これから開業したいと考えている医師にとって気になるのが、開業のメリットとデメリットでしょう。今回はそのうち、デメリットにスポットを当てて考えてみたいと思います。
開業資金の用意が大変
最初に立ちはだかる難問が、開業資金の調達です。土地・建物代はもちろん、電子カルテやレセプトコンピューター、診療用ベッドなどの基本的なものから各種機器にまで、かなりの設備代がかかります。また、当面の間の運転資金を用意しておくことも必要なので、十分な資金を捻出するには時間がかかるかもしれません。もちろん、金融機関からの借り入れという選択肢もありますが、自己資金額やその他の条件によってはスムーズに借り入れできない可能性も無きにしも非ずです。また、借り入れということは当然返済の必要があるということなので、経営がうまくいかなかったとき場合、借り入れしていることが精神的負担にならないともいえません。
開業資金の目安は?
開業資金は具体的にどれくらい必要なのでしょうか? 主たる診療科別にみていきましょう。
内科
5,000万円程度は必要とされています。診療範囲が広い分、他の診療科と比べてそろえるべき医療機器が多いですが、リースなども活用すれば初期費用を抑えることができます。
外科
最低でも5,000円程度は必要とみていいでしょう。ただし、対象とする診療領域によって大きく異なります。
耳鼻科
テナント開業なら5,000万円、戸建て開業なら1億円以上は必要とみていいでしょう。診療ユニットやネブライザー、ファイバーなどの機器の用意が必要なほか、メンテナンスにもお金がかかっていくことになります。
眼科
最低でも5,000万円はみたほうがいいでしょう。ただし、レーシックや白内障の手術をおこなう場合、手術に使う機器や、それを置くためのスペースが必要となるのでさらに高額になります。
整形外科
テナント開業の場合は5,000万円前後、戸建て開業の場合は1億2,000万円以上必要とみていいでしょう。施術代やリハビリ機器、診察用ベッドなどの不可欠なものにはお金をかけても、高性能マッサージチェアなどは導入しなければ、初期費用を抑えることができます。
小児科
約4,000万円~程度みておくといいでしょう。小児科の患者となる幼児や小学生、中学生の親である若い世代の口コミは広がりやすいので、うまく宣伝することで比較的早い段階で資金を回収できるでしょう。
精神科
他の診療科と異なり、診察に必要な機器などはないため、少ない資金で開業できます。ただし、土地、建物代は約1,000万円~程度必要です。
皮膚科
2,000万円前後は必要でしょう。ただし、美容皮膚科を標榜する場合、高額なレーザー機器などの導入が必要となるため、初期費用もそのぶん高くなります。
産科・婦人科
約5,000万円~程度必要とされます。初めての妊娠などの場合、ホームページで病院を探すことが多いので、webサイトを上手に活用することが重要です。
経営に関する知識も磨いていかなければならない
開業医は、医師であると同時に経営者でもあります。勤務医時代とは異なり、患者を診ることに加えて、クリニックを回していくことにも頭を使わなければなりません。マネジメント能力はもちろん、スタッフを育てる能力なども高いに越したことはありません。とはいえ、経営について勉強するのがイヤなら開業医になるのを諦めざるをえないかというとそんなことはありません。マネジメントや宣伝は、専門家を雇って一任するという選択肢もあります。ただしもちろん、最低限の知識は身に着けておかなければ、信頼できる相手かどうか見極めることが難しいかもしれません。
給与支払いや家賃、リフォームなどにもお金がかかる
スタッフの給料や家賃、建物が劣化した際のリフォーム代など、大きな額を支払うことが多くなります。入ってきたお金のすべてが収入になるわけではないので、慣れないうちは「こんなにお金が出ていくの!?」と落ち込んでしまいそうです。
集患・増患がうまくいかない
集患・増患がうまくいかないままだと、赤字経営となってしまいます。そうした事態を避けるためにも、自院の特徴などを知ってもらう努力は必要です。開業前に内覧会をおこなったり、見やすいホームページを作っておいたりすることで、少しずつでも知名度を上げていけるよう工夫したいところです。
インターネット上のいい口コミがなかなか増えない
たとえば病院でイヤな思いをしたとき、そのことを悪い口コミとして書き込む人は多いですが、いい口コミをわざわざ書く人は少ないものです。そのため、最初のころはいい口コミがなかなか増えないことにやきもきさせられるかもしれません。その場合は、たとえば会計の際に受付から「口コミにご協力くださいね」と口コミサイトのQRを記した紙を渡すなど、できることから工夫していきましょう。
医療事故など万が一の場合、守ってくれる人がいない
勤務医であれば、患者からのクレームや訴訟があった際、どう対処すればいいのかを一緒に考えてくれる人がいます。しかし自分が責任者である開業医となればそうはいきません。リスクヘッジのために、医師賠償責任保険などに加入しておくとよいでしょう。
人間関係の煩わしさを感じることも
クリニックの経営者、代表としてたくさんの人に関わるようになると、人間関係で悩まされることも多くなるでしょう。とはいえもちろん、勤務医には勤務医の悩みがあったはずで、医局の上下関係などにも悩まされてきた人は多いはず。そう考えると一長一短ですが、経営者になれば、スタッフなどから相談されることが増えることは考えられます。人とのコミュニケーションがあまり得意ではないという人も、みんなが気持ちよく働ける環境づくりのためにも、良好な人間関係の構築を意識したいものです。
退職金がない
老後の資金は自分で用意する必要があります。定年後にそなえて小規模企業救済に加入するなど、積み立ての方法はいくつかあるので、老後についても早めに考えておくといいでしょう。
医療法人化した場合、簡単には辞められなくなる
クリニックを医療法人化した場合に限った話ですが、医療法人は事業の永続性を求められるため、個人的な理由による解散は認められません。どうしても辞めたい場合は、新しい理事長を見つけるか、M&A先を検討するかが必要になる場合があります。
医療法人化した場合、煩雑な手続きが増える
こちらも医療法人化した場合に限ったことですが、事業報告書や資産登記、理事会の議事録作成が必須となるほか、従業員の人数に関わらず社会保険と厚生年金への加入が義務化されるなど、面倒なことが増えます。
デメリットがあるということはメリットもあるということ
今回はデメリットを中心にみていきましたが、デメリットがあると同じようにメリットも大きいのも事実。これから開業医になろうと考えているなら、「デメリットを回避しながらメリットを堪能する」ためにはどうすればいいか、ノートに書き出して考えてみるのもいいかもしれませんね。
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診療科目
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この記事は、2021年9月時点の情報を元に作成しています。