので、仕方ない部分ではありますが、このことが方針の相違のもととなる場合が多いです。

2.薬局長とはいつ会うか

薬局と面談する場合やコンサルタントに薬局選定を相談する際には、きちんと現場責任者である薬局長(管理薬剤師)とオープン前に話をできる場を設けることができるか、確認しておいた方が良いと言えます。オープン後に対話をするのは薬局長(管理薬剤師)がメインとなります。きちんと話ができる関係を築くために、オープン前からのすり合わせが必要です。

3.薬局長は異動する場合がある

チェーン薬局では、薬局長の異動も何ら珍しい話ではありません。診療に影響がなければよいですが、薬局の評判が悪いとクリニック運営にもダイレクトで影響します。「あそこの薬局は親切で丁寧だったのに、薬局長が変わったら雰囲気かわったよね」と患者さんに言われることもあるかもしれません。だからこそ、薬局選びには慎重にならなければなりません。実際には、薬局長の異動に関しては事前に把握することは難しいです。薬局として信頼出来るかを見ていかなければなりません。

自分の理念を共有できる薬局

クリニックは自分の診療理念を体現できる場所となります。その理念を共有することは重要と言えます。その理由をご説明します。

1.治療の一端に薬局も関わる

薬物治療をする場合は、薬を服用して初めて治療が成り立ちます。そのため、薬局はクリニック開業をする医師にとって、自身の医療に関わる場所なのです。当たり前ではありますが、患者さんがきちんと薬を服用しないと適切な治療効果を望むことが出来ません。薬物治療においての一部は薬局の担うところなのです。

2.理念共有ができていないとクリニックも流行らない

薬局と理念共有ができないと、どんなに良い医師で、どんなに施設として最新の機器などを取り入れていたとしても流行らない可能性があります。例えば、「私(医師)は地域の皆さんのために夜10時まで外来をおこないます」と熱意をもって行ったとしても、院内処方のケースを除き、実際に処方箋を出しても受け付けてくれる薬局が近隣にない場合や、薬局が18時で閉まる場合など、診察はできても治療がスタートできないという状況が生まれてしまいます。こうなると理想的な治療が体現されません。そうすると患者さんは、「あそこのクリニックに行っても病気が良くならない」「あのクリニックには行かない」と考えてしまいます。折角地域のためを思っての医師のおこないも、きちんと薬物治療がおこなえないことによる弊害により思わぬ結果になってしまうかもしれません。

3.理念共有が治療方針・処方意図の根源

医師のクリニック開業時の理念を共有していないと、治療方針、処方意図は理解できません。医師の治療方針、処方意図を理解していなければ薬局での適切な服薬指導はできません。適切な服薬指導ができなければ、適切な薬物治療ができません。つまり、理念共有ができていないと適切な薬物治療ができなくなる可能性があるのです。患者さんはこんなことを思うかもしれません。「先生から聞いた話と薬局で薬剤師さんが言っている話が違う」「病院では薬は途中でやめても良いと言われたけど薬局では最後まで飲むように言われた。どっちが正しいの?」

実は、これは珍しい話ではないのです。こうなると、医師が考える治療がしっかりとおこなえず、患者満足度も低下してしまいます。大げさな話に聞こえるかもしれませんが、理念共有はそれほどまでに重要なのです。

共に歩むことができる薬局

1.一緒に隣を歩ける薬局

共に歩むことができるというとイメージがつきにくいでしょうか。クリニックと薬局は、あくまで別の施設であり経営も一体ではありません。だからこそ、一緒に地域の皆さんに還元できるように進むことが出来る薬局を考えて頂きたいのです。地域の皆さんにとって新規で出来るクリニックや薬局は目新しいため、ある意味、見極められる立場でもあります。

そんな中で、もしかしたら

  • 患者さんが最初にたくさん来てくれないかもしれない
  • 待ち時間が長いとクレームがくるかもしれない

と考えているクリニックもあるかもしれません。その問題解決を一緒に考えることが出来るかどうか。それがとても大切なのです。

クリニック開業後、院長は肩書の通りトップの立場です。だからこそ、クリニック内でスタッフに相談できること、できないことなども当然あります。そこで薬局を活用できるかどうかは大きなポイントです。薬局は一番身近にいる別の施設です。相談できて問題解決を図ることが出来るのかどうかは、院長自身にとってもクリニック全体にとってもキーポイントになります。

2.言いなりになることは「共に歩む」とは言わない

共に歩むことができる薬局かどうか見極めるには、「きちんと意見を言ってくる薬局であるかどうか」をチェックすることが有効です。開局前の面談時でも、しっかりと意思や目的などをきちんと伝えてくる薬局は、きちんと地域の皆さんに目線が向いている可能性が高いです。医師の言う通りにのみ業務を進めるのでなく、しっかりと意見を言うことは薬局としては少し怖い部分があります。しかし、それができないと、開局後の問題解決に関しても、薬局が自ら動くことも院長と共に問題解決を図ることもないでしょう。

最後に

クリニック開業時の薬局の選び方として3点を解説させていただきました。この記事を読んでいただいた医師の方々は薬局の活用や重要性を理解してもらえたかと思います。ぜひ、クリニック開業時には薬局選びの重要性についても頭のどこかで考えてほしいと思いますし、オープン後の何年、何十年を考えたときには、必ず薬局も隣にいるといことを認識していただきたいと思います。

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寺本 卓矢

執筆 いちょう薬局株式会社 経営戦略本部人材採用担当 株式会社PHAIND 執行役員 | 寺本 卓矢

薬局での薬剤師業務の傍ら新店舗開発や人事採用、人材採用コンサルタント業務を行う。薬剤師として常に新たなチャレンジをしながら医療業界、特に調剤薬局と薬学生に対して貢献できるよう業務を行う。現在は新たに薬学生向けコンテンツサイト(薬学ステップ)を開設。 薬学生向けイベント企画運営なども手掛けている。


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